自家用車における「自動運転レベル3」の搭載をはじめ、レベル4移動サービスの実用化も世界各地で進展している。市販車ベースのものからオリジナル車両まで多彩なモデルが出揃い始めた。
この記事では、実証を含む自動運転サービスなどに用いられている各車種をピックアップし、2024年現在における自動運転の最前線に迫っていく。
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車種名など | 開発企業 |
Apollo Moon | 百度×ARCFOX |
IONIQ 5 robotaxi | Motional |
ID Buzz AD | Argo AI |
Pacificaベースの自動運転車 | Waymo |
LEGEND | ホンダ |
Sクラス | Mercedes |
ARMA&EVO | NAVYA |
Cruise Origin | Cruise |
ロボタクシー | Zoox |
MiCa | Auve Tech |
EZ10 | Easy Mile |
e-Palette | トヨタ |
Next Gen Pod | Einride |
アカデミックパックPRO | ヤマハモーターパワープロダクツ |
macniCAR-01 | PerceptIn、マクニカ |
<記事の更新情報>
・2024年1月16日:MiCA(Auve Tech)とEZ10(Easy Mile)を追加
・2021年10月19日:記事初稿を公開
記事の目次
- ■普通車両タイプ
- ■シャトルタイプ
- ■自動運転トラック
- ■カート・超小型モビリティ型
- ■【まとめ】まもなく本格的な販売局面に?
- ■関連FAQ 自動運転車はどのようなタイプに分類できる? 大きく分けて、「普通車両タイプ」「バス・シャトルタイプ」「トラックタイプ」「カートタイプ」に分類できる。 すでに市販されている自動運転車は? 普通車両タイプで一般向けに市販されている自動運転車としては、ホンダの「新型LEGEND」がある。自動運転レベル3の機能が搭載されている。メルセデスのSクラスでも有料オプションでレベル3の機能を搭載可能だ。 トヨタは自動運転車を開発している? している。トヨタが最も力を入れて開発しているのが「e-Palette」だ。シャトルタイプの自動運転EVで、東京五輪の選手村でも導入された。ホンダの新型LEGENDのように、レベル3の機能を搭載した市販の自動運転車は2022年3月時点ではまだ発売していない。 世界で最も普及している自動運転シャトルは? 公式な調査データはないが、存在感が大きいのが仏Navya(ナビヤ)社のARMAという自動運転シャトルだ。同社の公式サイトによれば、2021年末時点で25カ国で200台が稼働している。日本でも茨城県境町の自動運転移動サービスでARMAが使用されている。 自動運転車に搭載されているセンサーの種類は? カメラ、ミリ波レーダー、LiDARなどがある。多くの企業がLiDARを活用して自動運転を実現しているが、テスラのようにカメラだけで自動運転を実現しようとしている企業もある。
■普通車両タイプ
Apollo Moon(百度×ARCFOX)
百度(Baidu)は2021年、北京汽車集団(BAIC)系列のブランドARCFOXと共同開発したロボタクシー向けの自動運転車両「Apollo Moon(アポロムーン)」を発表した。
自動運転 ソフトウェアプラットフォーム「Apollo」の第5世代となるシステムを採用しており、レベル4を可能にする自動運転システム「Apollo Navigation Pilot(ANP)」がドライバーレス走行を可能にするという。
両社は戦略的パートナーシップのもと、1,000台超のアポロムーンの生産・販売や大規模フリート構築を進めていく計画としている。なお、アポロムーン1台あたりの製造コストは48万元(約820万円)に抑えられている点もポイントだ。
ロボタクシーの製造コストは約2,000万円規模と言われており、従来の3分の1近くまで落とすことでビジネス性が大きく増すため、要注目のモデルとなりそうだ。
▼Baidu公式サイト
https://www.baidu.com/
【参考】百度の取り組みについては「百度(Baidu)自動運転開発の年表!アポロ計画推進、中国で業界をリード」も参照。
IONIQ 5 robotaxi(Motional)
Aptivとヒュンダイの合弁Motionalは、ヒュンダイが2021年に発表したばかりのEV専用車「IONIQ 5」をベースとしたロボタクシーを同年8月に公開した。同車最初の商用自動運転車として、2023年から米Lyftの配車ネットワークに導入する計画としている。
