実証実験用の自動運転車の構築からビジネス設計支援まで!(特集:マクニカのスマートモビリティへの挑戦 第3回)

モビリティソリューション事業部の福田泰之氏に聞く



自動運転向けのAI(人工知能)や要素技術の検証、走行データの収集、さらには自動運転車を活用した移動サービスの検証などを進めるにあたっては、当然のことだが「自動運転車」そのものが必要になる。

ただ実証実験を実施する際には、検証したい技術や収集したい走行データ、展開予定の移動サービスの内容に合わせ、車両をカスタマイズする必要があり、いわゆるパッケージ化された自動運転車では検証ニーズを受け止めきれないケースが多い。

そんな中で最近注目を集めているのが、自動運転分野に力を入れている技術商社のマクニカだ。ニーズに合った車両の構築やセンサー構成に関するコンサルティングを展開しており、マクニカに任せればオーダーメイドの自動運転車を完成させることができる。

今回は、マクニカのイノベーション戦略事業本部モビリティソリューション事業部の福田泰之氏(スマートモビリティ事業推進部長)に、マクニカの自動運転実証実験用車両のカスタマイズサービスについて話を聞いた。

記事の目次

■将来的な社会実装を踏まえたカスタマイズを提案
Q 自動運転の実証実験のために車両を各社が自前で準備するのは、多くの工数と費用が発生します。そんな中で御社が展開している「実証実験車両構築サービス」へのニーズが高まっていると聞きました。このサービスについて詳しく教えて下さい。

弊社の「実証実験車両構築サービス」では、お客様の目的に応じた実証車両をインテグレーションして提供しているほか、車両本体以外の運行管理システムや周辺システムの提案、乗客がいる実証実験であればアプリや車内での操作パネルなどのインターフェースの提案なども行っております。この中で車両に関して言えば、実証実験で使う車両を提供することが「ゴール」ではありません。将来的な実装を踏まえて車両のカスタマイズ内容を協議します。

例えば、車両にお金を掛けすぎると将来的な社会実装がコスト面で難しくなることもあります。一般的な実証実験では既にパッケージ化された車両を使うことも多いですが、弊社ではお客様のニーズを踏まえた上で低コストに車両が仕上がるよう、ベースとなる車両選びやセンサー選定などをワンストップで提案しています。特に自動運転車ではセンサー部分が高額になりがちですが、安心・安全の担保を前提とした上で安いセンサー構成にできれば、将来的に社会実装できる確率もぐっと高まります。

検証ニーズとの適合性や価格面を考慮した上で、国内外のさまざまな技術・製品の中から最適解を見極めて提案することで、お客様の取り組みを社会実装までを見据えてサポートしています。

■ユーザーフレンドリーな「UI/UX」も重視
Q 国内外のさまざまな技術・製品の中から最適解を提案できることは、まさに「ソーシング」を強みの1つとする御社ならではですね。コスト面に対する配慮のほか、ハードウェアやソフトウェアの選別ではどのような点を重視していますか?

弊社は、実証実験を実施する場所や環境、乗員の特性などを踏まえたカスタマイズを提案しているほか、ソフトウェアや遠隔監視システムでは「使いやすさ」も重視して選定を行っております。データの収集・分析や運用の際に使いにくさが障壁となることを防ぐためです。

ユーザーを意識したUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザー体験)にも重きを置いています。例えば自動運転バス、とりわけオンデマンド型の交通サービスを展開するケースを考えてみると、都心部と中山間地域では想定利用層が異なり、それぞれの層に合わせた配車システムが求められます。

Q 例えば中山間地域ではどのようなUI/UXが適しているのでしょうか?

