自動車の縦方向や横方向の動きを制御し、ドライバーの運転を支援してくれる先進的な安全技術の総称「ADAS(先進運転支援システム)」。今や非常に身近な存在となった。
自家用車市場では、アダプティブ・クルーズ・コントロールとレーン・キープ・アシストを組み合わせた自動運転レベル2の標準搭載化がこの数年で大きく進展し、主流となり始めている。目玉はハンズオフ運転を可能にするレベル2+に移行し、フラッグシップモデルに自動運転の初歩となるレベル3機能を搭載する動きも活発化している。
高度化が進むADAS。各社の開発状況をまとめてみた。
・2025年5月14日:レクサスとテスラFSDの情報を追記
・2025年1月15日:各社のADASの情報をアップデート
・2024年10月22日:レクサスのADASについて追記
・2024年8月29日:ADASとADの違いについて追記
・2024年8月29日:全体的に情報をアップデート
・2024年2月6日:Teslaのオートパイロットについて追記
・2023年11月23日:Honda SENSING 360+などについて追記
・2018年9月27日:記事初稿を公開
記事の目次
■ADASの読み方や定義
ADASとは「Advanced driver-assistance systems」の略称で、一般的に「エーダス」と呼ばれる。「アダス」と読むのは誤りだ。日本語では「先進運転支援システム」と略され、こうした機能を車両に実装することで、事故が起きる確率を減らしたり、運転手の運転の負荷を軽減したりすることが可能となっている。
ADASの機能を実現するためには、センシングシステムが欠かせない。センサーによってADASのシステムが車両周辺の状況を把握することで、ドライバーへの警告や運転操作の制御につなげることができる。
ちなみに「自動運転」というワードを略す場合は「AD」という略語が使用されることがあり、これは「Autonomous Driving」の略だ。
単語 | 読み方 | 意味 |
ADAS | エーダス | 先進運転支援システム |
AD | エーディー | 自動運転 |
■ADASの基本概念
クルマの運転には大きく「認知」「判断」「操作」の各動作が必要で、ドライバーは通常、目や耳で周囲の状況を認知し、加速や停止、右折などの判断を脳で行い、そして手や足を使ってハンドルやアクセルペダルなどを操作してクルマを制御する。
この「認知」「判断」「制御」のいずれかをアシストするのがADASだ。例えば、カメラやレーザーなどのセンサーで前方の車両を検知した際、ドライバーに警告を出したり加減速を制御したりする。ただし、制御を行う場合もあくまで運転の主体はドライバーであり、基本的にはドライバーの意思が優先される。ここが「自動運転」とは異なる点だ。
また、位置情報システムや通信機能を用いて交通情報をドライバーに伝えたり、ドライバーが居眠りしている可能性が高い場合に警告を出したりするシステムなども、安全な運転を支援するものとしてADASに含まれる。
■自動運転とADASの違いは何?
ADASの運転主体はあくまで「人間」
自動運転とADASは、「運転主体」が明確に異なる。自動運転は、車両の制御すべてをシステムが行う。ドライバーは原則必要なく、乗客の一員となる。一方、ADASはドライバーが運転主体として車両制御の責任を負う。
▼自動運転のレベル分けについて
https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
自動運転レベルで言えば、システムが縦・または横方向のいずれかの制御支援を行うレベル1と、縦・横歩行放送法の制御支援を行うレベル2がADASとなる。レベル3以降が自動運転で、一定条件下でドライバーを必要としない自律走行を実現する。このレベル2とレベル3の間に大きな壁があるのだ。
レベル2+と言われる「ハンズオフ運転」を例に挙げるとわかりやすい。ハンズオフは「ハンドルから手を離す」ことを意味する。車両の縦制御を行うアダプティブ・クルーズ・コントロールと横制御を行うレーン・キープ・アシストを組み合わせることで、ドライバーがハンドルから手を離していても安定した走行を実現する水準だ。
通常のレベル2よりも一段階高性能だが、あくまで運転支援機能であるため、ハンズオフ走行中もドライバーは前方を注視し、車両の周囲を常に確認していなければならない。
システムがどれほど安定した走行を実現していたとしても、万が一の事案を拭えないのがADASだ。運転支援である限りドライバーは常時監視義務を負い、万が一の際はドライバーが責任を負う。
