自動車業界の新たな基軸となっている「CASE」。「Connected」(コネクテッド)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Services」(シェアリング/サービス)、「Electric」(電気自動車)の頭文字をとった造語で、中長期的に業界が目指すべき指針として多くの自動車メーカー意識している。
CASEとは具体的にどのようなものか。その概要とともに、「C」「A」「S」「E」それぞれにおける最新の業界の動向に迫る。
・2025年5月16日:「S」と「E」の最新動向を大幅に追記。
・2025年3月19日:自動運転レベル3と自動運転タクシーの状況を更新。
・2024年10月15日:トヨタのCASEの取り組みを追記。
・2024年9月19日:自動運転やライドシェアの状況をアップデート
・2024年1月23日:自動運転(A)に関して、レベル3の展開状況をアップデート
・2023年9月27日:コネクテッド(C)に関して、クラウド大手のシェア争いについて追記
・2018年10月31日:記事初稿を公開
記事の目次
■CASEとは?簡単に言うと?
CASEの各アルファベットが示す意味は以下の通りだ。2016年のパリモーターショーにおいて、ダイムラーAG・CEOでメルセデス・ベンツの会長を務めるディエター・チェッチェ氏が発表した中長期戦略の中で用いたのが始まりだ。
- C:Connected(コネクテッド)
- A:Autonomous(自動運転)
- S:Shared & Services(カーシェアリングとサービス/シェアリングのみを指す場合もある)
- E:Electric(電気自動車)
【参考】ダイムラーの戦略については「ダイムラーの自動運転戦略まとめ 計画や提携状況を解説」も参照。
変革の時代を迎えている自動車産業の動向を象徴するキーワードであり、ハード面における自動車の物理的変化とともに異業種を交えたモビリティサービスの重要性を示唆するものとなっている。
ダイムラーは、この4つのテーマの最適な組み合わせを実現することで、従来の自動車メーカーからモビリティサービスのプロバイダーへの変身を目指すこととしている。
また、「従来のクルマをつくる会社からモビリティ・カンパニーにモデルチェンジする」ことを宣言したトヨタ自動車も、CASEを意識した事業展開を図っていく構えだ。
ソフトバンクとの共同出資会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」の設立記者会見の席で、豊田章男社長は「100年に一度の大変革の時代を向けているが、その変化を起こしているのはCASE」と話し、「コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化といった技術革新によってクルマの概念が大きく変わり、競争の相手も競争のルールも大きく変化している。これからのクルマは、あらゆるサービスとつながることによって社会システムの一部になる」との考えを示している。
【参考】モネテクノロジーズについては「MONET Technologies(モネテクノロジーズ)とは? トヨタとソフトバンク出資、自動運転やMaaS事業」も参照。
■CASEの読み方は?
CASEは「ケース」と読む。
■CASEのC(Connected)の業界動向
ICT端末としての機能を有するコネクテッドカーは、車両の状態や周囲の道路状況などさまざまなデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、さまざまな価値を生み出す「つながるクルマ」を指す。通信機能を生かすことで、エンターテインメントをはじめとしたさまざまなサービス展開が予想される。
自動車のコネクテッド化、標準化の流れ
国内においては、トヨタ自動車が2018年6月の新車発売を機にコネクテッドサービス「T‐Connect」を本格スタートしており、今後国内で発売するほぼ全ての乗用車にDCM(車載通信機)を搭載してコネクテッド化を加速させる方針を明らかにしている。
日産自動車は、米マイクロソフトとの提携のもと「NissanConnect」サービスを展開。スマートフォンとの連動機能などが特徴だ。スバルは、コネクトサービス「STARLINK(スターリンク)」について、日本や北米などの主要市場で2022年までに8割以上の新車をコネクテッドカーにする目標を据えている。
マツダは、「安心・安全」「ドライビングインテリジェンス」「アミューズメント」をコンセプトに据えたコネクテッドサービス「G-BOOK ALPHA」を提供しており、トヨタとのアライアンスを最大限活用していく方針を発表している。ホンダは、ソフトバンクとの提携のもと研究開発強化を図っており、2018年度からコネクテッドサービスの展開に向けた体制の構築をはじめとする部署の新設や再編を行うと報じられてる。
