完全自動運転の実現により、ドライバーは自動車の制御や周囲の監視といった運転に必須となる作業から解放される。すべての作業をコンピューターが担うのだ。
こうした変化は、ドライバーの負担を減らすことにとどまらず、車内装備にも大きな変化を及ぼす。速度計やタコメーターなどが並んだメータークラスターはその役割を終え、自動運転時代の新たなスペースとして有効活用が模索されることになる。
未来のメータークラスターはどのように変わっていくのか。その可能性に思いをはせてみよう。
記事の目次
■そもそもメータークラスターとは?
メータークラスターは、スピードメーターや走行距離計など走行時に必要となる各種メーターをまとめたもので、通常はハンドルの向こう側にある計器類一帯のパネルを指す。関連して、カーナビやオーディオなどが収まったパネルはセンタークラスターという。
計器類をまとめたパネルはもともとインストルメントパネル(インパネ)と呼ばれていたが、近年ではインパネは助手席側を含むパネル全体(ダッシュボード)を指す意味で使用されることが多くなった。
メーター類など各表示のデジタル化は早くから進められていたが、見やすさや慣れなどからアナログタイプの表示を採用している車種が依然多い。一方、パネルが液晶化され、自動車各部の状態やADAS(先進運転支援システム)の作動状況などを表示する例も増加している。
燃費や推定走行可能距離など、付随する情報をセンタークラスターの液晶に表示するタイプや、HUD(ヘッドアップディスプレイ)を搭載する車種などもあり、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)の観点から自動車の状況をいかにわかりやすいものにするか、地道な開発と進化は今なお続いている。
■メータークラスターの法律上の扱いは?
「速度計、走行距離計その他の計器」に関しては、道路運送車両法41条で「国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない」と定められている。
また、保安基準において、運転者が容易に走行時における速度を確認できるものであることやkm/hで表示することなどが定められている。
現行の一般的な車両においては、速度計などの搭載が義務付けられており、その規格も一定程度定められているのが現状だ。
■自動運転レベル5におけるメータークラスター
設計の自由度増すレベル5
条件付きで自動運転が可能になるレベル3など、自動運転と手動運転が混在する場合は、従来通り、あるいは従来に近い形でメーター類の表示を残す必要がある。
では、完全自動運転となるレベル5ではどうだろうか。ハンドルやアクセル・ブレーキといった制御装置を搭載せず、自動運転のみの走行を実現したタイプだ。
人間のドライバーは一乗員となり、コンピューターがドライバーの役割を担うことになる。車両の運転・制御に関する責任が人間からコンピューターに移るのだ。コンピューターが速度などを的確に把握できれば良いため、乗員は確認したいときだけ速度などを表示できればOKとなる。従来の保安基準とは主旨が異なってくるのだ。
計器類の搭載が任意になると仮定した場合、メータークラスターは保安基準などのしばりを受けることがなくなる。安全要件を満たす必要はあるものの、設計の自由度が大きく増すことになる。
設計の自由を手に入れたメータークラスターは従来の役割を終え、インパネの一部として新たな活用方法が模索されることになる。
インパネが大型ディスプレイに
では、レベル5におけるメータークラスター(インパネ)はどのように活用されていくのか。従来のメータークラスターやカーナビの延長線上として捉えると、目的地までの厳密な到達時間や、マップと連動した周辺のローカル情報のリアルタイムな表示などが考えられるが、これらは必要最低限の機能となる。
なぜなら、レベル5は運転作業から解放されたドライバーを含めすべての乗員の自由度が増すからだ。移動時間が、自由に使うことができる「可処分時間」となるのだ。
車内で本を読んだり食事をしたり、映画や音楽鑑賞、ゲーム、仕事など、さまざまな活動が可能になる。こうした活動に資するのが、メータークラスターの新たな役割となりそうだ。
有力視されているのが、インパネ全面をディスプレイ化するアイデアだ。一部に車両情報やカーナビなどの移動情報を表示しつつ、別のパネルで映画などの映像表示やパソコンのディスプレイとして使用するなど、柔軟な活用が可能になる。
移動サービスを主体とするレベル5車両であれば、観光情報などを臨場感あふれる映像で表示することができる。周辺の飲食店や観光施設などの広告を流したり、デジタルクーポンを配布したりすることもできそうだ。
さらなる発展系では、フロントウィンドウと一体化し、大型ディスプレイ化する活用方法なども考えられる。レベル5では、人間が周囲の状況を把握する必要がなくなるため、窓も必要装備ではなくなるからだ。大画面で映画を鑑賞するなど、エンターテインメント用途で重宝しそうだ。
また、食事用のテーブルスペースや就寝用の枕スペースなどにとって代わる可能性もある。車内空間の自由度が増すことで、従来のインパネスペースを多目的にレイアウトすることも可能になるだろう。
■【まとめ】自動運転時代はディスプレイの進化とともにデータも多様化
コネクテッドカーの普及やシステムの高度化などに伴い、メータークラスターをはじめとしたインパネの活用方法に変化が見られ始めており、センタークラスター向けの大型ディスプレイや曲面ディスプレイ、HUD技術の開発などが進められている。
こうした技術は自動運転時代にさらに大きな脚光を浴びるかもしれない。コネクテッド×自動運転の真骨頂だ。柔軟性の高いディスプレイを活用した機能やサービスが次々と生み出され、表示されるデータも多様化の一途をたどることになりそうだ。
ちなみに、メータークラスター・インパネが何らかの情報を表示する媒体という性質を有している限り、表示データを保存・媒介するストレージが必要になってくることも重要な視点だ。しかもこうしたストレージに関しては、自動車の揺れや室温変化などにも耐久力がなければならない。
こうした車載に適したストレージ製品を展開しているのが米Western Digitalだ。容易に取り外し可能なSDカードや多く自動車で使用されているe.MMC、読み書き速度に優れるUFSなどの形式のストレージを展開している。
Western Digitalはこうしたストレージを試すことができる検証用フラッシュストレージの無償提供プログラムを実施している。プログラムについての詳しい内容は「検証用フラッシュストレージの無償提供プログラム」から確認できる。
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