自動運転バス・シャトルの車種一覧(2024年最新版)

世界各地で開発が加速、最有力は?

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出典:COAST Autonomous公式サイト

自動運転技術の実用化が世界で加速している。タクシーやデリバリーなどさまざまな用途に向けた開発が進められているが、早くから実用化が進んでいるのがバスやシャトルサービスだ。

この記事では、2024年現在で日本を含む世界で開発が進められている自動運転バス・シャトルを紹介する。なお今回は、市販の乗用車ベースのものは除く。

<記事の更新情報>
・2024年1月29日:MiCaの情報を更新
・2023年8月23日:e-Paletteの開発動向や関連記事、MiCaに関する情報などを更新
・2022年3月4日:記事初稿を公開

■日本
トヨタ「e-Palette」:日本各地で実証へ
東京モーターショーでe-Paletteについて語るトヨタの豊田章男社長=出典:トヨタプレスリリース

トヨタが開発を進めるサービス専用の多目的自動運転車「e-Palette(イーパレット)」は、シャトルサービスなどにも活用可能だ。東京2020オリンピック・パラリンピックの選手村では、選手や大会関係者の送迎用途でサービス実証が行われた。

イーパレットには、自社開発した自動運転機能であるガーディアンシステムが搭載されるほか、他社の自動運転システムを搭載可能な制御インターフェイスを備えており、冗長性を高めることができる。

建設中の実証都市Woven Cityをはじめ、日本各地のさまざまな場所で運行させる計画で、現在サービス事業者や地方自治体などと議論を重ねているという。2022年2~3月には、東京臨海副都心・お台場エリアの商業施設間でサービス実証も行われた。身近なエリアにおける実証が今後一気に増加しそうだ。

またe-Paletteについては、上部の空間をさまざまな用途に合わせてカスタマイズできるように開発されているとみられており、無人移動コンビニや無人移動図書館などといった活用の仕方も期待されている。

なおe-Paletteの活用時期や開発動向については、自動運転ラボの記事「トヨタの自動運転シャトル、まずは「運転席があるタイプ」から」「トヨタの自動運転シャトル、「初の定期運行」は新アリーナ濃厚か」などでも触れているので、参照してほしい。

▼トヨタ自動車、Autono-MaaS専用EV「e-Palette(東京2020オリンピック・パラリンピック仕様)」の詳細を公表
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/29933339.html

【参考】e-Paletteについては「トヨタのe-Palette(イーパレット)とは?」も参照。

ヤマハ発動機:ゴルフカーベースの電磁誘導式自動運転シャトル
出典:国土交通省

ヤマハ発動機は、ゴルフカーをベースにした自動運転開発を進めており、地中に埋設した電磁誘導線からの磁力線を感知することで任意のルートを正確に走行する低速自動運転シャトルが国内各地で導入されている。

福井県永平寺町や沖縄県北谷町、福岡県みやま市などでサービスインしているほか、大阪府河内長野市や山形県高畠町などでも実証が進められており、河内長野市でも本格導入が見込まれているようだ。

永平寺町や北谷町では公道外を走行しており、遠隔監視・操作による「自動運転レベル3」を達成している。

▼プロジェクトストーリー 低速自動運転システム
https://global.yamaha-motor.com/jp/recruit/project/lsm/

【参考】ヤマハ発動機製の自動運転車については「誘導線を使う自動運転レベル3で移動サービス!福井県永平寺町でスタート」も参照。

■米国
Cruise「Origin」:商用サービス化に向けNHTSAに申請
出典:Cruise公式サイト

GM傘下Cruiseは、ハンドルなどを備えない移動サービス用の自動運転量産モデル「Origin」を2020年に発表した。開発にはホンダも加わっている。

詳細な仕様は明かされていないが、ハンドルやペダル、ミラーなど手動運転に必要な要素を排した自動運転専用設計で、対面座席に6人乗車することができるようだ。

商用サービスへの導入に向け、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)に承認を求める請願書を提出したことを2022年2月に発表しているほか、ホンダを介する形で日本に導入する計画なども持ち上がっている。

