いざCASE対応!自動運転などメガサプライヤーの戦略まとめ

問われる技術開発力、組織再編や協業も





出典:Continental社プレスリリース

次世代モビリティ業界を象徴するCASE「Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング・サービス)、Electric(電動化)」へのシフトを進める自動車業界。自動車の動力や制御、機能などが大きく変化していく新時代に向け、組織再編をはじめとした経営改革が各所で進められている。

とりわけ、自動車メーカーの製造を下支えする大手自動車部品サプライヤーたちには、例外なく新たな挑戦が求められている。







サプライヤーに対し下請け的なイメージを持つ人もいるかもしれないが、各社は製造・生産能力だけでなく、自社製品を取り扱ってもらえるよう最新の技術開発力が常に求められているのだ。

今回は、世界のサプライヤー8社をピックアップし、各社のCASEに向けた取り組みをまとめてみた。

■【日本】デンソー:トヨタグループで組織再編 CASE全領域で開発促進


デンソーは2019年4月、電動化のための駆動モジュールの開発を促進するため、アイシン精機と合弁会社「BluE Nexus(ブルーイー ネクサス)」を設立。また同月、アイシン精機とアドヴィックス、ジェイテクトとともに、自動運転・車両運動制御等のための統合制御ソフトウェアを開発する合弁会社「J-QuAD DYNAMICS (ジェイクワッド ダイナミクス)」も立ち上げている。

2019年6月には、CASEの進展に対応するため、電子・ソフトウェア開発機能の集約によるスピードと競争力のいっそうの強化を狙い、電子事業グループのECUと基盤技術開発機能をモビリティシステム事業グループと統合し、新たにモビリティエレクトロニクス事業グループを設立することも発表している。

同年7月には、新たなサテライトR&D拠点として米国に「シアトル・イノベーション・ラボ」を開設したほか、トヨタ自動車と次世代車載半導体の研究開発を行う合弁の設立に合意したことも発表した。新会社は2020年4月の設立を目指すとしている。

トヨタグループが一丸となって組織再編を進め、次世代モビリティに向けた開発の強化・効率化を進めている状況だ。

コネクテッド分野では、国際電気通信基礎技術研究所とKDDI、九州工業大学とともに、次世代移動通信システム「5G」を活用した産業用ロボット制御の実証を開始することを2019年1月に発表した。

また、2019年3月には、ソフトウェアを遠隔地から無線で更新するOTA(Over the Air)システムの開発を加速するため、コネクテッドカー関連のソフトウェア開発で実績を持つ米Airbiquity社に500万ドル(約5億4000万円)を出資したことを発表している。スタートアップへの出資などにより、技術開発を加速させる狙いだ。

自動運転分野では、羽田空港跡地エリアにおいて、自動運転技術の試作開発や実証を行う新たな拠点を2020年6月に開設することを発表している。特区制度の活用や周辺のモノづくり企業と連携することで、スピーディに試作開発や実証を行い自動運転技術の実現を加速するとしている。

シェアリング分野では、MaaS(Mobility as a Service)開発を加速させるため、スピード・ペデレック・エレクトリック・バイクと呼ばれる最高時速45kmの高機能型eバイクのシェアサービスを提供する米Bond Mobility社に出資したことを2019年5月に発表している。MaaS領域において、国内外の戦略的パートナーシップを積極的に進めることで、サービス事業者のニーズや課題の把握を行い、市場ニーズ先行型の事業開発を推進していく構えだ。

電動化分野では、同領域における開発・生産体制を強化するため、デンソーグループ全体で2018年度から2020年度末までの3ヵ年で約1800億円の投資を行うことを2019年4月に発表しており、2020年5月に安城製作所内に「電動開発センター」を開設するなど、同領域の製品開発のスピードを加速することとしている。

【参考】デンソーの戦略については「デンソーの自動運転・LiDAR戦略まとめ 開発・提携状況を解説」も参照。

■【ドイツ】Bosch(ボッシュ):万全のCASE戦略 自動駐車やバーチャルキーなど市場化進める


ドイツの自動車部品メーカーボッシュは、2019年のフランクフルトモーターショー記者会見の席で、未来のモビリティに向けた自動運転技術や電動化技術、シェアリングサービスなど同社の戦略を明かした。

