自動運転、「RoAD to the L4」とは?

レベル4実装に向けた次期プロジェクト SIPから引き継ぐ取り組みも



官民が一体となり 自動運転技術の社会実装を推進する新たなプロジェクトが2021年度にスタートした。「RoAD to the L4(自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト)」だ。


2022年度以降、レベル4実装に向けた取り組みの加速が予想される中、RoAD to the L4はその中枢となる役割を担うことが期待されている。

この記事では、RoAD to the L4の概要について解説していく。

■RoAD to the L4の概要
自動走行ビジネス検討会による次期プロジェクト「RoAD to the L4」

RoAD to the L4は、自動運転レベル4をはじめとした先進モビリティサービスの実現・普及に向け、研究開発から実証実験、社会実装まで一貫した取り組みを行う新たなプロジェクトだ。

分りにくいが、「Project on “R”esearch, Development, Demonstration and Deployment (RDD&D) “o”f “A”utonomous “D”riving “to”ward “the L”evel “4” and its Enhanced Mobility Services」の略だ。


自動運転の社会実装に向け議論を進めている自動走行ビジネス検討会は、自動運転によるモビリティサービスの将来像として、地方部における遠隔監視による複数台の無人低速モビリティの運行や、さまざまな地方都市でのレベル4のBRTやオンデマンドバス、高速道路でのレベル4トラックの運行、大都市で人と車が混在する中での自動運転サービスなどを挙げている。

こうした技術やサービス確立に向け、次期プロジェクトとして2021年度から取り組んでいるのがRoAD to the L4だ。

プロジェクトの総合的調査検討を担う機関(=コーディネート機関)に配置するプロジェクトコーディネーター のもと、データ活用や連携、利用者目線による評価といった共通課題について情報を共有し、相互に連携しながら取り組む方針だ。

レベル4の実装・普及からMaaS、人材確保戦略まで広く検討


目標・KPIには以下を設定し、横断的な取り組みを進めている。

  • ①無人自動運転サービスの実現及び普及
  • ②IoTやAIを活用した新しいモビリティサービス(MaaS)の普及
  • ③人材の確保・育成
  • ④社会受容性の醸成

①では、2022年度をめどに限定エリア・車両におけるレベル4の遠隔監視のみの自動運転サービスを実現することと、2025年度までに多様なエリア・車両に拡大し40カ所以上で展開すること、2025年度以降に都市間高速道路でレベル4自動運転トラックを実現すること、大都市などの市街地を想定し、2025年ごろまでに混在交通下におけるレベル4自動運転サービスを展開することを掲げた。

②では、地域の社会課題の解決や地域活性化に向け、全国各地でIoTやAIを活用した新しいモビリティサービスを社会実装すること、全国レベルでのエコシステム構築に向け、データ連携や活用の基盤の構築、必要な人材確保、マッチング機能の強化、持続性の確保などを進めること、物流業界において荷主・運送事業者・車両の物流・商流データ連携と部分的な物流機能の自動化の合わせ技で物流MaaSを実現することとしている。

③では、ハードやソフトといった技術者、地域課題と技術をマッチングする者など、多岐にわたる分野の人材を確保すること、④では、ユーザー視点の分かりやすい情報発信やリアルな体験機会の提供、民事上の責任の整理を通じて自動運転などへの正確な理解・関心高めて行動変容を促すとしている。

■2021年度の取り組み
遠隔監視レベル4の実現・拡大に向け制度設計を加速

2021年度は、2022年度めどの遠隔監視レベル4サービスの実現、及びレベル4の基本的な事業モデルや制度設計の確立を目指し、可用性の高い車両や遠隔システム、通信装置の開発を進めるとともに、特に遠隔監視システムの要件などを検討し、実証評価を推進して制度設計に寄与することとしている。

具体的には、事業モデルの整理や1人が3台を扱う遠隔監視の運用実証評価、走行以外のタスク実証評価、車両やシステムのレベル4化・高度化、遠隔システムのセキュリティ対策、遠隔システムのインターフェース改善、通信システムのコスト削減と品質向上、レベル 4制度設計への貢献――を挙げている。

また、対象エリアや車両の拡大、事業性の向上に向けては、具体的な自動運転サービスの事業モデルを想定した上で開発者や運行事業者の意見を収集・集約し、自動運転車両の安全設計や機能確認の適正かつ効率的な実施、さらには横展開に寄与するようなODD設定方法やセーフティアセスメント手法を検討したほか、無人自動運転サービスに対するODDの類型化や安全設計プロセス、セーフティアセスメントのガイドライン、日本版セーフティレポートに関する公開サイトについても検討を進めた。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義・呼称・基準は?」も参照。

