【対談】コネクテッドの未来を探る スマートドライブの北川社長と自動運転ラボが対談

自動運転時代を見据えた基盤作り





スマートドライブ社の北川烈社長(右)とストロボ代表の下山哲平(左)=撮影:自動運転ラボ

いま、世界中の車の多くはまだコネクテッドカーではない。そんな中、シガーソケットに専用デバイスを差し込むだけで自動車をコネクテッド化するプロダクツを開発・販売している日本のベンチャー企業がある。株式会社スマートドライブ(本社:東京都港区/代表取締役:北川烈)だ。

こうした専用デバイスを搭載してコネクテッド化した車両を定額レンタルするサービスも手掛けているほか、自動車から収集したセンサーデータを活用できるプラットフォームも企業向けに展開しており、日本におけるモビリティベンチャーの雄として注目を集め続けている。







今回はコネクテッドの未来をテーマにした特別企画として、スマートドライブ社の北川烈社長に登場して頂き、自動運転ラボを運営する株式会社ストロボの代表取締役である下山哲平との対談の模様をお届けする。

記事の目次

【北川烈氏プロフィール】きたがわ・れつ 慶応大学在籍時から国内ベンチャーでインターンを経験し、複数の新規事業立ち上げを経験。その後、1年間米国に留学しエンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学し移動体のデータ分析を研究。その中で今後自動車のデータ活用、EV、自動運転技術が今後の移動を大きく変えていくことに感銘を受け、在学中にSmartDriveを創業し代表取締役に就任。

【下山哲平プロフィール】しもやま・てっぺい 大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。

■自動運転時代を見据えたコネクテッド事業
Q まずは北川社長のご経歴と創業された経緯を教えていただけますか?

北川氏 元々は大学院で、人の流れの分析や防犯カメラの画像分析、航空機の離発着といった移動体のデータ分析に関する研究を行っていました。そんな中、こうした研究成果が世の中で役に立つまでには時間が掛かることに課題意識を持ち、ビジネスを通じてこうした成果をいち早く世の中で浸透させていきたいと思ったことが、結果として創業につながる動機となりました。

Q 事業テーマに自動車のコネクテッド化を選んだ理由は?

北川氏 アメリカに留学していた時、知人がGoogleやTeslaで働いており、自動運転や電動化などの領域で活躍していました。実は私自身は車がすごく好きだというわけではありませんが、こうした知人が近くにいたことでマーケットの盛り上がりを肌で感じるようになり、自動運転が実現する社会がかなり早めに訪れるのではないか、と思うようになりました。こうした経緯で自動車領域を事業テーマとして選びました。

その中でも特に「コネクテッド」を事業テーマに据えた理由は、全ての車がインターネットにつながる基盤を作ることは、将来的な自動運転の普及に必要不可欠な要素だと考えたからです。そしていま手掛けている事業を足掛かりに、どんどん事業を広げていきたいと考えています。

下山 その先の自動運転も事業ドメインとしては含められているということですね。

北川氏 そうです。僕たちのコーポレートビジョンは『移動の進化を後押しする』というものですので、事業を進めていく過程では自動運転というのは欠かせないテーマだと思っています。

■「浅いデータでどこまで深く予測できるのか」に注力
Q コネクテッド領域でのマネタイズに向け、重視しているポイントはありますか?

北川氏 まず弊社はクルマをコネクテッド化する後付けデバイスの開発を手掛けていますが、「深いデータを取る」ということよりも「浅いデータでどこまで深く予測できるのか」という部分を追求しています。

後付けのデバイスで深いデータを取ろうという取り組みは、将来、車から直接データが取れるようになると価値を持たなくなることもあり、我々はデータの活用という点に注目して事業に取り組んでいます。

マネタイズポイントもここにあります。自動車メーカーが将来的に自社で走行データなどを取得できるようになったとき、その分析や活用のために弊社のサービスをモジュールとして使って頂くイメージですね。