通信事業者も自動車・部品メーカーに接近
通信事業者では、ソフトバンクのほか、通信プラットフォームの構築をはじめとした技術開発や標準化に向け、NTTやKDDIもトヨタと協業を進めており、NTTドコモは部品サプライヤーの仏ヴァレオグループとコネクテッドカービジネスのサービス開発や展開において協業することを2018年4月に発表している。
【参考】NTTドコモとヴァレオの協業については「コネクテッドカーのサービス開発で協業発表 NTTドコモと仏部品大手ヴァレオ」も参照。
このほか、GMOクラウドが車種を問わずに車両を「つながるクルマ」化することを目指し技術開発を進めるといった動きや、ルネサスエレクトロニクスがコネクテッドカー用のソフトウェア開発ツール(SDK)の提供を開始するなどの動きもある。
【参考】GMOについては「GMOクラウド、車種問わず「つながるクルマ」化 IoTソリューションを開発 コネクテッド事業展開」も参照。ルネサスエレクトロニクスについては「半導体大手ルネサス、AWSと連携可能なSDKの提供開始 コネクテッドカー向け」も参照。
一方、海外でも独BMWとダイムラー、アウディの3社が、通信機器メーカーや半導体メーカーなどと5Gを使ったコネクテッドカー関連サービスの開発で提携するなどさまざまな動きを見せている。
【参考】コネクテッドカーについては「コネクテッドカー・つながるクルマとは? 意味や仕組みや定義は?」も参照。
クラウド大手のシェア争いも過熱へ
自動車のコネクテッド化や自動運転化で必ず使用されるのが、「クラウドサーバー」だ。クラウドサーバーを展開している世界的な大手企業はAmazonやGoogle、Microsoftなどで、それぞれが「AWS」「Google Cloud」「Azure」を展開している。
今後展開するコネクテッドカーや自動運転車がどのクラウドサーバーを選ぶのかは、クラウド大手各社にとって非常に重要だ。特に自動運転車は走行に伴って莫大なデータの送受信が必要になってくるため、契約を獲得できればクラウド大手にとっては「超お得意様」となる。
この辺りの事情などについては、自動運転ラボの以下の記事を参考にしてほしい。
【参考】関連記事としては「アマゾン、自動運転用クラウドで「次の一攫千金」へ Googleとの競争過熱」も参照。
■CASEのA(Autonomous)の業界動向
多くの自動車メーカーがすでに自動運転レベル1〜2の技術を市販車に搭載しているが、レベル3の技術の搭載に成功できているのは、2025年時点では以下の4社のみだ。ホンダが2020年3月に搭載車を発表したのを皮切りに、レベル3機能を実装した車両を各社が続々スタートしている。
- ホンダ
- メルセデス
- BMW
- ステランティス
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3機能、「世界3番目」はBMW濃厚 来年3月から提供」も参照。
ちなみに自動運転レベル1は「運転支援」、自動運転レベル2は「部分運転自動化」、自動運転レベル3は「条件付き運転自動化」、自動運転レベル4は「高度運転自動化」、自動運転レベル5は「完全運転自動化」のことを指す。
市販車ではレベル3、タクシーではレベル4が実現
世界的にみると、市販車では前述の通り自動運転レベル3の技術の搭載が実現されており、自動運転レベル4についてはシャトルやバス、タクシーへの搭載で実現されている。
自動運転タクシーではアメリカのWaymoが業界をリードしており、日本でもホンダや日産が自動運転タクシーの展開計画を発表し、2026〜2027年以降にかけての首都圏でのサービスインが期待されている。自動運転シャトルでは、フランスのEasy MileやNavyaなどが業界をリードする存在だ。
自動運転レベル3と自動運転レベル4の違いは、特定エリア内における自動運転の主体が「人」か「システム」かだ。レベル3は「人」が運転の主体で、レベル4は「システム」が運転の主体となる。レベル4とレベル5の違いは、特定エリア内かエリア制限がないかだ。レベル5になると、どこでもいつでも自動運転が可能になる。
▼自動運転のレベル分けについて|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
【参考】自動運転レベルについては「自動運転レベルとは?」も参照。
世界でIT企業の参入が顕著な状況
自動運転分野においては、IT企業の参入が顕著だ。アメリカではGoogleがWaymoを通じて参入しており、Appleも秘密裏にApple Carの開発を進めている。Intelもイスラエル企業Mobileyeを買収し、世界で自動運転タクシーの展開を目指している。
