
トヨタが出資する自動運転開発スタートアップの米May Mobilityがナスダック市場への上場計画を発表した。企業評価額は約14億ドル(約2170億円)規模となる見通しで、2026年内の上場を目指すという。
自動運転開発スタートアップの上場例はまだそれほど多くないが、早期上場を果たした企業の多くは、トヨタ関連から投資を受けている例が非常に多い。「トヨタが投資すると必ず上場する」という噂が出回るほどだ。
May Mobilityをはじめ、トヨタが投資した企業の上場例などを見ていこう。
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■トヨタ出資先の上場企業(予定含む)
May Mobility:上場計画発表、早ければ2026年中にも

米May Mobilityは2026年9月、ナスダック市場へSPAC上場する計画を発表した。上場特別買収目的会社ACP Holdings Acquisition Corp.と統合し、2026年内の上場を目指す。
May Mobilityはこれまで、110万マイル(約180万キロメートル)にわたる55万回以上の商用ライドを達成しており、現在アトランタ、エデンプレーリー、グランドラピッズでサービスを提供している。日本でもNTTモビリティと名古屋で自動運転パイロットプログラムの長期実証に着手している。
同社は2018年、2019年にトヨタベンチャーズからそれぞれ出資を受けている。NTTや伊藤忠商事などからも出資されており、有数の親日系自動運転開発企業と言える。創業者兼CEOのエドウィン・オルソン氏は、トヨタの北米自動運転研究開発拠点TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)に在籍していたこともあるエンジニアだ。
自動運転車のメインベースにトヨタのシエナを使用しているほか、e-Palette(イー・パレット)への自動運転技術統合も進めている。
海外展開も気になるところだが、日本との関わりが深い一社であり、国内展開の戦略にも大きな注目が集まるところだ。
【参考】詳しくは「トヨタが「自動運転投資」に成功!出資先が2000億円上場」を参照。
Pony.ai:米ナスダック、中国香港市場に重複上場

中国Pony.aiもトヨタから出資を受けている。おそらく、トヨタが出資する自動運転開発企業の中ではナンバーワンの実績を誇る企業だ。
Pony.aiは2019年、トヨタ自動車との提携を発表した。翌2020年にはトヨタから4億ドル(当時のレートで約460億円)の出資を受けたことも発表されている。
2023年には、トヨタの中国統括企業と広汽トヨタとともに自動運転タクシー量産化を推進する合弁を設立すると発表した。
2024年11月に米ナスダック市場、2025年11月に香港証券取引所にそれぞれ上場を果たしている。
最新の第7世代自動運転システムを搭載したトヨタ「bZ4X」の量産化はすでに始まっており、2026年中に1,000台以上生産する計画だ。
Pony.aiは北京や上海などの中国内のほか、クロアチアの首都ザグレブで欧州初となるロボタクシーサービスを開始している。ルクセンブルクや中東、シンガポールなどでも実用化に向けた取り組みが進められている。
【参考】関連記事「ロボタクシー欧州市場を奪う中国 Pony.aiが2,000台のロボタクシーを展開へ」も参照。
Momenta:2026年香港市場に上場

中国Momentaは2026年7月、香港証券取引所に上場した。時価総額約700億香港ドル(約1.5兆円)ほどで推移している。
トヨタとMomentaは2020年、中国市場向けの自動運転技術の高度化に向け、高精度3次元地図(HDマップ)の共同開発を行うと発表した。トヨタは、翌2021年に実施された総額5億ドルのシリーズC資金調達に参加し、同社に投資している。
Momentaは早くからE2E開発を手掛けており、レベル4と並行して自家用車向けのレベル2ソリューションもビジネス化するなど、Pony.aiなどとは異なる戦略を採用している。
レベル4ロボタクシーも、中国内をはじめ2026年にアラブ首長国連邦・アブダビとドイツ・ミュンヘンで商用サービスに向けた実証に着手している。2027年に大きな動きが出るのかもしれない。
【参考】関連記事「自動運転、トヨタが中国企業で「巨額利益」 5年前に投資」も参照。
