ドライブレコーダーが収集してきたデータ、今後収集するデータ(深掘り!自動運転×データ 第46回)

ADAS化・センサー化がスタンダードに

B!

車載オプションとして近年人気を集めているドライブレコーダー。事故や事件に巻き込まれた際の証拠映像としての役割が人気の背景にあるが、新たな時代に向けさらなる進化を遂げつつある。

自動運転やコネクテッドカーが勢力を増すこれからの時代、ドラレコはどのような役割を担い、どのようなデータを記録・収集していくのか。ドラレコの進化に迫ってみよう。

■今まで収集してきたデータ

ドライブレコーダーはその名の通りドライブ(運転)をレコード(記録)するもので、映像データをベースにしたものが一般的だ。

ドラレコのカメラが映し出した車両前方や後方、車内の映像データに、時刻データや位置情報データ(GPS)などを紐づけて記録する。データはフラッシュメモリに記録され、メモリ容量がいっぱいになったら繰り返し録画して古い映像から上書きしていくリングバッファ方式を採用するタイプが主流だ。

近年では通信型ドラレコの開発が進んでおり、スマートフォンと連携して映像を共有できる機能のほか、事業者向けにクラウド型運行管理サービスを提供するビジネスモデルも盛んだ。映像を通じてドライバーの運転態度や運転評価、車両の挙動などを監視し、安全意識向上に役立てるサービスだ。

また、AI搭載モデルも増加傾向にあり、ドライバーの目の動きや頭の傾きなどを検出したり、前走車や車線を検出して衝突警報やふらつき警報を発したりするなど、ドライバーモニタリングやADAS(先進運転支援システム)としての機能を備えたモデルが続々と市場化されている。

通信機能やAIの搭載によりセンサーとしての役割やデータの収集などを可能にしており、ドラレコは映像を記録する従来の役割から大きな進化を遂げようとしているのだ。

■今後収集すると思われるデータ

ドラレコは今後、どのような進化の道をたどっていくのか。各社の開発方向を考慮すると、後付け可能なADASとしての性質を強めていく道をまず挙げることができそうだ。

ドラレコのカメラがセンサーとしての役割を担い、周囲の車両や歩行者などを検知する。自動車の制御と連動するのはハードルが高そうだが、検知した情報・データをさまざまな方面に生かすことが可能になる。

位置情報や車速などをもとに各道路の混雑状況を解析するなどプローブ情報として有効活用するほか、センサーに映った落下物などの道路上の障害物情報や工事情報、事故情報などを収集することもできるようになる。

また、道路周辺の店舗情報を収集する取り組みも進められている。ヤフーは2018年、ドラレコから収集される動画データをAIで解析し、ガソリンスタンドのガソリン価格や駐車場の満空情報といった道路沿いの情報をテキスト化する実証実験を開始した。

実証では、テキスト化できる視覚情報にとどまらず、渋滞や事故といった交通状況やレストランの行列状況など、あらゆる地域情報の活用可能性も探るとしている。

こうした技術が確立されれば、ドラレコ本来の目的である道路上の映像を記録する機能にとどまらず、周囲をより広く鮮明に映し出せるカメラを搭載し、付帯機能で新たなサービスやビジネス展開を図る動きが活発化する可能性もありそうだ。

自動運転関連では、ドラレコ映像から高精度地図作成も

一方、自動運転関連では、トヨタ系のTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)がドラレコ映像から高精度地図を生成する技術開発を進めており、相対精度40センチ程度の地図生成に成功している。

ドラレコは一般車両に広く搭載可能なため、将来的に必要となる細かい市道に至るマップ生成や更新に役立てられる可能性がありそうだ。

■【まとめ】近未来のドラレコはセンサーと化す

国内だけでもドラレコを搭載した何百万台もの自動車が毎日道路上を走行しているものと思われる。こうした車両をセンサーとして活用することで、さまざまなビッグデータを生み出すことができるのだ。

ADAS用カメラをはじめ、ドラレコも車載センサーとして活用される日はそう遠くなさそうだ。

また、ドライブレコーダーの活用シーンが広がるということは、それだけストレージ選びの重要性も増してくる。記録機能に関する故障やデータの破損の影響が大きくなるからだ。元来長時間の連続録画を行うドライブレコーダーは記録媒体であるフラッシュメモリに過度な負荷をかけるため、車載ストレージは耐久性・堅牢性・信頼性を兼ね備えたものでなければならない。録画データの信頼性を担保することがドライブレコーダー活用の生命線になるためである。

米Western Digitalは車載用ストレージを試すことができる検証用フラッシュストレージの無償提供プログラムを実施している。ドライブレコーダーの開発企業や車載システムを開発している企業は、プログラムを活用して自社に最適な車載品質のストレージを見つけてみてはいかがだろうか。

プログラムについての詳しい内容は「検証用フラッシュストレージの無償提供プログラム」から確認できる。

>>特集目次

>>【特別対談】「大容量×信頼性」、車載業界屈指の半導体メーカーが見据える自動運転の未来

>>特集第1回:自動運転車のデータ生成「1日767TB」説 そのワケは?