Cruiseは乗用車型の自動運転タクシーの展開しているが、ゼロから車両を開発したモデルとして、今後もOriginの展開に力を入れていくとみられる。

▼Cruise公式サイト
https://www.getcruise.com/

May Mobility:Polaris GEMベースのシャトルを実用化
出典:May Mobility公式ブログ

米スタートアップのMay Mobilityは、オフロード車の開発などを手掛けるPolarisのEVカートGEMをベースにした自動運転シャトルでサービス実証を進めている。

GEMはミシガン州グランドラピッズなどで導入されているほか、東広島市Autono-MaaS推進コンソーシアムが実施した実証にもMONET Technologiesの協力のもと導入された。

なお、同社は2021年からレクサスRX450hを活用したシャトルサービスも実用化しており、今後自動運転タクシー寄りのサービス展開を進めていく可能性もありそうだ。

▼May Mobility公式サイト
https://maymobility.com/

Local Motors「Olli」:3Dプリントで自動運転シャトルを製品化
出典:Local Motors社Olli紹介ページ

3Dプリンターを活用した車両作りに取り組む米Local Motorsは、レベル3以上の機能を備えた自動運転シャトル「Olli」を製品化している。

OlliはLiDARなどの各種センサーで障害物を回避しながら事前にマッピングされたルート上を走行することができる。手動テイクオーバー機能なども備えている。リサイクル可能なポリカーボネート素材で3Dプリント製造している点が特徴だ。

すでにカリフォルニア州サンタクララをはじめ、フロリダ州やバージニア州、アリゾナ州、オハイオ州など導入実績は豊富で、ドイツやイタリア、サウジアラビアなど海外展開も始まっているようだ。

▼Local Motors公式サイト
https://localmotors.com/

COAST Autonomous「COAST P-1」:大学キャンパスなどに導入
出典:COAST Autonomous公式サイト

米COAST Autonomousは、歩行者専用道路をはじめ混合交通下や高速専用車線でも安全走行が可能な自動運転シャトル「COAST P-1」を開発している。P-1の詳細は不明だが、フロリダ州のセントレオ大学のキャンパスなどですでに導入されているという。

同社は、既製の知覚センサーや電子機器を使用することで手頃な価格で柔軟なソリューションを提供することを目指しており、ゴルフカートなどに自動運転システムを統合することも可能としている。

▼COAST Autonomous公式サイト
https://www.coastautonomous.com/

Next Future Transportation「NEXT pod」:ポッド連結式
出典:Next Future Transportation公式サイト

Next Future Transportation(別名/NEXT Future Mobility)はモジュール式の斬新な自動運転モビリティの開発を手掛けている。

「NEXT pod」と呼ばれるモジュール式の車両は、一見すると一つのガラス張りのルームのような外観で、走行可能なモビリティに思えないデザインだが、定員10人で自動運転することが可能という。ポッドは2,670×2,350×2,890ミリで、連結して走行することもできる。公道では手動運転だが、私有地で自動運転が可能としている。

すでにドバイやイタリアなどで実証も行われているようだ。

▼Next Future Transportation公式サイト
https://www.next-future-mobility.com/

■欧州
NAVYA「ARMA」「EVO」:導入実績豊富 日本でも活躍中
出典:BOLDLYプレスリリース

仏NAVYAが開発した最大15人乗りの自動運転シャトル「ARMA」と最新の「EVO」は、世界各地の自動運転実証やサービスへの導入実績が豊富な次世代モビリティの代表格だ。

最新型のEVOは4,780×2,100×2,670ミリのボディに11人が着席、4人が立ち乗りする形で最大15人を収容することができる。1回の充電で9時間走行可能で、最高時速は25キロとなっている。ARMAもハード面のスペックはほぼ一緒だ。

日本ではマクニカが代理店を務めており、茨城県境町やHANEDA INNOVATION CITYなどがARMAを導入し、定常運行に利用している。日本では最も知られた海外企業発の自動運転シャトルと言え、ソフトバンク子会社のBOLDLYもNavyaを活用した移動サービスの展開で重要な役割を果たしている。

