ライドシェアとタクシーの違いは何?定義・法律・規制・運営主体は異なる?

タクシーは許可制?ドライバーの免許は?



自家用車活用事業、通称「日本版ライドシェア」が導入され、間もなく丸一年を迎える。国内各地で導入が広がっているようだが、どのような成果を生み出したのだろうか。既存のタクシー事業への影響はどのような感じになっているのだろうか。


そもそも、日本におけるライドシェアは独自の制度設計となっており、海外版とはイメージが異なる。では具体的にタクシーとは何が異なるのか。タクシーとライドシェアの違いに焦点を当て、解説していく。

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■タクシーとは?

一般乗用旅客自動車運送事業として道路運送法に位置付け

タクシーは道路運送法に規定された道路運送事業の一つで、他人の需要に応じ有償で自動車を使用して旅客を運送する事業の一種だ。

同法第3条に規定される一般旅客自動車運送事業のうち、「一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約により国土交通省令で定める乗車定員(11人)未満の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)」に位置付けられる。


一般旅客自動車運送事業には、乗合バスなどの一般乗合旅客自動車運送事業、貸切バスなどの一般貸切旅客自動車運送事業もあり、タクシーなどの一般乗用旅客自動車運送事業と区別されている。

一般乗用旅客自動車運送事業を行うには国土交通大臣の許可が必要で、事業計画や事業用自動車の使用権原を証する書面、管理運営体制などを取りまとめて許可申請した上、法令試験に合格しなければならない。

一般乗用旅客自動車運送事業の許可を得ずに営利のタクシーサービスを提供すると、いわゆる「白タク行為」に該当するとして道路運送法違反に問われることになる。

関連法規としては、旅客自動車運送事業運輸規則やタクシー業務適正化特別措置法、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法などがある。


▼道路運送法
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000183
▼タクシー事業の関係法令一覧|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000003.html

運賃は徐々に柔軟化

タクシーは明確に法規定された事業であり、国土交通大臣の許可を受けなければならない移動サービス――ということだ。法人タクシーのほか個人タクシーもあるが、タクシードライバー経験や運転資金など一定の要件を満たさなければ許可は下りない。

また、「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」により、新規参入が制限される場合がある。タクシーは公共交通の一つに位置付けられているため、供給過剰・収入低下により事業継続が困難になると社会的損失となる。そのため、需給状況などを踏まえ一定地域を特定地域などに指定し、参入や増車を制限することがある。

運賃についても規制がある。運賃は道路運送法に基づく国土交通大臣の認可事項となっており、需要構造などをもとに各エリアの運輸局長が定める範囲内において各事業者が届け出ることとされている。運賃適用地域(運賃ブロック)は101地域に分けられている。

運賃の形態としては、距離制運賃、時間制運賃、定額運賃、事前確定運賃がある。原則として距離制運賃が適用されるが、柔軟な運用が進められており、配車アプリなどを用いて乗車前に運賃額を確定する事前確定運賃をはじめ、変動運賃(ダイナミックプライシング)、相乗運賃なども近年制度化されている。

▼タクシー運賃について|国土交通省資料
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001769794.pdf

ドライバーは二種免許の取得が必須

タクシードライバーになるためには、「普通自動車第二種運転免許」が必須となる。二種免許取得は「年齢21歳以上でかつ普通免許の取得から通算で3年以上」が要件となるため、初心者ドライバーがいきなりタクシードライバーになることはできない。

「流し」や「着け待ち」が主流、近年は「配車」も増加

サービス形態は、走行しながら客を探す「流し」や、駅前のタクシー乗り場や商業施設脇などに停車して客を待つ「着け待ち」が基本となるが、近年は配車アプリの普及により「配車」も増加傾向にあるようだ。

配車も以前から存在していたが、電話で配車依頼を受け、オペレーターが無線でタクシーに連絡するアナログな手法が主流だった。しかし、配車アプリの登場でオートマチック化が図られ、インターネット経由で乗車地と目的地が指定された依頼を受け、コンピュータが効率的な配車ルートなどを勘案したうえで近隣のタクシーに依頼を流す――といった省人化が実現している。

また、配車アプリの登場により、外国語主体のインバウンド対応にも道が拓けた。アプリが外国語に対応していれば、海外からの観光客も比較的スムーズにタクシーを利用できるようになった。こうした点もポイントだ。

車両要件は撤廃、さまざまなモデルが利用可能に

タクシー車両に関しては、かつては座席の寸法や乗降口の大きさなど細かい基準があり、それゆえクラウンなど一定の車種しか選択できなかった。しかし、車両の安全性向上などを背景にこの規制は2015年に廃止され、自由度が大幅に増した。