中国ではネット検索大手・百度などが自動運転車を開発し、すでに中国国内で自動運転タクシーの有料サービスを展開している。ロシアでは「ロシアのGoogle」と呼ばれるYandexが、自動運転では頭一つ抜きんでている。
ちなみに日本のソフトバンクグループは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を通じ、自動運転技術を開発するさまざまなスタートアップ企業やベンチャーに投資を行っている。
自動運転領域における日本のスタートアップやベンチャー企業としては、オープンソースの自動運転OS(基本ソフト)「Autoware」を開発するティアフォーや、自動運転車や自動配送ロボットなど幅広いアプローチを見せるZMPなどの存在が目立っている。
【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ一覧」も参照。
カーシェアとライドシェアが代表格
S(Shared & Services)の代表格は、カーシェアリングとライドシェアリングだろう。両者とも2010年代に市場を急拡大している。
カーシェアは一台の車両を複数人でシェアするサービスで、企業が個人に貸し出すBtoCや、個人間でやり取りを行うCtoCがある。主流はBtoCタイプで、CtoCは個人を仲介するプラットフォームビジネスの色が強い。
公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団の調査によると、2024年3月時点における国内のカーシェアリング用デポジット数は2万6,797カ所(前年比17.6%増)、貸渡車両数は6万7,199台(同19.6%増)、会員数は469万5,761人(同50%増)で、右肩上がりが続いているようだ。
マイカー需要は依然高いものの、自家用車の実際の利用率はそれほど高くない。買い物や送迎などで毎日のように利用している人でも、一日1時間程度の利用に留まることが多く、マイカーは大半の時間を駐車場で過ごしているのだ。
こうした現状を踏まえると、利用したいときに短時間利用可能なカーシェアはもってこいだ。高額な購入費と維持費をかけて自分専用を持つか、共用だが比較的自由に使える安価なカーシェアを利用するか――と考えた場合、後者を選択する人は潜在的にもっと多いはずだ。
今のところ需要の多い都市部が中心となっているが、比較的人数の少ない地域でのビジネス手法が確立されれば、まだまだ市場は拡大しそうだ。
ライドシェアも2010年代に世界各地で大きく市場を開拓した。自家用車を用いて移動希望者を輸送するタクシーのようなサービスだが、スマートフォン×マッチングプラットフォームの登場で一気に需要に火が付いた印象だ。
海外では、米Uber Technologiesや中国Didi Chuxing(滴滴出行)、シンガポールのGrabといった巨大プラットフォーマーを中心にグローバル化が進み、自家用車による営業サービスに特段の規制がない国で瞬く間にサービスが広がった。
市場調査により差が大きいが、世界のライドシェア市場は2023年時点で100億~500億ドル(1.5兆~7.4兆円)規模と言われている。利用者は3億人を突破したという。
国内では日本版・公共ライドシェアが制度化
国内では、無許可で一般ドライバーが自家用車で有償移動サービスを行うことは白タク行為として厳格に禁止されている。
その一方、不足する公共交通を補う目的で、自家用有償旅客運送(公共ライドシェア)や自家用車活用事業(日本版ライドシェア)という独自の制度を設け、自家用車の活用を一部で推進している。
日本版ライドシェアは、タクシー事業者の管理のもと一般ドライバー×自家用車の利用を可能にする制度で、運行可能なエリアや時間帯などがあらかじめ定められている。タクシーの供給不足に資することが目的であるため、現状ビジネス性は低い。
2025年3月現在、大都市部12エリア、その他地域114エリアで展開されている。大都市部では、該当エリア内の総タクシー事業者1150事業者のうち457事業者が参加。その他地域では、同1747事業者中451事業者が参加している。
登録ドライバー数は7,278人で、運行回数は54万8,218回となっている。
【参考】ライドシェアについては「ライドシェアとはどういう意味?問題点は?料金は?免許は必要?」も参照。
【参考】日本版ライドシェアについては「ライドシェアとタクシーの違いは何?定義・法律・規制・運営主体は異なる?」も参照。
バッテリーシェアリングも登場
