自動運転業界、「超大手×スタートアップ」の連携加速

トヨタはウーブンを通じて買収や提携



実用化に向けた取り組みが加速の一途をたどる自動運転業界。新進気鋭のスタートアップが次々と頭角を現し、業界地図を毎年のように書き換え続けている。







自動車業界の主役である大手自動車メーカーをはじめ、テクノロジー企業やEC・小売など各方面の大手企業が自動運転分野に参入し、スタートアップとの関係を密にしながら主導権争いを繰り広げている。

この記事では、自動運転分野における各界の超大手企業とスタートアップとの関係を紐解いていく(記事内では各トピックスごとに、登場する企業名を最初に箇条書きにした)。

■自動車メーカー大手×スタートアップ
トヨタグループはウーブンを通じて買収や提携を大きく加速
  • トヨタ(日本)
  • ティアフォー(日本)
  • WHILL(日本)
  • フィーチャ(日本)
  • Joby Aviation(アメリカ)
  • Nauto(アメリカ)
  • SLAMcore(イギリス)
  • Blackmore(アメリカ)
  • May Mobility(アメリカ)

トヨタは、出資者として参画する未来創生ファンドやToyota Ventures、Woven Capitalなどを通じてスタートアップとの関わりを深めている。

未来創生ファンドはこれまでにティアフォーやWHILL、フィーチャといった国内企業をはじめ、空飛ぶクルマの開発を進める米Joby Aviationなどにも投資している。

Toyota Venturesは、AIアルゴリズム開発を手掛ける米NautoやSLAM開発を進める英SLAMcore、LiDAR開発の米Blackmore(Aurora Innovationが買収)、自動運転シャトル開発の米May Mobilityなどに投資している。May MobilityはレクサスRX 450hやシエナの自動運転フリート化を進めるなど、トヨタ車への統合を図っている。

ウーブン・キャピタルは、モビリティプラットフォーム開発を手掛ける米Ridecellや自動運転配送ロボットの開発を手掛ける米Nuroなどに投資している。また、ウーブン・プラネット・ホールディングスは、米配車サービス大手Lyftの自動運転開発部門「Level 5」やマッピングに資する道路情報解析技術を有する米CARMERA、自動車向けオペレーティングシステムを開発する米Renovo Motorsなど立て続けに買収を進めている。

今後は、最先端技術の開発を担うウーブン・プラネット・ホールディングスが先頭に立つ場面がいっそう増えそうだ。

このほか、自動運転関連では2020年に中国Pony.ai、2021年にMomentaにそれぞれ出資している。

【参考】ウーブン・プラネットについては「トヨタ子会社Woven Planet Groupの自動運転事業一覧(2021年最新版)」も参照。

日産・ホンダの動向は?
  • 日産(日本)
  • ホンダ(日本)
  • SenseTime(中国)
  • Cruise(アメリカ)
  • Helm.ai(アメリカ)
  • AutoX(中国)
  • WeRide(中国)
  • Upstream Security(イスラエル)
  • Coord(アメリカ)

ホンダは2017年に画像認識技術を有する中国SenseTimeとパートナーシップを結んだほか、2018年にはGMとGM傘下Cruiseとの協業を開始し、Cruiseに計27億5,000万ドル(約3,000億円)を出資する計画も明らかにしている。

3社の協業は順調な様子で、サービス専用自動運転車「Origin」の共同開発をはじめ、日本国内での自動運転サービス実装に向けた取り組みもスタートしている。

このほか、2022年には教師なし学習によるAI開発を手掛ける米Helm.aiに出資を行っている。中国では、現地法人がAutoXとの提携を2021年4月に発表している。

一方、日産はルノー・日産自動車・三菱アライアンスによるベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ」を通じて、中国WeRideをはじめサイバーセキュリティ事業を手掛けるイスラエルのUpstream Security、道路沿いのスマートゾーン情報の提供を手掛ける米Coordなどに出資している。

余談だが、中国で勢いのある自動運転スタートアップとの付き合い方において、トヨタがPony.aiとMomenta、ホンダがAutoX、日産がWeRideと見事に分かれている点は興味深いところだ。

【参考】ホンダの取り組みについては「ホンダの自動運転戦略(2021年最新版) レベル3車種「レジェンド」を発売」も参照。

GM・フォードの動向は?
  • GM(アメリカ)
  • フォード(アメリカ)
  • Momenta(中国)
  • Cruise(アメリカ)
  • Arugo AI(アメリカ)

米GMは、2016年に買収したCruiseの活躍が際立つ。Cruiseを介する形で自動運転分野においてもホンダとの提携を深め、業界における存在感を確かなものに変えようとしている印象だ。自動運転関連では、中国Momentaにも2021年に出資を行っている。

対するフォードは、2017年に米Argo AIに巨額出資する計画を発表し、自動運転モビリティサービスへの道を切り開いている。また、Argo AIを介する形で独フォルクスワーゲングループとの提携を拡大するなど、GM・ホンダ・Cruise陣営と同じような展開を見せている。

