“トヨタペイ(TOYOTA Pay)”誕生の布石か 700兆円MaaS市場見据え、スマホ決済導入か 自動運転実現で有望

Origamiと資本業務提携



自動運転社会の到来で2040年には700兆円規模になるという予測もあるMaaS市場。膨大な決済機会が生じるその未来を見据えた”TOYOTA Pay”誕生の布石とも言える発表が、先週あった。


それが、日本のキャッシュレス化の先駆けとも言えるOrigamiとトヨタファイナンスの資本業務提携だ。Origamiの金融サービスプラットフォームを活用し、2019年度をめどにスマホ決済サービスの導入準備を進めるという内容だった。

MaaS市場の「主戦場」は自動運転車やつながるクルマだ。トヨタ自動車がいまのこの時代を自動車業界における「100年に1度の変革期」(章男社長)と位置付け、「自動車を作る会社」から「モビリティカンパニー」への変革を目指す中、トヨタが次世代自動車向け決済を自社展開すると予測しても、決してそれは不躾なものと言えないだろう。

トヨタが資本業務提携するOrigami社とはいったいどういう会社なのかを探りつつ、自動車業界のキャッシュレス化の動きも含め、トヨタグループの未来事業に仮説を立ててみよう。

【参考】関連記事としては「【速報】トヨタ決算発表、豊田社長「”自動車を作る会社”から”モビリティカンパニー”に」」も参照。


■キャッシュレス化の先駆けOrigamiの戦術

2016年に提供を開始したOrigami Payは、スマホを使ってキャッシュレスで決済できるサービス。アプリをダウンロードしてアカウントを作り、自身のクレジットカードや銀行口座を登録するだけ。加盟店での支払い時に、QRコードのスキャン、もしくはバーコードの提示で支払いが完了する。

手数料や登録料などはかからず、国際的なセキュリティ基準「PCI DSS」に準拠したセキュリティで安心して使えるという。また、アプリの特性を生かした割引などのクーポンも気軽に利用できるのが特徴だ。

国内のキャッシュレス促進の機運の中、消費者からは便利でお得、安心に使えるスマホ決済サービスへのニーズが高まっており、一方の事業者からは、各社がそれぞれに決済サービスを新たに開発・実現するのではなく、共通して活用できるプラットフォームを求める声が多い。

こうしたニーズに応えるため、Origamiは自社の金融サービスプラットフォームを幅広い業種のパートナー企業に広く解放していくことを2018年9月に発表した。また、これに合わせてSBIインベストメント系投資ファンドやトヨタファイナンスなどからシリーズCラウンドとして総額66.6億円の資金調達を実施したことも発表している。


具体的には、Origamiの決済機能をパートナー企業のサービスに搭載できるオープンプラットフォーム「提携Pay」を開始する。Origamiの提供するSDK(Software Development Kit)をパートナー企業が自社アプリなどに組み込むことで、当該アプリのユーザーがOrigamiの加盟店ネットワークや多様な支払い手段を活用した決済が可能になるサービスだ。

Origami Payの決済機能は2018年1月にクレディセゾンのセゾンカード・UCカード会員向けのスマホアプリに搭載されており、現在もRIZAPグループやテレビ東京、浜松・浜名湖ツーリズムビューロー、各金融機関など数十社と連携に向けて協議中という。

■トヨタファイナンスが見据えるのはMaaS全盛時代か

Origamiとの資本業提携に関しトヨタファイナンスは、Origamiが提供する「QRコード」によるスマホ決済サービスを利用できる「Origami Pay」の加盟店の拡大に取り組み、「Origami Pay」の利便性向上に努めるとともに、来年度をめどにスマホ決済サービス「TOYOTA TS CUBIC Origami Pay」・「LEXUS Origami Pay」(ともに仮称)の導入を予定しており、トヨタ・レクサス販売店において利用できるよう検討を進めていくこととしている。

通常、自動車の購入など多額の売買においてはローンを前提としたクレジットサービスなどが利用されており、スマホ決済で自動車を買うイメージは沸かないだろう。スマホ決済・QRコードは、小銭を伴うような少額の決済でより利便性を発揮するサービスだ。

各加盟店ネットワークとの連携によるサービス向上といったメリットもあるが、トヨタグループの中核をなす金融事業会社としては、やはり自動車分野での活用に期待したい。

自動車業界では、ライドシェアに代表されるシェアリングサービスやコネクテッド化など、MaaS(Mobility as a Service)分野が今後急速に伸びるものと予測されており、スマホアプリを通じたタクシーの配車・決済や駐車場料金の決済、コネクテッドサービスにおける娯楽・セキュリティ面の課金など、あらゆる面でさまざまなビジネスやサービスが誕生し、それに伴って費用・料金も発生する。

こういった場面で有効活用されるのが、気軽に利用可能なキャッシュレス決済サービスだ。また、消費者の利便性を考慮すると、互換性のないさまざまな決済サービスが乱立するのも面倒となるため、共通して利用できるプラットフォーム化された決済サービスがあると非常に便利となる。

トヨタも近い将来、QRコードなどを使った自前の電子決済サービスを持つ可能性が高く、そういった取り組みにいち早く着手したのではないか、との憶測も真実味を帯びたものに聞こえる。

■広がる自動車業界のキャッシュレス化

決済サービス世界最大手の米Visaも車載型商取引を推進しており、ラスベガスで開催されたCES2017では、ホンダと共同開発を進めている「In-Vehicle Payment」システムを発表。ガソリンスタンドやコインパーキングなどで車に乗ったまま支払いを行うことができる技術で、キャッシュレス化を図るほか、給油用アプリを使用することで、給油ユニットの横に停車するだけで満タンに必要な給油量を的確に把握し、料金が計算することも可能という。

また、JapanTaxi株式会社が提供する日本最大のタクシー配車アプリ「JapanTaxi(旧全国タクシー)」なども、クレジットカードやQRコードによるキャッシュレス決済を可能とするなど、利便性の高いキャッシュレスサービスは徐々に広がっているようだ。


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