2018年の自動運転・モビリティ業界の10大ニュース コネクテッドカー、ライドシェア、MaaS、タクシー配車アプリ

重要トピックスをピックアップ



2018年もモビリティ業界ではさまざまなニュースが飛び交った。変革期を迎えた自動車業界では自動運転車やコネクテッドカーの開発が進み、資金投入も活発化。ライドシェアやカーシェア、MaaSなどのサービス分野でもさまざまな動きがあった。


自動運転ラボは2018年に公開した各記事の検索キーワード数などを集計・分析し、今年の重要トピックスを選出した。「2018年 自動運転業界10大ニュース」は下記の通り。

■いよいよ配車アプリ戦国時代突入へ

新興ビジネスとして注目を浴びるライドシェア。欧米や中国、東南アジア中東などでは市場拡大の一途をたどり、日本でもその流れがいずれくるものと思われていた。しかし「白タク」扱いは変わらずに解禁ムードは縮小し、一方でタクシー配車アプリが続々と増えるというある種「ガラパゴス化」とも言える独自の展開を見せたのが2018年だ。

タクシー事業者が展開する「JapanTaxi」「kmタクシー」などのほか、ソフトバンク陣営の中国DiDiや米ウーバー、ディー・エヌ・エー(DeNA)の「MOV」も東京進出をするなど事業拡大に躍起だ。ソニー系の「みんなのタクシー」は2018年度内にもアプリ提供を開始予定で、配車アプリ戦国時代の様相を呈している。

【参考】関連記事としては「【最新版】タクシー配車アプリや提供企業を一挙まとめ 仕組みも解説」も参照。


自動運転レベル3に不要論…2→4への「飛び級開発」が本格化

6段階に分類される自動運転レベル。完全手動運転(レベル0)から完全自動運転(レベル5)へと車両に搭載される水準は一段階ずつ上がっていくと当然のように思われていたが、2018年はややこの考え方には当てはまらない開発方針を掲げる企業が目立った1年となった。


自動運転レベル3の自動車を開発せず、レベル2からレベル4への「飛び級開発」をするというものだ。レベル3は「緊急時は人が運転する」という自動運転の一歩手前の段階だが、人が常時システムとの運転操作の交代に備えるということは困難、と考えるメーカーが増えた。米フォードやボルボグループ傘下の日本のUDトラックスなどがその急先鋒だ。

■自動運転実証実験が活況、一般向けや物流用途向けなど裾野も拡大

自動運転の実証実験の実施が日本各地で開催されるようになり、その回数も過去数年に比べると飛躍的に増加した。実証実験が盛んに行われるようになったことも注目されるべきことだが、実証実験の「目的」や「用途」が多様化していることも特筆すべきことだろう。

「自動運転車を走らせる」という実験に加え、自動運転タクシーとしての営業走行やコミュニティバスとしての運用、荷物の配送などと裾野が拡大しており、今後は「自動運転とサービス」「自動運転とMaaS」などとマッシュアップ(組み合わせ)された実証実験がより増えていくことを感じさせる。

■自動運転タクシーが具現化 米でグーグルが開始、日本でも実験

自動運転タクシーに乗れる日が、遠い将来の話では明らかになくなった。2018年12月、グーグル系ウェイモがアメリカ国内で商用サービスを一部ユーザーに対して提供し始めた。日本でも自動運転ベンチャーのZMPと日の丸交通が2018年9〜10月にかけて自動運転の営業走行試験を成功させるなど、商用化への期待感が盛り上がった。

ただ、商用サービス化や実証実験の段階を問わず現時点で「自動運転タクシー」と呼ばれるいずれの場合でも、原則的には安全のために人が運転席などに念のため同乗する。ウェイモのタクシーも同様だ。「念のため」が不必要になったときこそ、真の自動運転タクシーの登場の瞬間と言える。そのための検証も研究開発ももっと必要になってくる。

■自動運転領域で同業種、異業種がグローバルで連携加速

自動運転時代の勝者を目指すべく、日本を含む世界の自動車メーカーやIT企業が熾烈な開発レースを繰り広げてきた。「メーカー対メーカー」という対立軸は当然だが、「メーカー対非メーカー」「メーカー対IT系」というある種の業界のプライドも駆けた戦いがグローバル規模で起き、既に久しい。ただ少し風向きが変わってきた。同業種や異業種の連携・提携が加速・拡大している。

