【解説】ベールを脱いだ「Japan MaaS(仮称)」の全貌 トヨタやソフトバンクも注力する分野

両輪は「ユニバーサル化」と「高付加価値化」





国土交通省は2019年3月21日までに、日本版MaaS(Mobility as a Service)の将来像や、今後の取り組みの方向性などの検討を進めてきた「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」の中間とりまとめを発表した。







資料では、日本版 MaaS「Japan MaaS(仮称)」の概要をはじめ、都市圏や地方圏といった地域ごとに取り組むべき内容がまとめられている。

民間における取り組みが加速する中、国はどのような指針を示しているのか。国土交通省が目指す「Japan MaaS」の中身に迫ってみる。

【参考】関連記事としては「国土交通省、MaaSや自動運転・AIの活用に向け懇談会設置」も参照。

■Japan MaaSの概要

日本における交通サービスは公共交通に加え多様な民間サービスが提供されており、多くの民間交通事業者が沿線のまちづくりや商業・観光など総合的なサービスを展開している。このため、移動と多様なサービスとの連携が可能であり、この特徴を積極的に活用した日本ならではのMaaSの展開が期待できる。

その上で、都市・地方、高齢者・障がい者などを含む全ての地域、全ての人が利用できる仕組みの構築が必要であり、多様なMaaS相互の連携などによる「ユニバーサルMaaS」を目指すべきとしている。

また、移動と多様なサービスの連携による高付加価値化や交通結節点の整備といったまちづくりとの連携も、移動円滑化や外出機会の創出などの観点から重要であるとしており、この「MaaS相互の連携によるユニバーサル化」と「移動の高付加価値化」の両方を、望ましいまちづくりの実現に資する形で位置づけたMaaSを「日本版MaaS」としている。

これにより、利用者は一つのスマートフォンアプリで全国津々浦々の交通手段の検索から予約・決済までができるようになり、さらには、病院や飲食店、行政サービスなどの予約・決済もワンストップで行えるようになる。

■Japan MaaSの方向性①地域横断的な取り組み
MaaS相互、MaaS・交通事業者間のデータ連携の推進

MaaSサービスの提供主体として、交通事業者をはじめ交通機関の検索サービスを提供している事業者、地域の交通施策を担う地方自治体と交通事業者の協議会といったコンソーシアムなど、多様な主体が想定される。

そこで、協調領域としてオープン化すべきデータと競争領域となるデータの線引きを早急に国が提示するなど「連携データの範囲やルールの整備」や、国が推奨する形式によるデータ整備を奨励するなど「データ形式の標準化」、「API(Application Programming Interface)仕様の標準化・設定の必要性」、「データプラットフォームの実現」、「災害時の情報提供などデータの公益的利用」を進めていく必要がある。

このため、2019年度中をめどに、協調領域と競争領域のデータの線引きをはじめ、API仕様の標準化やMaaS事業者のシステム構築を容易にするガイドラインの作成、ユニバーサルなMaaSサービスの実現を目指すMaaS相互連携方針の明確化を図る方針だ。

運賃・料金の柔軟化、キャッシュレス化

MaaSは、利用者の利便性を最大限に高めるため、出発地から目的地までの移動を一つのサービスとして提供するものであり、最低限ワンストップサービスとして複数の交通手段を一括して検索・予約・決済できることが望まれる。さらに、事業ごとに運賃・料金の設定方法が異なることにより実現が難しかった各種サービスが、さまざまな交通モード・サービスをコンテンツとした統合サービス(商品)として、利用ニーズを踏まえてプライシングされて提供されることが望ましい。

このため、タクシー利用者の予見可能性を高めるための「事前確定運賃」や、利用者ニーズに沿ったきめ細やかなサービスを提供できる「サブスクリプション(定額制)」、需要に応じて運賃や料金を変動させる「ダイナミックプライシング」、旅行業法適用の有無に留意した「MaaSに関する法制上の整理」、「MaaSの展開を見据えた制度のあり方の検討」、「キャッシュレス対応の決済システムや乗車時の確認手段に必要な投資への支援」などについて検討していくこととしている。