中山間地域で自動運転バスを展開する場合は高齢者の利用が多く見込まれるため、パソコンやスマートフォンを使った配車システムはあまりユーザーフレンドリーとは言えません。高齢者の利用を想定した場合、市役所などの公共施設や自宅に設置した機械のボタンを押すだけで配車を依頼できるシステムの方が、歓迎される可能性が高いでしょう。

音声で配車を依頼できるシステムも有望視されており、弊社も現在こうした仕組みの構築に取り組んでいます。このように、車両のインテグレーションだけではなく、ユーザーの活用シーンを見据えた提案を顧客企業や自治体に対して行っています。

■ビジネス構築も含めた提案がマクニカの新たなモデル
Q 自動運転の実証実験は国の後押しもあり、新型コロナウイルスの影響がある中でも積極的に実施されています。そんな中、顧客側から最近多い要望はどのようなものですか?

データが欲しいと言うニーズは増加してきていると感じております。単純に自動運転車両を活用して人を運ぶだけではなく、CBM(Condition Based Maintenance)向けのデータ(道路標示状態や、標識を隠してしまう恐れのある草木の状態に関する地物管理目的のデータ)や車室内向けでは新たな価値を創出したり危険を予測する為の行動分析データといったものがあげられます。

こうしたニーズから感じることは、多くの企業が必要としているデータを収集して販売する「データビジネス」の有望性です。弊社ではこうしたビジネスモデルの展開を含めた提案を顧客に対して行っています。

自動車を自動で走行させたりカスタマイズしたりするだけではなく、収益性を高めるためのビジネスデザインの提案、そして運用までを支援するのが、マクニカの技術商社としての新たなビジネスモデルです。

Q 収益性の実現抜きに自動運転ビジネスの成功はありませんので、まさに顧客に寄り添った姿勢だと感じます。そのほかには顧客からどのような要望を受けることが多いですか?

ほかには、たとえば交通事業者様の場合は「すでに購入して保有する車両を使いたい」といった要望を受けることもあり、こうした際にはその車両を最大限活用したカスタマイズを柔軟に提案させていただいております。

自動運転車両を導入しようというときに、保有している車両資産を活用せずに新しく自動運転車両を購入するという話はあまり現実的とは言えません。そのため、特に実用化に向けた最初の段階では、既存の車両を自動運転型へカスタマイズするというニーズへの対応は、実はとても重要な事だと思っています。

さらに、トンネル走行用の自動運転車を構築してほしいという要望を受けることもあります。トンネル内はGPS(全地球測位システム)の電波が届きにくく、通常のLiDARですと風景が変わらないことから自己位置推定が難しいのですが、こうした特殊環境下に適したセンサー構成やソフトウェアソリューションを今まさに検討しているところです。

Q また、実証実験の実施においては国や自治体との調整も必要になり、そうした点で苦労している民間企業も少なくないですが、実施に向けた調整に関するサポートも可能でしょうか。

実証実験の実施に向け、警察や国土交通省、自治体などとの調整や折衝も可能です。また、実証実験の実施に向けては道路交通法や道路運送車両法の遵守はもちろん、実証実験の実施に関するガイドラインについての知識も必要不可欠で、こうした観点からもお客様の実証実験や社会実装をサポートしています。

■マクニカ独自の「macnicar」が顧客のニーズを具体化
Q 少し話は戻りますが、車両のインテグレーションの前には顧客のニーズを整理することが求められます。そこで、御社がパッケージ化して展開している「macnicar(マクニカー)」が役立っていると聞きました。macnicarの役割について教えて下さい。

弊社では2年ほど前、レクサスの車両をベースに使ったSUV(多目的スポーツ車)タイプ「macnicar」を作りました。ティアフォー社が開発する自動運転OS(基本ソフト)「Autoware」を実装した上でセンサーを我々で取り付け、2019年6月からドライビングスクールで試乗会を月1回程度、実施しております。

今まで延べ200人以上に試乗を頂いており、試乗を通じてそれまでフワッとしていた顧客側のニーズが具体的な内容に変わり、多くのビジネスにつながっています。また、私たちが自ら先頭に立って事例を示すという意味でも、macnicarを今期中に公道で走行させる計画も進行中です。

macnicar=出典:マクニカ
Q そんなmacnicarに試乗してみたいという意外な業界はありますか?

