トヨタ子会社Woven Planet Groupの自動運転事業一覧(2021年最新版)

TRI-ADの新体制化で誕生、先進技術開発の中核担う



出典:トヨタプレスリリース

自動車メーカーとして確固たる地位を築き上げたトヨタ。現在は、自動運転をはじめとした次世代モビリティ社会に向けモデルチェンジを図っている最中だ。

このモデルチェンジにおいて、重要な役割を担うのがWoven Planet Group(ウーブン・プラネット・グループ)だ。北米開発拠点のTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)とともに、最先端技術の研究開発や社会実装を進めていく一大拠点として、2021年1月に事業を本格始動させている。







この記事では、Woven Planet Groupの概要と取り組みを解説していく。

■Woven Planet Groupの概要
先端技術開発のさらなる促進に向けTRI-ADを再編

ウーブン・プラネット・グループは、TRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)の事業をさらに発展・拡大させるための新体制として2021年1月に事業を開始した。

前身となるTRI-ADは、自動運転技術などの先行開発分野における技術開発に向け、アイシン、デンソーとともに2018年に設立した国内開発拠点だ。トヨタは2016年、AIや自動運転、ロボティクスといった先進技術の海外拠点「TRI」を立ち上げており、この国内版といった位置付けだ。

TRI-ADは、各社のエンジニアや新規採用で1,000人規模の開発体制を構築し、研究から開発まで一気通貫のソフトウェア開発や、先行開発領域におけるグループ内の連携強化、国内外のトップ人材採用による開発力強化などを目的に掲げていた。

TRI-ADとしては3年に満たない活動期間となったが、この間に自動運転ソフトウェアや高精度3次元地図のオープンプラットフォーム「AMP」を開発するなど、大きな成果を上げている。

出典:ウーブン・プラネット・グループ公式プレスリリース
新体制は持ち株会社と事業会社で構成

これらの事業を引き継ぐウーブン・プラネット・グループは、全体の戦略的意思決定などを担う持ち株会社「ウーブン・プラネット・ホールディングス(Woven Planet Holdings)」と、自動運転技術の開発や実装などを担う「ウーブン・コア(Woven Core)」、Woven CityやAMPなど新領域における事業拡大機会の探索や革新的なプロジェクトを担う「ウーブン・アルファ(Woven Alpha)」に再編され、さらにアクセルを踏み込んでいる。

3社に共通する「Woven」は「weave=織る」の過去分詞で、「織り込まれた」を意味する。トヨタの豊田章男社長は「新しい町につくられる“編み込まれたように交差する道”から想起した」としつつ、トヨタのルーツとなった自動織機に言及し、「豊田佐吉は母を楽にさせたい想いから自動織機を発明した。その息子でトヨタ自動車創業者の喜一郎は、国産車で日本を豊かにしたいという一心でクルマを作った。この“他の誰かのために”という想いを忘れないために」と社名に込めた信念を語っている。

このほか、ウーブン・プラネット・ホールディングスの元には、グローバル投資ファンド「ウーブン・キャピタル(Woven Capital)」も設立されている。

■ウーブン・コアの取り組み
出典:Woven Planet Group公式サイト

まずはウーブン・コアの取り組みから説明する。

高度運転支援技術「Teammate」を開発

自動運転技術の開発や実装を担うウーブン・コアは、トヨタが掲げる「Mobility Teammate Concept」に基づいた先進的な高度運転支援技術「Teammate」の開発を主軸としている。開発は、「ショーファー」「ガーディアン」という2種類のアプローチで進められている。

ドライバーとシステムが、時に見守り、時に助け合うようなパートナーとしての関係を築き、安全・安心なモビリティを提供するコンセプトで、その技術は「Toyota Teammate」「Lexus Teammate」の名称ですでにADAS(先進運転支援システム)として実用化されている。

「ショーファー」と「ガーディアン」が未来の自動運転に

これらの技術は、高度化に伴い自動運転を実現する。アプローチ手法の1つ「ショーファー」は、車両が自律走行できる状態を目指し、究極的には人間による監視や緊急時の操作がなくても運転できる状態を目標としている。

一方の「ガーディアン」は、ショーファーと同様の基盤技術を使用し、ドライバーの運転能力を拡充・強化することで安全性を向上させるよう設計されている。過酷な環境下でドライバーの運転能力が限界に近づいているときなどに、ドライバーをシームレスに支援するシステムだ。

また、ガーディアンはレベル4~5の自動運転システムと組み合わせ、安全性と品質を向上させることも可能という。ショーファー型システムのバックアップとして機能させることで、システム障害の可能性を低くすることができるという。

つまり、ドライバーの運転を代替するメインの自動運転システムが限界に近づいた際にも、その自動運転システムを支援することができるのだ。

このガーディアンシステムは、モビリティサービス専用の自動運転車「e-Palette(イー・パレット)」にも搭載されている。e-Paletteは、他社製の自動運転システムを搭載可能な制御インターフェイスを備えており、万が一の際にはガーディアンをバックアップとして機能させることができる。