LiDARやカメラ、ミリ波レーダーなど30を超えるセンサーで360度の視界を確保している。これらのセンサースイートは、自動運転車と一般車両を一目で区別できるよう車両の外部にあえて目立つように搭載したという。
それでも利用者が車両を見つけられない場合は、スマートフォンから車両のライトを点滅させたりホーンを鳴らしたりすることもできるという。10万回を超えるサービス実証の経験を生かして利用者目線のアイデアを盛り込むなど、自動運転以外の部分もしっかりと作り込んでいるようだ。
▼Motional公式サイト
https://motional.com/
【参考】Motionalの取り組みについては「現代自動車のEV、米で2023年から自動運転タクシーとして運行へ」も参照。
ID Buzz AD(Argo AI)
フォード及びフォルクスワーゲングループから出資を受けている米スタートアップのArgo AIは、米国・ドイツでのライドシェアサービスに向け、フォード「エスケープハイブリッド」やフォルクスワーゲン「ID Buzz」をそれぞれ自動運転化した。
第4世代自動運転システムを搭載したエスケープは、Lyftの配車ネットワーク上で2021年後半にマイアミ、2022年にオースティンでサービスインする計画で、今後5年間で1,000台の自動運転車を導入する予定という。
一方、ID Buzzは「ID Buzz AD」として2021年9月に発表された。現在、ドイツ・ミュンヘン市内の空港にあるクローズドコースで実証を重ねるとともに、公道実証に向け高精度3次元地図の作製などを進めているようだ。
▼Argo AI公式サイト
https://www.argo.ai/
【参考】Argo AIの取り組みについては「Argo AI、自動運転の年表!米有力スタートアップ、VWとFordが出資」も参照。
WaymoのPacificaベースの自動運転車
自動運転車のベースとして、おそらく最も多く活用されている量産車はクライスラーの「Pacifica(パシフィカ)」だろう。米Waymoの「Waymo One」が代表的存在だ。
Waymoは2016年に公道実証用途でパシフィカ100台を納入したのを皮切りに、翌年にはアリゾナ州で開始するアーリーライダープログラムに合わせ500台を追加発注している。
こうしたWaymoの影響か、あるいはクライスラー(FCA、現ステランティス)の戦略によるものかは不明だが、LyftやAutoX、Aurora Innovationなどもパシフィカを改造した自動運転車を活用している。
なお、国産ではトヨタ「プリウス」も多く使用されている。埼玉工業大学など国内での実証のほか、ロシアのYandexや自動配送ロボットの開発を手掛ける米Nuroなどが採用している。
LEGEND(ホンダ)
自家用車で唯一レベル3機能を実装しているのが、ホンダの新型「LEGEND(レジェンド)」だ。高速道路渋滞時に自動運転を可能にする「トラフィックジャムパイロット」を搭載し、2021年3月に100台限定で発売(リース販売)された。価格は税込1,100万円となっている。
レベル3搭載車はメルセデス・ベンツも発売を予定しているほか、中国メーカー各社も量産化段階に達している。ただ、中国は法規制の関係で実装が遅れているようだ。
【参考】新型レジェンドについては「ホンダが自動運転レベル3車両を3月5日発売!新型「LEGEND」がデビュー」も参照。
Sクラス・EQS(メルセデス)
メルセデスは2022年、SクラスやSクラスのEV(電気自動車)版である「EQS」の有料オプションとして、自動運転レベル3のシステム「DRIVE PILOT」の展開をスタートした。市販車向けのレベル3システムとしては、ホンダに続いて世界2番目の事例となっている。
DRIVE PILOTのドイツでの展開は2022年5月から始まり、2023年にはアメリカでも展開をスタートさせる計画となっている。アメリカの他のメーカーやメルセデスに遅れをとるとみられ、レベル3のアメリカでの市販車への初展開は非アメリカメーカーに奪われる見通しとなっている。
【参考】関連記事としては「米国勢、「初の自動運転レベル3」をメルセデスに奪われる展開」も参照。
■シャトルタイプ
ARMA&EVO(NAVYA)
仏NAVYAが開発する自動運転シャトル「ARMA」はすでに世界各国で採用されており、2020年末までに日本や米国、フランス、ドイツ、スイス、オーストラリアなど23カ国で180台以上の販売実績を誇る。ドライバーレスのレベル4を実現する最新車両「EVO」も登場し、さらに市場を拡大しそうだ。