2018年、その象徴となった出来事が、2018年8月に発表されたトヨタの米配車大手ウーバー・テクノロジーズへの5億ドル(550億円)の出資だ。自動運転車を共同開発するというもので、競合他社に遅れをとらないための施策だとされている。ホンダと米GMの自動運転部門クルーズとの提携も話題になった。アライアンス化を進めることで「一人勝ち」よりも「負けない」ことを重視する——。そんな戦略に各社が舵を切ったようにも感じる。

■光るスピンアウト組、世界で億超え資金調達が続々

自動運転開発の最前線とも言えるのが世界の大手企業の研究組織。2018年はそこからのスピンアウト(分離・独立)で誕生したスタートアップが億超えは当たり前の資金調達を続々成功させるという事例が目立った。技術を「買いたい」大手メーカーからの資金投入も目立つが、市場の成長性に期待してのベンチャー・キャピタル(VC)からの出資も顕著だ。

米電気自動車(EV)大手テスラとグーグルの元社員が2016年に創業した自動運転スタートアップのAurora Innovationは2018年2月、シリーズAラウンドで9000万ドル(約101億円)の調達に成功。中国・百度の技術者が起業したPony.aiも同ラウンドで2億1400万ドル(240億円)の出資獲得を果たしている。

■陸から空へ、空飛ぶクルマのコンセプトカーのお披露目続く

個人の移動においてその舞台は歴史上長らく陸上だった。空は航空機、つまり大量輸送に限られていた。しかしこの状況は変わる。空飛ぶクルマの登場によってだ。2018年は空飛ぶクルマのコンセプトモデルが続々と誕生し、個人の移動の舞台として新たに空が加わることの現実味が増した1年だった。

外国勢では独アウディのほか、英アストンマーティンなどが急先鋒だ。日本では有志団体として開発をスタートさせたCARTIVATORが2020年東京五輪でのデモ飛行を目指している。日本政府も2019年から試験飛行など進めて2023年を目途に事業を開始させ、2030年代から実用化をさらに拡大させていくというロードマップを示している。

【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは? 仕組みや技術、必要なインフラなど」も参照。

■大学発ベンチャーが躍進、自動運転OSで国際団体、独自MaaSアプリも

大学発ベンチャーの活躍が目立つのが自動運転業界だ。名古屋大学発ベンチャーのティアフォーが自社開発するオープンソースの自動運転OS「Autoware」の国際団体が誕生し、世界の大手企業もメンバーとして同OSの業界標準化を後押しするという構図が出来上がったことは、2018年における特筆すべき出来事の一つだろう。

大学発ベンチャーとしては、埼玉工業大学のフィールドオート社も実証実験支援事業を展開することで注目を浴びる。MaaS分野では、公立はこだて未来大学発のITベンチャーである未来シェア社がAI(人工知能)を活用したオンデマンド・リアルタイム配車サービス「SAVS」を運用しており、今後の展開に期待が集まる。

CASEなど、自動運転の先に広がる最上位概念の登場

自動車業界の新時代の姿を象徴する言葉として「CASE」(つながる車、自動運転、シェアリング、電動化)というキーワードが広く浸透し始めた2018年。自動運転の実用化を前にしてシェアサービスや統合交通プラットフォームの登場などのMaaS系サービスの動きも活発になってきている。

具体的なサービスやプラットフォームの登場は注目を集めやすいが、将来の市場化を見越しての「仕込み」も進む。まだ量産化されていない自動運転車の車内向けメディアや広告配信プラットフォームの研究・開発などもその一つだ。

■ウーバーなど、ライドシェアのBIGベンチャーの市場評価の拡大加速

ライドシェア世界大手の米ウーバー・テクノロジーやシンガポールに拠点を置く東南アジア最大手グラブなどのビッグベンチャーの市場価値の拡大が加速している。

10兆円ファンドの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)の出資先となっていることのほか、グラブにはトヨタやティア1レイヤーの自動車関連企業のほか、実に多様な業種からの投資・出資も集まっている。急成長が見込まれるライドシェアに対しては決済や旅行業界なども熱視線を浴びせており、今後も積極的な投資が行われていきそうだ。

■(終わりに)実用化目標時期の2020年代を控えて

2020年代は各国が自動運転車の実用化の目標時期と据えている。来年2019年はその時期を迎える前に各社がさらに研究開発を加速させる年となりそうだ。開発レースがさらに激化する中、どの国・どの企業が次世代モビリティ市場のキープレイヤーとなるのかに、さらに注目が集まっていく。


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