自動運転と道の駅(2022年最新版)

全国で実証に着手、4カ所はサービスイン



出典:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-html/automated-driving-FOT/index.html

道の駅などを拠点とした自動運転移動サービスが徐々に広がりを見せている。地方における公共交通の維持や新たなビジネスモデルを創出する取り組みとして、今後注目が高まっていくことは間違いない。

地方において、自動運転技術の導入をどのように図っていくのか。この記事では、各地の実証やサービスの動向に迫る。


■道の駅などを拠点とした自動運転移動サービスの概要
全国18カ所で実証に着手

国土交通省は2017年、高齢化が進行する中山間地域において人流・物流の確保が喫緊の課題となっているから、道の駅などを拠点とした自動運転サービスの実現に向け「中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転ビジネスモデル検討会」を設立し、道路空間の活用やビジネスモデルの在り方などについて議論を進めてきた。

2017年度の実証は、技術的な検証を速やかに実施することが可能な地域指定型5カ所、既存の取り組みと連携することでビジネスモデルの高い実現性が期待できる公募型8カ所の計13カ所が選定された。このほか、ビジネスモデルのさらなる具体化に向け机上検討を行うFS(フィージビリティスタディ)5カ所も選定されている。

地域指定型は、秋田県北秋田郡上小阿仁村の道の駅「かみこあに」、栃木県栃木市西方町の道の駅「にしかた」、滋賀県東近江市蓼畑町の道の駅「奥永源寺渓流の里」、島根県飯石郡飯南町の道の駅「赤来高原」、熊本県葦北郡芦北町の道の駅「芦北でこぽん」の5カ所。

公募型は、北海道広尾郡大樹町の道の駅「コスモール大樹」、山形県東置賜郡高畠町の道の駅「たかはた」、茨城県常陸太田市の道の駅「ひたちおおた」、長野県伊那市の道の駅「南アルプスむら長谷」、富山県南砺市の道の駅「たいら」、岡山県新見市の道の駅「鯉が窪」、福岡県みやま市のみやま市役所山川支所、徳島県三好市の道の駅「にしいや」・大型観光施設「かずら橋夢舞台」となっている。各地域では、それぞれ約1週間にわたる実証が行われた。


2017年度の実証は、13地域の総走行距離2,200キロで、計1,400人が参加したという。2018年度以降も、車両調達の見通しやビジネスモデルの検討状況などを踏まえ、準備が整った地域から順次長期実証に着手している。

なお、2022年までに、新潟県長岡市の震災メモリアル施設「やまこし復興交流館おらたる」、岐阜県郡上市の道の駅「明宝」、愛知県豊田市の道の駅「どんぐりの里いなぶ」、滋賀県大津市の道の駅「妹子の郷」、山口県宇部市の地域交流施設「楠こもれびの郷」の5カ所が実証地域に加わっている。

▼中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-html/automated-driving-FOT/index.html

【参考】道の駅に関する取り組みについては「いま道の駅が自動運転のサービス拠点として注目を集めている」も参照。


実証に使用されている車両

実験車両は、主にDeNAと先進モビリティ、ヤマハ発動機、アイサンテクノロジーの4社が提供している。

DeNAは、仏EasyMileのロボットシャトル「EZ10」を提供している。小型のバスタイプで、立席含め乗車人数約10人程度、最大時速40キロで走行できる。

先進モビリティは、自社開発した自動運転システムを搭載した定員20人程度の自動運転バスを提供している。GPSと磁気マーカー、ジャイロセンサーなどにより自車位置を特定する路車連携型で、混在交通下でレベル2、専用空間でレベル4走行を行うことができるという。

ヤマハ発動機は、ゴルフカーを改造した自動運転車を提供している。埋設した電磁誘導線の磁力を感知して既定ルートを走行する路車連携型で、混在交通下でレベル2、専用空間でレベル4走行を行うことができる。最高時速20キロほどの低速モデルで、定員は4~6人程度となっている。

アイサンテクノロジーは、乗用車(バン)をベースにした自動運転車を提供している。事前に作製した高精度3次元地図を用い、LiDARなどのセンサーで周囲を検知しながら規定ルートを走行する車両自律型で、最大時速50キロで4人ほどが乗車できる。