トヨタのタクシー向け車両「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」が幅を利かせているものの、現在ではプリウスなどさまざまなモデルが導入されている。中には、軽BEVのサクラを導入した事業者もあるようだ。

タクシー総数は約20万台、年間輸送人員数は10億人弱

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会が発行している「TAXI TODAY in Japan 2024」によると、2023年3月末の法人タクシー事業者数は5,580社で、車両数は17万3,041台、個人タクシーは2万6,979台で、タクシー総数は20万20台という。

出典:TAXI TODAY in Japan 2024(※クリックorタップすると拡大できます)

2002年のタクシー参入・増車規制緩和で一時増加傾向が続いたものの、2007年の22万2,522台をピークに減少傾向が続いている。

2022年度の輸送人員は9億6,800万人で、鉄道やバス、航空などを含めた交通機関におけるシェアは3.7%となっている。パーソナルな移動が主体のため、輸送人員ベースのシェアは低くなってしまうが、1970年ごろの輸送人員は40億人ほどと現在の4倍の水準を誇っていた。

2022年度の営業収入は1兆2,400億円となっている。事業規模としては、車両10台以下、従業員数10人以下の小規模事業者が全体の3分の2ほどを占めている。

年間賃金水準は、全産業平均569.82万円に対し、タクシーは420.08万円となっている。2013年ごろを底に上昇傾向にあるものの、依然として低い水準にある。

▼TAXI TODAY in Japan 2024
http://www.taxi-japan.or.jp/pdf/Taxi_Today_2024.pdf

■ライドシェアとは?

相乗りサービスが進化、配車アプリの登場で新たなビジネスに

ライドシェアは、一般ドライバーが自家用車を使用して相乗り輸送するサービスを指すことが多い。アメリカのUberやLyft、中国のDiDiなどがリーディング企業であり、商用サービスとして大々的に利用者を増やすことに成功したのはこれらの企業だ。

ライドシェアはかつては、従業員が一台のクルマに相乗りして職場に出勤するなど、目的地を同じくする人たちによる営利外の利用が主体だった。しかし、スマートフォン・配車アプリの登場で営利性が一気に増した。乗せたい人と乗りたい人を結びつける有料マッチングサービスにより、目的地の方向も関係なく移動希望者を輸送してお金を稼ぐサービスが主流となった。

UberEatsのデリバリーなどと同様、ドライバーは好きな時間に好きなだけサービスを提供することができ、収入を得ることができる。本業として、あるいは副業として気軽に参加できるため登録ドライバーは一気に増加し、乗客を待たせることなくサービス提供できる体制が構築された。これが現在の一般的ライドシェアだ。

乗客目線では、一般ドライバーであれ自家用車であれサービスはほぼタクシーと同一のため、既存タクシーサービスの質が低い国を中心にライドシェアは瞬く間にシェアを伸ばした。こうした新サービスを規制する法律が未整備の国では、最低限のルールだけ設けて認可する動きや、一定要件のもと登録制・許可制とする動き、厳格に禁止する動きなど対応が分かれている。

日本では公共交通維持を目的に「自家用有償旅客運送」を運用

日本では、一般ドライバーが自家用車を使って有償サービスを提供するものは道路運送法に抵触するため、白タク行為として明確に禁止されている。世界で言うところのライドシェアは日本では禁止されているのだ。

ただし、例外規定が存在し、要件を満たせば類似サービスを行うことが可能だ。その一つが「自家用有償旅客運送」だ。

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

地方で公共交通空白地が目立ち始め、それを補う仕組みとして2006年施行の改正道路運送法第78条~79条に盛り込まれた。

78条には、事業用自動車以外の自家用車を有償運送の用に供することが可能なものとして、以下が定められた(その後の改正内容を含む)。

  • ①災害のため緊急を要するとき
  • ②市町村、特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、国土交通大臣の許可のもと地域住民または観光旅客その他地域を来訪する者の運送を行うとき
  • ③公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受け地域または期間を限定して運送の用に供するとき

自家用有償旅客運送は②に位置付けられ、自治体など地域関係者との協議の上、自家用車を活用した移動サービスの提供が可能になった。ただし、営利目的は認められておらず、最低限の収益を確保する形での運賃設定が認められている。

同制度は現在、交通空白地有償運送と福祉有償運送の2種があり、国土交通省によると2022年末時点で交通空白地有償運送に670団体4,304車両、福祉有償運送に2470団体1万4,456車両が登録されている。交通空白地有償運送は全国1,741市区町村中572市区町村で導入されており、導入率は33%に上る。

