日本の自動運転ベンチャー・スタートアップ12社まとめ AIやシステムを研究開発、実証実験に取り組む

会社設立日順に一挙紹介



イスラエルのMobil Eye(モービルアイ)、米シリコンバレーのZoox(ズークス)、中国のRoadstar.ai(ロードスター・エーアイ)など、自動運転などの分野で数百億円規模以上の資金調達を行い、グローバル企業と対等に向き合うスタートアップが世界で次々と出現している。日本国内でもその勢いに負けず劣らず、ベンチャー企業やスタートアップ企業が続々と誕生し、頭角を現し始めている。







AI(人工知能)やセンサー開発、通信技術などさまざまな分野を必要とし、1社では完結し得ない自動運転業界は、新技術や新発想を備えたベンチャー企業の活躍の場でもある。より一層の発展を願い、日本の自動運転関連ベンチャー12社をピックアップし紹介する。

■2001年設立:株式会社ZMP(本社:東京都文京区/代表取締役社長:谷口恒)

自動運転分野では草分け的存在のベンチャー。人が運転するあらゆる機械の自動化を目指しており、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転開発用プラットフォーム、センサー・システムの開発、自動運転の開発支援、実験代行 、物流支援ロボットの開発や販売など幅広い事業を展開している。

自動運転開発プラットフォームのRoboCarシリーズはさまざまな企業や研究所で活用されているほか、長崎大学や横浜国立大学、埼玉工業大学、九州工業大学、名古屋大学、電気通信大学など大学での導入実績も豊富だ。

2018年8月からは、タクシー事業を手掛ける日の丸交通とともに自動運転車両を使ったタクシーサービスの公道営業実証実験を都心部で実施。注目を集めている。

■2008年設立:AZAPA株式会社(本社:愛知県名古屋市/代表取締役兼CEO:近藤康弘)

自動車のエンジン制御などの独自技術を有し、完成車メーカーなどにソリューションを提供しているベンチャー。国内自動車メーカーや産学連携のもと、自動車開発におけるオープンモデル(プラントモデル・制御モデルなど)の共有プラットフォーム化を推進している。

自動車に通信システムを組み合わせてリアルタイムで情報サービスを提供するテレマティクスなどの次世代通信モジュールや、超小型モビリティ・未来型モビリティの開発なども手掛けている。

2018年2月には、自動車分野へのブロックチェーン技術適応サービス構築を目指すカウラ株式会社と提携し、同技術の適応により自動車から発せられるデータの経済価値を高めるサービスの開発と実用化に取り組んでいる。

2018年4月にはパナソニックと業務資本提携したことを発表。協業関係を深化させ、車載事業の拡大を図っていく構えだ。

■2014年設立:先進モビリティ株式会社(本社:東京都目黒区/代表取締役社長:青木啓二)

トヨタ自動車で自動運転の研究に長年携わってきた技術者の青木社長が立ち上げた、自動運転技術の開発やシステム・アプリケーション開発を手掛けるベンチャー。東京大学生産技術研究所次世代モビリティ連携研究センターの技術を基礎に、大学で研究を継続して推進しながら事業化による社会貢献を目指している。

内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)や国土交通省、経済産業省が進める自動運転関連のプロジェクトに積極的に参加しており、自動運転技術の開発を推進しながら産官学連携のハブとしての役割を担っている。

■2015年設立:株式会社ティアフォー (本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:武田一哉)

名古屋大学オープンイノベーション拠点に本社を構える大学発のベンチャー。自動運転システムの開発やコンピューター、センサーの販売などを手掛けている。

オープンソースの自動運転ソフトウエア「Autoware」は国内外で100社以上に導入されており、自動運転の早期実現に一役買っている。2017年12月には、遠隔制御型自動運転システムの公道実験を国内で初めて実施し、自動運転レベル4(高度運転自動化)の無人運転に成功した。