■自動運転サービスを開始した地域
秋田県北秋田郡上小阿仁村の道の駅「かみこあに」

上小阿仁村では、ヤマハ発動機の自動運転車を活用して2018年12月に約3カ月間に及ぶ長期実証に着手し、2019年11月に自動運転サービスの本格導入に踏み切った。道の駅第1号だ。

走行ルートは、道の駅を拠点に各集落を結ぶ全長約4キロのルートで、地元のNPO法人上小阿仁村移送サービス協会が運営を担っている。運賃は200円。午前・午後それぞれ1便を運行するほか、定期便の隙間の時間でデマンド運行も行っているようだ。

地域の協力を得て、一部区間を期間限定で一般車両が進入できない専用区間とし、自動運転を行っているようだ。ビジネスモデルとしては、道の駅への農産物輸送や道の駅や地元商店からの商品配送といった貨客混載も実施している。

【参考】上小阿仁村の取り組みついては「道の駅と集落結ぶ自動運転サービス、商用化が決定!まず秋田で」も参照。

滋賀県東近江市蓼畑町の道の駅「奥永源寺渓流の里」

近江市蓼畑町では、2019年11月から約1カ月間に渡る長期実証を行い、延べ501人が乗車した。その後、2021年4月に自動運転サービスとして本格導入を開始している。

車両はヤマハ発動機の自動運転車で、道の駅から銚子ヶ口入口までの往復約4.4キロの区間を週4日、1日6便運行している。実施主体は東近江市役所で、運賃は150円。

ルート上には看板や路面標示を設置し、地域の協力を得て自動運転車が円滑に走行可能となるよう周知に努めている。

【参考】東近江市蓼畑町の取り組みについては「運賃150円の自動運転サービス、滋賀県の道の駅で始動!全国2例目、電磁誘導型」も参照。

福岡県みやま市役所山川支所

みやま市では、2018年11月から約50日間に及ぶ長期実証を行い、2021年7月に自動運転サービス化を果たした。

車両はヤマハ発動機の自動運転車で、バイオマスセンター「ルフラン」から山川市民センター、地元商店を結ぶ往復7.2キロのルートを走行している。みやま市が運営主体となり、月曜から金曜まで各日5便を運行している。運賃は100円。

運転は地元のタクシー会社が担い、同乗して運行を監視するレベル2で走行している。

島根県飯石郡飯南町の道の駅「赤来高原」

飯南町では、2020年9月に約40日間の長期実証を行い、その後2021年10月に自動運転サービスを開始している。

車両はヤマハ発動機の自動運転車で、道の駅から瀬戸山城登山口や地元商店、赤名駅、飯南町役場などを周回する全長約2.7キロのルートを走行する。飯南町が運営主体となり、運賃200円で週5日、1日6~10便を運行している。

休日は観光客など町外からの利用を想定し、銀山街道赤名宿ルートの周遊や瀬戸山城登山口までの移動などを行っているという。

【参考】飯南町の取り組みについては「全国で3カ所目!道の駅×自動運転移動サービス、島根県で開始へ」も参照。

■実証着手済みの地域
山形県東置賜郡高畠町の道の駅「たかはた」

高畠町では、2018年2月ごろに短期実証を行い、地域実験協議会を経て2021年10月から約1カ月間に渡る長期実証に歩みを進めた。

短期実証では道の駅を拠点としたルートを設定していたが、長期実証では公立高畠病院から町役場を経てスーパーマーケットに至るルートなどを設定している。公共交通としての需要を踏まえたルート変更と思われる。車両は、ヤマハ発動機の自動運転車を活用している。

熊本県葦北郡芦北町の道の駅「芦北でこぽん」

芦北町では、2017年9月から短期実証、2019年1月から約50日間の長期実証をそれぞれ行っている。長期実証では、ヤマハ発動機の自動運転車2台を活用し、道の駅から佐敷駅、芦北町役場、平生を結ぶ片道4.2キロのルートを走行している。

