ヴァレオ(Valeo)の自動運転戦略まとめ LiDAR製品や技術は?

自動運転レベル4のデモカーも発表





出典:ヴァレオプレスリリース

仏自動車部品大手のValeo(ヴァレオ)。日本国内にも多くの拠点を構えており、なじみが深いメーカーの一つだ。

近年は米ラスベガスで毎年開催されているCESなどにも積極的に参加し、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転をはじめとしたさまざまな新技術で自動車業界に新たな風を送り込んでいる。







ヴァレオが得意とする技術や日本国内における取り組みを明らかにし、同社の技術開発の戦略に触れてみよう。

■ヴァレオの企業概要と日本拠点
ヴァレオの沿革:90年余りの歴史を持つ老舗、33カ国で事業を展開

英国のフェロード社のフランス支店が1923年、フランスのパリ郊外サン・トゥアンで、ブレーキライニングとクラッチフェーシングの生産を始めたことが始まりとされている。

1960~70年代にはブレーキシステムやワイパーシステムの開発、フランスの空調機器メーカーをはじめとした事業買収などで急速に事業を拡大し、ヨーロッパ全土で広く事業を展開し、1980年には並立していたさまざまなブランドを統合して社名を「Valeo」とした。

以後、北米や南米、アジアなど積極的な世界戦略で各国に拠点を設け、グローバル企業としての地位を確立していく。2017年末時点では、33カ国で事業展開し、研究・開発拠点55カ所、生産拠点184カ所、物流センター15カ所を世界各地に設けている。2017年度のグループ売上高は184億ユーロ(約2兆3200億円)にのぼる。

日本におけるヴァレオ:ヴァレオジャパンや市光工業

日本においては、国内事業を統括するヴァレオジャパンが1985年に設立された。現在では、厚木自動車部品を起源とするヴァレオカペックジャパンと、2017年に連結子会社となった市光工業とともに3社がヴァレオグループに名を連ねており、3社合わせて生産拠点17カ所、研究開発センターは名古屋市やつくば市、厚木市、伊勢原市などに軽7カ所構えている。

事業は4つのビジネスグループとアフターマーケット事業を展開するヴァレオサービスで構成されており、パワートレインの熱エネルギーの管理と乗員全員が快適に過ごせる空間を実現するためのシステムやモジュール、コンポーネントを開発する「サーマルシステム」、燃費の低減とCO2排出量の削減を実現する革新的なパワートレインソリューションを開発する「パワートレインシステム」、ドライバーに良好な視界を提供する革新的なシステムを設計・製造する「ビジビリティシステム」、快適性と安全性を高めるドライバーと車両、周辺環境とのインターフェースシステムを開発する「コンフォート&ドライビングアシスタンスシステム」が柱となっている。

■ヴァレオの自動運転関連の取り組み
LiDARの量産・実用化で世界をリード

ヴァレオは、1991年に後退レーダー用超音波センサーの量産を開始したのを皮切りに、超音波センサーやカメラ、LiDAR(ライダー)などさまざまなセンサーを開発・製造している。生産台数は全種類合わせ累計10億台に及び、今後4年でさらに10億台の生産を見込んでいるという。

なかでも、各社が技術開発と量産化を進めているLiDARでは量産化と実用化をいち早く実現した。LiDAR製品の「SCALA」は、自動車業界で初めて量産化に成功したモデルで、静止した障害物をはじめ動く障害物も最大150メートル手前から145°の視野で検知することができる。

量産車として世界で初めて自動運転レベル3技術(条件付き運転自動化)とLiDARを実装した独Audiの「Audi A8」にもSCALAが使用されている。

こうしたセンサー類による検知やデータ処理を得意分野としており、ヴァレオのソフトウェアは、人間の脳が五感からの情報を処理するのと同様にデータを統合するという。

開発を進めるAIシステムの研究をいっそう進めるため、AIと自動車への適用に特化したディープラーニングのグローバル研究センターとなる「Valeo.ai」の開設を2018年に発表している。

また、幕張メッセで2018年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2018」で初公開した「ヴァレオXtraVue」技術も注目を集めている。車載のテレマティックスアンテナとLiDAR、コンピューター画像カメラシステムを組み合わせることで、視界に入らない領域も含め路上で何が起きているかをドライバーに知らせるシステムだ。

会場では、視界をさえぎる目の前の車がモニター上で半透明になり、前方が確認できるようになる様子をリアルに体感できるデモンストレーションなども実施した。

多岐に及ぶ開発領域:自動駐車ソリューション「Cyber Valet Services」など

コネクテッドカー用の駐車場内で、ヴァレオの自動駐車テクノロジー「Park4U Auto」テクノロジーを搭載した車が自動的に駐車を行うことができるソリューションを米シスコ社と共同で開発している。

