自動運転を研究する日本の大学まとめ 名古屋大学など8大学紹介

ベンチャー誕生や実証実験実施


高度な教育機関の代表格である大学。教育機関であると同時に研究機関としても重要な役割を担っており、特に自動運転やAI(人工知能)など新規性が問われる分野においては、既存のカリキュラムでは物足りず、専門の研究所や新学部の設置など研究体制を強化し、社会実証などを交えて生きた知識と経験を培うケースが多くなってきた。







そこで今回は、自動運転分野において研究熱心な国内の大学を8つピックアップし、取り組み内容などを紹介していこうと思う。

■名古屋大学(愛知県名古屋市/松尾清一総長)

名古屋大学COIビジョンにおいて「高齢者が元気になるモビリティ社会の確立」を掲げ、運転が苦手な人も運転できない人も楽しく移動できるモビリティの研究開発などを進めている。2017年11月には、低速度・地域限定のドライバーレスによる移動サービスを提供する自動運転技術「ゆっくり自動運転」の実証実験を行い、自律走行デモや障害物検知・衝突回避デモを公開した。

名古屋大学発のベンチャーも大活躍しており、2015年に設立された株式会社ティアフォーはAI(人工知能)やVR(仮想現実)の技術を駆使し、自動運転に活用される基本ソフト(OS)「Autoware」の開発に注力している。

また、物流配送最適化の分野で世界トップクラスの研究実績を有する株式会社オプティマインドは、AIの機械学習を用いて配送のための地図を作成し、アルゴリズムと地図データに基づき効率的な配送ルートを提案するクラウドサービスなどを手がけており、2018年9月に京都市で開催された「ICCサミットKYOTO2018」では、スタートアップの事業モデルコンテスト「スタートアップ・カタパルト」で優勝も果たしている。

■埼玉工業大学(埼玉県深谷市/内山俊一学長)

私立大学として唯一「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)『自動走行システム』大規模実証実験」に参加している埼玉工業大学。2016年に「ものづくり研究センター」を新設して次世代自動車プロジェクトを立ち上げ、自動運転に関する研究開発を進めている。

2017年10月に東京のお台場周辺地域で公道実証実験を開始したほか、同年12月からは深谷市の協力により、大学周辺の公道において埼玉県内初となる自動車の自動運転に関する実証実験を行っており、エンジニアを目指す学生に貴重な経験の機会を創りだしている。

2018年6月には大学発のベンチャー「株式会社フィールドオート」を設立し、自動運転実証実験のサポートを中心に事業を展開している。自社で自動運転実験車を有し、独自に実証実験も行っている。

2019年4月には、工学部情報システム学科にAI専攻を新設し、日本ディープラーニング協会との連携のもと、AIの仕組みや開発手法を基礎から理解し、AIの活用方法を提案できるエンジニアを育成する体系的カリキュラムを整備する。AIによって新しいビジネスやアイデアを創出して活躍する人材の育成を図っていく構えだ。

■群馬大学(群馬県前橋市/平塚浩士学長)

群馬大学は、2016年10月に群馬県桐生市内で自動運転の公道実証実験を開始したことを皮切りに、同年12月に「次世代モビリティ社会実装研究センター」を設置。群馬を社会実証拠点とする完全自律型自動運転車の事業化に本格的に着手した。

2017年4月には株式会社NTTデータと「次世代モビリティ社会実装研究に関する協定書」を締結し、AI技術やビックデータ処理技術などの完全自動運転社会に求められる技術要素について共同研究を開始した。また、2018年3月には、株式会社ミツバとミツバグループ、桐生市とともに「桐生市における地域の移動課題の解決に向けたモビリティネットワーク構築のための社会実装研究」に協働して取り組んでいくことに合意。同年6月には株式会社ケイエムオーと共同開発した自動運転バスの完成を発表している。

同年8月には株式会社電通と「次世代モビリティ社会実装研究における産学連携協定書」を締結し、同年9月には株式会社NTTデータ、大和自動車交通株式会社とともに、東京都江東区豊洲の公道で複数の自動運転車両を用いたオンデマンド移動サービスの実証実験を行うなど、産学連携の動きを加速化している。

■東京工業大学(東京都目黒区/益一哉学長)

大学として自動運転分野における社会実証など表立った動きは見られないものの、自動運転をはじめ画像認識やニューラルネットワークなど関連する研究体制は高レベルで、卒業後に自動車分野で活躍する人材も豊富だ。

