東大発「完全無人倉庫」ベンチャー、3億円調達 自動運転技術も駆使

米国と日本に拠点を持つRENATUS ROBOTICS



出典:RENATUS ROBOTICSプレスリリース

東京大学発で米国に本社を置く物流ロボティクスベンチャーRENATUS ROBOTICS(レナトスロボティクス)は、200万ドル(約3億円)の資金調達を実施したことを2023年5月28日までに発表した。同社は「完全無人倉庫」をテーマに取り組む企業だ。

出資したのは、EC物流BPO事業を展開するイー・ロジットとAkatsuki Venturesが運営するDawn Capitalで、これによりシードラウンドをファーストクローズした。


RENATUS ROBOTICSは、自動運転技術を活用したトラック運搬の自動化にも今後取り組むとしている。

■東大発の物流ロボティクスベンチャー

RENATUS ROBOTICSは、東大発のAI(人工知能)・ロボティクス・数理アルゴリズムベンチャーTRUST SMITHグループ発のカーブアウト法人(※カーブアウトとは、事業の切り出しのこと)で、2022年5月に米デラウェア州で設立された。TRUST SMITHグループで培った研究者・技術者採用のネットワークの活用により、多様な実績を持つ開発者を採用するとともに、米国籍のメンバーを創業チームに招致している。

同社は完全無人の倉庫を実現するための第1段階として、世界初の「ワンストップ梱包」により、イニシャル・ランニングコストを従来システムと比べ大幅に削減することが可能な自動倉庫システムの開発・提供を行っている。

なお米国法人と、その100%子会社となる日本法人・RENATUS ROBOTICS株式会社(本社:東京都文京区/代表取締役社長:大澤琢真)との2法人で事業を展開している。


ロボット関連製品の開発手掛けるスマートロボティクス社で7年間CTO(最高技術責任者)として、物流現場へ数百台以上のAMRや特殊ドローンなどのロボット導入経験を持つメンバーや、シリコンバレーでのエンジニアリング経験を持つメンバーなどにより構成されているようだ。

■自動倉庫システム「RENATUS」とは

RENATUS ROBOTICSが開発する自動倉庫システム「RENATUS」は、倉庫内に建てられた高さ5〜30メートルのラック内において、敷設されたレール上を専用シャトル「RENATUS SHUTTLE」が走行することでコンテナを効率的に作業者のもとへと運ぶ次世代のGTPだ。

GTPとは「Goods to person」のことで、物流倉庫や工場内で人間ではなくロボットに商品を運ばせる方式のことを指す物流用語だ。


RENATUSには3つの特長があるという。1つ目は世界初の「ワンストップ梱包」で、コンテナ単位で完全に順立てされた状態で荷物が輸送されるため、作業者がコンテナからピックした荷物をそのまま出荷用の段ボールに繰り返し入れていくだけで、ピッキング・集約・梱包の3工程を一度で行うことができる。

2つ目は「圧倒的なピッキング速度」だ。業界最速クラスのシャトル&リフトと、3次元ではなく各階層を2次元に水平移動する新方式のシャトルの採用により、1時間当たり500行以上のピッキングを実現している。これは人間の約20倍の作業量になるようだ。

3つ目は「究極の格納効率」で、独自の配車最適化アルゴリズムや新方式の通信環境によりラックの大規模化を可能としているという。さらにバッファ装置やベルトコンベアなどの設備を削減できるため、面積効率が大幅に向上し、コンテナ100万箱以上を1拠点に高密度保管することが可能となる。

なお実機によるデモンストレーションを2023年6~7月に順次開催する予定だという。

出典:RENATUS ROBOTICSプレスリリース
■「人が物流を意識しない世界」へ

RENATUS ROBOTICSは今回の資金調達により、グローバル関連担当者やソフトウェア・ハードウェアの開発者や研究者などの人材採用のほか、自動倉庫のロボット・棚などの大量製造に向けた部材調達を強化していく。

今回の資金調達はシードラウンドのファーストクローズと位置付けており、今後も同ラウンドで追加調達を進めていく予定だとしている。また、今回行ったエクイティファイナンス(企業が新株を発行し、事業のために資金を調達すること)と平行し、自動倉庫を裏付け資産としたトークンなどによる資金調達も検討しているようだ。

RENATUSのグローバル展開に加え、ピッキング・集約・梱包作業の効率化と、アームロボットによるピッキング自動化や自動運転技術を活用したトラック運搬の自動化、ドローン配送の技術を実装し、「完全自動倉庫」の実現を推進していくという。

将来的には、RENATUSの多拠点展開により、グローバルな物流ネットワークの構築を加速させ、モノの移動が人々の無意識下で行われる「人が物流を意識しない世界」をつくることを目標にしているという。同社の今後に要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転、Microsoftが認めた「東大発AIベンチャー」の正体」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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