【資料解説】日本版MaaS実現へ、2025年度までの国の青写真

未来投資会議で示されたロードマップ





国の成長戦略を議論する未来投資会議で、日本版MaaSの推進に向けたロードマップが示された。2020年7月の会合の中で「革新的事業活動に関する実行計画案」が提示され、モビリティ分野では、自動運転の社会実装に向けた取り組みの加速や低速・小型の自動配送ロボットの社会実装などとともに各進行計画案が示されている。

近年、国内におけるMaaS実装に向けた取り組みは加速度を増しており、2020年度も全国各地で実証が行われている。これらの成果を踏まえ、2025年度までをめどに普及を図っていく方針だ。







MaaSに関するこれまでの国の動きとともに、MaaSロードマップの中身を解説していく。

▼令和2年度革新的事業活動に関する実行計画案
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai40/siryou1-2-2.pdf

■これまでの国の取り組み
未来投資戦略2018でMaaSに言及 新モビリティサービス懇談会設置

国によるMaaSの取り組みが本格化したのは2018年度に入ってからだ。未来投資戦略2018の中で初めてMaaSという言葉が登場し、まちづくりと公共交通の連携を推進しながら自動走行などの新技術の活用や、まちづくりと連携した効率的な輸送手段、買い物支援・見守りサービス、そしてMaaSなどの施策を連携させることにより、利用者ニーズに即した新しいモビリティサービスのモデル都市や地域をつくるとしている。

2018年10月には、国土交通省がMaaSのあり方をはじめバス・タクシー分野におけるAIや自動運転の活用にあたり、課題抽出や今後の取り組みの方向性などを検討する「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」を初開催した。

データ連携やシステム連携に向けた課題と今後の方向性やMaaSに向けた都市計画・まちづくりのあり方、周辺サービスとの連携、移動のシームレス化のための運賃・料金施策、MaaS事業者と交通事業者の間の運賃収入配分、決済基盤・ITインフラの整備、地域特性に応じたMaaSの具体化、MaaS実現に向けたITインフラ整備、実証実験への取り組み方、地域類型ごとのMaaSのあり方など、多岐に渡る意見交換を進め、2019年3月の第8回懇談会で中間とりまとめを発表した。

官民ITS構想・ロードマップでは2019年度版からMaaSが登場

ITSや自動運転の実現に対する国の方針を示した官民ITS構想・ロードマップにおいても2019年度版からMaaSが登場している。

新たなモビリティサービスの創出・高度化やデータ連携基盤づくり、非モビリティ領域との連携、自動運転の活用などを進め、人流と物流の移動など全ての移動におけるニーズに応じた地域全体の最適化を図るとともに、MaaS相互の連携によるユニバーサル化や、移動と多様なサービスとの連携による高付加価値化、多様な交通モード間の交通結節点や新たなモビリティサービスに対応した走行空間の確保などのインフラ整備やまちづくりとの連携により、全ての地域、全ての人が新たなモビリティサービスを利用できるMaaS実現を目指すとしている。

【参考】自動運転などに関する国の施策については「「自動運転×日本国の動き」の最新動向は? 政策やプロジェクトまとめ」も参照。

MaaS関連データ検討会を設置

2019年9月には、国土交通省がMaaS基盤となるデータの方向性を検討する「MaaS関連データ検討会」を設置し、MaaS普及を前に連携すべきデータの範囲やルール、データ形式などについて議論を進めている。

2020年1月の3回目の会合でガイドラインの素案を策定し、3月に「MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.1.0」を正式発表した。

ガイドラインでは、MaaS関連データのうち各MaaSにおいて設定された最低限のルール等に基づき、各MaaSプラットフォームを利用する全てのデータ利用者が利用可能なものを協調的データ、当該データの提供者との契約などによって個別に共有が行われるものを競争的データとし、一般利用者が基本的なMaaSを享受する上で特に重要なデータなどは協調的データとするよう努めるものと定めた。

このほか、移動関連データの取り扱いや関係者間でのデータの取り扱い、MaaSに必要となるデータ、データ連携の方法などの指針を盛り込んでいる。

【参考】データ連携に関するガイドラインについては「国交省、「MaaS関連データの連携に関するガイドラインver.1.0」を策定」も参照。

地域におけるMaaSプロジェクトを推進

多様な地域において多様な主体が参加するMaaSの実証実験を支援するため、新モビリティサービス推進事業を実施し、2019年6月に先行モデルとなる19事業を選定・発表した。

先行モデルは、茨城県日立市やつくば市など大都市近郊型・地方都市型が6事業、京都丹後鉄道沿線地域や島根県大田市など地方郊外・過疎地型が5事業、福島県会津若松市や滋賀県大津市など観光地型が8事業となっており、それぞれ官学民の連携のもとMaaS実証を進めている。

2020年度も日本版MaaS推進・支援事業として6月まで公募が行われており、7月に公表予定となっている。

このほか、MaaS普及に向けた基盤整備の一環として、AIを活用した効率的な配車等を行うオンデマンド交通の導入を支援する事業についても2020年5月にWILLER EXPRESSや西日本鉄道など6地域の6事業者を選定・発表している。

■日本版MaaS推進に向けたロードマップ

ロードマップでは「地域における移動手段の維持・活性化」「モビリティと物流・サービスとの融合」「新しいまちづくりとモビリティ」「データ連携の加速」の4項目に分け、それぞれ2025年度までの指針を盛り込んでいる。

