2018年の自動車系キーワード、プレスリリース登場数ランキング 自動運転、コネクテッドカー、CASE、MaaS…

1位は「667回」、2位は「462回」



さまざまなニュースで溢れかえった2018年。自動運転分野では、コネクテッドカーライドシェアMaaSなどといった特定のキーワードが多く飛び交い、少しずつ社会に浸透していくさまが見て取れた。


そこで今回は、プレスリリース・ニュースリリース配信サービスを手掛ける「PR TIMES」を活用し、自動運転にちなんだキーワードについて、2018年にリリースされたニュースの検索数をもとにランキング化してみた。

■1位:自動運転 667回

非常に多岐に及ぶ発表がずらりと並ぶ自動運転だが、新興企業による取り組みがひときわ目を引く。7月9日には、埼玉工業大学が自動運転技術の研究・開発を産学連携で推進するための大学発ベンチャー「株式会社フィールドオート」の設立を発表したほか、7月11日には、堀江貴文氏がアドバイザーに就く自動配送ロボットの開発を行うスタートアップ「株式会社Hakobot」の設立も発表されている。

11月12日には、次世代放射線検出器の設計開発を手掛けるANSeeNが、シリーズAラウンドで約3億円の資金調達を行ったと発表。自動運転分野でも活用できる世界初の量産可能な超高解像X線イメージセンサ開発を推進していくこととしている。

実証実験に関する発表も多く、DeNAとヤマト運輸は4月24日、約1年間実施した次世代物流サービスの実現を目指すプロジェクト「ロボネコヤマト」の一環として、自動運転車両を用いた配送の実証実験を実施したことを発表した。また、近畿日本ツーリスト首都圏、アイサンテクノロジー、アークノハラ、群馬大学は10月24日、「島しょ地域交通サービス」事業を受託し、実用化に向けた検証として、三宅島で自動運転車両を活用したモニターツアーを実施することを発表した。


このほか、自動運転ソフト開発を手掛けるトヨタ自動車の新会社「TRI-AD」が、即戦力エンジニアの新規採用を開始したことを6月13日に発表している。将来的に1000人規模の開発体制を目指し、グローバルにエンジニアの採用を行う方針で、求める人材として「情熱を持って世界トップレベルの自動運転技術の開発を推進できる即戦力」を挙げている。

自動運転実用化に向けた開発競争に、自動車メーカーから新興企業まで幅広い層が参加していることがうかがえる。実証実験などもますます盛んに行われることが予想され、2019年も話題に事欠かない年になりそうだ。

■2位:電気自動車 462回

自動車メーカーでは、アウディのプレス発表が群を抜いている。ジュネーブ国際モーターショーでアウディ初の電気自動車(EV)「Audi e-tron」のプロトタイプを公開することを3月6日に発表したほか、5月10日には最新の企業戦略「Audi.Vorsprung.2025」を発表し、その中で2025年に約80万台の電気自動車とプラグインハイブリッドを販売する目標を提示している。2020年代の半ばまでに、すべてのモデルラインナップに電動化バージョンを設定する予定だ。

国内では、日産自動車が7月5日、新電動パワートレイン「e-POWER」搭載車に寒冷地や積雪地での要望が高い4WDを追加した「ノート e-POWER 4WD」の発表会を北海道で開催したことを発表。今後、電動化の取り組みをいっそう加速し、EVやe-POWER搭載車のラインアップを拡充していく方針。

EV分野では、小型モビリティに関するリリースも目立っている。桂田モータースは6月11日、イタリア生まれの超小型モビリティBIRO(ビロ)の東京1号店オープンを発表したほか、長崎県五島市は世界遺産の島を超小型モビリティ(ちょこmobi)で走ることができるレンタルサービスについて11月28日に発表している。

EVは自動運転車をはじめ小型モビリティとの相性が高く、今後観光地などでの活用が増加しそうだ。

【参考】アウディのEV開発については「独アウディ、自動運転やEV開発に8年間で5.2兆円投資 株主総会で発表」も参照。

■3位:コネクテッドカー 132回

技術の大幅な進化や市場の拡大が著しいコネクテッドカーが3位となった。トヨタ自動車も2018年6月から本格的な実用化に着手しており、今後最注目となる分野の一つだ。

沖電気工業(OKI)は1月12日、コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパン、エリクソン、日産自動車、株式会社NTTドコモ、Qualcomm Technologies(クアルコム)と、日本初となるセルラーV2Xの実証実験を開始することを発表した。