一方、こうしたシステムをさらに高度化させ、万が一を払拭可能な技術領域に昇華させたものが自動運転だ。自動運転可能な条件(ODD/運行設計領域)を満たす限り、ドライバーの介入を要することなく自律走行することができる(レベル3は例外あり)。
すべての運転タスクをシステムが担うため、ドライバーは一般乗客同様の扱いになる。有事の際の責任も、原則システムが担うことになるものと思われる。
つまり、レベル2+以下のADASでは、どんなに優れた技術であってもドライバーが運転主体となり、運転操作に責任を持つことが求められる。一方、レベル3以降の自動運転では、原則ドライバーは運転操作から解放され、運転以外の一定の行為(=セカンダリアクティビティ)を行うことが可能になる。
【参考】自動運転レベル3については「自動運転レベル3とは?」も参照。
【参考】セカンダリアクティビティについては「自動運転の「セカンダリアクティビティ」とは?」も参照。
■ADASの構成要素・機能
ADASにはどのような機能があるのか、ADASを構成する各要素を紹介する。
クルーズコントロール
アクセルペダルを踏み続けることなく、セットした一定速度を維持する機能。先行車両との車間制御機能を合わせ持ったシステムはアダプティブ・クルーズ・コントロールと呼ばれ、自動ブレーキ機能なども備えている。
衝突被害軽減ブレーキ(前方障害物衝突防止支援システム)
ドライバーの漫然運転などで発生する前方の車両や歩行者、障害物などとの衝突事故の低減を目的としたシステム。
カメラやレーダーなどのセンサーにより前方の障害物を検知し、自車との距離や相対速度などを勘案した上で衝突の危険性がある場合には、ドライバーへの警告やブレーキ制御を行う。
世界的に全ての自動車で、衝突被害軽減ブレーキを搭載する流れになりつつある。
車線逸脱防止支援システム(レーンキープアシスト)
ドライバーの不注意などによる車線からの逸脱防止を目的としたシステム。
道路上の白線の画像解析により車線に対する自車の位置と角度を計算し、逸脱の可能性を判定する。逸脱の可能性がある場合には、ドライバーへの警告やハンドルにトルクを与えて回避操舵を行う。
同様のシステムに、車線の中央付近を維持するようにハンドル操作する車線維持支援システムもある。
駐車支援システム(パーキングアシスト)
駐車場にクルマを停める際に、ハンドルやペダルの操作支援や、周囲の状況をドライバーにわかりやすく伝えるシステム。
クルマの後方や側方、あるいは全周囲をモニターに映し出す機能や、一定の手順に従ってハンドルやブレーキなどを制御し、自動的に駐車する機能などがある。
ブラインドスポットモニター
運転席側や助手席側、後方を含む車外に位置する他のクルマや歩行者などを監視・検出し、ドライバーの死角を補うシステム。
レーダーなどのセンサーによりドアミラーなどに移らない位置にいる他のクルマなどを検知し、車線変更や右左折時の際にドライバーに警告し、接触事故などを防止する。
カーナビゲーション
全地球測位システム(GPS)や道路交通情報通信システム(VICS)などにより位置情報や交通情報を入手し、安全で効率的なルートを提示するほか、交通安全支援システム(DSSS:Driving Safety Support Systems)により周辺の交通状況を配信し、渋滞末尾への追突防止や出会い頭の衝突防止など支援する。
また、従来の機能に加え、クラウドを介して各車両の走行情報を蓄積するなどコネクテッド化の一端を担うケースや、他のADASと連動するケースなどが今後増加するものと思われる。
車両間通信システム(車車間通信・路車間通信システム)
車両同士が無線通信によって情報をやり取りし、安全運転を支援するシステム。信号機情報や規制情報などインフラからの情報を路側機から得る路車間通信もある。
道路標識認識システム
カメラで速度制限や進入禁止、一時停止などの交通標識を読み取り、その情報をディスプレイに表示し、制限速度の超過などをドライバーに警告するシステム。
居眠り運転検知システム
カメラ画像から測定したドライバーの瞬きや表情などをAI(人工知能)を用いて解析し、眠気を感知すると警告音や振動などで注意を促すシステム。
また、ハンドルの操舵状況からドライバーの疲労度を計測するシステムや、警告音などでドライバーの快適性を損なうことなく覚醒状態を維持させるための眠気制御システムの開発なども進められている。
このほかにも、自動速度制限装置や急な坂道を下る際の走行を制御するヒルディセントコントロール、横風安定処理システム、タイヤ空気圧監視システムなど、ADASにはさまざまな支援機能が含まれる。
■各自動車メーカーの独自ADAS