Grab:東南アジアの雄として価値高める
トヨタは2018年、東南アジアを拠点とする配車サービス大手Grab Holdingsと東南アジアにおけるMaaS領域の協業深化に合意し、関係強化に向けGrabに10億ドル(約1100億円/当時のレート換算)を出資すると発表した。当時のGrabの企業価値の10分の1に相当する額だ。
その後、Grabは2021年に米ナスダック市場に上場を果たしている。Uber TechnologiesやDidi Chuxing(滴滴出行)ほど自動運転に傾倒していないが、インドをはじめとする東南アジアで確固たる地位を築いており、遅かれ早かれプラットフォーマーとして無人サービスに本格着手することになるだろう。
GO:日本のトップ配車プラットフォーマーにも出資
トヨタは2018年、配車サービス国内最大手GOの前身となるJapanTaxiとタクシー事業者向けサービスの共同開発を検討する旨基本合意し、合わせて関係強化のためJapanTaxiに出資することに合意したと発表した。出資額は約75億円としている。
一方、GOは2026年6月、東京証券取引所グロース市場に新規上場を果たした。自動運転分野では、すでにWaymoとの事業が進行しており、2027年にも日本国内でロボタクシー事業を実用化する。
都内以外のエリアへの進出や、Waymo以外の開発企業との提携など、引き続き注目が集まりそうだ。
【参考】関連記事「タクシーアプリGO、上場は「自動運転ビジネス」の伏線か」も参照。
フィーチャ:未来創生ファンドが2018年に出資
画像認識アルゴリズムを開発するフィーチャは、トヨタらが出資する未来創生ファンド経由で2018年に投資を受けている。その後、2020年6月に東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たした。
独自の機械学習技術により、高い精度と現実的な実装性能を合わせ持つ画像認識ソフトウェアを提供しており、ADAS向けの車載用画像認識ソフトウェアやドライバー・乗員モニタリングシステムをはじめ、図面チェック・検図を自動化するAIなどをソリューション化している。
【参考】関連記事「フィーチャと独Bosch、自動車業界の主戦場「ADAS」で提携」も参照。
ティアフォー:トヨタ・インベンション・パートナーズからも出資

未来創生ファンドは2018年、ティアフォーにも投資している。同社は2026年7月、東証グロース市場への上場を果たした。
自動運転向けのオープンソースソフトウェア「Autoware」の開発を主導しており、レベル4の自動運転バスはすでに実用化している。ロボタクシー開発も一定水準に達しているものと思われ、国産サービスの実用化に期待が寄せられるところだ。
2025年に稼働したトヨタの戦略投資会社トヨタ・インベンション・パートナーズからも出資を受けており、トヨタとの協業などにも改めて注目が集まりそうだ。
【参考】関連記事「上場のティアフォー、「テスラ式自動運転」も開発」も参照。
■出資から撤退した事例
Uber Technologies/Aurora Innovation:2026年までに全株式売却
トヨタは2018年、自動運転分野における協業を目的にUber Technologiesへ5億ドル(約550億円/当時のレート換算)を出資した。2019年にも、デンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンドとともにUberの自動運転開発部門Advanced Technologies Group(ATG)へ合計10億ドルの出資を行うと発表している。
トヨタの北米向けミニバン「シエナ」に、トヨタのガーディアン技術とUberの自動運転システムを統合・連携させた自動運転ライドシェア車両を開発し、車両量産化とサービス実用化に弾みをつける計画だった。
しかし、Uberによる自動運転開発は事故や資金難を背景に停滞し、2020年12月にAurora InnovationがATGを買収することとなった。ATGを買収したAurora Innovation株をトヨタも間接的に保有することとなる。
ロボタクシー実現に向け、トヨタとデンソーはあらためてAurora Innovationとパートナーシップを結んだ。開発は順調に進められているものと思われたが、結果としてAurora Innovationは自動運転トラックの開発を優先した格好となり、ロボタクシー実現に関するリリースは近年行われていない。
