タクシー配車アプリや提供企業を一挙まとめ 仕組みも解説

DeNA、ソニー、Uber、DiDi…


株式会社ディー・エヌ・エーは2018年10月15日、神奈川県で運用中のタクシー配車アプリを東京都内に拡大することを発表した。ソニーが参加する「みんなのタクシー」も2018年度内に配車サービスなどを開始することとしているほか、9月には米Uberの日本法人が愛知県、中国DiDiの日本法人が大阪府で相次いで配車サービスを開始している。







偶然とは到底思えないこのタイミングでの業界の動きに、どのような背景があるのか。今回は、配車アプリ・サービスを舞台としたタクシー業界の競争の裏側を探ってみよう。

■日本国内のタクシー配車アプリ・サービス
JapanTaxi:国内タクシーの30%をカバー

JapanTaxi株式会社が運営する日本最大級のアプリで、2011年に日本初のタクシー配車アプリとしてスタートした。47都道府県で国内のタクシー車両の約30%にあたる約7万台をカバーしており、累計ダウンロード数は550万(2018年8月現在)にのぼるという。

タクシー車両の後部座席に搭載されたタブレットに表示されたQRコードを読み込むだけのQRコード決済をはじめ、クレジットカード、Apple Pay(iOS端末)、Google Pay(Android端末)、Yahoo!ウォレットなどのキャッシュレス決済が可能で、英語・中国語・韓国語に対応するなど、タクシーのユーザビリティーを最適化している。

もともとは「全国タクシー」という名称を使用していたが、グローバル展開を見据えて2018年9月12日から「JapanTaxi」に変更している。トヨタ自動車は2018年2月にJapanTaxiに75億円を出資することで合意している。

タクベル:DeNAが運営、神奈川から東京へ進出してAIで先行アプリと勝負

神奈川県タクシー協会の協力のもと、DeNAが2017年9月からAI(人工知能)を活用したタクシー配車アプリ「タクベル」の実用実験を横浜市で行ってきており、2018年7月には神奈川県に範囲を拡大した。

同協会に加盟している182事業者のうち82事業者がタクベルを導入しているという。同年10月には、東都自動車・日の丸自動車と東京23区内で協業開始することを発表しており、第一交通グループや平和交通、荏原交通の3社も参画する予定。2019年春頃には京阪神エリアへの進出も予定している。

タクベルには、AIを活用する「需要予測システム」を導入予定で、タクシーのプローブデータや公共交通機関の運行状況、イベント、商業施設のPOI情報など需要に関連する情報を解析する。

利用者側は、周辺を走行中の空車車両をリアルタイムで確認することができ、全事業者を横断した配車ができるためより近い車両に対する配車依頼が可能という。

UberTaxiアプリ:米Uberは名古屋で本格スタート

米ライドシェア大手のUberは2014年から東京都内でタクシー(ハイヤー)配車サービスをおこなっていたが、2018年9月に愛知県のフジタクシーグループとの協業を発表し、本格的に配車サービス事業に着手した。

アプリは、行き先を入力してタクシーを依頼するとドライバーとマッチング。ドライバーの名前や車種なども確認できるほか、直接連絡することも可能。乗車後は行き先までのルートや到着予定時間を確認できる。到着時は、クレジットカード決済のためそのまま降車できる。

DiDiモビリティジャパン:中国DiDiとソフトバンクが大阪で旗揚げ

中国ライドシェア大手のDidi Chuxing(滴滴出行:ディディチューシン)とソフトバンク株式会社が立ち上げたDiDiモビリティジャパンは、2018年9月27日から大阪エリアでタクシー配車プラットフォームの提供を開始している。

第一交通産業グループをはじめ、大阪エリアで営業している12社と提携している。支払いはアプリ上での決済(クレジットカード決済、Alipay、WeChat Pay)や各車両が対応している決済方法から選択できる。 AIが乗客とドライバーを最適にマッチングするシステムにより、ドライバーは「DiDiドライバー」アプリを通して配車依頼を受けることで、乗客を探して移動する空車時間を削減することができる。

kmタクシーアプリ:国際自動車が運営、東京中心に3600台のキャパシティ

国際自動車が提供する配車アプリで、東京都を中心に3600台のタクシーが対象となっている。お気に入り地点の登録や目的地の簡単送信機能、ルートや料金の検索・概算などが可能となっている。

