【最新版】自動運転、2020年の業界展望を大予測!レベル3新車をホンダ発売、「五輪×トヨタ」にも注目

レベル3新車、国内でも?宅配ロボが公道を走行?



2020年の幕が開けた。いよいよ日本国内で自動運転レベル3(条件付き運転自動化)が解禁され、ホンダレベル3搭載車を発表予定だ。東京オリンピックの選手村ではトヨタの自動運転車が活躍する。そんな2020年、自動運転業界にはどのような変化が起こるのか。







今回は2020年が業界にとってどのような年になるのか、自動運転領域における取材や分析などを通じて自動運転ラボが得た知見をもとに展望を解説していく。

■トピックス1:東京オリンピックを契機に自動運転車がリアルなものに
五輪の会場で自動運転車が大活躍
出典:トヨタプレスリリース

2020年における国内ビッグイベントの筆頭が2020東京五輪だ。観客動員数は1000万を超えると言われ、国内外から多くの注目が寄せられる一大事業だ。この最高の舞台は、自動運転において間違いなく試金石となる。

世界各国のメディアが集まる五輪の会場で自動運転技術を活用すれば、日本の技術が世界に大きく発信される。また、多くの来場者に自動運転を体験してもらうことで自動運転社会への理解が深まり、社会受容性を一気に向上させることもできるだろう。

何より、テレビで五輪を観戦する膨大な数の視聴者に自動運転技術がアプローチされるのが大きい。開会式やマラソン大会、選手の移動などで利用される自動運転車がテレビで放映されることで、絵空事だった自動運転がお茶の間の話題に代わり、急にリアリティを増してくるのだ。

これまで自動運転における話題の多くは業界関係者のニュースに留まっていたが、五輪をきっかけに多くの視聴者や来場者が自動運転を身近なものと感じ、近い将来さまざまな形で生活に溶け込んでいくものであることを認識していくのである。

こうした取り組みをリードするのが、大会のワールドワイドパートナーを務めるトヨタ自動車だ。トヨタは大会期間中、さまざまなモビリティやロボット技術で会場内の移動や案内を支援する。

自動運転とMaaS(Mobility as a Service)を融合させた専用EV「e-Palette」の東京2020専用仕様車を選手村に十数台導入し、選手村内の巡回バスとして大会関係者や選手の移動をサポートするほか、AI(人工知能)を応用した「人を理解する」技術と自動運転技術を組み合わせた「TOYOTA Concept-愛i」をオリンピック聖火リレーの隊列車両やマラソン競技などの先導車として数台導入する予定だ。

五輪時期には、会場外でも自動運転がお披露目される
出典:トヨタプレスリリース

五輪においては、一般来場者向けの移動サービスは基本的に大会専用に開発されたモビリティ「APM」や燃料電池バス「SORA」などが担うこととなりそうだが、自動運転の体験の場はほかにも用意されている。大会期間を含めた2020年6~9月に、東京都江東区のパレットタウン内にあるトヨタの展示ショールーム「MEGAWEB」やお台場・豊洲周辺の公道で、自動運転レベル4相当の技術を搭載した「LQ」の体験試乗会「トヨタYUIプロジェクトTOURS 2020」が開催される。

AIエージェント「YUI」と、「TOYOTA Concept-愛i」を受け継ぐ最新の自動運転コンセプトカー「LQ」を掛け合わせた未来の移動を体験することができる。五輪期間中の自動運転体験としてぜひ足を運んでもらいたい。

また、一般社団法人日本自動車工業会(自工会・JAMA)は五輪開幕直前の2020年7月6日から12日まで、羽田空港地域などで自動運転の公道実証を公開する。

トヨタをはじめ自工会加盟の自動車メーカー10社が参加し、羽田空港地域や臨海副都心・都心部などでバスをモデルケースとした実証・デモや、高速道でのインフラ連携の実証・デモ、混合交通の公道における自動運転などレベル2〜4に相当する技術を公開する。