EV向けのバッテリーシェアサービスも今後注目が高まるかもしれない。中国の新興EVメーカーNIOが、自動で車載バッテリーを交換する設備「NIO パワースワップ」をすでに展開している。3分で満充電されたバッテリーに自動で交換することができるという。言わばバッテリーシェアだ。
国内では、電動バイクなどを対象にホンダがバッテリーシェアリングサービスを展開している。街中に設置されたバッテリー交換ステーションで、充電残量の少なくなったバッテリーを充電済みのバッテリーと交換することができる仕組みだ。サイズ・重量が少ないバイク向けなどでは手軽に利用できそうだ。
また、ENEOSも電動二輪蓄電池交換サービス(Gachaco)を展開するほか、バッテリー交換ステーションによるEV蓄電池交換サービスを検討しているようだ。
丸紅も物流分野におけるEV用バッテリーシェアリングに取り組み、実証を進めている。
物流分野にもシェアリングの波
物流分野では、荷主とトラックドライバーをつなぐマッチングサービスなどが展開されているほか、1台のトラックにさまざまな企業の商品を混載して輸送する物流シェアリングも行われている。商用車の領域におけるCASEの「S」だ。
ドライバー不足が慢性化する中、トラックの積載率を高め効率的な輸送を実現する取り組みと言える。
自動車にまつわる新サービス展開も
新たな目線では、トヨタグループのKINTOなども「S」の担い手と言えそうだ。同社は自動車のサブスクリプションサービス「KINTO ONE」をはじめ、愛車の機能向上サービス「KINTO factory」、新しい移動のよろこびを発見できるサイト「モビリティマーケット」の運営などを手掛けている。
自動車を活用したサービスと言うよりは自動車にまつわるサービスだが、こうした地道な展開が新たなサービスの基軸を生み出すことになる。
MaaSの進化にも注目
さまざまな交通サービスを統合し、移動に利便性をもたらすMaaS(Mobility as a Service)も「S」に含まれるものと解される。
バスやタクシー、鉄道をはじめとした既存交通などを結び付け、移動を便利かつ効率的なものへ進化させる概念だ。現在はプラットフォーム上で各移動サービスの情報を統合したり、デジタルチケットで決済面の統合を図ったりする取り組みが主体だが、地域経済と結び付けるなどまだまだ進化の余地がある。
今後のさらなる進展に期待したい分野だ。
【参考】MaaSについては「MaaS(マース)とは?移動手段を一元化、次世代交通の象徴」も参照。
■CASEのE(Electric)の業界動向
世界EVシェアは16%に、中国が牽引
EVは、純粋なバッテリー式電気自動車のBEVに、PHEV(プラグインハイブリッド車)とFCEV(燃料電池車)を加えた総称として用いられることが多い。
2015年に合意されたパリ協定を契機に、欧州を中心にBEV化の熱が一気に高まった。EUがBEVシフトの姿勢を鮮明にしたことでその影響が世界に広がり、世界各地の自動車メーカーがBEV開発を加速している。
IEA(国際エネルギー機関)によると、2015年のBEV販売台数は約33万台だったが、2018年に140万台、2020年に200万台、2023年には950万台まで数字を伸ばしている。PHEVも2015年の22万台から2023年の430万台へと大きく数字を伸ばしている。
世界の自動車販売台数に占めるEVシェアは2023年に16%まで高まっている。よく「EV市場は減速している」と言われるが、それは成長速度が想定に比べ伸び悩んでいるだけで、前年対比でみればしっかりと伸び続けているのだ。
国別では、ノルウェーやスウェーデン、フィンランドといった北欧諸国でEV普及率50~90%超に達するなどスタンダード化している一方、ドイツやフランスなどのEU主要国は20%台に留まる。米国で9%、日本に至っては3%台だ。
各国市場で温度差が広がる中、世界最大市場の中国が30%台まで大きく数字を伸ばし、市場全体を押し上げている。
普及の妨げ要因としては、高額な車両価格や航続距離への不満、充電インフラの不足などが挙げられるが、中国メーカーを中心に廉価モデルが広がりを見せ始めており、バッテリー能力の向上やインフラ整備面も少しずつだが改善し続けている。
今のところ環境負荷の低減を旗印にEV化が進められているが、自動車の電子制御化・コンピュータ化が進展していく観点からも、EV需要は伸びていくことが想定される。
自動運転をはじめ、ADASの高度化に伴いより高性能なコンピュータが自家用車に搭載され、動力面以外でも自動車における電力消費が増大していく。コンピュータ化によってさまざまなソフトウェアが導入されることで機能面も拡張していく。
こうした側面にもしっかりと注目していきたいところだ。
【参考】自動車のコンピュータ化については「自動運転とEV(電気自動車)の関係性解説」も参照。
全固体電池がまもなくEV市場を変える?