元東工大准教授でスバル・アイサイトで使用されているステレオカメラの発明者でもある実吉敬二氏が2016年5月に立ち上げた大学発のスタートアップ企業ITD lab株式会社は、高性能なステレオカメラの開発とライセンス販売を手がけており、2018年6月には総額4億8000万円の資金調達を実施して話題となった。

また、独自の画像技術を活用した技術コンサルティングやロボットの知的制御に関する技術コンサルティングを手掛けるSOINN(ソイン)株式会社は、ビッグデータを市販のパソコンで数分から数時間程度で処理可能という学習型の汎用AIの開発を進めており、多方面から注目を集めている。

■会津大学(福島県会津若松市/岡嶐一学長)

1993年に開学した比較的新しい大学で、専門分野にIT技術を据える。移動ロボットの人のジェスチャによる走行制御や、車載ビデオから先行車や対向車の動くものや建物などの静止物を含む距離動画の再構成など、自動運転や3次元地図作成に応用できる研究も行われているほか、ベンチャー創業活動や実務に近い製品開発などを擬似体験できるベンチャー体験工房を備えているのも特徴だ。

同大発ベンチャーの株式会社会津ラボは2018年7月、夏ごろをめどに福島県浪江町で自動運転車の実証実験を開始する計画を発表。これまでにブロックチェーン技術を活用した情報基盤の開発と3Dマップ作成の取り組みを進めており、福島トヨペット株式会社と業務提携し、作成した3Dマップを活用して公道を実際に自動運転車で走行する実験などを行う。

【参考】会津大学については「浪江町の3D地図化完了! 会津ラボが公道で自動運転実証へ」も参照。

■金沢大学(石川県金沢市/山崎光悦学長)

1998年から自動運転自動車の研究を進めているという金沢大学。2015年には世界に誇る研究拠点を目指し「新学術創生研究機構」を設立し、機構内に市街地走行が可能な自動運転知能の構築とその地域交通への活用施策検討を目的とした自動運転ユニットを設置している。

2015年2月に、石川県珠洲市との連携のもと国内の大学としては初となる自動運転自動車の市街地における公道走行実験を開始。当初のテストコースは6.6キロメートルだったが、さまざまな道路環境・交通状況に即した4コースを拡充し、延べ約60キロメートルで実証を積み重ねている。2018年にフェーズ2として社会実装を開始し、2020年にはフェーズ3として地域定着の推進を図ることとしている。

2018年5月に横浜市で開催された「人とくるまのテクノロジー展2018」では、企画展示として自律型自動運転自動車を出展し、公道実証実験で培った成果を披露している。

■慶応大学(東京都港区/長谷山彰塾長)

小田急グループの小田急電鉄株式会社と2017年12月に連携協力協定を結び、バスの自動運転技術などの先端技術の研究や、小田急グループが運営する学生レジデンスにおける地域活性化の取り組みを相互に協力して取り組むことに合意している。

2018年6月には、自動運転技術の実証実験第一弾として同大湘南藤沢キャンパスにおいて往復約500メートルのルートを設定して実験車両を走行させ、自動運転バスの走行環境の技術的確認や自動運転技術に対する理解の醸成、自動運転バスの走行に関するオペレーション上の課題の把握などについて調査した。

このほか、総合重工業メーカーの株式会社IHIと共同で自動運転車に対応する自走式立体駐車場の研究開発を始めることなども報じられている。

■明治大学(東京都千代田区/土屋恵一郎学長)

自動運転社会に向けた複合的な課題について、技術・社会・経済・地域に関する横断的な研究を通じて解決・改善策を探る学際的な研究組織として「明治大学自動運転社会総合研究所」を設立しており、自動運転社会に向け技術開発や法制度・経済制度の研究を通じて地域社会の持続的発展を企図していくこととしている。

2017年1月に自動走行の民事上の責任および社会的受容性に関する研究を目的とした模擬裁判を実施したほか、2018年9月には「ジレンマ状況における自動運転〜トロリー問題を契機として〜」と題した特別講義を行うなど、開発分野以外の取り組みにも力を入れているようだ。

■優秀な人材育成と産業強化のため積極的な社会進出を

このほかにも、東京大学や北海道大学、長崎大学など、自動運転に関わる研究・取り組みを行っている大学は数多くあるようだ。優秀なエンジニアの育成機関でもある大学が自動運転やAIの研究に熱を入れれば、将来その分野で活躍する人材も当然増加し、業界の盛り上がりに直結する成果となる。

米国のスタンフォード大学やケンブリッジ大学、ミシガン大学などに負けぬよう、日本の大学も積極的に社会に進出し、企業とタッグを組むなど表の舞台で活躍する機会が増えることに期待したい。







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