自動運転バス・シャトル、最新の市場規模予測まとめ【国内・世界市場別】

年20%前後で成長、汎用化・低価格化で爆発的普及も



出典:ティアフォープレスリリース

国内で2例目の特定自動運行許可が下り、徐々にではあるものの自動運転時代の到来が現実味を帯び始めた。

日本では自動運転バス・シャトルの開発・実装が中心となっており、おそらく2024年度中に3例目、4例目となる動きが出るものと思われる。


サービス化が始まった自動運転バス・シャトルは今後どのように市場を拡大していくのか。リサーチ各社の市場予測レポートを参照しつつ、自動運転サービスの現在地を見ていこう。

【参考】国内の動向については「自動運転バス・シャトルの移動サービス一覧(2024年最新版)」も参照。

■自動運転バスの国内市場調査

富士経済:2035年の国内市場規模は322億円

出典:富士経済プレスリリース

富士経済が2020年に発表した自動運転シャトルの国内市場調査によると、2035年には旅客用途260台、物流用途200台の計460台が導入され、市場規模は322億円に達するとしている。

やや古い調査で、コロナ禍が始まったばかりの時期のため、今となっては「?」な部分もあるが、2021年にはトヨタ「e-Pallette」20台の導入を予測しており、2023年にはコストを抑えた量産型が投入される計画にも触れている。


その他の自動車メーカーも実用化に向け機能を抑えたモビリティ開発に取り組んでいることから市場は堅調に拡大するとし、2030年に170台、2035年に460台と予測している。

旅客用途では、公道を走行するコミュニティバスが2035年に100台、敷地内を走行する空港内バスは100台、事業所内移動バス30台と予測している。

物流用途では、公道を走行する宅配50台、物販・サービス50台、敷地内を走行する構内搬送100台と予測している。

旅客用途は物流用途に先行して普及が進むとみており、コミュニティバスはトラックやバスドライバーの人手不足や人口の都市流入による渋滞問題、公共交通機関の路線撤退による公共交通空白エリアの交通手段確保などから導入に対する期待が高いという。


自動運転シャトルの活用が期待されており、2024年頃から導入がはじまるとみている。物流用途は2030年までは実証中心とみており、2030年以降に工場や倉庫、港湾エリア内における構内搬送向けの導入が先行するとみている。

市場規模は、2021年予測の24億円から、2035年には322億円に拡大するとみている。

▼自動運転シャトルの国内市場を調査|富士経済
https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=20098&view_type=2

【参考】富士経済による調査については「小型自動運転シャトル、2035年には旅客・物流用途で460台規模の市場に」も参照。

■自動運転バスの海外市場調査

Global Market Insights:2032年までCAGR19.7%で成長

出典:Global Market Insightsプレスリリース

Global Market Insightsが2023年10月に発表したレポート「自動バス市場規模とシェア成長分析2032」によると、自動運転バス市場規模は2022年に1.7億ドル(約250億円)と評価されており、2023年から2032年にかけてCAGR(年平均成長率)19.7%で成長するという。

自動運転バスの多くは電気などのエネルギー源を動力としており、従来のバスよりも環境にやさしいため、政府の取り組みや消費者の嗜好に合い、販売軌道を強化するとしている。

自動運転バスの主要企業には、ABボルボ、Apollo Baidu、BYD、Daimler AG、Easymile、MANトラック&バス、New Flyerグループ、トヨタ自動車、Yutongグループを挙げている。

▼自動バス市場規模とシェア成長分析2032|Global Market Insights
https://www.gminsights.com/ja/industry-analysis/autonomous-bus-market

Fortune Business Insights :2030 年までに市場規模は1兆3,000億円に

Fortune Business Insightsが2024年7月に発表したレポート「自動運転バス市場規模、シェアと業界分析、コンポーネント別、および地域予測(2023年~2030年)によると、世界の自動運転バス市場規模は2023 年の 15 億 7000 万ドル(約2,300億円)から 2030 年までに 89 億 3000 万ドル(約1兆3,000億円)に成長し、期間中CAGR 28.2%で成長すると予測している。

2023年時点では欧州が8億7,000万ドルで最大の市場となっているという。自動運転バスのトッププレイヤーには、ABボルボ、Proterra、Hyundai Motorを挙げている。

▼自動運転バス市場規模、シェアと業界分析、コンポーネント別(ハードウェア、ソフトウェア、サービス)、および地域予測(2023年~2030年)|Fortune Business Insights
https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/自動運転バス市場-105800

Technavio:2028年までCAGR21.86%で成長

出典:Technavioプレスリリース

英Technavioが2024年3月に発表した2024~2028年を予測期間とするレポートによると、2023年から2028年の間に CAGR21.86%で成長し、市場規模は22億9,000万ドル(約3,300億円) 成長するという。

