自動運転の現状を5軸で斬る!

車両の開発、法律や基準の整備、人材の育成…





自動運転レベル3、レベル4の開発と本格実用化が目前に迫っている。2020年代に突入し、自動運転時代がいよいよ幕を開けようとしているのだ。







実用化に向けた開発と実証が世界各地で繰り返され、新たなモビリティサービスの導入なども模索されているが、世界における自動運転の現状はどのようになっているのか。「車両の開発」「法律や基準の整備」「人材育成」「サービスの提供・開発」「覇権争い」の5軸から現在の情勢や今後の見通しなどに触れていこう。

■車両の開発
レベル3は2020~2021年に大きな動き

自動運転車の開発は、市販車ベースではADAS(先進運転支援システム)の自動運転レベル2実装車が増加し、一定条件下でハンズフリー運転を可能とする高度なレベル2搭載車両もフラッグシップモデルなどを中心に増加傾向にある。

ADAS技術は及第点に達している感があり、各社における開発の主軸も自動運転レベル3(条件付運転自動化)やレベル4(高度運転自動化)に移っているものと思われるが、市販車ベースにおける実需は今しばらくレベル2であるため、多くの車種へのレベル2システムの標準搭載化が進むほか、レベル3への技術的通過点としていっそうの精度向上が図られるものと思われる。

レベル3に関しては、各社相応の技術を開発済みであり、2020年中にホンダなど一部メーカーが先行して市販車への搭載を始める見込みだ。2021年までに独BMWなど多くのメーカーが正式発表・市販化に踏み切る公算が高い。

ただ、現時点では高速道路などの障害物や歩行者が介在しない道路で、比較的低速の運行にODD(運行設計領域)が限られているため、今後は、高速道路の入り口から出口まで、インターチェンジ間を原則自動化するレベル3技術の実用化や一般道路における実用化など、ODDの拡大に焦点が移っていくものと思われる。

【参考】自動運転レベル2については「【最新版】自動運転レベル2の要件や定義、機能を解説」も参照。自動運転レベル3については「【最新版】自動運転レベル3の定義や導入状況は?日本・世界の現状まとめ」も参照。

レベル4自動運転タクシーは実用化広がる

レベル4の開発はタクシーやバスなど移動サービスを主体に進められており、米ウェイモが2018年に自動運転タクシーの商用サービスを開始し、レベル3に先行する形で実用化がスタートしている。2019年にはセーフティドライバーなしでの運行を実現し、名実ともにレベル4を達成した。

米国では、GM系クルーズが量産を前提としたモデル「Origin(オリジン)」を2020年1月に発表し、ウェイモの対抗馬に名乗りを上げた。また、中国ではスタートアップのWeride、Pony.ai、AutoXをはじめ、百度(バイドゥ)、Didi Chuxing(滴滴出行)らが自動運転タクシーの実証を進めており、2020年中にも大きな動きを見せそうだ。

日本国内では、「2020年」にこだわりを見せるZMPがアクションを起こす可能性が高そうだ。空港限定の実用実証など、許可が下りやすいODDで事業に本格着手するかもしれず、動向に注視したい。

タクシー関連ではこのほか、日産とDeNAが開発を進める「Easy Ride(イージーライド)」が2020年代早期の実用化を目指している。また、ティアフォーとJapanTaxi、損害保険ジャパン日本興亜、KDDI、アイサンテクノロジーの5社が自動運転タクシーの事業化に向け協業を始めることを2019年11月に発表しており、2020年夏に実証を開始し、2022年以後の事業化を目指す構えだ。

【参考】自動運転レベル4については「自動運転レベル4、ゼロから分かる基礎知識&進捗まとめ」も参照。ティアフォーらの取り組みについては「トヨタ製「JPN TAXI」を自動運転化!ティアフォーやJapanTaxi、無人タクシー実証を実施へ」も参照。

国内でも自動運転バスが実用化へ

自動運転バス関連では、SBドライブやマクニカの協力のもと、茨城県境町が2020年4月ごろをめどに路線バスに自動運転バスを導入する予定で、実現すれば、定路線における国内初の実用化となる。車両は仏NAVYA製の「NAVYA ARMA」を使用する。