【日本】トヨタ:トヨタセーフティセンス/トヨタチームメイト
トヨタのメインADASは「Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス)」だ。衝突被害軽減ブレーキやハンドル操作サポート、追従ドライブ支援機能、プリクラッシュセーフティ、ドライバー異常時対応、緊急時操舵支援、フロントクロストラフィックアラート、レーンチェンジアシストなどがパッケージ化されている。レーダークルーズコントロールやレーントレーシングアシストを備えたモデルもある。
このほか、スマートアシストとして、アダプティブ・クルーズ・コントロールやレーン・キープ・コントロールを搭載した車種もある。
さらに上位の機能として、高度運転支援技術「Toyota Teammate(トヨタチームメイト)」も用意されている。駐車を支援するアドバンスト パーク、高速道路でハンズオフ運転を可能にするアドバンストドライブ、高速道路渋滞時にハンズオフ運転を可能にするアドバンストドライブ(渋滞時支援)があり、運転操作を強力にサポートする。
レクサスも同様に、「Lexus Safety System+(レクサスセーフティセンス+)」や「Lexus Teammate(レクサスチームメイト)」を設定している。
【参考】関連記事としては「トヨタ・レクサス、完成度が高すぎて「ほぼ自動運転じゃん!」と話題に」も参照。
【日本】レクサス
レクサスブランドでは、主流のADAS「Lexus Safety System+」のほか、上位ADAS「Lexus Teammate」が設定されており、トヨタグループで最高峰に位置付けられる機能「Advanced Drive」も一部車種に搭載されている。
Lexus Safety System+は、プリクラッシュセーフティやレーダークルーズコントロール、やレーントレーシングアシスト、夜間視界支援、ロードサインアシスト、ドライバー異常時対応システム 、プロアクティブドライビングアシストが標準装備されているほか、フロントクロストラフィックアラート、レーンチェンジアシスト、レーンディパーチャーアラート、発進遅れ告知機能なども用意されている。
プリクラッシュセーフティは、車両をはじめ昼夜における歩行者や自転車、日中における自動二輪車を検知可能で、衝突の可能性が高いとシステムが判断した際にブザーとディスプレイで危険を知らせる。
ドライバーがブレーキを踏めた場合はブレーキ踏力をアシストし、踏めなかった場合は自動的にブレーキを作動させ、衝突回避を支援、あるいは衝突被害の軽減に寄与する。
プロアクティブドライビングアシストは、歩行者の急な横断など運転の状況に応じたリスクを先読みし、危険に近づきすぎないよう運転操作をサポートする。
コネクテッドサービス「G-Link」により、各車両に対応した最新バージョンにアップデートすることも可能だ。
Lexus Teammateの機能においては、「Advanced Park」と「Advanced Drive」が先進的だ。Advanced Parkは、駐車したいスペースの横に停車した後、メインスイッチを押すと車両周辺と駐車スペースの情報が表示され、ディスプレイの開始スイッチを押すとスムーズに駐車を開始する駐車支援システムだ。
Advanced Driveは、高速道路や自動車専用道路で本線上の運転を強力に支援する。ナビで目的地を設定すると、実際の交通状況に応じてシステムが適切に認知・判断・操作を支援し、車線・車間維持、分岐、車線変更、追い越しなどを行いながら目的地に向かってインターチェンジの分岐まで運転を支援する。
規制速度プラス15キロまで対応可能で、ドライバーによる常時監視は必須だが、ハンズオフ運転を可能にするレベル2プラスに相当する機能だ。搭載車種は今のところLSに限られている。
なお、時速40キロまでの高速道路渋滞時に限定したレベル2+「Advanced Drive(渋滞時支援)」はレクサス各モデルにオプション設定されている。
【日本】日産自動車:プロパイロット2.0
日産は2019年、アダプティブ・クルーズ・コントロールやレーン・キープ・アシストといったプロパイロットの基本機能を強化し、国産メーカーで初めてハンズオフ機能を備えた「ProPilot 2.0(プロパイロット2.0)」を新型スカイラインに実装した。
高速道路においてシステムが車速や車線維持を強力にバックアップし、ハンドルから手を離した状態でドライブすることができる。前方車両の速度に応じてシステムが追い越しを提案し、ハンドルに手を添えスイッチを押すだけで車線変更をアシストする機能も備えている。