>>特集第2回:桜前線も計測!"データ収集装置"としての自動運転車の有望性

>>特集第3回:自動運転車の最先端ストレージに求められる8つの性能

>>特集第4回:【対談】自動運転実現の鍵は「車載ストレージ」の進化にあり!

>>特集第5回:自動運転車と「情報銀行」の意外な関係性

>>特集第6回:自動運転の安全安心の鍵は「乗員のリアルタイムデータ」にあり

>>特集第7回:【対談】車載ストレージ、タクシーのデータビジネス下支え!

>>特集第8回:自動運転、車載機器の最重要5パーツをピックアップ!

>>特集第9回:AI自動運転用地図データ、どこまで作製は進んでいる?

>>特集第10回:自動運転車、ハッカーからどう守る?

>>特集第11回:改ざん阻止!自動運転業界がブロックチェーン導入を歓迎すべき理由

>>特集第12回:自動運転時代はクラウドサービス企業の成長期

>>特集第13回:自動運転、画像データ解析の主力企業は?

>>特集第14回:自動運転、音声データ解析の主力企業は?

>>特集第15回:日本、自動運転レベル4はいつから?ODD拡大ではデータの網羅性も鍵

>>特集第16回:日本、自動運転タクシーはいつ実現?リアルタイムデータ解析で安全走行

>>特集第17回:【対談】自動運転、ODM企業向け「リファレンス」の確立が鍵

>>特集第18回:パートナーとしての自動運転車 様々な「データ」を教えてくれる?

>>特集第19回:自動運転車の各活用方法とデータ解析による進化の方向性

>>特集第20回:自律航行ドローン、安全飛行のために検知すべきデータや技術は?

>>特集第21回:自動運転車、AIの「性格」も選べるように?人の運転データを学習

>>特集第22回:【対談】2020年代は「タクシー×データ」で革新が起きる!

>>自動運転白書第1弾:自動運転領域に参入している日本企業など一覧

>>特集第23回:自動運転に必須の3Dマップ、どんなデータが集積されている?

>>特集第24回:解禁されたレベル3、自動運行装置の作動データの保存ルールは?

>>自動運転白書第2弾:自動運転関連の実証実験等に参加している日本企業一覧

>>特集第25回:自動運転、企業の垣根を越えて共有させるべきデータ群は?

>>自動運転白書第3弾:自動運転業界における国内の主要人物一覧

>>特集第26回:コロナで早期実現!?自動運転宅配サービスに必要なデータは?

>>特集第27回:自動運転業界、「データセット公開」に乗り出す企業たち

>>特集第28回:自動運転と「データ通信」の実証実験、過去の事例まとめ

>>特集第29回:自動車ビッグデータの活用に取り組む「AECC」とは?

>>特集第30回:「次世代タイヤ」から得られるデータとは?

>>特集第31回:自動運転におけるデータ処理は「クラウド側」「エッジ側」の2パターン

>>特集第32回:自動車×ビッグデータ、自動運転領域を含めた活用事例まとめ

>>特集第33回:自動運転の「脳」には、車両周辺はどうデータ化されて見えている?

>>特集第34回:自動バレーパーキングの仕組みや、やり取りされるデータは?

>>特集第35回:検証用に車載用フラッシュストレージを提供!Western Digitalがキャンペーンプログラム

>>特集第36回:自動運転、「心臓部」であるストレージに信頼性・堅牢性が必要な理由は?

>>特集第37回:自動運転レベル3の「罠」、解決の鍵はドラレコにあり?

>>特集第38回:自動運転時代、ドラレコが進化!求められる性能は?

>>特集第39回:e.MMCとは?車載ストレージ関連知識

>>特集第40回:AEC-Q100とは?車載ストレージ関連知識

>>特集第41回:自動運転で使う高精度3D地図データ、その作製方法は?

>>特集第42回:ADASで必要とされるデータは?車載ストレージ選びも鍵

>>特集第43回:V2X通信でやり取りされるデータの種類は?

>>特集第44回:未来のメータークラスターはこう変わる!

>>特集第45回:自動運転の実証実験で活用されるデータ通信規格「ローカル5G」とは?

>>特集第46回:ドライブレコーダーが収集してきたデータ、今後収集するデータ

>>自動運転バス×データを考える BOLDLYとWestern Digitalが対談

B!
関連記事