普段は車両部品メーカー様(Tier1)、OEM様といった業界からお声掛けいただくことが多いですが、テーマパークや空港を含む商業施設のほか、プラント・工場、電機メーカーなどの業界からも試乗を希望する問い合わせを頂いております。

電機メーカー様などは、自社の広い事業所内で自分たち用に使いたいというニーズや、モビリティ事業に新規参入するために勉強したいというニーズを持たれていることが多いです。大学の担当者なども、大学構内などで自ら自動運転車を利用する観点で見に来られます。

Q ちなみにパッケージ化された自動運転車両と言えば、仏Navya製の自動運転シャトル「Navya Arma」も有名です。御社はNavyaの国内総代理店でもありますが、Navyaをベースにしたカスタマイズなども顧客に提案していますか?

走行ハードルも高くない比較的標準的な環境でエリアにおいて、お客様が巡回バスやオンデマンドバスといった用途でスピーディーにサービス実証を実施することを希望されている場合、車両そのものがパッケージ化されたNavya Armaを有効に活用しやすく、そうしたユースケースやプロジェクトに対して積極的にNavya Armaを提案しています。

またNavya Armaはハンドルやブレーキがない「未来型車両」であり、敷地内での低速移動用途であればテーマパークや商業施設などでも喜んでご活用いただけるかと思います。

ただ海外製ということもあり、日本国内でのアフターメンテナンス網が整っている訳ではありませんので、本格的な実用化に向けて検討いただくプロジェクトの場合は、マクニカのネットワークを活用して車両の保守運用網の整備もサポートさせて頂くなどしています。そういったアフターサポート体制を構築できる点も、私たちマクニカが携わらせて頂くバリューの一つかと思っています。

■2021年はテーマを「サービスの実証実験」へとシフト
Q 2020年は日本でも自動運転レベル3が解禁され、コロナ禍で「コンタクトレス」にも注目が集まったこともあり、自動運転に対する機運が高まりました。そんな2020年もそろそろ終わります。来年2021年の御社の抱負についてお聞かせ下さい。

奈良・平城宮での自動運転の実証実験への参加を皮切りに、羽田イノベーションシティや浜松、広島、奈良などで実施される実証にも参画し、現在はほぼ毎月ペースで実証実験に取り組んでいます。

こうした実証実験への参画の際には、弊社は常に「サービス」を意識しています。車両を自動で動かす、無人で運行させるというだけではなく、「サービス」として成立させることに寄与するカスタマイズを提案していきます。

つまり2021年は、「運行の実証実験」から「サービスの実証実験」へとテーマをシフトしていきたいと考えています。

■【インタビューを終えて】社会実装を見据えた「プラスα」の支援

自動運転車を活用したサービスやビジネスのアイデアは、今後ますます多様化していく。こうしたアイデアを実現するためには実証実験は不可欠であり、実証実験をより意味のあるものにするためには、検証ニーズに合った車両が必ず必要になる。

こうした際に、マクニカの車両インテグレーションやカスタマイズに関するサービスが役立つのはもちろんだが、マクニカはさらに社会実装を見据えたプラスαの支援もしてくれる。コスト面ではどうか、UI/UXはどうか・・・。こうしたプラスαの支援が顧客を成功に導くのだ。

実証実験にも精力的に取り組むマクニカの今後の展開に注目していきたい。

>>特集目次

>>第1回:自動運転の「頼りになる相談役」!開発から実装まで

>>第2回:自動運転を実現するためのプロセスとキーテクノロジーは?

>>第3回:実証実験用の自動運転車の構築からビジネス設計支援まで!

>>第4回:自動運転、センサー選定のポイントは?

>>第5回:自動運転、認識技術とSLAMを用いた自己位置推定方法とは?

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