EVOは全長4,780×全幅2,100×全高2,670ミリで、乗車定員15人、最高時速25キロ、航続距離約100キロのスペックとなっている。
日本では茨城県境町などでARMAが実用化されているが、今後EVOを導入する動きも出てきそうだ。
▼NAVYA公式サイト
https://navya.tech/en/
【参考】ARMAについては「NAVYA社の自動運転バス「ARMA」、誰でも操作できる?」も参照。
Cruise Origin(Cruise)
米GM傘下Cruiseらが開発した「Cruise Origin(クルーズ・オリジン)」は、ハンドルやペダル、ミラーなどを備えない新規格のサービス向けの自動運転車両として2020年1月に発表された。
詳細スペックは明かされていないが、6人乗りのゆったりとしたボックス型で、移動サービス用途に特化しているようだ。パートナーシップのもとホンダが開発に携わっており、将来的なオリジンの日本導入も視野に、2022年中に栃木県内で実証に着手する計画を発表している。
▼Cruise公式サイト
https://www.getcruise.com/
【参考】Cruiseの取り組みについては「GM傘下Cruise、自動運転の年表!ハンドルなしのポッド型「Origin」を発表」も参照。
ロボタクシー(Zoox)
モデル名は付けられていないものの、Amazon傘下のZooxも2020年末に自社開発したロボタクシーを発表している。
ボディサイズは全長3,630×高さ1,936ミリと比較的コンパクトな4人乗り仕様で、前後の区別なく双方向に進行することができる。ステアリング機構は四輪操舵で、モーターを前後方それぞれに搭載するデュアルモーターシステムを採用することにより、片方が故障しても問題なく走行できるよう冗長性を高めている。
最高時速は驚異の時速75マイル(約120キロ)を誇り、高速道路などを利用した中長距離移動も視野に入れている可能性がありそうだ。組立・生産を行う自社工場もすでに稼働しており、今後の事業展開に注目が集まる。
▼Zoox公式サイト
https://zoox.com/
【参考】Zooxの取り組みについては「最高時速120km!Amazon傘下Zoox、攻めの自動運転タクシー用車両をお披露目」も参照。
e-Palette(トヨタ)
トヨタがMaaS向けの多目的EV自動運転車として2018年に発表した「e-Palette(イー・パレット)」。東京五輪・パラリンピックの選手村でサービス実証が行われたことも記憶に新しい。
東京2020オリパラ仕様のイーパレットは、全長5255ミリ×全幅2065ミリ×全高2760ミリのボックス型で、オペレーターを含め20人乗り、航続距離150キロ、最高時速19キロで走行することができる。
移動サービスのほか、開放的な車内を活用し小売りやホテルなどさまざまな用途への応用に期待が寄せられる。荷室ユニット数に応じて全長7メートルほどの車体を用意することもできるという。
今後、Woven Cityでの実証を始め、MONET Technologies関連の実証への導入も進むものと思われる。
【参考】e-Paletteについては「トヨタのe-Palette(イーパレット)とは?自動運転EV、東京オリンピックでは接触事故も」も参照。
MiCa(Auve Tech)
エストニア企業のAuve Tech(オーブテック)が開発する自動運転シャトルとしては「MiCa」がある。8人乗りの車両で、コミュニティバスとしての使用を前提にデザインされた。1時間の充電で約20時間の走行が可能とされている。
ソフトバンク子会社のBOLDLY(ボードリー)が日本での導入を発表しており、自動運転レベル4(高度運転自動化)に対応した車両として注目を集めた。BOLDLYの運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」と連携でき、すでに日本国内で実証実験で使用されている。
▼Auve Tech公式サイト
https://auve.tech/
【参考】関連記事としては「BOLDLY、エストニア製自動運転バス「MiCa」展開へ」も参照。
EZ10(Easy Mile)
フランス企業のEasy Mileが開発する自動運転シャトルとしては「EZ10」がある。すでに世界各国のさまざまな都市で展開されており、展開場所も市街地や大学、病院、公園などと幅広い。
さまざまな交通環境に対応でき、歩行者と自動車が走行する混在道路はもちろん、炎天下や積雪、雨などの天候にも対応している。