レベル4トラックや混在空間におけるレベル4も

高速道路における隊列走行を含む高性能トラックの実用化に向けては、これまでの後続車無人隊列走行実証の成果を活用しながらレベル4自動運転トラックの開発を進める方針で、大型車の特性を踏まえ、道路情報などを活用した運行管理システムを合わせて整備する。また、取組成果を随時関係省庁で共有し、インフラやデータなどの事業環境の整備を促進するとしている。

具体的には、大型車特有の要件特定やODD検証用の車両・システム開発に着手し、ODDに応じて適切な走行試験を選定できるよう、シミュレーションやテストコース、公道実証の体制整備について検討を進めてきた。

混在空間におけるレベル4展開に向けたインフラ協調や車車間・歩車間連携などに関しては、モデル地域を選定し、先導調査として自治体やデベロッパー、サービス事業者、データ利用者らの参加のもと、ワークショップを開催する。その上で候補となるルートや走行条件・利用データを検討し、運行に関するビジネスモデルを検討する。

また、簡易な設備などを実際に設置してデータ収集を行い、走行条件の検証を行うとともに収集したデータの活用策についても検討を進めた。

MaaS関連ではサービス実現に向けた事業モデルを創出

IoTやAIを活用したMaaS普及に向けては、過年度までの実証的な取り組みを深化し、地域の特性やサービスの形態などを踏まえ持続的なサービス実現に向けた事業モデルを創出する。また、サービスの利用者像を具体化するとともに、サービスの付加価値を享受でき、費用負担を担える主体を洞察することで事業性を強く意識した取り組みを広げることとした。

先進モビリティサービスに係る人材確保・育成関連では、必要とされる人材像や当該分野における人材不足の実態、効果的な人材育成方法や民間の取り組みを後押しするために必要な環境整備等を調査し、地域の課題を踏まえた人材像とそのスキル要件や、より効果的な人材確保の方策などについて検討を進めた。

先進モビリティサービスに関わる民事上の責任整理については、人とシステム間や関係者間の役割の変化を踏まえ民事上の責任について整理を行うとともに、必要に応じて自動運転やコネクテッドサービスなどに関連する倫理やデータの取り扱いについても検討を行うこととした。

【参考】関連記事としては「MaaS解説(2022年最新版)」も参照。

全体を統括管理するプロジェクトコーディネーターを設置

プロジェクトコーディネーターに関しては、事業委託を受けたコーディネート機関にプロジェクトコーディネーターを設置し、事業のPDCAを担うとともに、担当省庁やプロジェクト推進委員会などの意見を踏まえながら、計画案の作成や計画に基づくテーマ・課題の進捗管理を行うとともに、必要に応じて見直しを行うこととしている。

プロジェクト推進委員会は、各テーマの統括調整を行うとともに共通課題に応じたワーキンググループを設置する。各テーマ・課題が個別最適化して実施されることがないよう、プロジェクトコーディネーターのもと全体調和を図りながら効率性・事業性や課題解決性を常に意識し、業務を推進する方針だ。

■2022年度以降の取り組み方針
SIPの取り組みを引き継いでいく

自動走行ビジネス検討会は、RoAD to the L4プロジェクトの取り組みを着実に進め、2022年度においては無人自動運転移動サービスの40カ所実現に向け事業モデルの構築や事業モデルに基づいた評価、支援策の検討などを進めていく方針だ。

また、第二期SIP-adusが2022年度に最終年度を迎えるため、この事業からRoAD to the L4プロジェクトへ引き継ぐべき課題や内容を整理するとともに、関係府省庁が連携できる体制を構築していく。次期SIPの課題候補となっている「スマートモビリティプラットフォームの構築」とも連携を図っていくとしている。

このほか、RoAD to the L4プロジェクトの各テーマ・WGと自動走行ビジネス検討会の各WGとの目的・役割を明確にし、2023年度から新体制で実施していくための検討にも着手する。

■【まとめ】レベル4実用化に向けた取り組みをバックアップ

官民ITS構想・ロードマップで示されたレベル4サービスなどの実装目標を達成すべく、今後RoAD to the L4がその役割を大きなものへと変えていくことが予想される。

法整備も進み、2022年度以降レベル4に向けた取り組みは間違いなく加速していく。これらの取り組みを強力にバックアップする自動走行ビジネス検討会、そしてRoAD to the L4の活動に引き続き注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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