自動運転分野では、センサーの開発から位置特定技術、制御システムなど総合的な開発を進めているが、現在は自動駐車システム「自動バレーパーキング」の市場化に注力しているようだ。

日本においても、2015年に公道試験を開始し、2016年には自動運転などのシステム開発力強化に向けシステム開発部門を設立するなど、日本特有の道路環境にも適応した自動運転システムの構築に力を入れている。

シェアリング分野では、2016年に電動スクーター「eScooter」のシェアリングサービス「Coup」をベルリンでスタートしたほか、2018年2月には、米デトロイトを拠点に企業や大学、自治体当局が職員にライドシェアリングサービスを提供するためのプラットフォームを運営するスタートアップ企業「Splitting Fares(SPLT)」の買収を発表。同年10月には、電動トラックのシェアリングサービスを新たに開始することも発表しており、成長市場であるモビリティサービスへの積極介入を進めている。

電動化分野では今期、2019年初頭に掲げた、2025年までに電動化関連の売上を現在の約10倍にあたる50億ユーロ(約6000億円)とする目標について、早くも上回る見通しを示すなど好調が続いている。同年7月には、バッテリーをクラウドに接続することで性能と寿命を大幅に向上させる新しいクラウドサービスの開発についても発表している。

コネクテッド分野では、目下バーチャルキーシステム「パーフェクトリーキーレス」に注力しているようだ。

【参考】ボッシュのCASE戦略については「ボッシュの最新CASE戦略に迫る!eモビリティ、自動運転分野で新たな動き?」も参照。

■【ドイツ】ZF:NVIDIAと共同開発した自動運転制御ユニットに要注目


ドイツの自動車部品メーカーZFは、自動運転制御ユニットを大きな武器としている。半導体大手の米NVIDIA(エヌビディア)社と共同開発したAI(人工知能)搭載の自動運転制御ユニット「ZF ProAI」は、ハードウェアとソフトウェアの双方がモジュラー形式になっており、自動運転レベル4までの各レベルに応じて拡張できる。

最上級モデルの「ZF ProAI RoboThink(ZFプロAIロボ・シンク)」は、毎秒600兆回(600テラOPS)まで の計算が可能な演算能力を有し、現在のモビリティ業界において最も高性能なAI機能を有するという。

2019年4月には、次世代の最先端ドライバーアシスト機能を実現する「ZF coPILOT」を発表した。AIや360度のセンサーセット、パワフルなZF ProAIセントラルコンピュータ、NVIDIA DRIVEプラットフォームで構成されており、通常の自動運転レベル2を上回る自動運転機能と安全性を提供する。

電動化分野では、自転車から大型トラック、トラクター、レーシングカーに至るまで、すべての車両分野に完全電気自動車、及びハイブリッドソリューションを提供している。

■【ドイツ】Continental(コンチネンタル):大規模な組織再編で次世代モビリティ社会に対応


ドイツの老舗自動車部品メーカーのコンチネンタルは2018年7月、次世代モビリティを見据えた大規模な組織再編計画を発表した。コンチネンタルAGを持ち株会社に「コンチネンタル・グループ」を形成し、傘下にラバー事業、オートモーティブ事業、パワートレイン事業の3つの事業グループを置くこととし、この持ち株体制を2020年中に開始するとしている。

このうち、パワートレイン事業は2019年4月に「Vitesco Technologies(ヴィテスコ・テクノロジーズ)」社として新たな体制でスタートを切っており、次世代電動ドライブの開発をはじめカーボンフリー、水素ベース燃料を燃料電池や内燃エンジンの合成燃料とする技術開発などを進め、2030年までにCO2排出量半減を目指すとしている。2019年後半にも部分的IPO(新規株式公開)を行い、2020年にも上場する予定だ。