ADASやセンサーなどの技術による安全性向上への注目度の高まり、環境問題を背景とした電気自動車やクリーンエネルギー車の需要の高まり、交通渋滞に対処するための公共交通ソリューションの必要性などを要因に市場は伸びていくとし、自動運転車向けの走行路の開発や新型自動運転バスの導入増加が成長を促進していくとしている。

▼Autonomous Bus Market Analysis North America, APAC, Europe, Middle East and Africa, South America – US, China, Japan, Germany, UK – Size and Forecast 2024-2028|Technavio
https://www.technavio.com/report/autonomous-bus-market-industry-analysis

Towards Automotive:2032年にかけCAGR19.64%で成長

出典:Towards Automotiveプレスリリース

インドのTowards Automotiveが2024年4月に発行したレポートによると、自動運転バス市場は2023年実績で16億2,000万ドル(約2,400億円)と評価されており、2024年から2032年にかけて約19.64%のCAGRで156億6,000万ドル(約2兆3,000億円)成長するという。

自動運転バスに関連する高い生産コストや潜在的なサイバー攻撃から保護するための強力なサイバーセキュリティ対策などが課題となっているが、5G テクノロジーが車両とインフラストラクチャ間のシームレスな通信を可能にし、自動運転輸送システムの効率と信頼性を高める可能性を秘めているとしている。

2023年時点ではアジア太平洋地域が自動運転バス市場の約半分を独占し、総収益の50%以上を占めるとしている。特に中国は技術進歩への強力な取り組みと自動運転の研究開発への多額の投資により、自動運転バス産業が急成長しているという。

▼Autonomous Bus Market Size Expected to Grow to USD 15.66 Billion by 2032, With a CAGR of Around 19.64%|Towards Automotive
https://www.towardsautomotive.com/insights/autonomous-bus-market-sizing

Future Data Stats:2030年までに市場規模は1兆8,600億円に

インドのFuture Data Statsが発表したレポートによると、世界の自動運転バス市場は2023年に20億3,000万ドル(約3000億円)からCAGR19.8%で拡大し、2030年までに126億9,000万ドル(約1兆8,600億円)に達すると予測している。

北米と欧州が強力な技術進歩と支援的な規制の枠組みを背景に市場をリードしており、今後も自動運転バスへの投資が増加していくとしている。

▼Autonomous Bus Market Size, Share, Trends & Competitive Analysis By Type: Electric Autonomous Buses, Hybrid Autonomous Buses, Fuel Cell Autonomous Buses By Application:, Public Transportation, Shuttle Services, Airport Transportation, Tourist Transportation By Level of Autonomy: By Regions, and Industry Forecast, Global Report 2024-2032
https://www.futuredatastats.com/autonomous-bus-market

■自動運転バスの現状

レベル4自動運行装置の認可は4社、このうち二つがサービスイン

国産モデルで実用化域に達しているのは、ヤマハ発動機製のゴルフカーをベースにした自動運転シャトルだ。ヤマハ発動機と産業技術総合研究所、三菱電機、ソリトンシステムズがコンソーシアムを組んで開発を行い、2023年にレベル4の自動運行装置としての認可と、レベル4サービス提供に必要となる道路交通法に基づく特定自動運行許可を取得している。

福井県永平寺町で国内初のレベル4運行に着手したほか、沖縄県北谷町など各地で同モデルが活用されている。

【参考】永平寺町の取り組みについては「自動運転、日本でのレベル4初認可は「誘導型」 米中勢に遅れ」も参照。

自動運転、日本でのレベル4初認可は「誘導型」 米中勢に遅れ

国内ではこのほか、先進モビリティやティアフォーといった新興勢が開発に力を入れている。先進モビリティの自動運転バスは、この一年間で愛知県岡崎市や愛知県豊田市、静岡県三島市、山梨県甲府市、栃木県下野市、愛知県常滑市、神奈川県横浜市、東京都臨海副都心エリアなど各地の実証で導入されている。

ティアフォーはWILLERと手を組み、2023年度に国内3カ所で実証に着手した。2025年度に約10エリアでの実用化を目標に掲げている。

小型の自動運転EVバス「Minibus」の量産化をはじめ、2024年3月にいすゞと路線バス領域における自動運転システム開発を目的とした資本業務提携を交わしている。サービス実装と量産化の両面から事業展開を加速している印象だ。

国産モデルとしては、この3陣営によるモデルが今後シェアを大きく伸ばすことになりそうだ。

【参考】ティアフォーの取り組みについては「国産自動運転バス、「国内最長」36kmを運行!WILLERとティアフォーが実証」も参照。

国産自動運転バス、「国内最長」36kmを運行!WILLERとティアフォーが実証

e-PaletteやARMAの活用に注目

国内ではこのほか、トヨタの多目的自動運転サービス専用車「e-Palette」もシャトル用途に利用可能だ。2021年の東京五輪では、選手村における選手らの移動を担った実績を持つ。

また、仏Navyaの「ARMA」は日本で最も利用実績が高いモデルとなっている。(※Navyaについては、Navyaの資産を取得したGAUSSIN MACNICA MOBILITY SAS社をマクニカが2024年6月に完全子会社化し、事業を引き継いでいる)

海外では自動運転タクシー開発が主流?