2019年度中に、これまで想定していなかったMaaSサービスの展開や、円滑化のために必要な制度のあり方などについて検討するほか、キャッシュレスに対応した決済システムや乗車時の確認手段の確立に必要な投資への支援の検討・具体化についても着手する。

まちづくり・インフラ整備との連携

新たなモビリティサービスの社会実装に向け、交通結節点の整備など、中長期的に取り組まれるまちづくりと調和したインフラ整備も重要となる。

そこで、都市・交通政策との整合がとれたサービス設計など「都市・交通政策との整合化」、シームレスで新たなモビリティサービス普及に対応可能な「多様なモード間の交通結節点の整備(拠点形成)」、自動走行に対応した道路空間の基準整備など「新型輸送サービスに対応した走行空間の整備(ネットワーク形成)」、MaaS経由の移動データとさまざまな統計データを組み合わせることが可能な都市データプラットフォームの整備など「まちづくり計画への移動データの活用」に取り組むこととしている。

2019年度にMaaS実用化に向けた実証実験の実施・支援をはじめ、シームレス化に必要な交通結節点の整備に着手する。

このほか、実証実験に対する支援や自動運転による交通サービスの提供拡大に必要な施策の検討といった「新型輸送サービスの推進」や、競争政策の見直し、人材育成、国際協調などにも取り組むこととしている。

■Japan MaaSの方向性②地域特性ごとの取り組み

地域特性が都市圏と地方圏で大きく異なることを起点に、双方をそれぞれ中心部と郊外部に区分し、また観光という別の観点で特徴的な移動が見られる地域も個別に取り上げ、新たなモビリティサービスのあり方について取り組むべき内容をまとめている。

大都市における新たなモビリティサービスの推進

移動ニーズの多様化への対応や潜在需要の掘り起こし、日常的な渋滞や混雑などを課題に挙げ、相乗りタクシーや超小型モビリティ、シェアサイクルなど、多様な事業者間のデータ連携の実現や持続可能な社会を目指す都市・交通政策との整合化に取り組むこととしている。

大都市近郊における新たなモビリティサービスの推進

ファースト・ラストマイル交通手段の不足やイベントや天候などによる局所的な混雑を課題に挙げ、カーシェアやオンデマンド交通などを想定した、持続可能な社会を目指す都市・交通政策との整合化に取り組むこととしている。

地方都市における新たなモビリティサービスの推進

自家用車への依存や公共交通の利便性・事業採算性の低下、運転免許返納後の高齢者、自家用車非保有者の移動手段不足を課題に挙げ、持続可能な社会を目指す都市・交通政策との整合化や、交通事業者同士の連携・協働に取り組むこととしている。

地方郊外・過疎地における新たなモビリティサービスの推進

地方都市の課題に加え地域交通の衰退や交通空白地帯の拡大などを挙げ、過疎地域における貨客混載や道の駅などを核とした自動運転サービスなど、住民視点での持続可能なサービスの実現や、持続可能な社会を目指す都市・交通政策との整合化に取り組むこととしている。

観光地における新たなモビリティサービスの推進

地方部における二次交通の不足や観光交通の実現、急増する訪日外国人の移動円滑化、多様化する観光ニーズへのきめ細やかな対応を課題に挙げ、オンデマンド交通やグリーンスローモビリティなどを想定した事業者間の持続的な連携・協働や、各地域のMaaSの相互運用性の実現に取り組むこととしている。

■【まとめ】2019年度にMaaS政策本格始動、官民協働でMaaS推進に期待

MaaSは民間同士や官民連携などが強く求められる分野であるため、早々に一定の基準づくりを進める必要性は高い。また、MaaSをはじめとした新たなモビリティサービスは技術革新に伴って日々進化しており、今後想定を超えて多様化していく可能性もある。

2019年度中に大きく動き出すMaaS政策。民間の活力と呼応し合い、効果的に推進されることに期待したい。







関連記事