テスラの自動運転事業、Twitter買収のせいで遅れも

イーロン・マスク氏の時間的リソースは有限



テスラのイーロン・マスクCEO=出典:Flickr / Public Domain

米EV(電気自動車)大手テスラのCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏が米Twitter社を買収してから、Twitterがらみの話題に事欠かない。

テスラの経営は、マスク氏がいかに自身のリソースをテスラに費やすことができるかにかかっているといっても過言ではない中、マスク氏がTwitterに時間を割くようになることは、テスラにおける自動運転技術の開発の遅れを意味することになるかもしれない。


■Twitter買収を行ったマスク氏

マスク氏は2022年10月28日、440億ドル(約6兆4,400億円)でTwitter社の買収を完了した。同年4月に買収の提案をしたものの、いったん撤回するなど、Twitter社との法廷闘争に発展していたが、ついに決着がついた。

マスク氏はCEOを引き継ぎ、テスラと宇宙企業スペースX、Twitterの全3社のCEOを兼務することとなった。長期的にはCEOのポストを他の人に譲る可能性もあるようだが、3社のCEOを兼務することで、これまでよりテスラに費やす時間が少なくなることは予測できる。

その後、11月4日から8日までに、マスク氏はテスラの株1,950万株以上となる、39億5,000万ドル(約5,750億円)相当を売却したことを、米証券取引委員会へ届け出をして開示した。

■テスラの自動運転技術の現在地

2020年のテスラの自動車販売台数は50万台を突破し、翌2021年も過去最高を更新して93万台を超えた。2022年は第3四半期までに90万台を超えており、さらなる記録更新の勢いは止まらない。


そして2022年11月24日にマスク氏はTwitterで、「テスラのFSD β版は、北米で車内のスクリーンからリクエストすれば、このオプションを購入した人なら誰でも利用可能に」とツイートしている。「『重要なマイルストーン』を達成したTesla社のAutopilot/AIチームおめでとう!」と、従業員へのねぎらいのツイートもしている。

【参考】関連記事としては「マスク流「部下」論、Twitterでは厳しく、テスラでは優しく」も参照。

FSDは「完全自動運転」と訳せるものの、現段階では自動運転はできない。あくまでも将来的に、「OTA」(Over The Air)と呼ばれる無線アップデートによって、自動運転機能の利用が可能になるソフトと解釈すべきものだ。これまでバージョアップされるたびに、ニュースとして話題を呼び、世界中から関心を集めている。

ちなみに、FSD β版は2020年から限定的な提供がスタートし、現在では16万人が利用している。車両代金とは別に、1万5,000ドル(約208万円)のパッケージを購入するか、月額199ドル(約2万8,000円)のサブスクリプション契約をすれば、利用できる。


追加で6,000ドル(約83万円)を購入すれば、Auto ParkingやSmart Summonなどの駐車をアシストする機能などもつけることが可能だ。

■自動運転技術の搭載まで、あとどれくらい?

3社のCEOとなり多忙を極めるマスク氏。さて、テスラの自動運転技術の搭載までは、あとどれくらいの時間がかかるのだろうか。引き続き、マスク氏の動向をウォッチしていきたい。

【参考】関連記事としては「テスラの自動運転技術(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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