計画では、高齢者の病院や役場への移動をはじめ、道の駅に出荷する農産物の輸送や道の駅から地域住民・地域外への商品配送などを行うとしている。

栃木県栃木市西方町の道の駅「にしかた」

栃木市西方町では、2017年9月に短期実証が行なわれている。DeNAの車両を導入し、道の駅を起終点に栃木市役所西方総合支所から集落前を往復する約2キロのルートを運行した。

走行ルートは、案内看板やバリケード、カラーコーンなどで交通規制を実施し、人や一般乗用車の進入を制限する形でドライバーなしのレベル4運行を行ったという。

茨城県常陸太田市の道の駅「ひたちおおた」

常陸太田市では、2017年11月の短期実証を経て、2019年6月から約1カ月間に渡る長期実証を行っている。

ヤマハ発動機の自動運転車を活用し、高倉地域交流センターから高倉郵便局、久保田橋バス停を結ぶ往復1.8キロのルートを走行した。

実証では、全国初となる自動運転車と路線バスの連携による運行システムの検証も行っている。運行管理センターで自動運転車両からのリアルタイム情報をもとに運行状況をモニタリングしたほか、スマートフォンを通じた乗車申し込みや運行管理センターからの乗車時刻の連絡などを行ったようだ。

北海道広尾郡大樹町の道の駅「コスモール大樹」

大樹町では、先進モビリティの車両を活用し2017年12月に短期実証が行われたほか、2019年5月から約1カ月間に渡る長期実証が実施されている。

ルートは、市街地循環便ルートと尾田地区から道の駅を往復するルートの計12.5キロに及び、一部区間は自動運転車優先区間としている。優先区間では、回転灯付き案内看板やピクトグラムなどにより、自動運転車両が優先的に走行できる空間を確保している。

長野県伊那市の道の駅「南アルプスむら長谷」

伊那市では、2018年2月の短期実証を経て、同年11月に長期実証にステップアップしている。車両は先進モビリティの自動運転車で、JA上伊那東部支所から道の駅、伊那市長谷総合支所を結ぶ片道約6キロのルートを走行した。

同市では、道の駅を高齢者などの日常的な買物拠点とするため、スーパーから貨客混載で食品や日用品などを運搬して販売し、輸送料を徴収する取り組みや、一部をドローンに載せ替えて山間部集落に空輸する取り組みなども行っている。

富山県南砺市の道の駅「たいら」

南砺市では、2017年11月に短期実証が行われた。アイサンテクノロジーの車両を導入し、道の駅から平行政センター、農作物集荷場などを経て世界遺産の五箇山相倉合掌造り集落を結ぶ往復約16キロのルートをレベル2運行したほか、道の駅周辺の専用空間で目視による遠隔監視・操作のレベル4走行も実証した。

岡山県新見市の道の駅「鯉が窪」

新見市では、2018年3月に短期実証が行われている。ヤマハ発動機の自動運転車を導入し、道の駅や市役所支局などが立地するエリアから郵便局や農作物出荷場などをめぐる約2.2キロの周回ルートにおいて、手動運転区間やレベル2区間、片側一車線を専用区間としたレベル4区間をそれぞれ設定し、実証を進めた。

徳島県三好市の道の駅「にしいや」・かずら橋夢舞台

三好市では、2017年12月に短期実証が行われた。アイサンテクノロジーの車両を活用し、道の駅と観光施設を結ぶ往復約7.2キロのルートを走行した。かずら橋夢舞台付近の一部区間は専用空間とし、セーフティドライバーを助手席に乗せ、車外から発進・停止の操作を行うレベル4を検証した。

■【まとめ】法改正とともに遠隔レベル3・4へと進化

道の駅は2022年2月時点で1,194駅が開設されている。このうち、約8割が中山間地域に位置するという。つまり、道の駅を拠点とした自動運転移動サービスの潜在需要はまだまだ眠っているということだ。先行事例の状況次第で、今後導入が一気に加速する可能性がある。

サービス導入地域の大半は実質レベル2運行となっているが、法改正により今後公道において車内ドライバーなしの走行が認められるようになれば、遠隔レベル3、レベル4へと進化を遂げていくことは間違いない。各地の実施主体も、こうした未来を前提に取り組んでいる。

サービス導入で先行する4地域に続くエリアはどこか。また、新たに実証に着手するエリアは出てくるのか。今後の動向に引き続き注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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