事業の行方に注目が集まる中、トヨタが米国証券取引委員会(SEC)に提出した報告書によると、2026年第2四半期中に保有していた全株式約4,735万株を売却したことが判明した。同時期、トヨタはUberの保有株式もすべて売却している。
Uber Technologies・Aurora Innovationとトヨタの間に、相容れない戦略の食い違いが発生したのか、純粋な事業上の選択なのか理由は定かではないが、こうした事例もあるようだ。
なお、Uber Technologiesは2019年にニューヨーク証券取引所、Aurora Innovationは2021年にナスダック市場へそれぞれ上場している。
【参考】関連記事「Aurora Innovationの自動運転戦略」も参照。
■今後の上場が期待される企業
Apex.AI:Arene OSの開発に尽力
米Apex.AIは、ソフトウェア定義型車両やUGV(無人地上車両)向けのソフトウェア開発を手掛けており、2018年にトヨタベンチャーズから1,550万ドル(約17億円/当時のレート換算)の資金調達を実施すると発表している。
ティアフォーが進める国際業界団体「Autoware Foundaition」の設立メンバーに名を連ねており、オープンソースを活用したOSづくりなどに定評があるようだ。ウーブン・バイ・トヨタとも提携しており、Arene OS チームとの協業では、最初の製品開発サイクルに Apex.OSが採用されたとしている。
【参考】関連記事「自動運転システム開発の米Apex.AI、17億円の資金調達発表 シリコンバレーのスタートアップ」も参照。
AutoBrains(旧Cortica):トヨタベンチャーズが2019年に出資
イスラエルのAutoBrainsは、2019年にトヨタベンチャーズから出資を受けている。自動運転向けAIの開発を手掛けており、人間の運転感覚により近い新しいアプローチで深層学習を応用し、低コスト・低消費電力のソリューションを実現するとしている。
具体的には、人間の脳の情報処理モデルを応用した自己学習型AIにより、AI自らが世界の状況を観察・理解し、リアルタイムで意思決定を行う。レベル2++からレベル4まで段階的に拡張することで、完全自動運転を実現するという。
【参考】関連記事「自動運転、自己学習型AIで「1%の誤差」に挑む!Autobrainsが資金増強」も参照。
Nuro:大型IPOに注目
Woven Capitalは2021年、有力スタートアップの米Nuroに出資したと発表した。当時のNuroは、完全無人設計の中速中型モデルの自動配送ロボット開発に特化していたが、現在は汎用性を高め、ロボタクシー開発などにも着手している。
ソフトバンクグループからも出資を受けており、日本進出に向け国内実証にも着手している。大型IPOに期待が寄せられる一社だ。
【参考】関連記事「米企業、日本で「ぶっつけ本番」式の自動運転」も参照。
Parallel Domain:シミュレーション技術を開発
実際の走行映像などをもとにリアルなレプリカを生成するシミュレーション技術開発を手掛ける米Parallel Domainは、2018年のシーズラウンドから継続的にトヨタベンチャーズから出資を受けている。
リアルな合成データのもと正確なセンサーシミュレーションを行うことができ、仮想環境で効果的に自動運転開発を加速することができるようだ。TRIも同社の技術を導入しているという。
■【まとめ】トヨタ自らの取り組みにも期待
May MobilityやPony.ai、Momentaなど、グローバル路線を歩み始めた優秀企業をトヨタはしっかりと押さえているようだ。一方、Uber Technologiesから離れた点は今後ターニングポイントとなるかもしれない。近い将来、自動運転の業界図が配車プラットフォーマーを中心に再形成されていく可能性があるためだ。
いずれにしろ、多くの日本人が期待しているのはトヨタ自らの動きではないだろうか。Woven Cityにおける取り組みとは別に、そろそろ自動運転サービス実用化に向けた本格的な動きを見せてほしいところだ。
【参考】関連記事としては「自動運転銘柄、本命の米国株・日本株まとめ|株式投資」も参照。