コネクテッド分野では、自動車メーカー向けの5Gソリューションの開発を進めており、新プラットフォームでは第5世代セルラー通信の機能と短距離無線技術を組み合わせ、さまざまな車両とインフラ間で直接データ交換することを可能にするという。

自動運転分野では、都市部において無人モビリティを可能にするデモ車両「CUbE(Continental Urban mobility Experience)」を製作し、試験運行を行っているほか、仏スタートアップ「Easymile(イージーマイル)」とロボタクシーの開発も進めている。

2019年9月開催のフランクフルトモーターショーでは、最新のロボタクシー向けにタイヤ管理の手段を提供する柔軟なシステムソリューションを構築する、ホイールやタイヤに関する次世代技術「Conti C.A.R.E.」を発表している。

また、2019年1月開催のCES2019では、宅配ロボットの輸送に無人運転車を利用するユニークな輸送システムなども提案している。

■【アメリカ】Aptiv(アプティブ):自動運転タクシー実証やヒュンダイとの提携で開発加速


米自動車大手のGMから派生した歴史を持つAptiv(アプティブ、旧デルファイ・オートモーティブ・システムズ)は、2017年に自動運転ソフトフェアを開発するシンガポールのスタートアップ「nuTonomy」社を買収するなど、近年は自動運転開発に力を入れている。

2019年1月には、自動運転プラットフォームの開発を共同で進めているライドシェア大手のリフトとともに、米ラスベガスで自動運転タクシーのサービス実証を開始しており、シェアリングビジネスへの技術導入にも積極的だ。すでに7万人以上が利用しており、走行評価は5つ星中平均4.95と高評価を得ているようだ。

2019年9月には、韓国の現代自動車(ヒュンダイ)と自動運転領域で提携し、合弁会社を設立すると発表した。自動運転レベル4、及びレベル5の自動運転技術の商用化に向け、生産可能な自動運転システムの開発を推進するとしており、2022年にロボタクシーやフリートオペレーター、自動車メーカー向けの自動運転プラットフォームを利用可能にする。Aptivと現代自動車の出資額は計40億ドル(約4300億円)で、それぞれ50%ずつ持分を保有する。

【参考】現代との提携については「2022年に最高峰の自動運転技術!ヒュンダイと米Aptivが提携」も参照。

■【カナダ】Magna(マグナ):Lyftとレベル5ライドシェア実証に成功 自動運転プラットフォーム開発進める


カナダの自動車部品メーカーマグナは2017年、自動運転レベル4に対応し、あらゆる車両に統合できる自動運転プラットフォーム「MAX4」を発表した。また、同年10月には、BMWグループとインテル、モービルアイによる自動運転の開発連合への参画も表明しており、自動運転開発の強化を加速させている。

実証においては、出資先の米配車サービス大手のLyft(リフト)とともに自動運転レベル5によるライドシェアの公道走行試験に成功したことを2019年1月に発表している。数年以内に市場投入できる自動運転システムの開発を進めているようだ。

電動化分野では、パワートレインの電動化を推し進める「etelligentDRIVE」ソリューションで対応しており、すべてのeMobilityアプリケーション向けのインテリジェントでスケーラブルなドライブラインソリューションを提供し、電動化への道をスムーズに進めることが可能としている。

■【フランス】Valeo(ヴァレオ):レベル4デモカーで世界各地を疾走 LiDAR市場化もリード


仏自動車部品メーカーのヴァレオは、自動運転のプロトタイプ車両「Cruise4U」や「Drive4U」で世界各地の大陸を横断するなど、さまざまな環境下で対応できる自動運転システムを構築すべく実証に励んでいる。

日本でも、2018年10月に国内一周にチャレンジしており、総走行距離6700キロの行程のうち、98%を「自動運転モード」で走行した。戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」においても、東京臨海部で実施する自動運転の実証実験に参加している。

また、自動運転の目となるLiDAR(ライダー)の量産・実用化でもリードしており、量産車として世界で初めて自動運転レベル3技術とLiDARを実装した独Audiの「Audi A8」に同社のLiDAR「SCALA」が採用されている。