SBドライブは日本各地でNAVYA ARMAを活用した実証を重ねており、境町に続き試験導入に踏み切る自治体が出てくる可能性もありそうだ。

このほか、国土交通省などが主体となって進めている道の駅を拠点とした自動運転サービスの実証も転機を迎えている。目標では2020年度にサービスを開始することとしており、実用実証に着手する例が出てくる見込みだ。

道の駅の実証ではDeNA、先進モビリティ、ヤマハ発動機、アイサンテクノロジーの各車両が用いられている。各社とも道の駅以外の取り組みにも力を入れており、観光地などにおける実用実証事例も出てくるかもしれない。

【参考】境町の取り組みについては「国内初、定路線で自動運転バス!茨城県の境町、SBドライブと」も参照。

配送や警備など、自動運転技術の応用も

自動運転技術は「クルマ」の枠を超え、さまざまな用途への応用が進められている。代表的な例として配送ロボットや警備ロボットなどが挙げられ、海外ではすでに実用化域に達している。

車道を走行しないタイプは安全確保や許認可の観点から実用化しやすいため、自動運転技術としてはクルマよりも早く普及する可能性もありそうだ。

【参考】配送ロボットについては「ラストワンマイル向けの物流・配送ロボット10選」も参照。警備ロボットについては「自動運転の警備AIロボット11選!空港で街で当たり前の時代へ」も参照。

■法律や基準の整備
国際条約は国連作業部会の勧告でクリア

国内においては、道路交通法と道路運送車両法の改正案が2019年に可決し、2020年4月に施行される。自動運転システム(自動運行装置)が定義され、レベル3の運転時における義務などが明記されたことで、事実上レベル3の自動運転が国内で可能となる。

海外では、ドイツが2017年にいち早く道路交通法を改正し、レベル3に対応したほか、各国で2020年中の改正を目指す動きが出ているようだ。

米国では、道路交通関係は基本的に州法での取り扱いとなり、州ごとに対応が分かれているが、自動運転における基準の足並みがそろっていないと交通上のリスク発生や開発効率の低下、ドライバーの利便性低下など社会損失が大きくなるため、連邦政府が一定の指針を示すため法案作りを進めている。

国際法関連では、道路交通に関する条約であるウィーン条約(ウィーン道路交通条約)とジュネーブ条約(ジュネーブ道路交通条約)の存在が大きく、批准国は原則として条約に従わなければならない。

両条約ともドライバーの存在を前提としており、自動運転の可否が問われていたため、ウィーン条約はいち早く車両の運転方法に影響を及ぼす車両システム=自動運転システムの存在を条文に取り入れる改正を行い、2016年に発効している。

一方、日本が批准するジュネーブ条約も同様の改正を模索したものの加盟国の賛同を得られず否決され、改正に至ってないのが現状だ。

両条約を批准する国も多く、こうした差異を危惧した国連作業部会(WP1)は2018年、足並みをそろえるため両条約において自動運転を推進する勧告を打ち出した。この勧告により、ジュネーブ条約批准国も改正を待たずに国内法を改正することが可能になり、日本も道交法改正を行うことができたのだ。

【参考】法律の動きについては「自動運転、幕開け期の2020年代に向けた法律改正の動きを解説」も参照。

レベル3対応の国際基準もまもなく策定

道路交通法・条約関係とは別に、自動運転の実現において重要となるのが自動運転システムにおける国際基準の策定だ。データ記録装置をはじめ、自動運転に求められる機能に関する一定基準がなければ、各国の足並みがそろわず、メーカーの開発効率も大きく低下してしまう。このため、自動運転に求められる要件をガイドライン化し、明確にする必要があるのだ。

レベル3における開発メーカーの腰が重たく感じるのは、この国際基準の策定を待っている節が強く、基準発表後に各メーカーの動きが活発化する可能性が高い。独アウディのA8も、この基準が未完のためレベル3を封印しているのだ。