▼NAVYA公式サイト
https://navya.tech/en/

EasyMile「EZ10」:世界300超のエリアで導入
出典:EasyMile社プレスリリース

NAVYAと双璧を成す仏EasyMileは、自動運転シャトル「EZ10」を実用化している。同社によれば、これまでに世界30カ国以上の300を超える地域で導入されているという。

EZ10は4,050×1,892×2,871ミリで、最大12人乗車することができる。最高時速は40キロだが、電子制御で16キロに制限されているようだ。

北米やオーストラリアなどで活用されているほか、本拠を構えるフランスでも運輸省などからドライバーレス走行の許可を受け、医療キャンパス内で実証を重ねている。

▼EasyMile公式サイト
https://easymile.com/

2getthere「GRT」:22人乗りの自動運転シャトル 空港導入へ
出典:2getthere公式サイト

自動車部品大手ZF傘下のオランダ企業2getthereは、最大22人が乗車可能な自動運転ミニバス「GRT」や6人の乗車が可能な自動運転タクシー「PRT」の開発を進めている。

GRTは6,044×2,104×2,784ミリのサイズで、最大時速60キロで巡行することが可能という。ベルギーのブリュッセル空港などで導入に向けたプロジェクトが進んでおり、2020年に同所での実証に着手し、2021年以降の実用化を計画している。

▼2getthere公式サイト
https://www.2getthere.eu/

MILLA Group「Milla POD」:自動運転EVポッドを開発
出典:MILLA Group公式サイト

仏MILLA Groupは、自動運転EVポッドの開発を手掛けており、最大6人乗りのエンブレムモデル「Milla POD」や最大22席の公共交通機関専用の「Milla Combi」「Milla Van」「Milla Minibus」などの実用化を進めている。

2台のコンピューターに意思決定能力を分散して冗長性を高めるとともに、リモート監視や緊急介入などの機能も備え、路面電車と同様の都市速度として、時速30キロ以上の走行が可能という。MILLA PODは、エクス・アン・プロヴァンスTGV駅からキャンプ地までのオフロード区間の走行などにも活用されているという。

▼MILLA Group公式サイト
https://millagroup.fr/

Sensible 4「GACHA」:2023年に自動運転シャトルバス市場化
出典:Sensible 4公式サイト

フィンランドのスタートアップ・Sensible 4は全天候型の自動運転開発を手掛けており、これまでに無印良品と共同設計した自動運転シャトルバス「GACHA」などを発表している。

2021年12月には、EV開発を手掛ける独MOOVEとのパートナーシップのもと、最大19人の自動運転シャトルバスを2023年に市場化する計画を発表した。

また、商用向けの全天候型レベル4自律シャトルバスソフトウェア「DAWN」も2022年中に商用化する予定だ。定員6〜20人のシャトルバス用に設計されており、時速40キロで走行することが可能という。

▼Sensible 4公式サイト
https://sensible4.fi/

Auve Tech「MiCa」:レベル4対応の新型シャトル
出典:Auve Tech公式サイト

Auve Techは北欧エストニアの企業で、同社は自動運転レベル4に対応した自動運転シャトルとして「MiCa」を開発している。

同社は、世界で初めて水素走行の自動運転シャトルを開発したことでも知られている。開発している自動運転モビリティは、乗客輸送向けと物資輸送向けの両方で、車両の遠隔操作に関する取り組みも手掛けている。

過去数年間の間に世界12カ国以上におけるプロジェクトで同社の技術が実証・展開され、近年Auve Techへの注目度は高まるばかりだ。日本のBOLDLYも同社と提携していることで知られており、MiCaはすでに日本での自動運転サービスでも導入されている。

▼Auve Tech公式サイト
https://auve.tech/

【参考】関連記事としては「BOLDLY、エストニア製自動運転バス「MiCa」展開へ」も参照。

中国
Baidu「Apolong」など:自動運転ミニバスを量産化
出典:Baidu公式サイト

Baidu(百度)は、アポロ計画のもとバスメーカーKinglong(金龍客車)と共同開発した自動運転ミニバス「Apolong」を量産化している。

4,330×2,150×2,715ミリのボディサイズで、最大時速40キロでレベル4走行を可能にしている。中国内の各都市ですでに導入されており、乗客数は1万人を軽く超えているという。

