韓国 自動運転で日本を追い抜く?高齢化・ドライバー不足でも勝てるワケ

韓国の自動運転は日常の風景に



韓国のロボタクシー市場が、静かに、しかし激しい競争局面に入った。米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)やライドシェア大手Uber(ウーバー)といった外資に主導権を委ねる日本とは対照的に、韓国では大手IT企業のKakao Mobility(カカオモビリティ)、国産メーカーの現代自動車、複数のスタートアップが三つ巴の競争を繰り広げている。

象徴的なのが深夜のソウルだ。夜11時、江南エリアの路上に安全監視員を乗せたKia(起亜)のEV6が現れ、誰もハンドルを握らないまま街を走る。利用者は通常のタクシーアプリで車を呼び、料金もほぼ通常のタクシー並み。車体には「Seoul Autonomous Vehicle」と記されている。高齢化と深夜の供給不足という、日本とそっくりの課題を抱える韓国が、国産主導という異なる解を選んだ事実が浮かび上がる。


編集部おすすめサービス<PR>
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり)
「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今!
新車定額!リースナブル(車のカーリース)
お好きな車が月1万円台!頭金・初期費用なし!
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント)
転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を
タクシーアプリは「DiDi」(配車アプリ)
クーポン超充実!「無料」のチャンスも!
編集部おすすめサービス<PR>
スクエアbang!
「最も安い」自動車保険を提案!
リースナブル
新車が月々2万円から!
パソナキャリア
転職後の平均年収837〜1,015万円
タクシーアプリDiDi
クーポンが充実!「乗車無料」チャンス
ジェイエイシーリクルートメント

■ソウルで「静かに」始まった自動運転、日本を追い抜くのか

韓国の自動運転が、派手な実証イベントとしてではなく、日常の風景として始まっている。深夜11時、ソウル江南のメボン駅付近に一台のKia EV6が滑り込んでくる。運転席には安全監視員が座るが、ハンドルに手は添えているだけ。車は世界有数の過密な街路網を、自らの判断でさばいていく。

利用者から見れば、体験は驚くほど普通だ。いつも使うタクシーアプリで配車し、料金もほぼ通常のタクシー並み。違うのは、運転を機械がこなしているという一点だけである。ソウル市内では現在、27台の自動運転車が6つのゾーンで運行し、累計の乗客は10万人を超えた。自動運転は、もはや未来の話ではなく、市民の足になりつつある。

この「静かさ」こそが韓国の現在を表している。日本がWaymoやUberといった外資の参入を待つ構造にあるのに対し、韓国では同じ高齢化・運転手不足という土台の上で、すでに自国の車が街を走っている。日本を追い抜くのか。その問いの答えは、この淡々とした日常の積み重ねの中にある。

【自動運転ラボの視点】
韓国の自動運転は派手な発表ではなく日常運行で前進している。日本と同じ課題を抱えながら国産勢が街を走らせる事実は重い。実装の速さがそのまま競争力になる局面に入ったと言える。

【参考】関連記事としては「自動運転タクシー、韓国ヒョンデも「米国でUberで配車」 Googleに続き」も参照。


■Kakao・現代・スタートアップ、三つ巴の競争構図

韓国の自動運転タクシー市場が面白いのは、戦う三者がまったく異なる世界から来ている点にある。それぞれが固有の武器を持ち、固有の弱点を抱える。

一つ目は大手IT企業のKakao Mobilityだ。配車アプリのKakao Tは国内のほぼ全てのスマートフォンに入っており、人々がタクシーを呼ぶ際の事実上の標準になっている。配車を握る者が顧客と価格、 tender そしてデータを握る。これがKakaoの強みだ。

二つ目は国産メーカーの現代自動車グループ。車両を自ら作り、自動運転ハードを組み込み、走行データを市販車にも還元できる垂直統合が武器だ。社内のソフト部門が独自の自動運転技術を開発し、Waymoとの差を詰めることを最優先課題に掲げる。ただし最も攻めた無人運行の多くは米国で進んでおり、足元のソウルにはむしろ空白が生まれている。

