自動運転バスが「1,000便無事故無違反」達成!ティアフォーが発表

BOLDLYなども参画する石川県のプロジェクト



出典:小松市プレスリリース

自動運転スタートアップである株式会社ティアフォー(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:加藤真平)は2024年6月12日までに、同社が運行している石川県の自動運転バスが定常運行1,000便無事故無違反を達成したことを、公式SNSアカウントを通じて発表した。

現在、地方自治体などで自動運転バスの実装や実証実験の取り組みが広く行われているが、過去には手動運転から自動運転への切り替えの際などに事故やトラブルが発生した事例もある。今回の1,000便での無事故無違反は、日本における自動運転バスの実用化の機運を高める成果と言えそうだ。



■2024年3月から通年運行がスタート

石川県小松市では2024年3月から、自動運転バスの路線バスとしての通年運行をスタートした。小松駅と小松空港をつなぐ公道片道約4.4キロのルートを、ティアフォー製の自動運転バス「Minibus」が最高時速35キロで走行するという内容だ。所要時間は片道約15分で途中の停留所なし、運賃は大人280円・子ども140円となっている。

出典:小松市プレスリリース

この定常運行1,000便において、無事故無違反を達成したという。

これまで日本各地で行われている自動運転バスによる実証実験だが、2023年11月に福岡県福岡市でタクシーと接触事故を起こしたり、2024年3月7日に千葉県横芝光町で踏切遮断機と接触したりといった事故が起こっている。いずれも自動運転システムの機能そのものに問題があったという訳ではなく、進行ルートに問題があったり、人間による安全確認のミスが原因となったりという事故であった。

▼自動運転バスの通年運行を行っています|小松市
https://www.city.komatsu.lg.jp/soshiki/1028/rosenbasu/4/16580.html


■有力企業が小松市のプロジェクトに集結

出典:小松市プレスリリース

今回のプロジェクトに参画しているのは小松市とティアフォーのほか、ソフトバンク子会社のBOLDLY、測量・土木関連ソフトウェア開発大手のアイサンテクノロジー、損害保険ジャパンだ。5者は北陸新幹線小松駅の開業に合わせてJR小松駅・小松空港間のさらなるアクセス向上を図るため、2022年8月に自動運転バスの通年運行の社会実装を軸とした連携協定を締結している。

実装を見据えた長期試験走行を2023年10月〜2024年3月に実施、自動運転レベル2で1日に4~5往復走行し、BOLDLYとティアフォーの社員が車内のオペレーターおよび遠隔監視者を担当した。レベル2の水準であるため、運転の責任は人間にあり、「運転手が乗車した状態」で走行が行われた。

【自動運転ラボの視点】
レベル2は人間が運転に介在できることを前提に安全に自動運転ができる技術水準となる。ほかの自治体でレベル2の自動運転シャトルが展開されているケースでも、手元で車両操作が可能なコントローラーを持ったオペレーターが責任を担っている。このオペレーターには「自動車免許証(中型以上)と運行企業による認定資格が必要になる。(参考:NAVYA社の自動運転バス「ARMA」、誰でも操作できる?

こうした点を考慮すると、「無事故無違反」という点だけではなく、実際に人間の運転手がどれだけ介入したか、していないか、つまりは「自動運転率」を開示していく姿勢を見せて頂きたい。自動運転に対する社会受容性を高めるためには、そこまで踏み込んだ開示やPRが重要となる。

また損保ジャパンによる自動運転リスクアセスメントやアイサンテクノロジーによる高精度3次元地図データの作成を事前に行った上で、Minibusを用いて、ティアフォーが開発を主導する自動運転ソフトウエア「Autoware(オートウエア)」による自動走行や、BOLDLYが提供する自動運転車両運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を使った遠隔監視を実施した。さらに新規導入する信号情報提供システムや路車協調システムの実証実験も行ったという。

■ティアフォーの「L4 RIDE」でサービス運用

石川県で運行されている自動運転バスは、ティアフォーのソリューション「L4 RIDE」でサービスが運用されている。L4 RIDEは、運行ルート設計の企画や実証実験の実施、サービス運用に向けた企画などを一気通貫で支援する仕組みだ。

運行ルートの設計やリスクアセスメント、高精度3次元地図の作成、走行可能性の検証、実証実験の実施などで自動運転の導入を支援し、運行管理用ツールの提供や各種運用保守、ソフトウェアの継続的な機能更新により運行・運用を支援する。また自動運転レベル4の認可取得までの仕組みやノウハウの提供、ルート選定などもサポートするなど、自動運転実装を段階的に支援するものになる。

L4 RIDEに加え、ティアフォーが2023年6月から提供を開始した自動運転機能に対応したEV生産を加速させる新たなソリューション「fanfare(ファンファーレ)」を活用することで、ハードウェアの運用保守、修理、交換やソフトウェアの継続的な機能更新の支援を受けることができ、自動運転移動サービスを持続的に安定して運用することが可能になるという。

▼L4 RIDE — TIER IV SOLUTIONS
https://solutions.tier4.jp/l4ride

■地方で自動運転バスの導入が加速する見込み

今回の石川県の取り組みには、ティアフォーのほかBOLDLYやアイサンテクノロジーなど、日本の自動運転開発を支えるスター企業が集結している。

移動の利便性向上のほか、特に地方では人材不足などによる公共交通機関の不足が深刻な課題になっている。地方自治体による自動運転実装は、今後ますます加速するだろう。Minibusは、レベル4の自動運転を想定した車両となっている。今後自動運転レベルが段階的に上がっていくかについても注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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