また、両社が開発した19人乗りの中型自動運転バス「Robus」も現地メディアで報じられており、公道実証を進めているようだ。

▼Apollo公式サイト
https://apollo.auto/

WeRide「WeRuanMinibus」:広州でドライバーレス運行を実現
出典:WeRide公式サイト

自動運転開発を手掛けるWeRideとバスメーカーの宇通客車(Yutong)も自動運転ミニバスの共同開発を進めており、最高時速40キロの「WeRuanMinibus」を製品化している。

WeRuanMinibusは2021年1月に広州国際生物島で試験運用を開始しており、2022年1月にドライバーレスでの正式な運行を開始したようだ。

なお、宇通客車は2015年に第1世代の自動運転バスの公道実証を開始するなど早い段階から自動運転開発を行っており、自社設計の自動運転バス「Xiaoyu 2.0」を発表している。この自動運転システムが独自開発したものかWeRideの技術かは定かでないものの、自動運転向けに設計されたデザインが評価され、Red Dot Award(レッドドット賞)を受賞している。

▼WeRide公式サイト
https://www.weride.ai/

【参考】宇通客車の取り組みについては「中国Yutongの自動運転バスに世界的工業デザイン賞!どんな車両?」も参照。

イスラエル
Mobileye「i-Cristal」: 自動運転シャトルの生産スタートへ
出典:Mobileye公式ブログ

2022年12月に再上場したことでも注目を集めたインテル傘下のイスラエル企業モービルアイは、世界のメーカー各社と協業し、攻勢をかける。仏LohrGroupが開発したEVシャトル「i-Cristal」に自動運転システム「Mobileye Drive」を統合した自動運転シャトルを近く生産開始し、公共交通事業を手掛けるTransdevが2023年中に欧州でサービスインする計画が発表されている。

i-Cristalは4,200×1,870×2,530ミリのボディに最大16人乗ることが可能で、時速50キロで走行することができるという。乗客の数に合わせ、最大4台まで連結して走行することができる。

一方、米国では独BENTELER EV Systemsと米Beepと提携し、ファーストマイル・ラストワンマイル向けの自動運転シャトルの開発を進めている。2024年にも生産開始する見込みだ。

▼Mobileye公式サイト
https://www.mobileye.com/

【参考】Mobileyeについては「インテル傘下Mobileye、北米で2024年に自動運転シャトル投入へ」も参照。

■ニュージーランド
Ohmio「OhmioHOP」など:ニュージーランドや韓国で導入開始
左がOhmio HOP、右がOhmio LIFT=出典:Ohmio Automation公式サイト

ニュージーランドのOhmioは、4〜6人乗りの自律型シャトル「Ohmio HOP」と最大20人の乗客を乗せることができるフラッグシップシャトル「Ohmio LIFT」を開発している。

オークランドで建設中のニュータウン「Paerata Rise」や、クライストチャーチ植物園などで導入に向けた実証が2020年に実施されているほか、韓国世宗市も「Ohmio LIFT」を導入している。

▼Ohmio公式サイト
https://ohmio.com/

■【まとめ】国内でもレベル4サービス向け取り組みが加速

乗用車ベースの自動運転タクシーに比べ、自動運転バス・シャトルはデザインや機能が多種多様だ。比較的低速であらかじめ決まったルートを走行するため、自動運転タクシーなどと比較して実用化に向けたハードルも低い。

ヤマハ発動機のようにカートベースの車両を構築すれば初期導入費用も比較的安価になるものと思われる。国内でもレベル4の本格実用化に向けた動きが加速しており、今後の展開に要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転バス・シャトルでの定常サービス一覧」も参照。

■関連FAQ

(初稿公開日:2022年3月4日/最終更新日:2024年1月29日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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