EVの普及は、バッテリー技術の進化に左右されると言っても過言ではない。一部自動車メーカーは航続距離1,000キロ超をうたうモデルを発表しているが、現行モデルの多くは400~700キロレンジに収まっている。軽自動車などはコストと重量を低く抑えるため、200キロ程度に設計している。
航続距離は走行環境により左右されるため、余力を踏まえると心許ないと感じる人も少なくないようだ。
バッテリー技術の早期進化が望まれるところだが、まもなく全固体電池が実用化される見通しだ。固体電解質を採用したバッテリーで安全性が高く、従来バッテリーに比べ充電速度や容量が飛躍的に増すという。
2026年ごろから搭載が始まる見込みで、全固体電池の登場によりEV普及が一気に加速する可能性もありそうだ。
ワイヤレス給電や走行中給電技術にも注目
充電・給電関連技術も重要だ。現在、利便性の高いワイヤレス給電技術の普及が始まっている。ケーブルを接続する手間がないため、所定の場所に駐車すれば充電を行うことが可能になるため、自宅などでの充電環境が便利になることは間違いない。
また、走行中給電の実用化を目指す動きも加速している。送電コイルが敷設された車道の上を、受電コイルを搭載した車両が走行するだけで電力が自動で伝達される仕組みだ。
コイルの敷設費用や充電効率などに課題はあるものの、インフラが整備され一定の充電効率を達成できれば、理論的にはEVは制限なしで走行し続けることが可能になる。
すべての道路にコイルを敷設することは現実的ではないが、公園や大型施設などで常にEVを稼働させているような場合、ルート上に敷設することで効率的なサービスの提供が可能になる。特定ルートを走行する自動運転バスなどにも有効かもしれない。
大阪・関西万博でも一部ルートで走行中給電の実証が行われており、今後実用化に向けどのような動きが出るのか注目だ。
【参考】充電・給電技術については「「ワイヤレス給電」普及へ協議会!自動運転で「ほぼマスト」の注目技術」も参照。
■【まとめ】自動運転サービスはCASEの象徴
自動運転サービスは、ある意味CASEを象徴する存在と言える。自動化、コネクテッド化、EV化が図られ、そのうえでさまざまなサービス展開が想定されるためだ。
将来、自動運転技術が一定水準に達すれば、バスやタクシー、配送といった既存の用途を超え、移動ホテル、移動コンビニなどさまざまなサービスが派生することが予想される。モビリティを活用したさまざまなサービスが誕生するのだ。
自家用車も、自動運転機能を搭載することでドライバーの概念がなくなり、さまざまな用途に使用されていく可能性を秘める。こうした未来を見据えた各社の取り組みに引き続き注目したい。
■関連FAQ
CASEは、「Connected」(コネクテッド)、「Autonomous」(自動運転)、「Sharing & Services(シェアリング/サービス)、「Electric」(電動化)の頭文字をとった造語だ。
ダイムラーのCEOでメルセデス・ベンツの会長を務めるディエター・チェッチェ氏が、2016年のパリモーターショーで説明した中長期戦略の中で使ったのが最初だとされる。CASEという言葉はその後広く浸透し、モビリティ業界の次世代を象徴するワードとして使われている。
「Connected(コネクテッド)」のことで、自動車に通信機能を持たせ、コネクテッド化させることを意味する。コネクテッド化することで車内でさまざまな映像コンテンツなどを通信によって利用可能になるほか、常時クラウドとのデータのやり取りが必要な自動運転車においても、コネクテッド技術は必要不可欠となる。
「Autonomous(オートノマス)」のことで、自動車を自動運転化させることを意味する。自動運転レベルは0〜5の6段階で表現され、2022年2月現在では、オーナーカー向けではホンダがレベル3を実現しており、自動運転タクシーサービスではレベル4が実現されている段階だ。
「Sharing & Services(シェアリング/サービス)」のことで、要はモビリティを使ったさまざまなサービスを展開することを指す。これまでは自動車は「販売」がゴールだったが、MaaSの流れもあり、車両を使ったさまざまなサービスを展開することが、自動車メーカーにとって重要な要素となりつつある。
「Electric」(電動化)のことを指す。内燃機関を有するガソリン車からEVにシフトする流れが起きており、各自動社メーカーが近年対応を迫られている。
(初稿:2018年10月31日/最終更新日:2025年5月16日)
【参考】関連記事としては「自動運転車とは? 定義や仕組み、必要な技術やセンサーをゼロからまとめて解説|自動運転ラボ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)