地域における移動手段の維持・活性化
出典:首相官邸

新型コロナウイルス対策の一環として、新たな日常を支える必須のサービスとなる交通事業についてキャッシュレス化や混雑情報の提供といった取り組みを2020年度に促進するなど、感染症リスクに対応した運行の確保を推進する。

2025年度までの中期においては、自治体が策定する地域公共交通計画に基づく乗合バスの等間隔運行や、定額制乗り放題運賃などのサービス改善、維持困難な路線バスの代替サービスの確保、貨客混載の導入などの取り組みを支援する。必要な地域においては、事業者協力型自家用有償旅客運送(ライドシェア)の円滑な実施を図る。

また、公共交通の維持・活性化や消費者の利便性向上、高齢者の移動機会の創出等を推進するため、①鉄道やバスといった複数の交通手段や観光施設などを横断的に利用できるフリーパスを、国への運賃届出手続きが簡素化される制度の創設②自治体ごとに複数の交通事業者などの幅広い関係者が参画する協議会制度の活用促進を図ることで、地域の住民や旅行者一人ひとりの移動ニーズに対応し、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを組み合わせたMaaSの利用拡大を促す――としている。

モビリティと物流・サービスとの融合
出典:首相官邸

2020年度には、自家用有償旅客運送(ライドシェア)において、自家用車を用いることとする原則を踏まえつつ、地域ニーズに応じて実施主体から委託を受けた貨物自動車運送事業者が自らの貨物事業用車両を持ち込み、貨物とあわせた旅客の運送を行う場合の取り扱いを明確化する。

福祉目的などを前提に市町村運営やNPOなどに限っていたライドシェア事業において、モノの輸送を担う事業者の参加に道を拓く方針だ。

同年度中には観光や小売り、医療などと連携したMaaSの実証を行うほか、タクシー事業者が許可を受けた上で有償で食料などを運送することを認める特例措置について、その効果を検証し、継続の可否を判断することとしている。

コロナ禍における特例措置として実施中の取り組みだが、継続が決定すれば本格的な事業化への道が見えてくる可能性もあり、要注目だ。

このほか、2021年度までに、MaaSの在り方について人口減少地域における新たなモビリティサービスを早期に事業化するための制度整備を図ることとしている。具体的には、改正食品衛生法(2021年6月施行)に関し都道府県などをまたぐ移動販売の営業届出を電子的にワンストップ化するとともに、自動車による飲食店営業について都道府県ごとに定められる営業許可の施設基準の標準化を推進する。

MaaS実証は、2020年度までの結果を踏まえ、官民で設立したスマートモビリティチャレンジ推進協議会で課題やベストプラクティスを整理し、2025年度までに普及を図る方針だ。

【参考】タクシーの貨客混載の取り組みについては「「究極の貨客混載」は自動運転タクシーで実現する」も参照。

新しいまちづくりとモビリティ
出典:首相官邸

CASEやMaaSなど、技術やサービスの進化がもたらす各種生活インフラとの連携強化といった構造変化を踏まえたモビリティ産業の成長ロードマップを、2020年度中に取りまとめるほか、シェアサイクルについても、利用登録ワンストップ化など事業効率や利用者利便の向上を図る事業モデルを2020年度中に示すこととしている。

また、集約交通ターミナルの効率的な整備・運営を図る「バスタプロジェクト」の全国展開を2025年度までをめどに推進する。その際、民間ノウハウを活用しながら効率的に整備・運営するため、官民連携で整備・運営管理を可能とするコンセッション制度などを活用しつつ、多様な交通モード間の接続を強化してMaaSなどの新たなモビリティサービスにも対応可能な施設とする。

データ連携の加速
出典:首相官邸

2020年度には、2020年3月に策定した「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」を講習会などを通じて事業者・地方自治体などに周知するとともに、地域でのガイドラインに基づくアプリ・データ連携、API標準化の実証を進める。

交通以外の分野との連携を促進するため、2020年度中にガイドラインの更新についても検討を進めるほか、全ての都道府県で相互利用可能な交通ICカードの導入への取り組みについても進めていく。

また、屋内ナビゲーションなどへの活用のため、主要駅でのWi-Fiアクセスポイントの位置情報をオープンデータ化する取り組みを促進し、2021年度までにオープンデータを活用した情報提供の本格実施を行う。

交通事業者やさまざまなサービス事業者との連携を容易にする共通データプラットフォームの実現に向けた検討も2021年度までに進め、2025年度までにさまざまな交通機関がスマートフォンなどで連携し、より便利な社会の実現を目指すこととしている。

このほか、2025年度までに、クラウドやQRコードによる乗車確認など低コストで導入可能な取り組みの支援や、キャッシュレス化の取り組みを促進していく。

■【まとめ】スピード感あふれるMaaS推進施策

2018年度に本格的な議論に着手して以来、2019年度に実証を本格化するなど、MaaS実装に向けて国は取り組みを強化している印象だ。自動運転の導入を盛り込んだMaaSも実証を開始しており、MaaSとともに自動運転バスやタクシーが社会実装される地域も出てくる可能性が高い。

交通や移動の在り方を大きく変えていくMaaSが、目標年度となる2025年までにいくつの地域で実装されるのか、またどのような進化を遂げるのか今から楽しみだ。

社会課題の解決が本旨となるが、ビジネス面でのポテンシャルも見逃せない。異業種を含め、MaaS関連プレーヤーの動向にも引き続き注目だ。

▼令和2年度革新的事業活動に関する実行計画案
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai40/siryou1-2-2.pdf

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

【参考】関連記事としては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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