【2019年8月分】自動運転・MaaS・AIの最新ニュースまとめ

トヨタなど注目決算、自動運転データのオープン化も



2019年度最初の決算(4~6月期)が出揃う8月。国際的な貿易摩擦の懸念が広がる中、国内モビリティ業界をけん引するトヨタ自動車やソフトバンクグループはともに増益を果たした。


国内では、nommocやティアフォーら新進気鋭の企業による事業拡大の動きが目立ち、海外では業界をリードする米Waymoが新たな取り組みに着手したようだ。

このほか、読み応えたっぷりのスマートドライブやZMPの各社長とのインタビュー・対談記事もピックアップした。

2019年8月の10大ニュースを一つずつ見ていこう。

記事の目次

■【速報】トヨタ2019年4~6月期決算、純利益3.9%増の6829億円 自動運転含むCASE見据えリソーセスシフトへ(2019年8月2日付)

トヨタ自動車は2019年8月2日、2019年4〜6月期(2020年3月期第1四半期)の決算発表を行った。米国会計基準による連結業績の純利益は前年同期比3.9%増の6829億7400万円、売上高は同3.8%増の7兆6460億9100万円、営業利益は同8.7%増の7419億5100万円の増収増益となった。


2020年3月期の通期見通しについては、為替変動の影響などを勘案し、純利益が前期比14.2%増となる2兆1500億円、売上高は同2.4%減の29兆5000億円、営業利益は同2.7%減の2兆4000億円とするなど、期首見通しから下方修正したようだ。

■運転手が急病→自動運転で路肩に停車 国交省が一般道向けガイドライン(2019年8月5日付)

国土交通省は2019年8月2日、「ドライバー異常時対応システム発展型(路肩等退避型)の一般道路版」のガイドラインを発表した。ドライバーの急病といった異常時に、車両を路肩などへ安全に車両を停止させる技術の基本設計書となるもので、ドライバーの異常に起因する重大事故を未然に防ぐ狙いだ。

2018年3月策定の「高速道路版」とは異なり、一般道路版では「ドライバーの異常により運転の継続が困難になった場合に、交差点等への停止を回避する機能」について触れられている。

同省は、先進安全自動車(ASV)推進計画第6期(2016~2020年度)として、自動運転を念頭においた先進安全技術のあり方の整理をはじめ、路肩退避型等発展型ドライバー異常時対応システムの技術的要件の検討、「Intelligent Speed Adaptation(ISA)」の技術的要件の検討、実現されたASV技術を含む自動運転技術の普及を検討項目に掲げており、交通事故死傷者数の低減を図っていく方針だ。

■【速報】ソフトバンクG決算、四半期純利益が初の1兆円超え ビジョンファンド、引き続きAI活用領域のライドシェアや自動運転に注力へ(2019年8月7日付)

ソフトバンクグループ株式会社は2019年8月7日、2019年4〜6月期(2020年3月期第1四半期)の決算発表会を開いた。同期は、アリババ株売却に伴う利益1.2兆円を計上したことが大きく影響し、純利益が前年同期比3.6倍となる1兆1217億円に達した。

孫会長は、ソフトバンクビジョンファンド(SVF)の1号ファンドについて「82社のユニコーンを傘下に持つことができた」と説明。また、2号ファンドに関しては投資方針を明らかにしなかったが、孫会長がAI分野に引き続き注目することを登壇中に明言していることから、引き続きAIが活用される自動運転分野への投資が加速することは確実と言えそうだ。

■“タクシー無料化”実現!nommocローンチに伴い、集え広告主!将来は自動運転タクシーでもこの仕組みが?(2019年8月10日付)

ターゲティング広告技術などを駆使して移動の無料化を目指す株式会社nommocは2019年8月7日、新サービス「nommoc(ノモック)」に関する発表を行った。広告主の募集に本格着手し、サービスを軌道に乗せていく構えだ。

ノモックは、スマートフォンアプリを活用した配車サービスだが、効果的な広告戦略によって乗車料金を賄うことで無料移動を実現する新サービス。このほど、東京都内で新サービスをローンチすることに伴い、広告主の募集を開始した。

アプリ連動による細かくて精緻なターゲティングを可能にする「O2O User Targeting」、配車エリアを絞ることでエリア到達効果を高めることが可能な「Area Targeting」、五感を活用した体験価値を高めるコミュニケーションの展開を可能にする「Rich Experience」といった手法を活用し、体験型ターゲティング広告媒体として新たな市場を生み出していく。

■【対談】コネクテッドの未来を探る スマートドライブの北川社長と自動運転ラボが対談(2019年8月10日付)

コネクテッドカー関連市場が本格的に熱を帯び始めており、開発の裾野が広がりを見せている。その中で、シガーソケットに専用デバイスを差し込むだけで自動車をコネクテッド化するプロダクツを開発・販売している注目のベンチャー企業・株式会社スマートドライブの北川烈社長と、自動運転ラボを運営する株式会社ストロボの代表取締役である下山哲平が対談した。

アメリカ留学を機に次世代のモビリティ産業に興味を持ち、自動運転の普及に必要不可欠な要素として「コネクテッド」を事業テーマに据えた北川社長。後付けのデバイスで「浅いデータでどこまで深く予測できるのか」という部分を追求し、データの活用といった将来的な展開を見据えた開発を進めているようだ。

■ソフトバンクビジョンファンドの自動運転・MaaS領域の投資まとめ(2019年8月12日付)

近年投資事業に力を入れるソフトバンクグループ。投資部門であるソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)がグループ全体の営業利益をけん引する業績を残しており、近く立ち上げられる2号ファンドにも期待が寄せられる。

