自動運転、主要企業の「子会社」まとめ(2023年最新版)

各社の自動運転開発やサービス化を担う



出典:Waymo公式サイト

自動車メーカーやテクノロジー企業、スタートアップらが参集する自動運転分野。従来の事業領域の枠を超えた最先端技術の開発や次世代サービスに向け、スタートアップの買収や開発部門を分社化する動きなども活発だ。

この記事では、主要自動車メーカーやテクノロジー企業らが抱える自動運転関連の「子会社」にスポットを当て、各社の取り組みを紹介していく。


■ウーブン・バイ・トヨタ:先進技術を研究するトヨタの国内拠点

自動運転開発を手掛けるトヨタの子会社としては、米国を拠点とするTRI(トヨタ・リサーチ・インスティチュート)が有名だが、国内ではウーブン・バイ・トヨタが開発力を強化している。

ウーブン・バイ・トヨタは、国内開発拠点のTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)を前身とする組織だ。TRI-ADは、自動運転技術をはじめとした先端技術やソフトウェア開発に向け2018年に設立された。

その後、2021年に持株会社ウーブン・プラネット・ホールディングスと、事業会社ウーブン・コア、ウーブン・アルファの新体制に移行し、2023年にウーブン・プラネット・ホールディングスの社名をウーブン・バイ・トヨタへと変更し、現在に至る。

これまでに、自動運転向け自動地図生成プラットフォーム「AMP」や次世代車載OS「Arene」などの開発を発表しているほか、ガーディアンやショーファーといった同社のチームメイトコンセプトに基づく自動運転技術の開発なども進めている。


静岡県裾野市で建設中のWoven Cityも所管しており、今後の先進的な実証にも要注目だ。

【参考】ウーブン・バイ・トヨタについては「自動運転部門のWoven、ついに社名を「トヨタ」へ!」も参照。

ホンダモビリティソリューションズ:GM・Cruise勢との協業に注目

ホンダの研究開発は、歴史の長い本田技術研究所を主力に、従来の事業領域の枠を超えた革新技術の研究を行うホンダ・リサーチ・インスティチュートなどが担っている。

一方、自動運転やMaaS時代を見据え、モビリティサービスに焦点を当てた事業の企画立案や運営を担うホンダモビリティソリューションズも2020年に設立している。

注目は、米GM・Cruise勢とのパートナーシップだ。ホンダとGM勢は自動運転開発で協業を進めており、2021年には自動運転モビリティサービス事業の日本国内展開に向けた取り組みにも着手した。

自家用車ベースの「クルーズAV」はすでに栃木県内の公道で実証を開始しているほか、オリジナルの自動運転サービス専用車「オリジン」の日本向け試作車も完成し、米国内で走行テストを開始しているという。

オリジンをめぐっては、東京都心部で2020年代半ばのサービスインを目指し、タクシー事業者の帝都自動車交通と国際自動車と事業化に向けた検討を開始している。

【参考】ホンダモビリティソリューションズについては「「車の作り手」ホンダが、自動運転サービスなど前提の新会社設立」も参照。

■BOLDLY:自動運転車の効果的な運行を実現

ソフトバンクグループも、自動運転子会社を有している。BOLDLY(旧SBドライブ)だ。自動運転システムそのものの開発ではなく、社会実装を見越した運用面に特化した事業戦略で活躍の場を広げている。

他社が開発した自動運転車両を導入し、自社開発した自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher」を統合して効果的かつ効率的な運行を実現する事業形態で、国内各地で実施されている実証に数多く参加している。その数は2023年2月時点で136回に上り、総乗車人数も累計9万人を超えたようだ。

主力モデルは仏Navyaの自動運転バス「ARMA」で、茨城県境町や北海道上士幌町などでの定常運行にも使用している。2022年10月には、エストニアのAuve Techとパートナーシップを結び、同社が開発したレベル4車両「MiCa」の日本仕様車を導入する計画も発表している。