車載テレマティックスやセキュアキーシステム(ヴァレオ InBlue)などに、駐車機能が搭載されたシスコの駐車コントローラー技術を組み合わせることで自動駐車を可能にしており、車に搭載された各種センサーや駐車場内に設置された機器から発信される情報によって周囲の環境を高精度でマッピングし、駐車操作が完了するまでの間の移動を予測・計算するという。

また、自動運転時代を見据え、車内でより快適に過ごせる環境づくりも進めている。室温調整やアジャスタブルシート、防音など、乗員やドライバーに合わせた環境を個別に調整できるようなシステム開発を進めており、CES 2019では、乗員一人ひとりの生理学的な特徴に合わせてカスタマイズされた空調環境を作り、コンフォートバブルを実現するシステム「Valeo Smart Cocoon」を発表している。

バイオセンサーと赤外線カメラが乗員の心拍数や呼吸数、着衣、年齢、性別、体形に基づいて温度プロフィールを計測して車室内の温度を調整したり、夏季は乗員の動きに応じてミストディスペンサーとファンを作動させたり、冬季には放熱パネルが車室内を温めたりする。これにより室内環境を快適にするとともに、EV(電気自動車)の消費エネルギーの削減にもつなげていくという。

ヴァレオのデモカーCruise4UとDrive4U、自動運転レベル4実用化へ

自動運転のプロトタイプ車両として米ラスベガスで開催されたCES 2015で初公開された「Cruise4U」は、ドライバーが自ら車両をコントロールするか、Cruise4Uにステアリング操作や加減速などを任せるのかを決めることができ、走行している他の車両や静止している障害物をレーザースキャナーにより検知し、衝突を防ぐシステムを備えている。

Cruise4Uは2015年11月にフランス国内を一周する壮大なドライブを完走した。総走行距離は1万キロを超え、このうち4000キロ以上にわたって自動運転モードを使用して走行したという。

2016年には、走行距離2万キロを超えるアメリカ一周、1万3000キロに及ぶ欧州の主要地を巡るヨーロッパ一周にも挑戦したほか、2018年10月には日本一周にもチャレンジ。総走行距離6700キロの行程のうち、98%を「自動運転モード」で走行したという。

世界各地のさまざまな交通環境を走行することで多彩な走行データを収集し、今後の自動運転技術の開発に生かしていく考えだ。

一方のDrive4Uは、2018年10月に開催されたパリモーターショー2018で初公開された最新の自動運転デモカーで、すでに量産実績のある超音波センサーやカメラ、LiDAR、レーダー、AI(人工知能)をフルに搭載したデジタルブレインを備えた自動運転レベル4車両だ。

独自開発した地理位置情報・マッピングシステムにより、自車の位置を高精度かつ厳格に定義することで、トンネルや閉鎖型の駐車場などGPS信号が届かない環境でも自動走行が可能で、走行を重ねるごとにAIがリアルタイムで学習し、さまざまな交通状況パターンへの対応が段階的に可能になっていくという。

日本国内での取り組み:R&Dセンター開設で自動運転分野に注力

日本国内では、Cruise4Uによる日本一周以外にもさまざまな取り組みを行っている。内閣府が推進する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム」において、ダイナミックマップの大規模実証実験に2018年度から参加しているほか、2018年5月にヴァレオジャパンと市光工業が共同で、研究開発の大幅な拡充を目指し名古屋テクニカルセンターを開設することを発表している。

また、2019年1月には、ヴァレオジャパンが自動運転やADAS向けの「茨城先進運転支援システム開発評価センター」を茨城県行方市に新設すると発表している。高速走行可能なテストコースを備えており、日本におけるADASの開発をさらに加速させるとともに、人員面でも研究開発体制を強化することとしている。

同社によると、日本国内にいる約1100人のエンジニアのうち約130人が運転支援・自動運転の研究開発に携わっているが、この部門のエンジニアを2021年までに180 人に増員する計画という。

国内関係ではこのほか、コネクテッドカービジネスのサービス開発や展開においてNTTドコモと協業することを2018年4月に明らかにしている。5G/V2Xなど次世代モビリティサービスの開発をはじめ、コネクテッドカー向け通信サービスや車載機器の提供、スマートフォンを活用した車両向けデジタルサービスの提供などについて協働していくとしている。

■イノベーションが成長をけん引 技術革新で自動運転の未来を切り開く

2017年、ヴァレオは全世界で2000件を超える特許を出願している。また、同年の受注高のうち、3年以内に市場に投入した新製品が50%を占めているという。まさにイノベーションが同社の成長をけん引している証左といえるだろう。

イノベーションに対する同社の取り組みは、30年から50年先を見据えた主要な社会トレンドの詳細な分析から始まり、それに基づいて10年単位の詳細なテクノロジーロードマップを描くという。同社の戦略にはすでに自動運転が普及した世界が広がっており、その未来に向けて研究開発を行っているのだ。

世界有数のサプライヤー・テクノロジーカンパニーが自動運転分野をどのようにリードし、そしてどのような革命をもたらすのか。今後の展開が楽しみだ。







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