フルクル:スマホを振って近くの空車をマッチング

「kmタクシーアプリ」を有する国際自動車株式会社がこれとは別に展開しているアプリが「フルクル」だ。アプリを起動してスマホを振ることで、半径約500メートルの範囲にいる空車タクシーに乗車意思が伝えられ、ドライバーが利用者のいる場所に向かうサービス。

利用者は、スマホの地図上で周辺の空車タクシーの動きを見ることができ、車が近づくと、スマホのバイブレーションで通知してくれる。通常の配車アプリと異なり、周囲に空車がない場合などは利用できず、乗車を確約するものではないため、迎車料金などはかからない。

ココきて・TAXI:帝都自動車が運営、首都圏で利用可能

帝都自動車が運営する配車アプリで、東京23区など首都圏で利用可能だ。配車注文や予約注文、料金検索、降車地検索、迎車位置確認などの機能を有している。

スマホdeタッくん:東京ハイヤー・タクシー協会が運営

一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会が運営する共通タクシー配車アプリ。加盟事業者は東京最大で、約9300台の中から最寄りのタクシーを配車する。

みんなのタクシー:2018年度内にアプリ提供開始予定

みんなのタクシー株式会社は、東京都を拠点とするタクシー事業者5社と、ソニーとソニーペイメントサービスの計7社が株主となっている。

参画しているタクシー会社は、株式会社グリーンキャブ、国際自動車株式会社、寿交通株式会社、大和自動車交通株式会社、株式会社チェッカーキャブだ。5社の対象エリアにおけるタクシーの総台数は1万台強で、東京都内の4分の1から5分の1ほどを占める規模となっている。

2018年度中にタクシーの配車サービスを提供開始予定で、決済代行サービスのほか、後部座席広告事業の展開も計画している。ソニーの先進技術を活用したAI需要予測も導入する予定だ。

■タクシー配車アプリとライドシェア

配車アプリはスマホの浸透とともにタクシー会社各社が独自に導入しており、プラットフォーム提供事業者も当時から活躍していた。しかし、ここにきて明らかに競争が激化している。その背景には、海外で猛威を振るうライドシェア事業者の存在がありそうだ。

ライドシェア事業者は、配車システムこそが事業の核であり、その象徴が配車アプリだ。相次いで日本進出を果たしたUberやDiDiは、日本の規制上国内でライドシェア事業は展開できず、2015年には福岡で行われたUberの実証実験が、営業許可を受けずに自家用車で営業する「白タク」行為とみなされ、道路運送法に抵触する可能性があるとして禁止に追い込まれている。

それでも日本の市場を諦めきれない両社は、飲食物のデリバリーサービスなどの別事業の展開や、国内企業・タクシー事業者との連携の道を探り、ついに配車サービスの実施にこぎつけたのだ。ライドシェアとタクシー配車の違いはあるものの、海外で圧倒的なシェアを誇る両社は、今後も配車システムを武器に拡大路線を突き進むことが予想される。また、将来ライドシェアサービスが解禁される可能性も考慮すると、主導権を完全に握られることにもつながりかねない。

タクシー配車サービス競争は将来の業界の主導権争いに直結するといっても過言ではなく、それ故ソニーが取りまとめる「みんなのタクシー」やDeNAのサービスのように、システム開発に高い能力を持つ業界外の企業と連携した動きが加速化しているものとみられる。

■今後はサービスの多角化で競争が過熱

個々のタクシー事業者専用の配車サービスアプリを含め、さまざまなアプリが出揃ってきた。DeNAは本拠地の神奈川県、UberやDiDiは海外客の利用も考えてそれぞれ空港がある大都市をスタート地に選んだが、みんなのタクシーを含め各々が全国展開を目指しており、直接競合する日もそう遠くないものと思われる。

競争に勝つためには、どれだけ多くのタクシー事業者と手を結べるかといった基本的なサービス面から、乗客やタクシー事業者・ドライバーが望むサービスや付加価値をどれだけ開発できるかにかかっている。AIを駆使した需要予測や広告事業などはもちろん、他の公共交通機関との決済共通化など、MaaS(Mobility as a Service)の観点も交えたあらゆるサービスが今後誕生し、発展していくことに期待したい。

【参考】タクシー業界の取り組みについては「日本のタクシー業界、改革へ11案策定 ダイナミックプライシングや相乗りサービス」も参照。







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