因縁のライバル、日本vs韓国「自動運転」市場の勝者は?

法整備で先行する日本、実証で追い上げる韓国…



何かと比較されることが多い日本と韓国。隣国であり、東洋文化を背景にした共通点を持つ一方、政治的な背景からライバル視・敵視するような見方もあり、さまざまな場面で比較対象とされることが多いようだ。







では、自動運転分野ではどうだろうか。両国それぞれの政府や民間企業の取り組みはどちらが進んでいるのか。この記事では、自動運転分野における日本と韓国の取り組みについて解説していく。

■日本の自動運転関連の計画
2025年めどに自動運転サービス40カ所に

自動運転に関する日本国内の指針は、「官民ITS構想・ロードマップ」にまとめられているほか、官学民で構成される自動走行ビジネス検討会が報告書の中で取組方針についてまとめている。

2021年度には、自動運転の社会実装推進に向けた新プロジェクト「RoAD to the L4(自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト)」がスタートし、目標達成に向けさまざまな事業が展開されている。

自家用車関連では、高速道路におけるレベル3を2020年、レベル4を2025年をめどにそれぞれ実現する計画を盛り込んでいる。後段で触れるが、レベル3は達成済みだ。

移動サービスでは、2020年までに限定地域での無人サービス実現を目指す方針が掲げられており、秋田県上小阿仁村の一部区間でレベル4を達成している。2025年ごろをめどに40カ所以上で実用化を目指す方針だ。

物流関連では、2025年度ごろに高速道路におけるレベル4自動運転トラックや、それらの技術を活用した隊列走行の実現を目指す。

インフラ関連では、2025年以降により複雑な混在空間におけるレベル4自動運転サービスを展開するため、路車間通信(V2I)や車車間通信(V2V)などのシステム確立を目指す方針だ。

出典:経済産業省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

【参考】自動走行ビジネス検討会の報告書については「自動運転レベル4のサービス、2025年度に40カ所以上で 国がロードマップ最新版発表」も参照。

【参考】RoAD to the L4については「自動運転、「RoAD to the L4」とは?」も参照。

レベル4法は2023年4月までに施行

法整備面では、2022年4月にレベル4の社会実装を想定した改正道路交通法を可決しており、2023年4月までに施行されることとなっている。レベル4は「特定自動運行」と位置付けられ、都道府県公安委員会による許可制で公道走行が可能となる。

【参考】改正道路交通法については「【資料解説】自動運転レベル4を解禁する「道路交通法改正案」」も参照。

■韓国の自動運転関連の計画
レベル4サービスは2025年に商用化

韓国では、2019年に発表された未来自動車国家ビジョンのもと、自動運転技術の社会実装に向けた取り組みを大きく加速している。

ロードマップとしては、韓国の国土交通部が2022年9月に発表した「モビリティイノベーションロードマップ」が最も新しい指針となっている。

自家用車関連では、日本とドイツに続き2022年末に世界で三番目にレベル3を商用化する。レベル4自家用車は2027年を目標に実現する構えだ。

サービス関連では、完全自動運転のバス・シャトルサービスを2025年に商用化するほか、区域運行型、恐らく自動運転タクシーのようなサービスを2027年に実現し、既存の公共交通体系を自律走行基盤に大転換するという。

新制度も続々、運行実績に基づいた緩和措置も

レベル4に対応した制度として、欠陥時対応や走行安全性など自動車の安全基準を設ける。また、現在臨時の運行許可によって5年間に限り走行を認める制度についても、先行して性能認定制度を創設し、期間の制限のない運行を認めていく。

自由な技術・サービス実証が可能になるよう、自動運転の試験運行地区に国土交通部の職権指定制度を導入するなどし、2025年までに試験運行地区を全国市・都別に1カ所以上指定し、その後特定区域を除くすべての地域で規制特例が適用されるネガティブ方式を導入して特例を大幅に拡大していく。

開発企業が容易に運行許可を受けられるよう、既存の運行実績など特定の要件を備えた場合は他の要件審議を大幅に緩和するなど、申告制に準拠した許可制度を年内にも導入する。また、小型の無人配送車など現行車種分類体系にない新モビリティに対する分類や製作基準を設けるなど、制度基盤も強化していく。

2030年までにV2I基盤を全国道路に構築

インフラ関連では、路車間通信(V2I)基盤を2030年までに全国の道路約11万キロに構築する。インフラからの支援が特に必要な都心部などの混雑エリアには、自治体との協業を通じて2027年までに構築していく。

第一段階として2023年までに主要高速道路、第二段階として2027年までに都心部と全国主要道路、そして2030年までに全国の道路に拡大指定計画だ。

このほか、空飛ぶクルマ(UAM/アーバン・エア・モビリティ)を2025年に実現・商用化する計画も打ち出している。UAM法を制定し、実証や試験事業の際、既存法規を最大限排除する特例を適用し、新産業を積極的に支援する。