そのほか、ティアフォーやJapanTaxi株式会社、損害保険ジャパン日本興亜など5社も、2020年夏ごろを目途に自動運転タクシーを使ったサービス実証を東京都心で実施する予定だ。オリンピック時期とどう重なるかは分からないが、トヨタや自工会の実証実験とともに注目されることは間違いない。

このほか、自動運転タクシーの実用化に向け実証を重ねているロボットベンチャーのZMPなどが五輪に合わせる形でアクションを起こす可能性もありそうだ。

多くの来場者とメディアが集まる五輪は、自動運転技術を社会に送り出す機運を高める最高の場で、こうした取り組みは、2024年開催予定のパリ五輪などにも引き継がれていくことになるだろう。

メジャープレーヤーの登場で自動運転がリアルなものに

別の観点では、トヨタをはじめとした自動車メーカーの取り組みが表に出てくる点も注目に値する。これまでは、部品メーカーやテクノロジー系、交通サービス事業者などによる実証が中心で、自動車メーカーが先陣を切る場面は少なかった。

一般消費者の視点では、まだまだ「自動運転車は自動車メーカーが作るもの」といった固定観念が強く、それ故に自動車メーカー以外の取り組みはいま一つピンとこないようだ。

だからこそ、トヨタをはじめとした自動車メーカーが表立った活動をすることに意義があるのだ。自動車メーカーによる技術のお披露目が自動運転に現実味を帯びさせ、広く一般消費者にも浸透していくのである。こうした取り組みが都心をはじめとしたメジャーなスポットで実施されれば、その効果はさらに高まるだろう。

さらに、一般認知度が高まることによって自動運転の現実味や期待が高まることで、メーカーの開発や、それに伴うすそ野産業の研究開発のアクセルも加速される。法整備や自治体の実証受け入れなど、あらゆる関係者の動きが加速するだろう。

2020年は、多くの人にとって自動運転がぐっと身近に感じられる記念すべき年になり、メーカーの開発が本格化する年になるのだ。

■トピックス2:人を乗せる以外の自動運転のサービス開発が具現化!?
出典:各社プレスリリースの画像などから作成

自動運転技術は人の移動に注目が集まりがちだが、その用途は思いのほか多岐にわたる。モノの輸送や警備、清掃といった特殊用途などだ。こうした用途の場合、公道以外の限定区域における目的を絞った使い方で実現が可能なため、人を運ぶ自動運転に比べ実用化のハードルが低い。

現在、国内では大規模商業施設などにおける実証が進められており、警備や清掃用途などではほぼ実用化域に達していると言える。実際、国内のホテルにおいてもデリバリーロボット「Relay」がすでに実用化されるなど導入事例は増加しており、施設内で稼働する自動運転ロボットを目の当たりにする機会はどんどん増えていくものと思われる。

一方、公道走行については、現行法制下では原則走行できない状況となっているが、歩行者の安全確保や安全運用に関する基準、事故時の法的責任分界点の整理など課題の抽出が官民協議会で進められており、2019年度中にも公道上での実証実験をはじめ、実用化に向けたロードマップが策定される見込みだ。

自動運転ラボでは、こうした公道における配送ロボットの実用実証が2020年に本格的にスタートするものと考えている。実証を可能にするガイドラインの策定も進められており、国内においてもロボットがモノを運んでくる時代が幕を開けるのだ。

インターネット通販やウーバーイーツのようなデリバリーサービスのニーズの高まりとともに宅配需要も急増しているが、宅配業界の人手不足は解消されず、ともすれば悪化しかねない状況だ。改めて「どのように運ぶか」という部分にイノベーションが求められることになるが、その最適解が自動運転だ。社会的な課題となりつつある宅配問題の解決には、無人の宅配ロボによる公道実証を加速させる必要がある。

なお、海外では実用実証が各地で進められており、スタートアップの参入もひときわ多い分野だ。「ティア1」に相当する大手自動車部品会社がこの領域に参入する例も目立ち始め、2020年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2020」では自動運転が可能な電動配送ドロイドを仏大手ヴァレオが初公開している。