対応可能な自動運転レベルとしては「レベル4」だ。つまり、展開国でレベル4が解禁されているのならば、特定エリア内においては人の介入を全く前提とせずに運行が可能となっている。
【参考】関連記事としては「世界シェア60%!?自動運転シャトル開発の仏EasyMile、資金増強」も参照。
■自動運転トラック
Next Gen Pod(Einride)
スウェーデンの物流スタートアップEinrideは、遠隔監視・操作による無人EVトラック「Next Gen Pod」を製品化し、すでに販売を開始している。
AET 1~4の4モデル構成で、閉鎖空間で走行可能なAET1は月額1万800ドル、閉鎖空間や一部公道を走行可能なAETは月額1万9,000ドル、交通量が限られた公道で走行可能なAET3は月額2万ドル、主要道路や高速道路も走行可能なAET4は月額2万2,500ドルのリース料金が設定されている。
現在1~2が注文可能で、3~4は予約を受け付けている段階だ。
▼Einride公式サイト
https://www.einride.tech/
【参考】Einrideの取り組みについては「時速5km制限でも「完全無人」は偉大な一歩!自動運転トラックの公道実証、スウェーデンで始まる」も参照。
■カート・超小型モビリティ型
アカデミックパックPRO(ヤマハモーターパワープロダクツ)
ヤマハモーターパワープロダクツ、ティアフォー、マクニカの3社は2019年、自動運転開発や実証、サービス向けの小型低速車両「アカデミックパックPRO」の販売を開始すると発表した。
ゴルフカー(ランドカー)をベースに保安基準を満たす装備を整え、ティアフォーの自動運転ソフトウェア「Autoware」やセンサーユニット「AI Pilot」を統合した。
ゴルフカーベースの自動運転車両は製造コストを抑えやすく、低速走行が前提となる初期の自動運転実装に都合が良い。このため、秋田県上小阿仁村や滋賀県東近江市、福岡県みやま市、島根県飯南町などの道の駅を拠点とした自動運転サービスでも採用されている。
【参考】ゴルフカーベースの自動運転車については「全国で3カ所目!道の駅×自動運転移動サービス、島根県で開始へ」も参照。
macniCAR-01(PerceptIn×マクニカ)
低コストの自動運転ソリューション実現を目指す香港PerceptInは、LiDARや高精度3次元地図を使用しない「PerceptIn DragonFly自律走行システム」を武器にカートや超小型モビリティの自動運転化を手掛けている。
2020年11月には、同社日本法人PerceptIn Japan (現Mopi)とマクニカがマイクロ・ロボットタクシーの公道実証に向け、タジマEVの超小型モビリティ「タジマ・ジャイアン」を自動運転化した「macniCAR-01」を開発し、公道実証を行っている。
【参考】PerceptInについては「香港企業PerceptIn、高まる存在感!自動運転プラットフォームの3つの特徴とは?」も参照。
■【まとめ】まもなく本格的な販売局面に?
ロボタクシーサービスの大半は市販車両を改造したモデルを採用しており、OEMとのパートナーシップのもと、自社開発した自動運転システムを各車種に統合する技術開発そのものを重視している印象も強い。自動運転システムの車種対応における汎用性を高めることは、将来的なビジネス拡大に直結するからだ。
一方、シャトルサービス向けのオリジナル車両も出揃い始めた。NAVYA、EasyMileが今のところ先行しているが、e-PaletteやOriginなどの各モデルが実用化されれば、情勢は一気に変化するだろう。
また、国内ではカートや超小型モビリティタイプの自動運転車にも注目したい。コンパクトかつ低コストで導入可能なこの手の自動運転車は、日本の道路事情や自治体の財政状況ともマッチしやすい。観光地などピンポイントで導入を図りやすいのも利点だ。
まもなく世界各地でレベル3、レベル4に対応した法整備が完了し、本格的な自動運転の実装が始まる見込みだ。この動きに合わせ、自動運転車の販売やリースといったビジネスも大きく動き出すことになる。激動の自動運転社会は、目前まで迫っているようだ。
(初校公開日:2021年10月19日/最終更新日:2024年1月16日)
【参考】関連記事としては「自動運転ソフトウェアの開発企業まとめ!日本と海外の22社」「自動運転レベルとは?定義や呼称、市販車の車種は?できることは?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)