自動運転の安全確保のための技術とは?(特集:マクニカのスマートモビリティへの挑戦 第6回)

事故を極限まで少なくするために



実用化に向けた取り組みが加速する自動運転。ドライバー不在による無人運転で道路上を安全に走行する最新技術だ。自動運転のキーワードは「無人化」と「安全性」に集約できそうだ。

従来人間が担っていた運転操作や安全確認をシステムが代替することで、交通事故の9割を占めると言われるヒューマンエラーをなくし、道路交通の安全性を高めることが可能になる。

安全第一の自動運転車だが、決して事故がなくなるわけではない。また、複雑化したコンピューター機器特有の故障なども想定される。

今回は「安全設計」を軸に、自動運転の安全確保に向けた技術について解説していく。

■自動運転を導入しても事故はゼロにはならない?

死角がなくなるよう車両の周囲360度をくまなくセンシングし、制限速度をはじめとした道路交通ルールを順守して走行する自動運転車。ドライバー不足を補う効果や交通弱者対策、交通事故の減少など、さまざまな社会課題の解決に高い期待が寄せられている。

一方、視点を変えると、安全な存在であるべき自動運転車においても、事故をはじめとしたトラブルがゼロになるわけではない。もらい事故もあれば偶発的な要素が重なったことに起因する事故、センシング機器や各種コンピュータ機器の故障など、すべてを100%防ぐことは事実上不可能だ。

手動運転車と比較すれば十分安全な存在とは言え、99%と100%の間には乗り越えられない大きな壁があるのだ。

もちろん、99%を99.9%に高めていく安全対策は必要だ。自動運転システムの高度化はもちろん、機器やシステムに障害が発生した際に安全に制御するフェールセーフを踏まえた設計を心がけ、各機器やシステムが誤作動などの障害を起こしにくい環境を構築することが絶対条件となる。

また、障害発生時においてもシステム全体が機能するよう、予備装置となるサブシステムを搭載して冗長性を持たせることなども考えられる。自動運転においては、障害が発生した際に車両を安全な位置まで走行して停止させるフェールオペレーション(ミニマム・リスク・マヌーバー)の導入も欠かせないものとなるためだ。

このほか、運行管理面において、自動運転システムが走行可能な条件を表すODD(運行設計領域)の適切な設定をはじめ、ソフトウェアの適宜アップデート、使用者・利用者への自動運転システムに関する情報提供なども求められる。

■自動運転車に必須の安全設計技術

ハードウェアやソフトウェアにおいては、まずISO26262などの国際規格をしっかり満たした製品を扱うことが前提条件となる。ISO26262は自動車の電気・電子システムに関する機能安全規格で、IEC(国際電気標準会議)が制定した基本安全規格「IEC61508」をベースに車載電子システム向けに規格化されたものだ。

車載システムの構築においては、このISO26262の対象となる電子システムをはじめ、システムを構成する他の要素も含め総体として許容できないリスクをなくし、安全性を確保することが求められる。

従来の自動車製造においては、垂直統合型の業界構造の影響もあり、部品メーカー各社がこうした規格を順守し安全な製品づくりを進める体制が整っていた。トップダウンによる指揮系統が確立されているからだ。

しかし、自動運転車の開発・製造現場ではいささか様相が異なる。開発・製造を指示するトップは自動車メーカーに限らず、IT系や自動運転サービス提供者が主導するケースが増しているのだ。また、LiDAR(ライダー)などのセンサーや自動運転システム開発など従来の自動車業界外からの新規参入も増加し、水平分業型の産業構造が確立し始めているのが現状だ。

コンピュータ化が著しく、ハードウェアのみならずソフトウェアの面でもシステム構成が複雑化する中、総体として安全性を確保した設計を行うハードルは高まっている。新たに構成される巨大産業分野特有の課題とも言えそうだ。

■マクニカが安全設計の領域で強みを発揮

こうした安全設計の領域で強みを発揮するのがマクニカだ。同社は自動運転実証車両構築サービスなどを展開しており、ハードウェアにおいては、機能安全が確認されているシステムやコンポーネントを取り扱い、フェールセーフ・フェールオペレーションを実現する冗長化などに向けた設計をサポートする。

またソフトウェアにおいても、ミッションクリティカルに適したオペレーティングシステムの提供や機能安全の認証が取得されているソフトウェアや堅牢なアルゴリズムを提供している。

例えば、マクニカが取り扱っているカナダのBlackBerry社による「QNX」のソリューションは、高信頼性が要求される組み込み系システムに適したリアルタイムOSとなっており、ロボティクスや医療、航空宇宙システムなど幅広い分野で活用されている。自動車分野でも45を超えるブランドで採用されているという。

安全性が担保された高機能なハードウェア・ソフトウェアを要望に応じて適切に組み込むワンストップの自動運転実証車両構築サービスは、各マーケットのトッププレイヤーであるエコパートナーとの数々の協業のもと、メーカーに縛られることのない商社ならではの専門知識とサービスで成り立っている。

■【まとめ】安全設計技術が自動運転車の安全を根幹から支える

国土交通省が2018年に策定した「自動運転車の安全技術ガイドライン」では、運行設計領域(ODD)の設定や自動運転システムの安全性、保安基準の遵守等、サイバーセキュリティ、安全性評価など10項目が示されており、いずれも自動運転車が満たすべき安全要件・安全確保策として必要不可欠なものとなっている。

ただ、こうした要件も各システムや機器が不都合なく安全に設計されて初めて実現するものとなる。従来の自動車製造から続く安全設計の技術は、自動運転分野でもより高度に引き継がれているのだ。

>>特集目次

>>第1回:自動運転の「頼りになる相談役」!開発から実装まで

>>第2回:自動運転を実現するためのプロセスとキーテクノロジーは?

>>第3回:実証実験用の自動運転車の構築からビジネス設計支援まで!

>>第4回:自動運転、センサー選定のポイントは?

>>第5回:自動運転、認識技術とSLAMを用いた自己位置推定方法とは?

>>第6回:自動運転の安全確保のための技術とは?

>>第7回:自動運転×セキュリティ、万全な対策は?

>>第8回:自動運転車のデータ収集からマネタイズまで!

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