改正道路交通法に盛り込まれた「特定自動運行」認可に向けた取り組みも進めており、本格的なレベル4サービスの展開に期待が寄せられるところだ。

【参考】BOLDLYの取り組みについては「BOLDLY、エストニア製自動運転バス「MiCa」展開へ」も参照。

■Waymo:世界初の自動運転タクシーを商用化

自動運転開発の火付け役として知られる米グーグル。2009年ごろに開発プロジェクトを立ち上げ、開発と社会実装を本格化するため2016年に持株会社アルファベットの子会社として設立したのがWaymoだ。

Waymoは2018年、アリゾナ州フェニックスで世界初となる自動運転タクシーサービスを開始し、2019年末には一部乗客を対象にドライバーレスの無人サービスも開始している。2020年10月には無人サービスを一般向けに開放した。

2023年現在、フェニックスのサービスエリアは当初の2倍まで拡大されたほか、カリフォルニア州サンフランシスコでもサービスを行っている。近くロサンゼルスでもサービスインする計画だ。

自動運転タクシーのほか、Uber Technologies(Uber Eats)との協業によるデリバリーサービスや、自動運転トラックによる配送サービス「Waymo Via」などの事業化も着々と進めている。

他社も開発・実装面で追い付いてきたが、業界における第一人者として存在感をどのように発揮し続けていくのか、今後の動向に要注目だ。

▼Waymo公式サイト
https://waymo.com/

■Cruise:GMやホンダをバックボーンに世界展開も

2013年創業のスタートアップ・Cruiseは、2016年に米GMに買収され、同社の子会社となった。買収額は10億ドル(約1,100億円)超と報じられている。2018年にはホンダからも出資を受け、3社で無人ライドシェアサービスを世界展開する計画が発表されている。

当初予定より遅れたものの、2021年に米カリフォルニア州から無人自動運転タクシーのサービス許可を取得し、翌2022年2月にサンフランシスコでサービスインした。米国ではWaymoに次ぐ2社目の商用サービス化だ。

アリゾナ州フェニックスとテキサス州オースティンへサービスを拡大していく方針も発表しているほか、ドバイや日本へ自動運転サービス専用車「オリジン」を導入していく計画も公表している。

GMやホンダというバックボーンのもと、どのように世界戦略を進めていくか注目したいところだ。

▼Cruise公式サイト
https://www.getcruise.com/

【参考】Cruiseについては「GM Cruiseの自動運転戦略(2023年最新版)」も参照。

Mobileye:2つの自動運転システムを備えた「MobileyeDrive」に注目

イスラエル企業Mobileyeは、コンピュータビジョン技術を主力とするADAS(先進運転支援システム)開発企業として1999年に設立された。

単眼カメラによるADAS製品やシステムオンチップ(SoC)で業績を上げ、2010年代には徐々に自動運転開発にも注力し始めた。2017年に米インテルが発行済み株式の大半を取得し、子会社化した。その額は約153億ドル(約1兆7,500億円)に上る。

インテル傘下に収まった後も業績を上げ続け、自動運転開発においてもLiDAR主体の自動運転システムとカメラ主体の自動運転システムを共存・併用して冗長性を高めた「MobileyeDrive」を開発するなど、進化を続けている。

世界各地のモビリティサービスプロバイダーなどとの連携のもと、日本をはじめとしたアジア圏やドバイ、欧州などで自動運転サービスを実現する計画を発表している。

日本・アジアでは、WILLERとのパートナーシップのもと、2023年にもサービス実用化を目指す方針を掲げている。

2022年1月には、中国の浙江吉利控股集団(Geely)との協業のもと、レベル4を搭載した車両をプレミアムEVブランド「Zeekr」から早ければ2024年にも中国内で発売する計画を発表している。世界初のコンシューマー向けレベル4となるか要注目だ。

▼Mobileye公式サイト
https://www.mobileye.com/

【参考】モービルアイについては「業界最大4兆円IPOへ!Intel傘下Mobileyeの自動運転事業を徹底解剖」も参照。

■CARIAD:フォルクスワーゲングループのソフトウェア開発子会社

フォルクスワーゲングループは、グループ内における統合ソフトウェアプラットフォーム開発を進める研究開発部門を2020年に分社化し、CARIAD(カリアド)を設立した。