カメラとレーダーを中心に360度センシングを実現し、道路の白線や標識、周辺車両を検知する。ドライバーモニターカメラも備えており、ドライバーが前方を注視していないと判断した際は警告を発する。従わない際は車両を緊急停止し、SOSコールサービスのオペレーターに接続する。
【参考】プロパイロット2.0については「日産、プロパイロット2.0搭載の新型「スカイライン」を発表 高速道でハンズオフも可能に」も参照。
【日本】ホンダ:ホンダセンシング360
ホンダの基本ADASは「Honda SENSING(ホンダセンシング)」だ。アダプティブ・クルーズ・コントロールやレーン・キープ・アシストをはじめ、近距離衝突軽減ブレーキ、歩行者事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能、スムーズな駐車を支援するHonda パーキングパイロット、渋滞などの低速走行時にふらつかないよう支援するトラフィックジャムアシストなどを搭載している。
また、システムの検知範囲を全方位360度に拡大した「Honda SENSING360」を2024年発売の新型アコードに搭載した。
交差点における前方交差車両警報や、隣車線のクルマとの衝突を回避する車線変更時衝突抑制機能、安全な車線変更を支援する車線変更支援機能などが新たに加わっている。
なお、2021年には限定ながらレベル3機能を備えた「Honda SENSING Elite」を新型レジェンドに搭載した。ADASとして高い基本性能を発揮するほか、高速道路渋滞時にレベル3走行を実現する「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)」を備えている。今後の進化に期待したい機能だ。
【参考】ホンダセンシングについては「ホンダの新ADAS「Honda SENSING 360+」の実力は?」も参照
【日本】SUBARU:アイサイトX
スバルの基本ADASは「EyeSight(アイサイト)」だ。全車速追従機能付クルーズコントロールとアクティブレーンキープで快適なロングドライブを提供する。
2020年には、渋滞時(時速50キロまで)にハンズオフ運転を可能にする最新機能を備えた「アイサイトX」の搭載を開始している。高速走行時、ドライバーの方向指示器操作に合わせ、システムが作動可能と判断するとハンドルを制御して車線変更をアシストする機能や、カーブに合わせて適切な車速に制御する機能なども備えている。
【参考】関連記事としては「「スバルが一般道で自動運転」の違和感 メディアの表現は適切?」も参照。
【アメリカ】テスラ:オートパイロット
テスラは、基本となるADAS「Autopilot(オートパイロット)」とともに、自動運転への進化を目指すADAS「Full Self-Driving(FSD/フル・セルフ・ドライビング)」の普及にも力を入れている。
テスラはカメラを主体としたセンサー構成で自動運転を実現する方針で、自動運転に対応可能なハード類を先行して車両に搭載し、ソフトウェアアップデートで自動運転を可能にする戦略を採用している。
アダプティブ・クルーズ・コントロールとレーン・キープ・アシストは標準搭載しており、目的に向け柔軟に車線変更しながら案内するナビゲートオンオートパイロット機能も備えている。
FSDも現時点では同様だが、アダプティブ・クルーズ・コントロールとレーン・キープ・アシスト使用時、ハンドルから手を離すことができるソフトウェアアップデートが2024年に行われ、実質的にレベル2+を達成したようだ。
テスラを率いるイーロン・マスク氏はトランプ次期大統領との距離を急速に縮めており、FSD自動運転化の行方にも注目したい。
【参考】関連記事としては「トランプ氏、自動運転車の「規制緩和」示唆 テスラに恩返しか」も参照。
【アメリカ】テスラ:FSD
現状、自家用車におけるレベル2、及びレベル2+で世界最高峰と言われるのがテスラの「FSD(Full Self-Driving/フル・セルフ・ドライビング)」だ。正確には「FSD(supervised)」とされており、ドライバーによる常時監視が必須であることを意味する。
ハンズオフ運転を可能とするレベル2+は自動車メーカー各社が実用化済みだが、安全性を重視するため基本的に走行エリアは高速道路に限られている。しかし、FSDは型にはまらず、一般の市街地においてもハンズオフ運転を可能にしている。
この差は非常に大きい。高速道路は、走行速度こそ速いものの歩行者や自転車の存在を原則考慮しなくてよいが、市街地は歩行者をはじめとしたさまざまな交通参加者の存在を考慮しなければならない。信号あり、信号なしの交差点も多く、不確定要素が非常に多いのだ。