実証実験では、国際標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)において直接通信技術を用い、車両とあらゆるものをつなぐ高信頼・低遅延の通信技術であるセルラーV2Xの評価を行うこととしている。

パナソニックは2月14日、今後普及が見込まれる自動運転・コネクテッドカーに対するサイバー攻撃を検出し防御するサイバーセキュリティソリューションをトレンドマイクロと共同開発することを発表した。

コネクテッドカーの分野では、ハッキングによりハンドルやブレーキシステムを制御されるリスクが確認されているほか、日々新たに発見される脆弱性を突いた遠隔操作の危険性も指摘されている。このため、共同開発によりアクセルなど自動車の走行を制御するECUやカーナビなどの車載インフォテインメント機器(IVI)、テレマティクス機器に対するインターネット経由のサイバー攻撃を検知・防御するソリューションを開発し、安全な自動運転・コネクテッドカーの実現を目指すこととしている。

また、GMOクラウドは9月19日、自動車向けIoTソリューションを活用したコネクテッドカー関連事業の推進に関する業務提携契約を総合商社の双日と結んだことを発表した。

両社は、GMOクラウドが提供する車両状態の自動解析・遠隔診断ができるスマホアプリ「LINKDrive byGMO」をはじめとする一連の自動車向けIoTソリューションについて、国内外における市場開拓や新たなサービスの開発などを共同で推進し、将来的にはコネクテッドカー関連事業を展開する合弁会社の設立も見据えているとしている。

5GやV2Xなど通信に関わる開発や実証、セキュリティに関する取り組み、多岐に渡るコネクテッドサービスなど、2019年も多くの進展がありそうだ。

【参考】コネクテッドカーについては「コネクテッドカー・つながるクルマとは? 意味や仕組みや定義は?」も参照。

■4位:配車アプリ 98回

配車アプリに関するリリースでは、JapanTaxiが際立って多かった。2月8日には、タクシー業界全体の活性化・効率化に向け、タクシー事業者向けサービスの共同開発などを検討する基本合意書をトヨタ自動車と締結したことが発表された。

8月30日には、同社の配車アプリの名称を「全国タクシー」から「JapanTaxi」に変更したと発表。11月27日には、新たな決済手段として「LINE Pay」に対応したことを発表したほか、12月13日には、ヤフーが提供する乗換検索アプリ「Yahoo!乗換案内」との連携を開始したことなどをそれぞれリリースしている。

10月25日には、DiDiモビリティジャパンが ハロウィンキャンペーンのお知らせを発表した。同社は大阪でタクシー配車プラットフォームの提供を9月に開始しており、配車サービスの浸透に向け11月にも初乗り無料キャンペーンを実施するなどPR活動に力を入れている。

検索には出てこなかったが、米Uber(ウーバー)の日本法人も同時期にタクシー配車アプリに本格参入しているほか、DeNAなども勢力拡大を図っており、プラットフォーマーによる新規参入や他都市進出、キャンペーンなどの話題は今後も尽きることがなさそうだ。

プラットフォーマーといえば、10月1日には金融プラットフォーマーのOrigamiが福岡市内のタクシーへ「Origami Pay」の提供を開始したことを発表している。Origamiはトヨタグループのトヨタファイナンスと10月に業務資本提携を交わし協業を開始することが報じられているほか、ソフトバンク系の「PayPay」などキャッシュレス決済導入に向けた動きが加速している。

11月27日には、みんなのタクシーが東京都個人タクシー協同組合と提携し、全国で最大2万2000台の個人タクシーにみんなのタクシーの配車、決済代行、後部座席広告のサービスを提供することを発表している。

タクシー会社自らが導入している配車アプリや新規参入組の配車アプリなど、多様化するアプリ間の競争は2019年にいっそう激化するものと思われ、顧客獲得に向けた各種キャンペーンや決済をはじめとする機能面の拡充など、プレスリリース数も相当伸びそうだ。

■5位:カーシェア 93回

カーシェアリング業界は好調に推移しているようだ。パーク24が7月3日、カーシェアリングサービス「タイムズカープラス」の会員数が100万人を突破したことを発表したほか、DeNAも10月31日、サービスリリースから3年が経過した個人間カーシェアサービス「Anyca(エニカ)」の登録数が17万人以上となったことを発表している。