2018年3月にKDDI株式会社が約30億円を出資したほか、トヨタなどの出資で運営される「未来創生ファンド」が10億円規模の出資を実施したと報じられている。KDDIと同社は、次世代移動通信システム「5G」を活用した自動運転の実証実験を行い、ネットワーク整備など共同開発を進めていく予定。

■2015年設立:株式会社オプティマインド(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:松下健)

物流業界においてAIクラウド・プラットフォームサービス事業や最適化コンサルティング・R&D事業などを手がける名古屋大学発のテックベンチャー。

インターネット通販の拡大により配送の複雑化や小口化が進み、物流量が増加傾向にある業界において、AIやビッグデータ解析などの最新技術を活用し、配送計画の分野で物流業界全体の最適化を目指す。具体的には、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)モデルによるAI最適配車クラウドサービス「Loogia」の開発や提供、計算エンジンのAPI連携、コンサルティング、R&D事業を行っている。

2018年5月に株式会社ティアフォーと寺田倉庫を引受先とした第三者割当増資を行い、資金調達を実施した。

■2016年設立:アセントロボティクス株式会社(本社・東京都渋谷区/代表取締役・石﨑雅之)

完全自動運転を実現させるソフトウェア開発に取り組む AIテクノロジー企業。2020 年までに、特定条件下で走行可能な完全自動運転の実現を目指している。

同社が開発を進めているAIエージェントの開発・教育を行うための独自フレームワーク「ATLAS」は、3次元(3D)の高精細地図を必要とせず、初めての場所や地域においても、周辺を検知するセンサーのデータを基に状況を総合的に判断しながら走行することが可能だ。

2018年3月には、SBIインベストメント株式会社をリードインベスターとし、個人投資家複数人を引受先に約11億円の第三者割当増資を実施した。自動運転の公道での実証実験やAIの研究開発、海外の優秀な技術者の採用などを加速させるものとみられる。

■2016年設立:SBドライブ株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長:佐治友基)

自動運転技術の導入や運用に関するコンサルティングをはじめ、旅客物流に関するモビリティーサービスの開発・運営を手掛けるソフトバンクグループ傘下のベンチャー。

仏Navya(ナビヤ)社製の自動運転電気自動車(EV)バスなどを活用した実証実験やデモンストレーションを各地で行っているほか、車内外の映像のモニタリングや車両の遠隔操作、緊急通話などの機能を備えた遠隔運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」の検証なども行っている。

2018年7月には、中国インターネット検索大手の百度(バイドゥ)とタッグを組み、百度が開発を進める自動運転システム「Apollo(アポロ)」を搭載した自動運転バス「Apolong(アポロン)」の日本での活用に向けて取り組むことを発表している。

■2016年設立:ITD Lab株式会社 (本社:神奈川県横浜市/代表取締役社長:紫垣卓男)

高性能なステレオカメラの開発とライセンス販売を手がける東京工業大学発のベンチャー。代表取締役会長の実吉氏は、スバル・アイサイトで使用されているステレオカメラの発明者としても知られている。

主力のステレオカメラは、2つのイメージセンサーから得られる視差を使って物体までの距離を計算するシステムで、基本アルゴリズムはアイサイトと同様のSAD (Sum of Absolute Difference)方式を採用した。アルゴリズムを簡素化でき、システムのコストや大きさ、消費電力を大幅に抑えることができるという。

2018年6月には、ニッセイ・キャピタル株式会社と三井住友海上キャピタル株式会社、ミナトホールディングス株式会社、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の4社を引受先に第三者割当増資を実施し、計4億8000万円の資金調達を行った。エンジニアの採用や研究環境の整備などを進め、自動運転レベル4(高度運転自動化)〜自動運転レベル5(完全運転自動化)のシステム構築を視野にさらなる開発を目指す構えだ。

■2017年設立:合同会社WHITE MOTION(本社:埼玉県さいたま市/最高経営責任者:蔵本雄一)

