自動運転、2022年に上場可能性があるベンチャー7選

2021年を上回る大型案件も!?



出典:Argo AI公式サイト

2021年は、LiDAR企業や自動運転トラック開発企業を中心に新規株式公開する企業が続出した。この流れは2022年も続く見込みで、さらなる大型案件が発表される可能性もありそうだ。

この記事では、2022年中に上場予定の企業と、上場の可能性が考えられる有力企業をピックアップし、紹介していく。


■2022年中に上場予定の企業
Plus:米中市場で数千台規模の受注

シリコンバレーに本社を構える中国系スタートアップのPlus(智加科技)は2021年5月、ニューヨーク証券取引所へのSPAC上場に向け企業結合契約を締結したと発表した。

同社は2016年に創業し、自動運転トラックの開発を進めている。既存のトラックをはじめ、新規開発車両への搭載などさまざまなプラットフォームに対応可能なレベル4自動運転システム「PlusDrive」が武器で、2021年に生産・受け渡しを開始する計画だ。

すでに中国の第一汽車や物流事業者SF Express、商用車製造などを手掛ける英CNHインダストリアル傘下のIVECO、米Amazonなどと契約を交わしており、計数千台規模の注文を受けているという。

上場予定時期などは明かされていないが、発表から8カ月経過していることを考慮するとそろそろのはずだ。Pony.aiのように、米中間の貿易紛争を理由に延期している可能性も考えられる。


▼Plus公式サイト
https://plus.ai/

Mobileye:再上場で自動運転業界のリーダー的存在に

ベンチャーではないが、イスラエルのMobileyeも2022年中旬に米国で再上場することを発表している。実績が飛び抜けているだけに、大型案件になることはまず間違いない。

同社は2014年8月にニューヨーク証券取引所に上場している。その後、2017年のインテル買収時に上場廃止し、インテル傘下の企業として業績を伸ばしてきた。

SoC「EyeQ」シリーズやADAS製品ですでに市場において大きなシェアを誇っているほか、イスラエルとドイツで2022年中にも自動運転タクシーサービスを開始する計画が明かされている。中国の浙江吉利控股集団(Geely)とは、レベル4自家用車の開発・発売計画も持ち上がっている。

自動運転開発とともに世界を股に掛けたサービス展開も視野に入れており、再上場を機にさらなる躍進を遂げ、自動運転業界のリーダー的存在に上り詰める可能性もありそうだ。

▼Mobileye公式サイト
https://www.mobileye.com/

■上場に期待が寄せられる企業
Argo AI:一部メディアが上場計画を報道

有力スタートアップの米Argo AIも上場がうわさされる1社だ。2016年創業の同社は、フォードやフォルクスワーゲンとの緊密な連携のもと、自動運転技術の社会実装を進めている。

ウォルマートと自動運転デリバリーサービスの実証を進めているほか、配車サービス大手Lyftのプラットフォームに2021年後半にも自動運転車を導入していく計画も発表していた。計画は遅れている可能性があるが、2022年までに米マイアミからオースティンへと拡大していく方針だ。

一部メディアが2021年7月までに同社のIPO計画について報じている。公式アナウンスは出ていないが、水面下で協議が始まっている可能性は十分考えられる。大きなバックボーンを持ちつつも独立路線を歩む同社の2022年の動向に要注目だ。

▼Argo AI公式サイト
https://www.argo.ai/

Nuro:社会実装に向けた取り組みをIPOで加速?

配送向けの自動運転車の開発を手掛ける米Nuroも有力候補の1つだ。2021年11月にシリーズDラウンドで6億ドル(約677億円)を調達しており、この勢いに乗じてIPOに踏み切る可能性がある。

ウォルマートやクローガーをはじめ、さまざまな小売大手と手を組み、実証を重ねている同社。自動運転車両「R2」は米国運輸省(DOT)と米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)から保安基準に関わる規制免除を受けており、カリフォルニア州からは自動運転商用許可を得るなど、着々とサービス化に向けた外堀を埋めている。車両の量産化とサービス化に向け、そろそろ本腰を入れてもおかしくない時期だ。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドやトヨタ系のウーブン・キャピタルから出資も受けており、日本勢との関係にも注目したい。

▼Nuro公式サイト
https://www.nuro.ai/

Cruise:IPOめぐり内部対立?動向に注目

GM傘下のCruiseも、いろいろな意味で注目の的だ。GMは2021年末、Cruiseのダン・アマンCEOが退任し、後任に同社創業者のカイル・フォークト氏が就くと発表した。

理由には触れていないが、ブルームバーグが報じたところによると、IPOをめぐりアマン氏が解任を告げられたという。早期上場を望むアマン氏に対し、GMのメアリー・バーラCEOや取締役会がノーを突き付けた形で、電話で解任が告げられたとしている。

Cruiseは非公開株式の過半数をGMが保有するほか、ソフトバンク・ビジョン・ファンドやホンダなどからも出資を受けている。ビジネスの世界展開を考慮すると、遅かれ早かれ上場の道を探ることになりそうだが、その時期をめぐる議論の行く末に注目が集まるところだ。

▼Cruise公式サイト
https://www.getcruise.com/

Motional:明確なビジネス展開のもと、資金調達で取り組み加速も?

米Aptivと韓国ヒュンダイの合弁Motionalも可能性がある。同社はLyftとの提携のもと、2023年にも米国内の複数エリアでロボタクシーサービスを展開する計画を発表しているほか、2022年中にUber Eatsに自動運転車を導入することも発表されている。

ビジネス化に向けた道筋が明確化されており、IPOによる資金調達で取り組みを一気に加速させる可能性も考えられるところだ。

▼Motional公式サイト
https://motional.com/

Waymo:上場を目指す話も出ているとの報道

最後の注目株は、グーグル系Waymoだ。自動運転開発のパイオニアとしてその名は世界に知られるところで、自動運転タクシーも世界に先駆けて実現した実績を持つ。

多額の開発費用を補填するため2020年から資金調達を本格化させているが、サービス拡大に向けいつIPOに踏み切ってもおかしくない状況だ。一部報道によると、資金調達をめぐる協議の中で、上場を目指す話も出ているという。

同社のIPOは、自動運転業界にとって最大級の話題となり得る。その動向に要注視だ。

▼Waymo公式サイト
https://waymo.com/

■【まとめ】自動運転ビジネスは2022年も加速

今回ピックアップした7社は、いずれも業界では名高い企業で、上場が実現すれば大型案件になることは間違いない。

数年先を見据えた自動運転ビジネスの本格化はすでに始まっており、2022年もこの動きは確実に加速していく。各社の技術開発をはじめ、資金面における動向にもしっかりと注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事