複雑な環境下が多く、かつ広範に活用できるため事故件数も多いが、将来の自動運転に直結する汎用性の高い取り組みと言える。
FSDは北米のほか、2025年中に中国と欧州での導入を目指している。価格は一時1万5,000ドル(当時のレートで約205万円)まで値上げしたが、2024年には8,000ドル(約116万円)まで値下げし、サブスクリプションサービスも月額99ドル(約1万4,000円)まで下げた。
さらに、1カ月間無料サービスを実施するなど、FSDユーザーの獲得に本腰を入れ始めている。ユーザー増えれば増えるほどより多くの走行データを集めることが可能になり、開発は加速する。
現在Ver.13までアップデートされており、2025年にはFSDを搭載した自動運転タクシー「Cybercab」の実用化を開始するという。市販モデルと同一のシステムかは不明だが、そう遠くない将来FSDを自動運転化し、名実ともにテスラが自動運転開発企業となる日が訪れるのかもしれない。
【参考】テスラの最新動向については「テスラの自動運転(Autopilot, FSD)とロボタクシー計画を徹底解説」も参照。
【アメリカ】GM:SuperCruise
米自動車メーカーのGMが展開するADASの代表的機能は、レベル2+を実現した「SuperCruise(スーパークルーズ)」だ。
2017年に実装を開始し、2024年11月時点でキャデラックやシボレーなど各ブランドをまたぎ計20車種に搭載している。
対象道路は徐々に拡大しており、2024年2月には米国とカナダで総距離約40万マイル(64万キロメートル)から約75万マイル(120万キロメートル)に拡張した。小さな都市や町を結ぶマイナー高速道路を追加したという。
【参考】関連記事としては「GMのセミ自動運転機能「Super Cruise」、アップグレード&搭載拡大」も参照。
【ドイツ】メルセデス・ベンツ:インテリジェントドライブ
メルセデスは、ADAS「Intelligent Drive(インテリジェントドライブ)」を展開している。運転支援パッケージプラスでは、最先端のシステムが状況に応じて速度やステアリングを調整し、衝突のリスクを低減する。
同社はレベル3機能「DRIVE PILOT」もすでに実装しており、ドイツと米ネバダ州、カリフォルニア州の主要な高速道路で最大時速60キロ以下で自動運転を実現している。
2024年12月には、独連邦自動車交通局から時速95キロまでの承認を得たことも発表しており、渋滞時以外でも対応可能になる。新たなバージョンは2025年春から提供開始する予定としている。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3、ドイツが世界最速の「時速95km」まで認可」も参照。
【ドイツ】BMW:ハイウェイ・アシスタント
BMWは、高速道路において最高時速130キロでハンズオフ運転可能な「ハイウェイ・アシスタント」を実用化している。
追い越し操作に必要なステアリング操作と、交通状況が許す限り必要に応じて車速を調整するアクティブ レーンチェンジアシスタントにより、ハンドルを握ることなく車線変更を行うことも可能にしている。
2024年には、7シリーズにレベル3システム「Personal Pilot L3」をオプション追加している。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3機能、「世界3番目」はBMW濃厚 来年3月から提供」も参照。
【ドイツ】フォルクスワーゲン:トラベルアシスト
フォルクスワーゲンは、時速210キロまで対応可能なレベル2システム「Travel Assist(トラベルアシスト)」などの各機能を実用化している。
トラベルアシストは、ドライバーがあらかじめ設定した車速内において前走車との一定間隔および走行レーン維持をサポートする。渋滞などの低速度域でも作動し、先行車が完全に停止するまで範囲で支援可能だ。
フォルクスワーゲングループにおいては、ソフトウェア開発を専門とする子会社「CARIAD(カリアド)」がADASや自動運転開発に力を入れており、レベル2+やレベル3の実装を目指しているようだ。
【参考】関連記事としては「VWの命運握る「CARIAD」とは?自動運転ソフト開発などに注力」も参照。
■ADAS関連の製品を開発する企業
ルネサス エレクトロニクス:ADAS向けマイコンを開発