欧州勢の動向は?
  • VW(ドイツ)
  • BWM(ドイツ)
  • Argo AI(アメリカ)
  • Nauto(アメリカ)
  • Kodiak Robotics(アメリカ)
  • Recogni(アメリカ)
  • Luminar(アメリカ)
  • Momenta(中国)
  • Waymo(アメリカ)
  • Aurora Innovation(アメリカ)

独フォルクスワーゲングループは2018年にスタートアップ支援プログラムを拡充するなど全方位で技術イノベーションを促進しているが、自動運転関連ではフォード同様Argo AIとの結び付きが強く、自動運転開発を目的にグループ内に立ち上げた「Autonomous Intelligent Driving(AID)」をArgo AIに合併し、Argo AIの欧州開発拠点にするなど信頼関係は深まっている様子だ。

独BMWは米Nautoや自動運転トラック開発を手掛ける米Kodiak Robotics、自動運転向けAI開発などを手掛ける米Recogniなどにそれぞれ出資を行っている。

独ダイムラーは米Luminar Technologiesや中国Momentaなどに出資しているほか、経営分離したダイムラートラックが米Waymoや米Aurora Innovationと自動運転トラックの領域でパートナーシップを結んでいる。

ヒュンダイも開発に注力
  • Hyundai(韓国)
  • Aurora Innovation(アメリカ)
  • Pony.ai(中国)
  • Aptiv(アメリカ)

韓国ヒュンダイも自動運転分野におけるパートナーシップに積極的な1社だ。2018年に米Aurora Innovationと提携を交わしたほか、2020年には中国Pony.aiと自動運転タクシーサービス「BotRide」のサービス実証に着手している。

その一方、2020年に米サプライヤーAptivと合弁「Motional」を設立し、自ら自動運転サービスの展開を推し進めるなど、さまざまな動きを見せている。

■サプライヤー大手×スタートアップ

サプライヤー各社も、自動車メーカーに負けず劣らずスタートアップ勢に急接近している。

デンソーはスタートアップとの取り組みを加速
  • デンソー(日本)
  • エヌエスアイテクス(日本)
  • DellFer(アメリカ)
  • Metawave(アメリカ)
  • PiNTeam(ドイツ)
  • Envoy Technologies(アメリカ)
  • Seurat Technologies(アメリカ)
  • Aeva(アメリカ)
  • ThinCI(アメリカ)
  • quadric.io(アメリカ)

デンソーはここ数年、明らかにスタートアップとの距離を縮めている印象だ。2018年にサイバーセキュリティ技術の開発を進める米DellFerやミリ波レーダーの開発を進める米Metawave、2019年に組み込みソフトウェア技術を有する独PiNTeam、2020年に不動産事業者と連携したモビリティサービスの提供を行う米Envoy Technologies、2021年に金属用3Dプリンター開発を手掛ける米Seurat Technologiesにそれぞれ出資を行ったほか、2021年にはFMCW方式のLiDAR開発を手掛ける米Aevaとの共同開発を発表している。

デンソー子会社で半導体開発を手掛けるエヌエスアイテクス(NSITEXE)も、2018年に米ThinCI、2019年にquadric.ioと、次世代半導体技術を有する企業にそれぞれ出資している。

コア技術から周辺技術・サービスに至るまで、多岐に渡る研究開発を全方位で進めている印象だ。

独サプライヤー勢も開発ネットワークを拡大
  • Continental(ドイツ)
  • アルグス(イスラエル)
  • Leia(アメリカ)
  • AEye(アメリカ)
  • Apex.AI(アメリカ)
  • ボッシュ(ドイツ)
  • TetraVue(アメリカ)
  • SPLT(アメリカ)
  • Momenta(中国)
  • ZF(ドイツ)
  • e.GO Mobile(ドイツ)
  • Oxbotica(イギリス)
  • Valeo(フランス)
  • TwinswHeel(フランス)
  • Navya(ナビヤ)

独コンチネンタルは2017年にサイバーセキュリティ開発を進めるイスラエルのアルグスを買収したほか、3Dライトフィールドディスプレイ開発に向け2019年に米Leiaと提携を交わしている。

2020年に米AEye、2021年に米Apex.AIにそれぞれ出資し、LiDARやソフトウェアの共同開発を進めることなども発表している。

独ボッシュは、グループ傘下のベンチャーキャピタル「Robert Bosch Venture Capital(RBVC)」が2017年、3DフラッシュLiDAR開発を手掛ける米TetraVueに出資し、LiDAR開発に本格着手した。2018年には、ライドシェア市場への参入を目指し米SPLTを買収している。このほか、中国Momentaに出資も行っている。