日本版ライドシェア「自家用車活用事業」も誕生

日本ではこの自家用有償旅客運送が長らく運用されており、ライドシェアは厳禁とする流れが主流となっていた。しかし、コロナ禍を経て状況が一変した。

コロナ禍における移動需要の減退でタクシードライバーは減少したが、コロナが明けた際、鬱憤をはらすかのように移動需要が急伸し始めた。円安も相まってインバウンドも急増し、大都市や観光地を中心にタクシー不足が顕著となった。

そのタイミングで政府与党の有力議員がライドシェア解禁論に言及し、流れが一変したのだ。解禁派が次々と手を上げ、正式に国の議論の俎上に載った。

ただ、タクシー業界を中心とする反対派や慎重派も根強く、議論の末「自家用車活用事業」の創設が決定した。法的には前出の道路運送法78条③を根拠としている。

これが日本版ライドシェアと言われる制度で、2024年4月にスタートした。さまざまな制限が課されているものの、一般ドライバーが自家用車を活用してサービス提供することが可能になった。二種免許も不要だ。

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

まず、国がタクシー供給が不足しているエリアや時間帯、曜日などを割り出し、不足数に応じて充足すべき台数を算出する。その範囲において一般ドライバーが参加することが可能になる仕組みだ。

ただし、サービス主体はあくまでタクシー事業者であり、同事業に参加するタクシー事業者が一般ドライバーを募集し、配車サービスに限定する形でサービスを提供する形態となっている。海外版では、配車アプリを提供するプラットフォーマーと一般ドライバーがサービス主体となるが、日本ではあくまでタクシー事業者が主体となるのだ。

このため、一般ドライバーはタクシー事業者と雇用関係を結ぶなど、パートのような形で所属しなければ参加できない。時給制を採用しているところが多いようだ。稼働時間帯や曜日なども制限されるため、好きな時間に好きなだけ――とはいかず、半端な状態が続いているように感じられる。サービス形態としては「配車」のみ認められており、流しや着け待ちは厳禁となっている。

稼働可能なエリアや条件の緩和が進められているものの、あくまでタクシーの需給バランスを是正するための制度として設計されているため、一般ドライバー目線ではあまりメリットのない制度と言える。タクシードライバーのお試し制度としては有用かもしれない。

サービス提供エリアは拡大中だが、地方は苦戦傾向に

日本版ライドシェアは2025年3月現在、大都市部12エリア、その他地域114エリアで展開されている。大都市部では、該当エリア内の総タクシー事業者1150事業者のうち457事業者が参加。その他地域では、同1747事業者中451事業者が参加している。

全エリアを合わせた登録ドライバー数は7,278人で、運行回数は54万8,218回、1台1時間あたりの運行回数平均は0.3回となっている。東京を中心とする大都市部では効果的に稼働している一方、地方ではほとんど利用がないエリアもあるようだ。

本格版ライドシェア解禁議論は棚上げ状態?

ライドシェアに関する議論は内閣府の規制改革推進会議で進められており、2024年5月の段階では、自家用車活用事業のモニタリングと検証を進め、並行してタクシー事業者以外の者が行うライドシェア事業について法制度を含め事業の在り方の議論を進めるとしている。

ただ、その後の規制改革推進会議の中で踏み込んだ議論が行われた形跡はない。岸田政権から石破政権への移行、そして与党の弱体化などを背景に、再び潮目が変わったのかもしれない。

■【まとめ】日本版ライドシェアはどのように評価されるのか

日本においてタクシーは公共交通の一翼を担う存在に位置付けられており、それゆえ特段規制のないライドシェアとは明確に区別されているようだ。

日本版ライドシェアが導入されたものの、一般ドライバー目線では自由度が低く、タクシー事業者の関与を必須としていることから海外版とは大きく異なる形式と言える。

おそらく、無条件の本格版ライドシェアは日本では解禁されないものと思われる。推進派目線における今後の焦点は、妥協点をどのように設けるか――ではないだろうか。一般ドライバーの自由度を確保しつつ、稼働条件や安全確保策を一定程度課す形で折り合いを付けなければ、議論は平行線のまま終わる可能性が高いように感じる。

まずは、規制改革推進会議で日本版ライドシェアがどのように評価されるのか。その結果を待ちたい。

【参考】ライドシェアについては「ライドシェアとはどういう意味?問題点は?料金は?免許は必要?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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