Q 「浅いデータでどこまで深く予測できるのか」についての取り組みについて、具体例を教えて下さい。

北川氏 例えば、GPS(全地球方位システム)のデータをほかのデータと組み合わせれば天気が分かります。マップ情報と組み合わせれば、道路の道幅も分かります。このように色々なデータを複合的に組み合わせると、実は深くデータを取らなくても高度な分析が可能になります。いまはこうした点を深掘りしていますね。

下山 そういった移動データの収集という分野では、広い視点でみればIT大手がライバルになってくると思います。御社はモビリティ領域に特化されているので競合する部分は少ないとは思うのですが、データを集めて管理するという意味では、取り組もうとしていることは似てきますよね。そうなった時、ビッグプレイヤーとベンチャー企業の関わり方については、どうお考えですか?

北川氏 私の個人的な意見としては、協業できる部分が大きいと思っています。本当に課題解決をしようとすると、非常に狭いある領域に特化する必要がありますが、例えばGoogleさんがこの領域にまで特化する必要はないと思います。彼らはモビリティだけでなく他の領域にも広く使われるものを作っていくべきで、僕らはそこを使わせてもらって、課題解決に向けて特化したものを一緒に作っていく方向になると考えています。

やみくもに自社で全てを開発して車輪の再発明をせず、他社の良いものは照れずに使わせてもらった方が、お客様にとっては良いものができると思いますので、協業するイメージが強いですね。

■自社サービス上で広告マッチング事業も展開
Q マネタイズ策としてほかに取り組まれている点はありますか?

北川氏 広告のマッチング事業に取り組み始めています。既に自社サービスとして展開しているコネクテッド化済み車両の定額レンタルサービス「SmartDrive Cars」では、ドライバーと広告をマッチングさせる取り組みも行っていきたいと考えています。安全運転のドライバーには保険料が安い保険会社を提案したり、よく訪れる場所の近くにある駐車場の割引クーポンを配信したり、といった具合です。

下山 人の移動に関するデータを可視化できる立場にある御社だからこそ取り組めるサービスですね。ちなみに、自動運転タクシーやカーシェアビジネスの普及にはサービスの低価格化が必要ですが、私はその原資になり得るのが「広告」だと思っています。今後は、ターゲティング広告を配信するためにドライバー属性や移動データなどの情報が欲しい、というニーズも増えてくると思います。

■移動データのセキュリティ対策で重視する2つの視点
Q セキュリティ対策として取り組まれていることはありますか?

下山 移動のデータは非常に秘匿性が高く、ハッカーに狙われて売買される可能性が高い情報と言われていますので、この領域でビジネスする上で非常に重要だと思っていますが、いかがですか?

北川氏 セキュリティはやはり重要なテーマで、2つの視点から考えています。1点目は、そもそも個人情報として重要な情報をなるべく持たないという考え方です。例えば、あるドライバーの事故リスクに関する情報を個人が特定される保険情報とセットで保有すると、一気に重要度が高い情報となりますので、組み合わせで重要度があがる情報はなるべく同じところに持たないようにしています。

もう一つは、個人情報の範囲についての考え方です。「いま赤いポルシェが目の前を通った」とか「毎日帰ってくるエリアはここ」といった情報でも、個人が特定できてしまう場合があります。こうした点においては、国がどこまでを個人情報として守るべきかという線引きをする必要があると思います。 欧米などと比べて取り組みに遅れが出ないよう、我々も少しでも貢献していきたいですね。

■規制が「何かを壊すサービス」を阻む
Q 日本のモビリティスタートアップやベンチャーを取り巻く環境をどう評価しますか?

