埼玉工業大学と深谷観光バスは2021年11月17日までに、現在運行中の大型自動運転バス「渋沢栄一 論語の里 循環バス」において、約26キロという国内最長クラスの走行区間で自動運転化を実現したことを発表した。
■約26キロの長距離自動運転を達成した循環バス
「渋沢栄一 論語の里 循環バス」は、産学官の連携により2021年2月から運行を開始した。運行当初は約8キロの区間を自動運転し、徐々に走行区間を延長させてきた。
今回の大幅な延長により、運行当初の約3倍である26キロという長距離の走行区間となり、JR深谷駅近くの仲町バス発着所からほぼ全区間で自動運転走行を実現した。
運行車両は、日野レインボーをベースに自動運転機能を後付けで搭載した大型自動運転バス。自動運転OS(基本ソフト)は、名古屋大学発スタートアップのティアフォーが開発するAutowareを採用している。
この大型自動運転バスは土日と祝日に1日6便運行している。一般公道を法定速度で走行している。立っている乗客がいる場合や路上の歩行者・バスと十分に距離が保てない場合、渋滞などで大幅にダイヤに遅れた場合には、自動運転から手動運転に切り替えている。
■埼工大、2016年に自動運転へのアプローチ開始
埼玉工業大学は自動運転技術の実用化に向けて取り組みを2016年から進めている。開校40周年に合わせて立ち上げられた「ものづくり研究センター」において、次世代自動車のプロジェクトの1つとして「自動運転研究会」を設立した。
2017年10月に私立大学として唯一、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)による自動運転の実証実験に参加し、その後、SIP2期目にも連続で参加している。公道での5Gによるレベル4の実証実験の実施や、2018年7月には私立大学初の大学発自動運転ベンチャー「フィールドオート」を設立し、産学連携事業もスタートさせた。
2019年4月には学長直轄の研究組織「自動運転技術開発センター」を設立したほか、全国に先駆けAI(人工知能)専攻を新設し、自動運転技術の先進的な研究や開発の強化を目指している。
スマートモビリティの実証実験を支援する「埼玉県スマートモビリティ実証補助金」にも2年連続で採択されている。
■自動運転バスのロング走行、横展開にも期待
産学官連携で自動運転にアプローチする埼玉工業大学。今回26キロという国内最長クラスの長距離での自動運転バスの運行を実現したが、そのノウハウを横展開すれば、地方エリアにおけるバス運行の活性化にも大いに貢献しそうだ。
【参考】関連記事としては「【インタビュー】「自動運転実証実験の総合プロデューサー」に フィールドオート渡部社長 埼玉工業大学発ベンチャー、ティアフォーとも連携」も参照。