国際基準を巡っては、2019年6月に国連WP29(自動車基準調和世界フォーラム)において日本が米国・欧州などと主導して作成した自動運転のフレームワークドキュメントが合意され、新たに設置された会議体でレベル3に求められる要件の検討が進められている。

フレームワークドキュメントでは、「許容不可能なリスクがないこと」を目標に据えている。自動運転車の走行環境条件において、自動運転システムが引き起こす人身事故で、合理的に予見される防止可能な事故が生じないことを前提に要件を検討することとしている。

具体的には、①自動運転システムの安全性②フェールセーフ対応③HMI、ドライバーモニタリング④対象物・事象検知⑤走行環境条件⑥自動運転システムの安全性能確認方法⑦サイバーセキュリティ⑧ソフトウェアアップデート⑨イベントデータレコーダー(EDR)とデータ記録装置――の9項目についてとりまとめ、2020年3月までにレベル3に対応した基準案を策定することとしている。

WP29において基準案が正式に認められれば、いよいよレベル3戦線が本格化することになると思われる。WP29の動向は要チェックポイントだ。

【参考】国際基準については「高速道路における車線維持走行、2020年3月までに国際基準案」も参照。

■人材の育成

AI(人工知能)やIoTといった技術がさまざまなモノやサービスに浸透し始め、著しい進化を遂げているが、この時代の変化に人材が追い付いていないのが現状だ。最新技術の宝庫とも言える自動運転分野もその傾向は顕著で、増加する一方の求人数に対し求職者数が足りていない売り手市場に拍車がかかっている状況だ。

自動運転ラボが取りまとめた主要6転職サイトにおける2019年12月末時点の自動運転関連求人数は、前年同月末比71.6%増の1万8295件と大幅な伸びを見せる一方、AI開発などを担う技術者の母数そのものがまだまだ少ないのだ。

【参考】自動運転ラボの求人調査については「自動運転関連求人が超急増!2019年は71.6%増の18,295件に」も参照。

人材育成を巡っては国も本腰を上げている。未来投資戦略2018の中でAIを活用できる人材育成に力を入れる方針を示しており、自動運転の開発の核となるAIを含むソフトウェア人材確保に向け、2018年度から自動運転に係る自動車ソフトウェアに関するスキル標準の策定を進めるなど、さまざまな取り組みに着手している。

スキル標準は、ソフトウェア開発に求められるスキルを体系整理することで、他業界のIT人材の獲得や社内での人材育成や活用、外部との協業に活用するため策定している。スキル標準に準拠した民間や大学の講座の実施なども進めているようだ。

また、経済産業省は自動車技術会などの協力のもと、競技形式で自動運転の開発技術を競う「自動運転AIチャレンジ」を開催している。

【参考】自動運転AIチャレンジについては「第2回自動運転AIチャレンジ、制御部門予選の参加者募集スタート」も参照。

民間では、AIを学ぶことができるオンライン学習サービスがシェアを伸ばしているようだ。国内では、東大発のスタートアップ・アイデミーが自動運転ソフトウェアの開発やディープラーニング技術の実装スキルを学ぶことができる「自動運転AIプログラミング研修」プログラムを提供している。

海外では、Google Xの創設者が立ち上げたUdacityが有名で、「Artificial Intelligence(人工知能)」や「Deep Learning(深層学習)」、「Flying Car and Autonomous Flight Engineer(空飛ぶクルマと自動飛行エンジニア)」など、自動運転関連のメニューも豊富だ。

一方、大学ではAIを学ぶ学科の新設や産学連携の動きが大きくなってきているようだ。自動運転の研究に力を入れる埼玉工業大学は2019年度から、工学部情報システム学科にAI専攻を新設している。立教大学も、2020年4月からAIに特化した大学院修士課程を開設するようだ。