IDOM(旧ガリバーインターナショナル)も11月16日、個人間カーシェアリングサービス「GO2GO(ゴーツーゴー)」の提供を2019年4月に開始 することを発表した。アプリの活用とともに、C2Cにおけるシェアリングサービスも拡大傾向にあるようだ。

また、パーク24は12月17日、無人サービスのカーシェアリングと有人サービスのレンタカーそれぞれの強みを組み合わせた、新しい形のモビリティサービス「タイムズカー」の本格展開に向け、2019年1月よりトライアルを開始することを発表した。同社は3月28日にも、小田急電鉄と交通系ICカード「PASMO」を利用した料金割引サービスについて発表しており、MaaS(移動のサービス化)に向けた取り組みも目立ち始めている。

■6位:MaaS 73回

MaaS関連では、さまざまな企業活動や連携が増えてきているようだ。7月20日には、貨物・貨客の課題を横断的に解決する組織として、タクシー、トラック、ダンプ、バスの運輸事業者とサポート企業による「運輸デジタルビジネス協議会」が一般社団法人化されたことが発表された。

労働生産性の大幅な向上や車載器などのデータの積極的な活用、RPAによる業務の効率化改善、自動運転やMaaS、貨客混載など、業界の変革が求められる大きなターニングポイントを迎える中、協議会では、同じ課題を持つ企業や団体が業界の垣根を超えて議論し、中小企業でも利用できるプラットフォームの提供を目指していくこととしている。

NearMeは6月25日、タクシー相乗りアプリ「nearMe.」のリリースを発表。同社はリアルタイムの位置情報を活用し地域の活性化に貢献するプラットフォーム作りを目指しており、第一弾としてシェアリングエコノミーのMaaSの領域において、「タクシーの相乗り」で快適な移動を創造することとしている。

また、JR東日本と東急電鉄は9月26日、東日本地区の地方観光拠点において、国内外観光客が駅や空港からの2次交通をスマートフォンなどで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動できる「2次交通統合型サービス「観光型MaaS」」を提供することを発表している。

一方、みちのりホールディングスとエムティーアイは12月4日、バスで利用可能なMaaSアプリを12月中旬にリリースすることを発表した。MaaSアプリでは、バス検索から予約・支払・発券などのほか、沿線の観光施設の紹介やクーポンの発行といった機能が統合されている。

今後も、MaaSに向けた新たなプラットフォームづくりや企業間連携が相次ぐ可能性は高く、さまざまな移動手段が結び付いた新たな移動サービスが続々誕生しそうだ。

■7位:LiDAR 44回

LiDARの製品開発では、パイオニアが気を吐いている。9月27日には、MEMSミラー方式で計測距離が異なる「3D-LiDARセンサー」 3種4モデルの提供を、9月下旬より開始すると発表。10月29日には、ルネサスエレクトロニクスが開発を進める、自動運転時代の車載コンピューティング・プラットフォームとして利用可能な車載情報システム用SoC「R-Car」に対応したことも発表されたほか、11月6日には、シンガポールの自動運転関連スタートアップ企業MooVita Pte Ltdと、同社の「3D-LiDARセンサー」を搭載した自動運転シャトルバスを使った実証実験を開始することなどがそれぞれ発表されている。

また、検索上LiDARに対抗した製品開発も目立った。6月13日はAIソリューションを手掛けるRevatronが、カメラのみで自動車が物体の距離や動きを学習できる世界初のスマートカメラを発表。6月15日には、高性能なステレオカメラ開発を手がけるITD labが第三者割当増資により資金調達したことを発表。両社とも、LiDARを引き合いに出して自社開発したカメラの優位性を説明しており、各センサー間の開発競争の激化を予感させる内容だ。

■8位:ライドシェア 37回

国内では利益目的の利用が認められていないライドシェアは、有力なシェアリングサービスの一つとして意識調査の発表が散見されたほか、新経済連盟によるライドシェア新法の提案や、経済産業省・公正取引委員会・総務省による「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」中間論点整理(案)に対する意見提出など、国内導入の是非を問う発表が目に付いた。

6月13日には、東南アジアで配車サービスを展開するGrab(グラブ)が、トヨタ自動車から10億ドル(約1100億円)の出資を受けたことを発表した。両社は今後、コネクテッドカー分野における協業を拡大し、東南アジア全域において新たなモビリティソリューションの導入を主導していく構えだ。

