Uber Eats、「人による配達」に終わりの予感!自動運転配送スタート

将来はギグワーカーを使わず、収益モデルが大変化?



出典:Motional News & Blogs

配車サービス大手の米Uber Technologiesが、Uber Eatsに自動運転車を導入することを発表した。パートナーは韓国ヒュンダイと米Aptivの合弁Motionalで、2022年早期にカリフォルニア州サンタモニカで自動運転配送サービスに着手する。

自動運転開発に積極投資した末に開発部門を売却するなど、試行錯誤が続くUberだが、ついに自動運転技術の導入が本格化するようだ。ギグワーカーによる運転・配達の役目が自動運転に置き換わることで、同社のビジネスは大きく生まれ変わる。


この記事では、Uberと自動運転との関わりについて解説していく。

■UberとMotionalの取り組み
改造ロボタクシーで無人配達を実現

冒頭の自動運転配達サービスには、MotionalのIONIQ 5ベースのロボタクシーを改造したものを使用する。同社のレベル4車両を配達用途で使用するのは初めてだが、これを「2つの用途を満たすデュアルパーパス製品戦略への進化」と位置付け、前向きに取り組んでいるようだ。

2022年の早い時期に試験サービスを開始し、将来的な展開に備えていく。Motional、Uberとも2021年11月時点で米カリフォルニア州車両管理局(DMV)から無人走行ライセンスを取得していないため、当面はセーフティドライバー同乗のもとサービスを提供し、並行して無人走行ライセンスの取得や無人自動運転車による商用ライセンスの取得も進めていくものと思われる。

Motionalは配車サービス大手Lyftとの提携のもと、IONIQ 5を活用したロボタクシーサービスの本格実証2022年にネバダ州ラスベガスで開始し、2023年に本格的な商用サービス展開を行う計画を掲げている。


同社においては、このロボタクシー事業が本丸に位置付けられているが、これより先にUberとの自動運転デリバリーが商用化する可能性が出てきたようだ。

具体的なロードマップなどは示されていないが、人の移動を担うロボタクシーとモノの移動・輸送を担うロボット配送が両輪となり、同社の自動運転事業を盛り上げていくことになりそうだ。

▼Uber Technologies公式サイト
https://www.uber.com/us/en/about/
▼Motional公式サイト
https://motional.com/

【参考】Motionalの取り組みについては「「完全無人」自動運転タクシー、Lyftがラスベガスで2023年から展開へ」も参照。


■Uber×自動運転のインパクト
事業多角化を進めるUber

ライドシェアを主軸とした配車サービスで有名なUberだが、近年はフードデリバリーのUber Eats、トラック輸送のUber Freightなど事業多角化を進めている。

特に新型コロナウイルスの影響などでUber Eatsの需要は大きく伸びており、2021年第3四半期(7~9月)の売上高は、ライドシェア部門22億500万ドルに対し、フードデリバリー部門22億3,800万ドルとトップを争う事業の柱に成長している。

Uber Eatsは現在、世界の6,000超の都市にある78万店が加盟する規模に成長を遂げている。飲食店からの料理配達に加え、スーパーマーケットをチェーン展開するAlbertsonsと提携し、一般的な食料品配達にも対応している。

日本でも、EC感覚で商品を注文できる食品・日用品専門店「Uber Eats Market」が開設されており、コストコなどの提携のもと、生鮮食品や冷蔵・冷凍食品を含む食品をはじめ、美容・衛生用品や日用雑貨など1,100点以上の商品を取り扱っている。

従来の飲食店からの料理配達にとどまらず、買い物代行のような事業など配達ビジネスの可能性を大きく広げ始めているのだ。

需要増と相反する赤字体質が問題に

需要が伸びる一方、黒字体質への脱皮には時間がかかっているようだ。先行投資の影響も大きいが、営業損益は2017年通期に40億8,000万ドル、2018年通期に30億3,000万ドル、2019年通期に86億ドル、2020年通期に48億6,000万ドルとマイナス計上が続いており、2021年通期も赤字の見込みだ。

世界中でシェア拡大とビジネス多角化を積極的に図り続けている点が要因に挙げられるが、業務委託によるギグワーカーの利用によって人件費に相当する額を圧縮しても、まだまだビジネスモデルとして成立する段階には至っていないようだ。

また、こうしたギグワーカーが待遇・保障の観点から、従業員にあたるかどうかが世界各地で訴訟沙汰となっている。

Uberはあくまでマッチングプラットフォームを提供するだけの立場を主張しているが、英国最高裁やオランダ地裁などで「運転手は従業員」とみなす判断が下されるなど、同社にとって厳しい状況が続いている。

自動運転技術が赤字脱却の突破口に

こうしたギグワーカー活用の課題や収益モデルをまとめて解決するのが、自動運転技術だ。従来、個人事業主が担っていた運転や配送業務を無人の自動運転車(ロボット)が担うことで、待遇や補償に関わる問題やコストの問題を一気に解決することが可能になる。

現在はどうなっているか定かではないが、2020年2月時点のライドシェア事業においてUberは運賃(取扱高)の8割を運転手に支払っているようだ。Uberの取り分は2割で、プラットフォーマーとしての収益性は決して高くない。

この8割に相当するランニングコストは、自動運転車を導入することで大きく圧縮することができる。導入時のイニシャルコストとメンテンナンスなどのランニングコストはかかるが、長い目で見れば収益性は向上する。

調査会社の米アーク・インベストメントの試算によると、自動運転技術の導入によって移動・輸送コストは10分の1に下がるという。多少の前後はありそうだが、コストが大きく低下することはほぼ間違いなさそうだ。

移動をつかさどるプラットフォーマーは、ある意味こうした自動運転時代を想定したビジネスモデルと言える。Uberはそれが顕著に表れており、ライドシェアをロボタクシーに、Uber Eatsを配送ロボットに置き換えることで、収益性が驚くほど向上するのだ。

同社の売上高は、2018年通期113億ドル、2019年通期141億ドル、2020年通期111億ドルと、日本円にしてすでに1兆円を超えている。2対8だった収益モデルが改善されれば、巨額の赤字が一気に消え失せ、黒字化を果たすことができる。

ロボットに待遇改善を迫られることもなく、訴訟リスクも大きく低下するだろう。

つなぎビジネスから自動運転ビジネスへ

UberはMotionalのほか、自社の自動運転開発ユニット「Advanced Technologies Group(ATG)」を米Aurora Innovationに売却しており、Auroraの自動運転車両が早ければ2024年にもライドシェアネットワークに導入される。

また、2020年に買収した米Postmatesのロボット部門がスピンアウトした、米Serve Roboticsが開発した宅配ロボットを、2022年早期にロサンゼルスなどでUber Eatsで使用する計画も発表している。

今後数年間で本格的に自動運転技術の導入を図っていく方針だ。将来的には、フリートの大部分が自動運転化されていく可能性が高い。こうした未来を前提に置けば、ギグワーカーによる運転・配送は言わば「つなぎビジネス」だ。まもなくこの状態からの脱却が始まり、真のビジネスモデルへと昇華していくのだ。

▼Serve Robotics公式サイト
https://www.serverobotics.com/

■【まとめ】Uberがモビリティ業界の変革を象徴する代表例に

配車プラットフォーマーやデリバリープラットフォーマーなどの収益モデルは、自動運転技術の導入によって大きく変わる。その両方を担うUberは代表的存在で、自動運転によるモビリティ業界の変革を顕著に表すビジネスモデルへの第一歩をまもなく踏み出すのだ。

大きな節目を迎えつつあるUberの動向に引き続き注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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