そこで自動運転ラボでは、SVFを中心に同グループがこれまでに出資したモビリティ分野の企業20社をピックアップした。

売却済みだが、半導体大手のNVIDIAをはじめ、米自動車大手GMの自動運転開発部門を担うCruiseやライドシェア大手各社、AI開発、LiDAR開発、オンデマンドサービス開発など、将来性豊かなスタートアップが目白押しだ。

また、近年は東南アジアや中南米への投資を加速する動きも見せており、新たな原石の発掘はまだまだ続きそうだ。

■車業界の死闘!研究開発費3兆円超、CASE主導権争い 自動運転や電動化対応で(2019年8月20日付)

自動車メーカー国内主要7社の2020年3月期の研究開発費見通しが、合計で3兆円を超えていることが分かった。過去に研究開発費の合計が3兆円を超えたことはく、各社が自動運転や電動化に向けた取り組みを加速させていることが鮮明になった。

トヨタ単体の研究開発費見通しだけでも1兆1000億円に上っており、2019年3月期の1兆488億円に比べて500億円強の増加となっている。

トップのトヨタが1兆1000億円で、2019年3月期の1兆488億円から約500億円の増加。これに次ぐ形で、ホンダが8600億円、日産が5500億円、スズキが1700億円、三菱自動車が1410億円、マツダが1390億円、スバルが1200億円の見通しとなっており、全7社が前期より予算を拡充している。

自動車業界では次世代技術の開発に掛かる費用を抑制するため、海外を中心に研究開発分野における提携が増加傾向にあり、国内7社の動向にも注目が集まるところだ。

■「五輪までに自動運転実現」 ZMP社長を突き動かす総理との約束(2019年8月22日付)

自動運転ラボはこのほど、ロボットベンチャーZMPの谷口恒社長をインタビューし、宅配ロボットや自動運転システムの事業化に向けた思いや戦略をうかがった。

同社は2019年7月開催の「ZMP World 2019」で、宅配ロボット「CarriRo Deli」の商用プログラムや、移動に不自由を抱える人が搭乗可能な移動のパートナー「Robocar Walk」の新製品を発表するなど、量産化を見据えた開発の手を加速させている。

谷口社長は自動運転レベル4の実現に関し、法整備面における課題などに対応するため空港の制限区域を活用した実証に取り組むなど、事業化に向けた動きについて説明。この中で「安倍首相と2015年11月にお会いしたとき、『2020年のオリンピックを目指して自動運転を進めます』と宣言した」と話しており、この約束の実現を原動力に2020年を見据えた活動を進めているようだ。

■グーグル系ウェイモ、自動運転走行のデータセットを開放(2019年8月23日付)

自動運転開発を手掛けるグーグル系のWaymo(ウェイモ)は2019年8月21日、同社の自動運転車が公道走行で取得したデータセット「Waymo Open Dataset」を、研究者向けに無料開放すると発表した。

同社の自動運転車両はこれまで、25の都市で1000万マイル(1600万キロメートル)以上を走行し、あらゆるデータを収集してきた。ここから得た高解像度センサーデータで構成されるデータセットには、1000の運転セグメントからのデータが含まれている。

カバー範囲はアリゾナ州フェニックス、ワシントン州カークランド、カリフォルニア州マウンテンビュー、カリフォルニア州サンフランシスコにまたがる密集した都市および郊外環境で、昼夜や夜明け、夕暮れ、好天、雨天といった広範囲の運転条件がキャプチャーされているという。

今回のオープンソース化により、世界的な自動運転開発の促進を図るとともに、コンピュータービジョンやロボット工学などの技術が他の関連分野に波及していくことを望むとしている。

■自動運転開発のティアフォー、国内最大規模のシリーズA調達額をさらに積み増し(2019年8月24日付)

自動運転システムの開発を手掛けるスタートアップのティアフォーが、新たな資金調達を発表した。7月発表の資金調達シリーズAラウンドを積み増す形の増資で、開発力の強化を加速する構えだ。

同社は7月、損害保険ジャパン日本興亜やヤマハ発動機、KDDI、ジャフコ運営の投資事業有限責任組合、アイサンテクノロジーを引受先とした第三者割当による資金調達の実施により、シリーズA累計資金調達額が113億円に上ることを発表した。

今回の発表では、台湾のパソコン大手・広達電脳(クアンタ・コンピュータ)を引受先とした第三者割当による10億円の追加増資を新たに実施し、最先端の自動運転システムを支える電子制御ユニット(ECU)の開発と商用化に共同で注力し、業界標準の獲得を目指すとしている。

広達電脳はすでにテイアフォーが開発したオープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」を搭載したECUの開発を手掛けており、実験車両を用いた走行試験を進めており、今後、Autowareを搭載したECUの市場投入による波及効果に期待が持たれている。

■【まとめ】オープン化進む自動運転関連のソフトウェアやデータ

nommocの配車無料サービスは、広告業に力を入れるタクシー業界において注目の的となる取り組みだ。高い広告効果を出し続け、継続性が担保される段階に到達すれば、業界の構造が大きく変化していくことになるだろう。

また、ティアフォーの資金調達Aラウンドも、世界を視野に自動運転ソフトウェアの普及拡大を目指すうえで大きな試金石となるもの。今後の展開に注目だ。

海外では、ウェイモが自動運転開発向けのデータセットを無料開放したが、自動運転分野におけるOS戦略への布石となる可能性も高く、同社の動向についてもしっかりと目を配っていく必要がありそうだ。


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