産学連携では、埼玉工業大をはじめ名古屋大学などが民間と連携した研究開発を進めており、机上の研究に留まらない実用性に溢れた知識の習得などに力を入れている。

【参考】自動運転研究に力を入れる大学については「自動運転研究に力を入れている世界の20大学まとめ」も参照。

■サービスの提供・開発
MaaSの到来

レベル3が主に自家用車向けに開発される一方、レベル4は主にサービス向けに開発が進められており、タクシーやバスをはじめ、どのような形で次世代モビリティを形成していくかが業界共通の課題となっている。

その代表的な取り組みがMaaS(Mobility as a Service)で、自動車業界に留まらず、異業種や自治体を巻き込みながら世界で一大ムーブメントと言えるほどの動きを見せている。

国内でも新モビリティサービス推進事業として各地で実証が進められているほか、JR東日本や小田急電鉄、トヨタなどがそれぞれコンソーシアムを形成し、独自開発したアプリの実用化を進めている。

今後、アプリ上で予約や決済機能を統一したサービスが生まれ、利便性の向上とともに需要も増し、さらなるサービスの拡大を図っていく流れが想定される。自動運転を活用した新たなモビリティも一つの移動サービスとして組み込まれそうだ。

【参考】MaaSについては「【最新版】MaaSとは?基礎知識まとめと完成像を解説」も参照。

シェアサービスも右肩上がりの成長

また、国内ではカーシェア、海外ではライドシェアをはじめとした各種シェアサービスが右肩上がりの成長を遂げており、所有から利用へと移り変わっていくクルマの概念を象徴している。

ライドシェアで認知度を高めた配車アプリは、国内ではタクシー業界で利用者数を急速に伸ばしており、JapanTaxiやみんなのタクシー、Uber、DiDiなどがシェア拡大に躍起となっている。

また、「Uber Eats」に代表される飲食デリバリーなど、アプリとモビリティを活用した各種サービスも試行錯誤を続けながら広がりを見せており、料理をはじめとした宅配はDiDi(DiDi Food)やヤフー(PayPayダッシュ)も参入する見込みだ。

主に自転車などを活用している点で従来の宅配業者とは異なるものの、サービスを拡大し続ければそのうち宅配業と競合する可能性もありそうだ。

■覇権争い

自動運転の開発は従来の自動車メーカーの枠に収まらず、IT・テクノロジー系企業が台頭するなど、業界の構図が大きく塗り替えられようとしている。

自動運転車の開発・製造には、ハードとしての自動車の製造をはじめ、最新のセンサーやAI技術、通信技術など、単独の一社では開発しきれない技術が必要とされる。各社が開発パートナーを求めた結果、次第にグループ化が進み、覇権を争うかのような構図が描かれ始めた。

自動車メーカーベースで見ていくと、米GMはホンダと、米フォードは独フォルクスワーゲンと、独BMWは独ダイムラーとそれぞれ提携し、自動運転開発を進めている。一昔前では考えられなかったグループ化だ。

また、IT系をベースに見ていくと、グーグル系のウェイモがFCAやルノー日産アライアンスと手を組み、ソフトバンクはトヨタやGMと手を組んでいる。米エヌビディアなどの半導体系は、上手に各社と渡り合っているイメージだ。

各社が複雑に絡み合っているため現時点で明確にグループ化することはできないが、ライバル関係にあり、協調路線よりも敵対関係を選ぶような企業が各グループの主力となれば、次第に勢力図がはっきりとしてくる可能性もある。

一社では生き残れない時代が目の前まで迫っているのが、まさに「今」なのだ。

■【まとめ】激動の2020年、モビリティ業界が変革期を迎える

自動運転の開発もサービス化も、今まさに過渡期を迎えているようだ。法整備や国際基準が整い、レベル3の実用化が始まるとともに、レベル4サービスも各地での実用実証が本格化する。自動運転の実用化が本格化すると同時に覇権争いにも火が付く。そしてMaaS構築に向けた動きも加速していく。これが今世界で起きている、あるいはまもなく起ころうとしているのだ。

大きな変革期を迎えたモビリティ業界において、節目となる2020年が激動の年になることは間違いないだろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
登壇情報









関連記事