【参考】韓国の政策については「韓国、自動運転レベル4の商用化期限「2027年」と設定」も参照。

■KPMGによる自動運転車対応指数
2020年版では韓国が逆転

コンサルティング大手KPMGインターナショナルが調査している「自動運転車対応指数」では、日本と韓国はどのように評価されているのか。

同調査は、政策や法律、テクノロジー、イノベーション、インフラなど各項目をスコア化し、国別に自動運転に関する取り組みを順位づけたものだ。

2019年版では日本が10位、韓国が13位だったが、最新の2020年版では、韓国7位、日本11位と逆転している。

韓国は、4Gや5G通信エリアなどインフラ面での評価が高く、テスト地域の拡大や社会受容性の向上なども見られている。

一方、日本は自動運転関連特許で1位となるも、政策・法律や社会受容性が低く評価されている。

法整備を着実に進めている日本。次回調査で再逆転となるか、注目だ。

出典:KPMG International(※クリックorタップすると拡大できます)

【参考】KPMGの調査については「自動運転指数、なぜ車産業がないシンガポールが1位なのか」も参照。

■自動車メーカーの取り組み
ホンダは2020年代半ばに自動運転サービス予定

日本では、ホンダが2021年3月、高速道路渋滞時においてレベル3を実現する「トラフィックジャムパイロット」を搭載した新型「LEGEND」をリース販売している。事実上、レベル3の販売と実用化は日本が世界初となる。

レベル4関連では、ホンダは米GM・Cruiseや中国AutoXなどと手を組んでおり、GM・Cruise陣営と共同開発した自動運転車の国内実証を2021年に栃木県内で開始している。2020年代半ばにも自動運転モビリティサービスを展開する計画だ。

一方、トヨタは米Aurora Innovationや米May Mobility、中国Pony.aiなどと手を組んでおり、米国勢にはAutono-MaaS車両「シエナ」を供給している。国内では、サービス専用の自動運転車「e-Palette」の実証を徐々に加速させている印象だ。

また、静岡県裾野市で建設中の実証都市「Woven City」では、自動運転をはじめとしたさまざまな実証が行われる予定だ。未来に向けた都市形成やライフスタイルの在り方を模索する場として、今後の動向に要注目だ。

【参考】トヨタとホンダの取り組みについては「自動運転、トヨタとホンダの「レベル別」現状比較」も参照。

ヒョンデはソウルで自動運転タクシーサービスを試験運用

一方、韓国では、ヒョンデ(現代)が2022年6月までにソウルの江南区で自動運転タクシーサービス「RoboRide」の試験運用を開始している。

ヒョンデは米Aptivや中国Pony.aiなどと提携しており、それぞれ米国で自動運転タクシーのサービス実証を行っている。Aptivとは合弁Motionalを2020年に設立しており、2023年にネバダ州ラスベガスで無人サービスを開始する予定という。

自家用車関連では、ヒョンデが2022年中にレベル3を市場投入すると一部メディアで報じられている。起亜もレベル3機能を搭載すると思われる「AutoMode」を2023年に市場化する予定のようだ。

【参考】ヒョンデの取り組みについては「韓国ヒョンデ、自動運転タクシーの試験運用開始」も参照。

■自動車メーカー以外の取り組み
両国ともスタートアップが躍進

日本では、ロボットベンチャーのZMPが早くから自動運転開発を進め、自動運転タクシーの実証などを行っているほか、ティアフォーも公道実証に本格着手している。

自動運転バス関連では、道の駅を拠点としたサービスや中型バスの実証などが進められており、福井県永平寺町などでは遠隔監視・操作型のレベル3サービスが実装されている。また、BOLDLYやマクニカのように、他社製自動運転バスの導入・実用化を支援するビジネスモデルも確立され始めている。

ティアフォーは国内のさまざまな実証で自動運転ソフトウェア「Autoware」が採用されているほか、海外展開も進めている。レベル5を目標に掲げるTuringといった新進気鋭のスタートアップも登場しており、今後の活躍に期待したいところだ。

韓国では、スタートアップ42dotの躍進が目覚ましい。同社は2021年12月にソウル市内で自動運転タクシーのサービス実証に着手し、有料化も実現している。2022年11月には、ソウル市内で8人乗りの自動運転シャトルの運行も開始している。

【参考】42dotについては「韓国・現代、ベンチャー買収で自動運転事業加速か」も参照。

■【まとめ】勝者決定は持ち越し…

法整備面では日本がリードする一方、韓国は特区制度などを上手に活用し、集中して実証を推し進めている印象が強い。

自動車大国である日本は開発プレイヤーが多い一方、韓国はヒョンデのように民間の核となる企業が明確化されているため、官民一丸となって取り組みやすい素地が整っている可能性も考えられそうだ。

明確に優劣をつけることはできないが、両国とも取り組みを加速していることは事実で、今後は米国や中国、ドイツなど世界各国との競争が本格化していくことになる。引き続き各国の動向に注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転と韓国(2022年最新版) 注目企業は?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









関連記事