自動運転ベンチャーの米May Mobilityは2023年12月21日までに、ドライバーレスの自動運転サービスのアーリーライダープログラムを開始した。
このサービスは米アリゾナ州フェニックス近郊の「Sun City」(サンシティ)で提供され、同社初の公道で行われるドライバーレスの自動運転サービスとなる。使用されるのは、トヨタのAutono-MaaS車両「シエナ」だ。
【参考】関連記事としては「トヨタのAutono-MaaS事業とは? 自動運転車でモビリティサービス」も参照。
■これまではセーフティ・モニター同乗
May Mobilityは、今回のドライバーレスの自動運転サービスに移行する前に、同じくサンシティでセーフティ・モニターというサポート担当者が同乗した形式での自動運転サービスを2023年4月からスタートしている。同社はMaaS事業を手掛ける米Viaと共同でオンデマンドの自動運転サービスを展開し、利用者はViaのアプリを通じて予約や乗降設定などを行う。
なおサンシティは人工的につくられた「リタイアメント・コミュニティ(退職者のためのコミュニティ)」で、入居者は55歳以上という条件がある。この自動運転サービスは、高齢化社会において安全かつ自由な移動を提供するために設計されている。
今回、同サービスをさらにアップデートし、ドライバーレスの自動運転サービスを展開するに至ったという。
■毎秒何千のシナリオを分析
ドライバーレスの自動運転サービスは、May Mobilityが独自開発した「MPDM(Multi-Policy Decision Making)」技術を活用している。自動運転車両が予測していなかった状況に遭遇した場合などにおいて、安全運転の決定を下すという課題を解決するための技術で、毎秒何千もの可能性のあるシナリオを分析し、最も安全なシナリオを選択して実行している。
この手法により、同社の車両はエッジケースへ対応することを得意とし、他の方法では不可能なほど効率的かつ迅速に規模を拡大することができるという。
ドライバーレスの自動運転サービスは、最初は月〜金曜の午後に公道で運行され、集合住宅や医療センターなどをまわる。サンシティの住民で構成されたアーリーライダー(初期利用者)は、最寄りの停留所からの乗車をリクエストできる。料金は無料。アーリーライダーによるフィードバックは、今後のサービス拡大に活用される予定だ。なお、アーリーライダー希望者からの申し込みも受け付けているようだ。
■トヨタやNTTも出資するMay Mobility
May Mobilityは、ミシガン大学の自動運転開発チームのメンバーによって2017年に設立された。 2022年9月には、ミネソタ州でシエナを活用した公共交通プログラムがスタートしたことが発表された。
これまでの資金調達ラウンドにはトヨタやNTTグループなども参加しており、日本企業との関わりも深い。
2022年6月にはソフトバンクと業務提携し、2023年1月からソフトバンクが開始した自動運転の走行経路の設計や遠隔監視の運行業務などをAI(人工知能)で完全無人化するといった実証実験において、May Mobilityの自動運転システムが活用されている。
■展開拡大も視野
May MobilityのCFO(最高財務責任者)であるAnna Brunelle氏は今回のサービス開始にあたり、「同程度の成熟度を持つ他のシステムの数分の一のコストで、よりスケーラブルな自動運転ソリューションを構築した」と自信を見せた。また「ドライバーレス運行設計の領域を拡大し、改善し続けることで、収益性の高い最初の自動運転企業になるという目標に近づいた」とコメントしている。
同社のドライバーレスの自動運転サービスが、他のエリアにも拡大されるか、今後も注目だ。
▼May Mobility公式サイト
https://maymobility.com/
【参考】関連記事としては「トヨタ、さすがの出資判断!米May、自動運転サービスを実現」も参照。