海外では、旧Navya、仏EasyMileの2社が自動運転シャトルのパイオニア的存在として知られる。両社とも日本を含む世界数百エリアでの導入実績を誇る。

米国では、自動運転タクシーの開発が盛んで、バスやシャトルサービスは意外と競争が緩い。そんな中頭角を現してきたのが、トヨタとパートナーシップを結ぶMay Mobilityだ。同社は当初EVカートをベースに自動運転シャトルを開発していたが、現在レクサス車やトヨタの「シエナAutono-MaaS」をベースにしたサービス展開が主力となっている。

中国も自動運転タクシーの開発が熱を帯びているが、百度(Baidu)やWeRideなどが自動運転バスの開発も手掛けており、広州などで運行サービスを行っている。

BaiduとEV大手BYDは2023年に戦略的提携を交わし、アポロプラットフォームをBYDのEVバスに統合して自動運転バス量産化を進めていくようだ。自動運転開発事業者とバス製造事業者のパートナーシップは今後も続発しそうだ。

国内では永平寺町とHANEDA INNOVATION CITYでレベル4サービス許可

国内では、2023年5月に福井県永平寺町の自動運転シャトルが特定自動運行許可を取得している。2024年7月には、HANEDA INNOVATION CITYで運行中の自動運転バスが国内2番目となる同許可を取得した。

国内でレベル4運行が認められているのは今のところこの2カ所で、両方とも一般的な車道以外をルートとしている。

レベル4自動運行装置の認可については、このほかGLP ALFALINK相模原構内を運行するティアフォーのモデルと気仙沼BRTを走行するJR東日本のモデルだ。

これらの本格運行をはじめ、国内では現在14都道府県の計16カ所の一般道で継続的な運行実証が行われている。このうちのいくつかが2024年度中に特定自動運行許可を取得する可能性は十分考えられるだろう。

旧Navya、EasyMileが市場初期をけん引

Gaussin Macnica Mobility(旧Navya)の自動運転シャトル「ARMA」と最新の「EVO」は、23カ国以上で計200台以上の導入実績を誇る。

旧Navyaと双璧をなすEasyMileは、同社によると世界30カ国以上の300超のエリアで導入されているという。

いずれもバスとしては小型モデルで、基本的に時速20キロ程度の低速で運行するため実用化に適しており、実証を進める世界各地から引っ張りだことなった印象だ。開発初期段階を支えたモデルであり、今なお現役モデルとして活躍している。

米国ではMay Mobilityが大きく前進

米国では、May Mobilityがミシガン州アナーバー、デトロイト、テキサス州アーリントン、ミネソタ州グランドラピッズ、フロリダ州マイアミ、アリゾナ州サンシティで自動運転シャトルの運行を行っている。アーリントンでは有料化するなど、徐々にビジネス性を高めているようだ。

自動運転タクシーほどの柔軟な移動はできないが、それぞれのエリアで乗降スポットを20カ所程度設定し、スポット間のオンデマンド移動を可能にしている。

こうしたオンデマンドシャトルサービスは、自動運転タクシーに比べ実装しやすく、比較的柔軟かつパーソナルな移動を実現できる点がポイントだ。

米May Mobility、トヨタ車で「完全無人」自動運転サービス 毎秒何千のシナリオ分析

欧州でも英国やドイツで動きあり

英国では、2023年に英Fusion Processingの自動運転システム「CAVstar」を搭載した大型自動運転バスが運行を開始したようだ。

ドイツでは、ハンブルク市が2030年までに1万台規模の自動運転シャトル導入計画を打ち出しているようだ。プロジェクトにはフォルクスワーゲンが参画しており、イスラエルのモービルアイ製自動運転システムを統合した車両を投入する可能性が高いという。

【参考】英国の動向については「フルサイズの自動運転バス、世界に先駆け英国で運行開始」も参照。

■【まとめ】国内の新たなサービスインに期待

各リサーチ会社は、自動運転バス・シャトル市場は2030年前後まで概ねCAGR20%前後で成長していく予測を立てているようだ。

今しばらくはなだらかに市場を拡大するものと思われるが、自動運転システムの精度が数段高まり、汎用化と低価格化が実現すれば、爆発的に普及が進む可能性がある。この段階をいつ頃迎えるかがポイントとなりそうだ。

国内では、永平寺町とHANEDA INNOVATION CITYに次ぐレベル4サービスの登場に期待したい。一般車道を走行する初のレベル4サービスの実現にも注目が集まりそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転車の市場調査・レポート一覧」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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