コネクテッド分野では、2018年4月にNTTドコモと次世代型コネクテッドカー及びモビリティサービスの開発・提供における協業に向けた取り組みに合意し、コネクテッドカー向け通信サービスと車載機器の提供、5GやV2X時代を見据えた次世代モビリティサービスの開発、スマートフォンを活用した車両向けデジタルサービスの提供、車載機器をコントロールするソリューションの開発・提供などのサービス領域に取り組んでいる。

電動化分野では、革新的な48Vシステムの開発に取り組んでおり、フランクフルトモーターショー2019では、電動モーターや車載チャージャー、DC/DCコンバーターなどヴァレオのエレクトリカルシステムをフルに搭載したプラグインタイプのファミリー向けハイブリッド試作車を披露している。

【参考】ヴァレオの戦略については「ヴァレオ(Valeo)の自動運転戦略まとめ LiDAR製品や技術は?」も参照。

■【韓国】現代モービス(ヒュンダイ・モービス):ヤンデックスとの協業でレベル4車両ロボタクシー開発


韓国自動車最大手のヒュンダイ系列の部品メーカー・ヒュンダイ・モービスは、親会社ともども自動運転開発を加速させているようだ。

2018年11月に米シリコンバレー、2019年6月に中国の深圳(しんせん)にオープンイノベーションセンターを相次いで開設したことを発表している。有力なスタートアップを発掘することで、自動運転やコネクティビティ、電動化など次世代モビリティへの転換を効率的かつ能動的に対応するためとしている。

また、同月には、自動運転やコネクティビティ、電動化などに関する特許の新規登録数が、2018年1年間で640件にのぼったことも明らかにしている。

このほか、ロシアの検索大手ヤンデックスから自動運転技術の提供を受け、レベル4以上の自動運転技術を共同開発することが2019年3月に発表された。7月には、完全自律走行プラットフォームベースの初号機となるロボタクシーを公開しており、今後、ロシアのモスクワ市内で試験走行する予定という。

コネクテッド分野では、5Gの技術開発で韓国の通信会社KTと連携しており、KTらが世界初となる「5Gバス」の運行を開始したことが2019年2月までに報じられている。このほか、CES2019で車両の窓ガラスがディスプレイとなる最新の車載インフォテイメントシステムを発表するなど、次世代向けの技術開発に積極的に取り組んでいるようだ。

【参考】ヤンデックスとの取り組みについては「露ヤンデックス、韓国・現代モービスへ自動運転技術を提供」も参照。最新の車載インフォテイメントシステムについては「自動運転車の窓ガラスをディスプレイに ヒュンダイ・モービスが新コンセプト発表へ」も参照。

■【まとめ】CASEの研究開発は必須 業界全体の再編にも注目

デンソーやボッシュなど、CASEすべての領域において総合的に取り組んでいる企業が当然多いが、得意分野に注力する姿もうかがえる。

内燃機関がモーターに変わり、クルマの制御がAI主体となる自動運転車への急速なシフトが進む道程においては、自動車メーカー以上の開発力で早期に新技術を確立し、各メーカーの信頼を勝ち取っていかねばならないサプライヤーならではの事情がある。

IT系テクノロジー企業や新興企業が続々と参戦する中、受注した製品を製造・納入するだけでは、確実に競争から脱落してしまう。存在感を示し続けるには、大掛かりな組織再編もいとわず、次世代に対応した組織体制のもと開発力を磨くほかないのだ。

また、組織再編の必要性は自動車業界そのものにもあてはまる。自動車メーカーやスタートアップら第三勢力を交えた協業がさらに進み、今後、グループ化された大きな枠のアライアンスがいくつか形成・確立され、均衡を図りながらもシェア獲得争いが激化していくものと思われる。

サプライヤー各社が今後どのグループに属し、業界全体の再編が進んでいくのか。こういった点にも注目していきたい。

【参考】自動車業界の新たな構図については「自動運転の覇権争いは三つ巴…各陣営の企業まとめ 提携・アライアンスの現状は?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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