実証環境が乏しい日本はこの分野で遅れがちだが、2020年は巻き返しを図る絶好の年になりそうだ。

■トピックス3:自動運転のクルマ椅子、空港で定着へ!?
実証実験の様子=提供:WHILL

高齢者や身体障がい者をはじめ、誰もが利用できるパーソナルモビリティとして期待が高まっているのが、自動運転車椅子だ。施設内をはじめ、市街地や商業地における比較的短距離の移動や観光地など、さまざまな場所で一定の需要が見込まれている。今後、高齢化が進むことでその需要はますます高まるものと思われる。

とりわけ、導入に向けて力を入れているのが空港だ。飛行機に搭乗する際は、広大な空港内での長距離移動を余儀なくされるケースが多い。各地からの乗り入れが多い羽田空港などはその典型だ。自動運転ラボは、2020年に羽田空港を筆頭に各地の空港で自動運転車椅子が導入され、定着する年になるのではないかと推測している。

羽田空港は、サービスや利用者満足度を向上させるためにロボット技術の活用に注目し、国土交通省および経済産業省との連携のもと空港内におけるロボット製品の技術検証を目的に「Haneda Robotics Lab」を開設した。

2016年度から活動を展開しており、同年度の実証実験プロジェクトの中で、移動支援ロボットとしてWHILL株式会社の電動車いす「WHILL Model A」などを採択した。

電動車椅子「WHILL Model A」は、身障者のみならず誰もが利用したいと思えるパーソナルモビリティとして開発されており、スマートフォンを連動させることで細かい加速・減速の調整などが行えるほか、リモートコントロール機能も搭載している。

また、同モデルにパナソニックが開発した衝突防止機能を搭載した「WHILL NEXT」も採択され、自動停止機能や自律移動機能、隊列走行機能の技術検証が行われた。

以後実証が重ねられており、近々では2019年11月に羽田空港第1ターミナルで、自動運転・衝突回避機能などを搭載した「WHILL自動運転モデル」と、複数の機体を管理・運用するシステムから構成される「WHILL自動運転システム」の走行試験が行われている。

なお、自動運転車椅子の開発や実証は、茨城県つくば市と産業技術総合研究所、スズキも行っている。スズキが製造販売するセニアカー(高齢者向けの電動車椅子)に産総研が開発したセンサーやソフトウエアなどを搭載した車両を活用し、2019年4月に自動運転電動車椅子では国内初となる公道実証実験を実施している。

【参考】WHILLについては「自動運転電動車イスの有人走行、WHILLやJALが羽田空港で実証」も参照。つくば市での取り組みについては「茨城県つくば市、全国初の電動車いすの自動運転公道実証」も参照。

■トピックス4:自動運転タクシー、ウェイモに続き海外で続々?
出典:バイドゥプレスリリース

米グーグル系のWaymo(ウェイモ)が2018年12月に自動運転タクシーの商用サービスを開始してからまもなく1年が経過する。自動運転レベル4相当のサービスで、これまでは万が一に備えドライバーが同乗していたが、既に完全なドライバーレスでのサービスも一部で展開している。

他社の動きも活発化しており、特に中国では百度やスタートアップのPony.ai、AutoX、滴滴出行(Didi Chuxing)、Baiyun Taxiらが商用化に力を入れており、各地で実用実証などを進めている。

米国では、米ゼネラル・モーターズ傘下のGMクルーズが当初予定していた2019年のサービス開始を延期したが、2020年中にはスタートさせるのではないかと見る動きも多い。EV(電気自動車)大手のテスラによる「ロボタクシー」計画も2020年に動き出す可能性がある。日本国内では、自動運転ベンチャーのZMPらが実証実験を進めており、同社は2020年の実用化を目指している。

ウェイモを筆頭に成熟してきた自動運転タクシーサービス。国によっては法整備を待たなければならないが、自動運転ラボでは2020年に世界各地で正式なサービスが複数開始されるものとみている。