また、相乗りマッチングサービス「notteco(ノッテコ)」運営会社の親会社であるガイアックスは7月23日、西日本を襲った「平成30年7月豪雨」の被災地向けに「notteco 災害支援ページ」をオープンしたことを発表している。Nottecoはガソリン代などかかった経費のみをシェアする非営利目的のため白タク行為に該当せず、事業が認められているライドシェアの一形態だ。

海外ではウーバーやDiDi、グラブなど大手が市場をけん引する一方、各国のタクシー・ハイヤー業界とのあつれきや安全面、労働者の待遇面など課題も指摘されている。日本国内における今後の動向に要注目だ。

■9位:CASE 22回

豊田通商グループにおけるエレクトロニクス事業の中核を担うネクスティ エレクトロニクスとNTTデータは4月3日、CASEを中心とする次世代オートモーティブ社会の実現に向けた取り組みを加速するため、ソフトウェア開発を手掛けるキャッツに資本参加することを発表した。

キャッツの既存車載ソフトウエア開発ツールの機能強化を図るとともに、開発人材や開発マネジメント、要素技術サポートなどのバックアップ支援を行うほか、次世代技術を用いたソリューションとして、モデルベース開発における開発管理や自動運転ソフトウエア検証、OTAサービスの実現に向けて共同で事業開発に取り組むこととしている。

米国の第三者安全科学機関であるUL Inc.は11月15日、日本において自動車産業のCASE対応を支援する安全コンプライアンス・サービス事業を強化し、車載機器に特化した信頼性試験ラボを新設することを発表。国際規格や国内外自動車メーカーの独自規格などで要求される車載機器の各種環境試験・耐久性試験を取り扱い、2019年春の稼働を目指すこととしている。

また、クラウドソリューション事業を手掛けるスマートバリューは12月14日、 クルマのサービス化を推進するためのプラットフォーム「Kuruma Base(クルマベース)」を2019年5月よりサービス開始することを発表。CASEの進展に伴い、モビリティ事業としての領域を拡大していく構えだ。

このほかCASE関連ではセミナー開催告知が8件ヒットしており、CASEそのものの周知を図る取り組みが目に付いた。今後のモビリティ社会を象徴するキーワードとして、2019年以降の検索ヒット数も増加していくものと思われる。

■10位: 空飛ぶクルマ 18回

18回中6回がCARTIVATORにまつわるリリースで、スポンサー支援に関する発表をはじめ、12月20日には日本初となる無人形態での屋外飛行試験に成功したことが発表された。実用化に向け開発から販売までを手掛ける株式会社SkyDriveも設立し、夢の事業実現に向け大きく動き出す一年となった。

同社今後、設計検証試験などを行いながら多数の技術課題を克服し、2019年6月有人飛行試験、2020年デモフライト、2023年販売開始を予定している。

海外勢では、独アウディが11月29日、エアバス、イタルデザインとともに開発を進める空飛ぶクルマ「Pop.Up Next」の4分の1スケールのプロトタイプを、アムステルダムで開催されているドローンウィークで初公開したことを発表した。

フライングタクシー(空飛ぶタクシー)用のコンセプトで、自動運転機能を備えたEVとパッセンジャー(乗員用)ドローンを組み合わせたもの。公開テストでは、パッセンジャーカプセルを搭載したフライトモジュールが、地上に置かれたグラウンドモジュール上に正確に着地し、パッセンジャーカプセルをグラウンドモジュールに連結し、自動運転によってテスト会場から走り去ったという。

日本国内では「空の移動革命に向けた官民協議会」も設置され、実現に向けた動きは加速の一途をたどっている。

【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは? 仕組みや技術、必要なインフラなど」も参照。

■1位はやっぱり自動運転 2019年のランキング変動に注目

当然の結果だが、1位は「自動運転」となった。いずれのキーワードも来年以降さまざまな企業や団体が活用し、さらに数字を伸ばすものと思われるが、その増減数や伸び率によって各キーワードの勢いを感じ取ることができそうだ。

このほかにもADASダイナミックマップなどさまざまなキーワードもあり、新たなワードやトレンドが誕生する可能性もある。2019年は、このランキングがどのように変動するかも注目したい。


関連記事