【参考】ショーファーとガーディアンについては「トヨタの自動運転システム「ショーファー」を徹底解剖!どんな技術?」も参照。

■ウーブン・アルファの取り組み
出典:Woven Planet Group公式サイト

まずウーブン・アルファの取り組みを紹介しよう。

開発を効率化するプラットフォーム「Arene」

ウーブン・アルファは、誰もがアクセス可能でさまざまな車両プログラムを容易に設計、構築、テスト、実装できるプラットフォーム「Arene(アリーン)」や、自動地図生成プラットフォーム「AMP(Automated Mapping Platform)」、人中心の体験と必要なUXツールの開発、実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」のプロジェクトなどを手掛けている。

Areneは、車両とクラウドを密に結合するプログラミングプラットフォームで、車両のインターフェイスとコンピューターリソースに容易かつ安全にアクセスできるため、アイデアの創出から構築、テスト、そして提供に至るまでの開発サイクルを効率化することが可能という。

注目度高い「AMP」

ウーブン・アルファの中で、特に注目度が高いのが「AMP」だ。自動運転で必要となる高精度3次元地図の作製や更新を容易にするプラットフォームで、高い精度と拡張性を合わせ持った高精度地図を低コストで利用可能になる。

トヨタは2015年、カメラを搭載した車両が走行中に収集した路面の画像データと位置情報をもとに自動的に高精度地図データを作製する技術を発表したが、この技術をTRI-ADが進化させ、高解像度の衛星画像を用いた地図作製や一般的なドライブレコーダーを使用した自動地図作製の実証などを進めてきた。

2020年4月からは、日本の高精度3次元地図作製を手掛けるダイナミックマップ基盤と地図更新に向けた共同実証にも着手している。

ウーブン・アルファが引き継いだ2021年以後も、いすゞや日野、三菱ふそうとAMPを活用した共同実証などを進めているほか、過去に共同実証を行った米CARMERA(後述)をウーブン・プラネット・ホールディングスが買収するなど、本格実用化に向けた取り組みを加速している印象だ。

高精度3次元地図は世界における大半の自動運転車が利用する要素技術だが、膨大な道路を網羅しつつ定期的に更新するには、とてつもない労力を要する。いかに作業を単純化・自動化・規格化していくかが課題となっているが、こうした問題解決にAMPが大きく貢献するのだ。

Woven Cityをけん引
出典:トヨタプレスリリース

あらゆるモノやサービスがつながる実証都市として、トヨタが静岡県裾野市の東富士工場跡地を活用して造成を進めているのが「Woven City」だ。さまざまなパートナー企業の参画のもと、自動運転をはじめMaaSやロnボット、スマートホーム技術、AI技術などの導入・検証を行う新たな「まち」だ。

自動運転モビリティ専用、歩行者専用、歩行者とパーソナルモビリティが共存する3本の道が網の目のように織り込まれて街区を形成し、将来的には2,000人以上の住民が暮らす規模を目指している。

さまざまな実証実験の場を前提としているため、既存の市街地では困難な新規性あふれる事業の導入も可能になる。自動運転技術の社会実装を加速させる場としてはもちろん、先進的なスマートシティとしても今後注目が高まるものと思われる。

■ウーブン・キャピタルの取り組み
出典:Woven Planet Group公式サイト

続いて、ウーブン・キャピタルの取り組みを紹介する。

Nuroなど有力企業に出資

ウーブン・キャピタルは、8億ドル(約880億円)規模のグローバル投資ファンドとして、自動運転やAI、データ・アナリティクス、コネクティビティ、スマートシティなどの各領域で革新的なテクノロジーを発揮するグロース・ステージのベンチャー企業に投資し、幅広い投資先企業とともにグローバルなエコシステムの構築を目指している。

これまでに、車道を走行する自動配送ロボットの開発を手掛ける米Nuroや、フリート事業におけるDX(デジタル・トランスフォメーション)を推進する米Ridecellに出資している。

また、持続可能な都市環境の再構築を目指す企業向けのベンチャーキャピタル2150や、モビリティの分野でイノベーションを目指す企業を対象としたUP.Partnersのファンドなどへの出資も行っている。

■ウーブン・プラネット・ホールディングスの取り組み
立て続けの買収劇で技術開発力を強化

グループにおける戦略的意思決定やパートナー企業の探索などを行うウーブン・プラネット・ホールディングスは、企業買収による技術の吸収と進化に注力しているようだ。

2021年4月、米配車サービス大手Lyftの自動運転開発部門「Level 5」を約5.5億ドル(約610億円)で買収することに合意し、7月に買収を完了したのを皮切りに、8月には高精度地図を中心とした情報解析技術を持つ米CARMERAを買収完了、9月には自動車向けOSの開発を手掛ける米Renovo Motorsの買収を発表している。

トヨタとしては異例とも言えるハイペースな買収劇が続いており、どん欲に技術の取得・融合を図っている印象だ。自動運転を軸に次世代モビリティ社会の創造に突き進むトヨタの「本気度」の表れと言えそうだ。

■【まとめ】Woven Planet Groupが自動運転開発の中核に

トヨタにおける自動運転開発は、TRIとWoven Planet Groupが主役の座を担っているようだ。100年に1度といわれる変革の時代に差し掛かり、その重要性は今後ますます強まることは間違いない。

自動運転システムやソフトウェアプラットフォーム、高精度3次元地図、Woven Cityなど、自動運転分野において包括的に取り組むWoven Planet Groupのさらなる躍進に期待だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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