スマートカメラやサラウンドビュー、レーダーなどに適したマイクロコンピュータの開発を手掛けているほか、手軽にADASや自動運転の開発を開始することができるスターターキットなども提供している。
【参考】ルネサスについては「半導体ルネサスの自動運転事業史まとめ コネクテッド領域にも参入、LiDAR開発も|自動運転ラボ」も参照。
Sky:車載ECUでADAS開発を支援
ADASをはじめとする車載ECU(電子制御ユニット)開発やカーナビゲーションシステムなど、さまざまな組込みシステムの開発を行っており、スマートカメラや周辺監視システムなどの走行安全系ECUや、データ通信モジュールや緊急通報システムなど情報系ECUなど幅広く手掛けている。
ZMP:ADASデータの計測・分析ツールを提供
市販車ADASの公道走行テストなどで活用するデータ計測サービス「RoboTest」、及びRoboTestで収集したデータや保有データへのタグ付けや分析、解析作業を総合的にサポートするプラットフォームサービス「RoboDataPlatform(ロボ・データ・プラットフォーム)を発表している。
こういった関連サービスも含めると、ADAS市場の裾野は相当広い。
【参考】RoboDataPlatformについては「自動運転ベンチャーZMPがRoboTestPlatformを開発 アプリ連携などが特徴|自動運転ラボ」も参照。
■【まとめ】ADAS市場は2025年に2.3兆円規模に
ADASは自動運転の開発と密接に結びついており、完成車メーカーや部品メーカー以外にも多くの企業が関わっている成長分野だ。
富士キメラ総研が2018年3月に発表した「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2018(上巻)」によると、ADASの世界市場は2017年に1兆円の大台を突破し、2025年には2兆3000億円の規模に達すると予測している。
また、車載カメラやセンサーなどを使用してドライバーの状態を検知するドライバーモニタリングシステムも、2025年には2016年比の6.1倍となる1014億円に膨れ上がると試算している。
また調査会社のJ.D.パワージャパンが2019年11月に発表した「2019年日本自動車テクノロジーエクスペリエンス調査」でもADASがここ2年で急速に普及していることに触れられており、「車線逸脱警告システム」の搭載率は74%、「死角モニタリング/警告システム」は50%に上っているという。
自動運転技術の向上とともにADAS機能も向上し、標準化や義務化の流れもますます加速していくものと思われる。
■関連FAQ
ADASとは「Advanced driver-assistance systems」の略称。日本語では、「先進運転支援システム」と訳される。0〜5の6段階に分類される自動運転レベルにおいては、「レベル1」もしくは「レベル2」に該当する。詳しくは「自動運転レベルとは?」を参照。
一般的には「エーダス」と呼ばれる。「アダス」と読むのは誤り。
ADASでは、運転手の「認知」「判断」「制御」のいずれか、もしくは複数を支援する。あくまで運転の主体は人であり、運転の主体がシステムである「自動運転」とは明確に異なる。具体的な機能としては、クルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱防止支援システム、駐車支援システム、道路標識認識システム、居眠り運転検知システムなどが挙げられる。
トヨタは「Toyota Safety Sense」「Lexus Safety System」、日産は「ProPilot」、ホンダは「Honda SENSING」、スバルは「アイサイト」を展開している。海外の自動車メーカーでは、GMの「SuperCruise」、BMWの「BMW Personal CoPilot」、テスラの「AutoPilot」「FSD」などがADASに相当する。
ADASの世界市場はすでに1兆円を突破し、2025年には2兆3,000億円規模まで膨らむとされている(富士キメラ総研/2018年3月)。まだしばらくは自動運転市場よりもADAS市場の規模が大きい時期が続くが、いずれは自動運転市場がADAS市場を抜くと考えられている。ADASが進化して自動運転機能となり、自ずとADASの市場が縮小していくからだ。
(初稿公開日:2018年9月27日/最終更新日:2025年5月14日)
【参考】自動運転車に関しては「自動運転車とは? 定義や仕組み、必要な技術やセンサーをゼロからまとめて解説|自動運転ラボ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)