独ZFは、EV開発を手掛ける独e.GO Mobileと合弁「e.GO MOOVE」を2018年に設立し、自動運転バスの開発・実用化を進めているほか、2021年には自動運転シャトル開発の加速に向け、自動運転ソフトウェアの開発を進める英Oxboticaに出資すると発表している。

仏Valeoは、ロボット開発を手掛ける仏TwinswHeelと共同開発した自動配送ロボットをCES 2020で発表したほか、2021年には仏Navyaと自動運転シャトルの商業化に向け技術・産業面でパートナーシップを結ぶことを発表している。

■半導体・テクノロジー大手×スタートアップ

自動運転分野においては、自動車メーカーに劣らぬ主役級の活躍を見せる半導体やテクノロジー企業。業界の新たな顔役として年々存在感を増しており、自動車メーカーとの関係を深めつつさらなる技術革新に向けスタートアップとのネットワークも拡大している印象だ。

Moovit買収で攻勢しかけるインテル勢
  • インテル(アメリカ)
  • Moovit(イスラエル)
  • Mobieye(イスラエル)
  • DataRobot(アメリカ)
  • Horizon Robotics(中国)

米インテルは2020年、MaaSプロバイダーのイスラエル企業Moovitを買収し、傘下のモービルアイとともに自動運転サービスの実装に弾みをつけた。

このほかにも、機械学習自動化プラットフォームを手掛ける米DataRobotや、半導体開発を手掛ける中国Horizon Roboticsなどにもインテルが出資を行っている。

【参考】インテル勢の取り組みについては「IntelのMoovit買収、自動運転タクシーの世界展開の布石か!?」も参照。

NVIDIAソリューションを通じてスタートアップとの関係構築
  • NVIDIA(アメリカ)
  • DeepMap(アメリカ)

米NVIDIAは、自動車・自動運転向けのコンピュータ「NVIDIA DRIVE」で業界随一のネットワークを形成した。提携というより顧客網と言った方が正確かもしれないが、パートナー企業は370社以上になるという。大手メーカー・スタートアップ問わず開発企業の大部分がNVIDIA製品を扱っているのだ。

スタートアップ育成プログラム「NVIDIA Inception」を提供するほか、マッピング技術を有する米DeepMapを自ら買収するなど、顧客網の拡大のみならず技術の進化・習得にも注力しているところがポイントだ。

百度は世界最大級の開発ネットワークでスタートアップと協業
  • 百度(中国)
  • Neolix(中国)

中国IT大手の百度(Baidu)は、自動運転開発向けのオープンプラットフォーム「アポロ計画」で世界最大級の開発ネットワークを構築した。

配送ロボット開発を手掛ける中国のNeolixのように、アポロを活用してすでに商用化を進めているスタートアップも少なくない。アポロ計画に参加し、そこから新たなビジネスに着手するスタートアップが今後続発する可能性は十分考えられる。

■EC・小売・物流大手×スタートアップ
  • Amazon(アメリカ)
  • Dispatch(アメリカ)
  • Zoox(アメリカ)
  • Plus(中国)
  • ウォルマート(アメリカ)
  • Nuro(アメリカ)
  • Cruise(アメリカ)
  • Argo AI(アメリカ)
  • Gatik(アメリカ)
  • UPS(アメリカ)
  • TuSimple(中国)
  • Waymo(アメリカ)
  • FedEx(アメリカ)
  • Aurora Innovation(アメリカ)
  • PACCAR(アメリカ)

自動運転技術を活用したサービス展開に向け、ECや物流大手の取り組みも加速している。

米Amazonは2017年、ロボット開発を手掛けるDispatchを買収し、その技術を活用して宅配ロボット「Amazon Scout(アマゾン・スカウト)」を自社開発した。2020年には、自動運転開発を手掛ける米Zooxも買収している。

また、配送面では、自動運転トラックの開発を手掛ける中国Plusに1,000台分の自動運転システムを発注したことが報じられている。

小売大手の米ウォルマートは、NuroやCruise、Argo AI、米Gatikなど数々の企業と自動運転配送の実証に取り組んでおり、本命の行方に注目が集まるところだ。

物流関連では、米UPSが中国系TuSimpleやWaymo、米FedExがAurora Innovationなどとの距離を縮めている。自動運転トラックも大型案件となりやすいため、今後PACCARなどのトラックメーカーを交えた新たなグループが形成される可能性もありそうだ。

■【まとめ】年々複雑化の一途をたどる業界地図 新たな動きに注目

特定のスタートアップと複数の大手企業が結びついていたり、自動車メーカーとテクノロジー企業の大手同士が結びついていたりするなど、業界地図は年々複雑化している印象だ。

一方、本丸の自動運転システム開発を手掛けるスタートアップをめぐる自動車メーカー各社の攻防はある程度落ち着き始めている印象で、今後の焦点はサービス実装に向け他業種大手を交えたグループ形成に移っていきそうだ。

業界地図に新たな再編が起こるのか、2022年の動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転で注目!国内外スタートアップ45社を総まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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