自動車関連のソフトウェア内製化率を高める目的で、統合プラットフォームをはじめ自動運転技術やデジタルコックピット技術、UX関連など、幅広い研究開発を進めている。

自動運転関連では独サプライヤーのボッシュと手を組み、高速道路におけるハンズオフ(レベル2)やレベル3を中心に開発を進めている。高度な自動運転に向けては、最先端のソフトウェアプラットフォームを共同開発していく方針だ。

フォルクスワーゲングループは当初、米フォードとともにスタートアップの米Argo AIに出資し、アウディ傘下の自動運転開発部門を同社に統合するなど開発を促進していたが、2022年にArgo AIからの出資を引き上げている。

▼CARIAD公式サイト
https://cariad.technology/

■Latitude AI:フォードの自動運転戦略転換の象徴

フォルクスワーゲングループとともにArgo AIに出資し、自動運転開発を加速していた米フォード。しかし、思うような進捗を望めず、2022年に出資を引き上げハンズオフやアイズオフといった自家用車向けのレベル2~3技術に重点を置いた戦略へとシフトした。

2023年3月、子会社Latitude AIの設立を発表し、高度なADASとレベル3開発を本格化させている。Argo AIに在籍していたエンジニア約550人を雇用し、機械学習やセンサー、ロボティクス、クラウドプラットフォーム、マッピングといった専門知識を結集し、自動運転技術のポートフォリオを拡大し続けていく方針だ。

▼Latitude AI公式サイト
https://lat.ai/

【参考】Latitude AIについては「Fordが転換?「凄い自動運転」より「実需が高い支援技術」へ」も参照。

■Zoox:アマゾン子会社、2023年にサービス実証開始

EC大手アマゾンは、商品配送の無人化を目的にロボティクス技術や自動運転技術の開発を進めている。その一環として行われたのが、米スタートアップZooxの買収だ。

Zooxは2014年に創業し、翌年にはプロトタイプ車両を構築して公道実証を開始するなど、スピード感あふれる開発で注目を集めていた。

アマゾンに買収された2020年には、オリジナルの自動運転タクシーを公開した。前後の区別なく走行可能で、最高時速120キロを誇る高スペックモデルだ。カリフォルニア州の認可のもと、2023年にサービス実証に着手している。

配送用途ではなく人間の移動用途となっているが、アマゾンが今後どのような自動運転戦略を採っていくか、要注目だ。

▼Zoox公式サイト
https://zoox.com/

■Jidu Auto:2023年に「ROBO-01」予約開始

中国の自動運転開発をけん引する百度(Baidu)は2021年、Geelyとの合弁「Jidu Auto(集度汽車)」を設立した。両社による新たなEVブランドで、出資比率の55%を百度が拠出している。

百度のアポロプロジェクトによる自動運転技術を活用し、自動機能を備えた「ROBO-01」の予約販売を2023年に開始する方針を掲げている。中国政府の意向に左右されるため、当面はどこまでの機能が備わるかは不明だが、将来のレベル4を見据えたモデルとなっている。

▼Jidu Auto公式サイト
https://www.jidu.cn/

【参考】Jidu Autoについては「「中国のGoogle」が、自動運転EVを750万円で来年販売」も参照。

■【まとめ】存在感を高め株式上場するケースも?

すでにメジャーな存在となっている企業が多いが、スタートアップを買収し子会社化したケースや開発部門を独立させ子会社化したケースなどさまざまで、その業務も自動運転技術の開発からサービス開発まで多岐に渡るようだ。

統廃合の動きはまだまだ続きそうだが、自動運転社会の本格化とともにグループ内での存在感を高め、株式市場へ上場するケースも今後増加するものと思われる。

各社・各グループの子会社が今後どのような成長を遂げていくのか、その動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ一覧(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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