埼玉県のある大学で入学式を迎えた新入生とその保護者が、なんと自動運転バスで入学式会場へ向かったようだ。
このユニークな取り組みを行ったのは、自動運転技術の研究開発を積極的に行っている埼玉工業大学だ。2023年4月1日に行われた同大学の入学式において、大学と最寄り駅間の約1.6キロの公道を大型自動運転バスが特別運行した。
自動運転バスで入学式の送迎を行うのは、全国でも例のないことだという。
■埼玉工大の自動運転バスの特徴
埼玉工大は入学式での送迎のほか、自動運転スクールバスを2023年4月14日〜7月21日に運行することも発表。毎週月曜日と金曜日の週2日で、運賃は無料とされている。なお同様の取り組みは2022年9〜12月にも行っており、すでに多数の学生が自動運転を体験しているようだ。
使用するのは、大型バス「日野レインボー」に自動運転システム「Autoware」を後付けした自動運転の実証実験用車両だ。AI(人工知能)技術を積極的に採用しており、複数のLiDARやカメラの画像情報をディープラーニング(深層学習)により周囲環境として認識し、障害物を回避し、一般公道を法定速度で走行することができる。
この大型自動運転バスは、路線バスとして営業運行するために緑ナンバー(業務用)を取得済みだ。なおドライバーは乗車するが、ハンドルとアクセル、ブレーキはシステムによる自動制御で走行する。システムによる自動運転と、ドライバーによる手動運転を即時になめらかに切り替えることができることが、埼玉工大の自動運転バスの特徴だという。
■実証実験の実績が豊富な埼玉工大
埼玉工大は、自動運転技術の研究・開発の強化のため、私立大学初の自動運転専門の研究組織として「自動運転技術開発センター」を2019年4月に設立した。
同大学は、埼玉県先端産業創造プロジェクトのスマートモビリティ実証補助に2年連続で採択、2021年度埼玉県デジタル技術活用製品開発費補助にも採択されている。
特に自動運転バスの開発に力を入れており、2022年10〜11月に中部国際空港島で行われた実証実験や2023年1月に幕張新都心地域の公道で行われた実証実験、同年2月に愛・地球博記念公園で行われた実証実験など、多数の取り組みに参加している。同年4月には、測量技術を武器に自動運転分野で活躍するアイサンテクノロジーと、自動運転の研究開発で連携協定を締結したことを発表した。
改正道路交通法が4月1日に施行されたことにより、自動運転レベル4が解禁された。埼玉工大はレベル4への対応も視野に入れ、産学官連携で開発を進めていくとしている。同大学の研究開発の動向に注目だ。
【参考】関連記事としては「本命2者がタッグ!埼玉工大とアイサンテク、自動運転で連携」も参照。