自動車部品メーカーのカルソニックカンセイとフランスのセキュリティ会社Quarkslab社によって設立された、自動車のセキュリティに特化したベンチャー。

自動運転やコネクテッドカーの進化とともにサイバーセキュリティ対策の重要性も高まっており、カルソニックカンセイが持つ自動車の知見とQuarkslab社が有するサイバーセキュリティの知見を合わせた事業展開を行っており、自動車メーカーや部品メーカーから委託された車両や車載部品の脆弱性検査をはじめ、エンジニアへのセキュリティトレーニング、車載用セキュリティ製品の販売などを手がけている。

2018年4月には東京海上日動火災保険株式会社と業務提携し、サイバーセキュリティ分野に関する各種研究をはじめサイバーリスクに対応した商品・サービスの開発を進めている。

【参考】WHITE MOTIONと東京海上日動火災保険の提携については「自動運転車へのサイバーリスクに対応 東京海上日動、保険商品開発へ|自動運転ラボ 」も参照。

■2017年設立:株式会社コーピー(本社:東京都文京区/代表取締役:山元浩平)

AIシステムの研究開発を手掛ける東京大学発スタートアップで、自動運転車の車載カメラを使った認識システムの研究開発に自動運転ソリューションなどを取り扱う株式会社マクニカと共同で取り組む。

コーピー社の強みは、深層学習(ディープラーニング)などを活用してさまざまな種類のデータを複合的に解析するマルチモーダル(画像・センサなど)認識技術など。2018年7月には、自動運転分野にも積極的な米半導体大手エヌビディアのAIスタートアップ支援プログラム「Inception Program」において、同社のパートナー企業に認定されたことも発表している。

【参考】コーピー社の自動運転に関する取り組みなどについては「東大発AIスタートアップのコーピー、自動運転開発で半導体商社マクニカと協業スタート|自動運転ラボ 」も参照。

■2018年設立:株式会社Hakobot(本社:宮崎県宮崎市/代表取締役:鶴田真也)

 

運送業界における人手不足や労働環境問題の解消を目的に、陸上を無人で走る自動運転配送ロボットの開発を行っている。ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏がアドバイザーとして参画している。

2018年8月時点までの発表によれば、開発している自動配送ロボットはGPS(全地球測位システム)などを使って自分の位置を認識し、センサーや画像認識などで周囲の状況を把握しながら無人配送を実現するようだ。試作品完成後には実証実験を実施し、さまざまな場所で導入ができるよう試行錯誤していく。

■2018年設立:株式会社フィールドオート(本社:埼玉県深谷市/代表取締役社長:渡部大志)

国内私立大学では初となる自動運転技術の研究・開発を産学連携で推進するため、埼玉工業大学が設立した大学発ベンチャー。名古屋大学発の自動運転開発ベンチャーである株式会社ティアフォーが100%出資している。キャンパス内に本社を構え、工学部情報システム学科の渡部大志教授が社長を務めている。

主要事業は自動運転実証実験のサポートで、従来、各社が縦割りで開発しているAIや画像認識、自位置推定、高精度地図などのさまざまなコア技術を、横軸で連携させる「総合プロデューサー」の役割を担う。

埼玉工業大学は、次世代自動車開発プロジェクトに取り組んでおり、今後は自動運転車の実現に必要な中核技術とされるAIの研究も本格化させ、2019年4月には工学部情報システム学科に「AI専攻」を新設する。

■研究開発の進捗に大きな期待

日本国内で自動運転技術などを開発するスタートアップ・ベンチャー企業。2020年ごろには自動運転技術の実用化に向けた動きが一層加速すると見られている中、どの企業の研究開発の進捗状況も見逃せない。その成果に大きく期待をしていきたい。

【参考】世界や日本の大手自動車メーカーなどの自動運転開発などについては「【最新版】自動運転車の実現はいつから?世界・日本の主要メーカーの展望に迫る|自動運転ラボ 」も参照。







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