北川氏 ウーバー(Uber)やグラブ(Grab)のような企業が日本で立ち上がらないのは、規制の壁によるものも一部ある思っています。本質的な意味で何かを壊すようなサービスが立ち上がりにくい環境があるというのは間違いないと思いますね。

また最近は少しだいぶ変わってきていますが、リスクマネーの供給という視点でも海外に比べるとまだ成熟していないと感じますね。アメリカや中国などはどんどんリスクマネーを投下して100倍になるかゼロになるかという投資をしていますが、日本ではそのような事例はまだ少ないですね。もちろん投資家だけでなく我々起業家側の実力や目線も含めて、こうしたエコシステムの整備が整わないと、グローバルなメガベンチャーは出てこないのかなと思います。

下山 確かに、モビリティ領域に力を入れている大手企業のグループ以外ですと、ちゃんと立ち上がっているモビリティベンチャーは日本ではまだ少ないですね。そうした状況の中で、御社はプロダクトを世の中に出して商売として成立させている数少ない企業の一社だと思います。

■長期スパンの目線感が通じる投資家と
Q 資金調達で意識されていることはありますか?

北川氏 まず我々はそもそも創業期からの想いとして、コネクテッドだけで終わる会社ではないと考えています。プラットフォーム自体もオープンでグローバルなものにしていく必要があると思っていますので、短期的なビジネスモデルではなく、そういった目線感が通じる投資家の方と話をするようにしています。

また、我々が取り組んでいる事業は我々がいなくても絶対に普及するものだと思っています。いずれ普及する市場ですが、我々がいることで市場を早く立ち上げることにつながるので、「一緒につくっていきませんか?」というスタンスのコミュニケーションにはなっているかなと思いますね。

下山 どちらかと言うと投資というよりは、事業開発を一緒に進めるために結果としてリスクマネーも共有する取り組みの方が多いということですか?

北川氏 そうですね。業務提携も込みで出資いただくことの方が多いですね。投資家の方に関しては、中長期的な未来にかけてくれている方が多いです。

下山 ただ日本の投資家は海外の投資家と比べるとまだ堅実性を求める傾向が強いので、投資家にも変わっていってもらわなければいけないですね。

■海外展開も推進、モデルの「逆輸入」にも意欲
Q 海外進出の予定はありますか?

北川氏 そもそも大前提としてグローバルで使われるプラットフォームを作りたいという考えですので、海外展開は進める方針です。

コネクテッド技術で課題解決をしていきたいので、渋滞や事故が多い東南アジアなどの方が欧米よりもニーズがあると思っています。昨年は中国の深圳(シンセン)に出張所を作り、今年はタイにオフィスを作ります。リスクを取れるマーケットではちゃんとリスクを取れるような事業を展開していって、足元のプロダクトとのバランスをとることがすごく大事だと考えています。

下山 日本でできないことを海外で展開されるイメージですか?

北川氏 現在展開しているプロダクトを使って課題を解決できる例は結構あると思いますので、まずは自社プロダクトを海外に持っていって試してみたいですね。

ただ、日本でやろうとしているものを先に海外で作ってしまって、そこで既成概念ができたら日本に逆輸入するモデルもありだと思っています。例えば保険に関して言えば、日本だと新しい保険商品を作るのはすごく時間がかかりますが、東南アジアでは規制も少ないので、ある程度リスクを取る事業者がいれば新しい保険商品を作りやすいです。

Q 「逆輸入」というような戦略が見えてきたのは、どのくらいのタイミングからですか?

北川氏 創業期から考えていたことではありますが、その時は今ほど鮮明に見えていたわけではないですね。最初から目指す方向は変わっていないのですが、事業が進んでいく中でだんだんと鮮明に見えてきたイメージです。

下山 御社のようなゼロから起業された独立系ベンチャーでしっかりしたプロダクトがある企業はまだ少ないので、今後もこの領域を牽引していって頂ければ嬉しく思います。本日はありがとうございました。

北川氏 ありがとうございました。

■【取材を終えて】いまの事業は未来への「伏線」

「伏線」。スマートドライブ社が現在取り組んでいる事業を一言で表現するなら、このワードがふさわしいのではないかと思う。実プロダクトをローンチしつつも、常に見据えているのは未来のモビリティ市場だ。同社の事業活動に今後も注目していきたい。







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