ZMPも、現行法で対応可能な空港の制限区域内での事業化を模索しており、新たな動きに引き続き注目していきたい。

■トピックス5:日本国内でレベル3搭載の新車が登場へ
出典:国土交通省

独アウディが量産車として世界初となる自動運転レベル3搭載の「Audi A8」を2017年10月に発売して2年が経過した。この間、法整備が間に合わず、実質レベル2相当の技術搭載が続いてきた。こうした状況が2020年には世界各地で解消されると自動運転ラボは考えている。

日本国内では、レベル3を盛り込んだ改正道路交通法が2019年5月に可決され、2020年中に施行される。こうした法改正の動きに迅速に反応したのがホンダだ。ホンダは2020年夏頃にレベル3を搭載した車両を販売する計画を2019年12月に明らかにしている。

お隣韓国でも2020年にはレベル3が解禁される。こうした動きの中、アウディのほか米ゼネラル・モーターズなど意欲的なメーカーがレベル3搭載車種を発売する可能性が高い。米電気自動車大手のテスラも要注目だ。

ちなみに道路交通関係の国際条約では、2016年にウィーン条約が改正され、車両システム(自動運転システム)が、運転者によるオーバーライド又はスイッチオフが可能であるときは適合するものとみなされ、事実上レベル3を容認する内容となっている。

一方、日本が批准するジュネーヴ条約は改正が遅れており、2015年に国連下の道路交通安全作業部会(WP1)で改正案が採択されたものの否決され、いまだ改正されない状況が続いている。なお、WP1は2018年10月にウィーン条約とジュネーヴ条約を同等に置き、両条約につき自動運転を推進する勧告を発しており、これを根拠にジュネーヴ条約の改正を待たずに国内法の整備・改正が可能となっているようだ。

■トピックス6:道の駅で自動運転移動サービスが実現!?
出典:国土交通省

量産車へのレベル3搭載が気になるところだが、自動運転ラボでは地方において一足早くレベル4による移動サービスが実現すると予測している。

現在、国土交通省などが「中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス」の実証を全国各地で進めており、道の駅や病院、市役所などを結ぶ各ルートで自動運転車が人の移動や物流を担う公道実証をはじめ、ビジネスモデルの構築などに取り組んでいる。

全地域でサービスが開始されるにはいささかハードルが高いが、走行ルートや環境が良好で地域住民らの受容性が高い地域に限り、先行する形で実用実証が始まるものと思われる。地方の動向にも要注目だ。

【参考】道の駅における取り組みについては「いま道の駅が自動運転のサービス拠点として注目を集めている」も参照。

■トピックス7:自動運転トラック、後続無人隊列の実現なるか!?
ソフトバンクも5Gを活用した隊列走行の実証実験を実施している=出典;ソフトバンクプレスリリース

物流関連では、トラックの後続車無人隊列走行技術が確立されるものとみている。一部の高速道路に限られ、また商業化についても先の話になるだろうが、着実に実証実験が進められており、2019年度には新東名高速道路で2~3台の後続車無人システムの公道実証が行われている。

2020年に基本的な技術が確立され、翌年以降に順次走行距離や範囲が拡大されるとともに、先行して商用化される後続車有人隊列走行システムなどの検証などを交えながら無人隊列走行の商用化も始まるものと思われる。

■【まとめ】2020年が自動運転業界の転機に

2020年は自動運転業界においてさまざまな取り組みが具体化・実現していく大きな転機になるものと思われる。自動運転に対する認知度と理解度が飛躍的に高まり、井戸端会議や居酒屋における話題の一つに自動運転が取り上げられるようになるのは間違いない。

また、こうした関心の高まりは、開発者サイドの意欲を刺激するとともに今までアプロ―チしきれなかった新たな消費者目線や意見を取り入れることにもつながり、より良いサービスの実現に貢献する。

自動運転ラボもこういった機運の高まりに貢献できる専門媒体であり続けられるよう、引き続きさまざまな情報を提供し、2020年も業界とともに走り続けたい。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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