車載オプションとして近年人気を集めているドライブレコーダー。事故や事件に巻き込まれた際の証拠映像としての役割が人気の背景にあるが、新たな時代に向けさらなる進化を遂げつつある。
自動運転やコネクテッドカーが勢力を増すこれからの時代、ドラレコはどのような役割を担い、どのようなデータを記録・収集していくのか。ドラレコの進化に迫ってみよう。
■今まで収集してきたデータ
ドライブレコーダーはその名の通りドライブ(運転)をレコード(記録)するもので、映像データをベースにしたものが一般的だ。
ドラレコのカメラが映し出した車両前方や後方、車内の映像データに、時刻データや位置情報データ(GPS)などを紐づけて記録する。データはフラッシュメモリに記録され、メモリ容量がいっぱいになったら繰り返し録画して古い映像から上書きしていくリングバッファ方式を採用するタイプが主流だ。
近年では通信型ドラレコの開発が進んでおり、スマートフォンと連携して映像を共有できる機能のほか、事業者向けにクラウド型運行管理サービスを提供するビジネスモデルも盛んだ。映像を通じてドライバーの運転態度や運転評価、車両の挙動などを監視し、安全意識向上に役立てるサービスだ。
また、AI搭載モデルも増加傾向にあり、ドライバーの目の動きや頭の傾きなどを検出したり、前走車や車線を検出して衝突警報やふらつき警報を発したりするなど、ドライバーモニタリングやADAS(先進運転支援システム)としての機能を備えたモデルが続々と市場化されている。
通信機能やAIの搭載によりセンサーとしての役割やデータの収集などを可能にしており、ドラレコは映像を記録する従来の役割から大きな進化を遂げようとしているのだ。
■今後収集すると思われるデータ
ドラレコは今後、どのような進化の道をたどっていくのか。各社の開発方向を考慮すると、後付け可能なADASとしての性質を強めていく道をまず挙げることができそうだ。
ドラレコのカメラがセンサーとしての役割を担い、周囲の車両や歩行者などを検知する。自動車の制御と連動するのはハードルが高そうだが、検知した情報・データをさまざまな方面に生かすことが可能になる。
位置情報や車速などをもとに各道路の混雑状況を解析するなどプローブ情報として有効活用するほか、センサーに映った落下物などの道路上の障害物情報や工事情報、事故情報などを収集することもできるようになる。
また、道路周辺の店舗情報を収集する取り組みも進められている。ヤフーは2018年、ドラレコから収集される動画データをAIで解析し、ガソリンスタンドのガソリン価格や駐車場の満空情報といった道路沿いの情報をテキスト化する実証実験を開始した。
実証では、テキスト化できる視覚情報にとどまらず、渋滞や事故といった交通状況やレストランの行列状況など、あらゆる地域情報の活用可能性も探るとしている。
こうした技術が確立されれば、ドラレコ本来の目的である道路上の映像を記録する機能にとどまらず、周囲をより広く鮮明に映し出せるカメラを搭載し、付帯機能で新たなサービスやビジネス展開を図る動きが活発化する可能性もありそうだ。
自動運転関連では、ドラレコ映像から高精度地図作成も
一方、自動運転関連では、トヨタ系のTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)がドラレコ映像から高精度地図を生成する技術開発を進めており、相対精度40センチ程度の地図生成に成功している。
ドラレコは一般車両に広く搭載可能なため、将来的に必要となる細かい市道に至るマップ生成や更新に役立てられる可能性がありそうだ。
■【まとめ】近未来のドラレコはセンサーと化す
国内だけでもドラレコを搭載した何百万台もの自動車が毎日道路上を走行しているものと思われる。こうした車両をセンサーとして活用することで、さまざまなビッグデータを生み出すことができるのだ。
ADAS用カメラをはじめ、ドラレコも車載センサーとして活用される日はそう遠くなさそうだ。
また、ドライブレコーダーの活用シーンが広がるということは、それだけストレージ選びの重要性も増してくる。記録機能に関する故障やデータの破損の影響が大きくなるからだ。元来長時間の連続録画を行うドライブレコーダーは記録媒体であるフラッシュメモリに過度な負荷をかけるため、車載ストレージは耐久性・堅牢性・信頼性を兼ね備えたものでなければならない。録画データの信頼性を担保することがドライブレコーダー活用の生命線になるためである。
米Western Digitalは車載用ストレージを試すことができる検証用フラッシュストレージの無償提供プログラムを実施している。ドライブレコーダーの開発企業や車載システムを開発している企業は、プログラムを活用して自社に最適な車載品質のストレージを見つけてみてはいかがだろうか。
プログラムについての詳しい内容は「検証用フラッシュストレージの無償提供プログラム」から確認できる。
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