トヨタ退職後に起業…先進モビリティと豊田通商の自動運転追従トラックとは?

ソフトバンクは5億円出資、蘭HEREと提携も



トヨタグループの総合商社である豊田通商株式会社(本社:名古屋市中村区/代表取締役会長:加留部淳、代表取締役社長:貸谷伊知郎)は2018年6月28日、茨城県つくば市の産業技術総合研究所テストコースで有人のトラックを無人の自動運転トラックが追従する隊列走行の技術を報道陣に公開した。


2022年度の実現を目指し各地で実験が行われている隊列走行だが、その開発を支えるベンチャー企業がいる。2014年に設立された先進モビリティ株式会社(本社:東京都目黒区/代表取締役社長:青木啓二)だ。

■トヨタ退職後に先進モビリティを創業した青木社長

先進モビリティは、自動運転技術の開発やシステム・アプリケーション開発を手掛けるベンチャー企業。トヨタ自動車で自動運転の研究に長年携わってきた技術者の青木社長が、「運転支援技術を重視する自動車メーカーでは本当の意味で自動運転を実現できない」との思いから退職後に立ち上げた。

内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)や国土交通省、経済産業省が進める自動運転関連のプロジェクトに積極的に参加し、自動運転技術の開発を推進しながら産官学連携のハブとしての役割を担う。

2016年3月に、自動運転技術を活用したスマートモビリティーサービスの事業化に向けた合弁会社「SBドライブ株式会社」をソフトバンクとともに設立することで合意し、ソフトバンクから5億円の出資を受けている。2017年11月には、富士通株式会社とオランダの位置情報サービス大手ヒアテクノロジーズ(HERE Technologies)と将来の自動運転開発に向けた技術提携を結んだ。また、2018年2月には磁気センサーを使った自動運転の開発促進に向け、トヨタグループの愛知製鋼から5億円の出資を得ている。


■トラック隊列走行の3つのキーポイントとは?

トラックの隊列走行は、ドライバーが運転する先頭のトラックを、追尾センサーなどを搭載した無人のトラックが自動で追尾するシステム。ドライバー不足の解消や渋滞緩和、事故抑制などを目的に国土交通省と経済産業省主導のもと2016年度に本格的に事業が始まった。

トラックの隊列走行イメージ=出典:トラックの隊列走行に関する国土交通省発表の資料

豊田通商をまとめ役に、いすゞ日野、三菱ふそう、UDトラックスの商用車メーカー4社が実験車を製作し、カギを握る追尾センサーやブレーキ、制御機器の開発を先進モビリティやジェイテクトなどが担っている。2018年度はテストコースでの実証実験のほか、後続有人状態で公道での実証実験を開始する予定。2020年度に高速道路での後続無人隊列走行を実現し、2022年度の事業化を目指す。

青木社長は、隊列走行のキーポイントとして「短車間距離のCACC(協調型車間距離維持支援システム)制御」「車線維持制御」「後続車の周辺監視」の3つを挙げ、これらの技術開発に取り組んでいる。

■先進モビリティが取り組むもう一つの事業「無人運転バス」

隊列走行同様、同社が精力的に取り組んでいるのが公共交通の無人運転システムの開発だ。国土交通省が進める中山間地域における道の駅などを拠点とした自動運転サービスの社会実験では、同社の「路車連携型」バスを使用。GPSと磁気マーカーやジャイロセンサーにより自車位置を特定し、既定のルートを走行するシステムで、公道では自動運転レベル2(部分運転自動化)、専用空間ではレベル4(高度運転自動化)の走行を実証した。


【参考】自動運転レベルの定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説|自動運転ラボ 」も参照。

また、SIPの一環として実施しているバスの自動運転実証実験では、沖縄県南城市や宜野湾市の交通量が多い公道などで自動運転レベル2の性能評価を行っている。

■豊富な技術とベンチャー精神で成功へ

国主導で進められている自動運転システムの実証実験には、自動車メーカーをはじめ人工知能(AI)・センサー類の開発企業、大学などの研究機関といった多くの組織が共同で取り組んでいる。その中で、自動車メーカーで培った技術や経験とベンチャーの心を併せ持つ青木社長率いる先進モビリティの存在感は、今後ますます大きくなりそうだ。


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