三つ目が、最初に市場へ出たスタートアップ群だ。韓国初のロボタクシーを走らせたのはKakaoでも現代でもなく、2017年設立の自動運転企業SWMだった。機動力と実走行データという強みを持つ一方、資金力の薄さという共通の弱点を抱える。三者の競争は、この異なる強みのぶつかり合いとして展開している。


【参考】関連記事としては「日本の負け確定?韓国初の「自動運転夜間タクシー」登場」も参照。

日本の負け確定?韓国初の「自動運転夜間タクシー」登場

■日本と同じ「高齢化・ドライバー不足」という背景

なぜ韓国はこれほど急ぐのか。答えは街そのものにある。タクシー業界の高齢化が進み、深夜の供給は慢性的に不足し、乗車拒否も市民の不満として残る。ソウル市は自動運転をガジェットではなく、これらの課題を解決する手段として位置づけてきた。市の交通当局が、自動運転車をバス運転手不足と同じ文脈で語るのはそのためだ。

この構図は日本とそっくりだ。日本ではタクシー運転手の約6割が60歳以上を占め、特に70代前半の層が厚い。担い手の高齢化と若年層の流入不足は、日韓が共有する課題と言える。韓国でも運輸従事者の高齢化と新規流入の減少が進み、地域によっては運転手不足からバスの減便や運休が起きている。

つまり日韓は、同じ人口構造の壁に同じタイミングでぶつかっている。違うのは、その壁への向き合い方だ。日本が外資のサービス参入に活路を見いだそうとする一方、韓国は自動運転を自国の産業政策として育てようとしている。背景の課題が同じだからこそ、解き方の違いが際立つ。

■外資依存の日本、国産主導の韓国という対照

日本の自動運転タクシー市場は、海外勢の存在感が大きい。WaymoやUber、配送特化のNuro(ニューロ)など、外資の技術とサービスに期待が集まる構図だ。これに対し韓国は、現代自動車という国産の完成車メーカーが市場を牽引する。同じ課題を抱えながら、産業としての担い手が大きく異なる。

国産主導を象徴するのが、現代自動車とNvidiaの提携深化だ。2026年1月、両社の協業拡大観測を受けて現代自動車の株価は一時約15%急騰し、過去最高値を付けた。AIと自動運転を軸に、国産メーカーが世界の最前線と組んで競争力を高めようとしている。車両からソフト、データまでを自国で囲い込む戦略だ。

ただし、国産主導が永遠の優位を約束するわけではない。Waymoはすでに韓国市場への参入を検討しており、国土交通部が立ち上げた協議体では規制改革が議論されている。Waymoは韓国の高精度地図へのアクセスも確保したとされる。規制が緩めば、国産勢が待ち望む環境は、同時に巨大外資を呼び込む扉にもなりうる。

Waymoついにロンドンで自動運転テスト、日本は遅れ続けるのか

■高齢化でも「勝てるワケ」、韓国が日本に示すもの

では、高齢化とドライバー不足という逆風の中で、韓国が「勝てるワケ」はどこにあるのか。一つは、官民が同じ方向を向いている点だ。韓国政府はソウルを「フィジカルAI」、すなわちAIを画面の中ではなく道路や建物、車両に組み込む実験都市と位置づける。オ・セフン市長は、ソウルを世界で3番目に運転者なしの自動運転レベル4タクシーを走らせる都市にすると表明した。

もう一つ重要なのが、現在地を正確に捉えることだ。今ソウル江南で走るサービスは、安全監視員が同乗する自動運転レベル3にあたる。これに対し、2026年10月にサンアム地区で予定されるのは、運転者のいない自動運転レベル4への飛躍だ。さらに韓国勢には「データの差」という弱点もある。世界の先行勢が膨大な走行距離を積む一方、韓国企業の蓄積はまだ追う立場にある。

それでも韓国は、製造の力と密な都市インフラ、そして粘り強い政策支援で技術差を詰めてきた実績を持つ。サンアムでの無人運行は、その手法が自動運転でも通用するかを占う最初の試金石になる。日本が学べるのは、外資任せにせず国産と官民の足並みで前に進む姿勢だろう。韓国が日本を追い抜くと断じるのはまだ早い。だが「同じ条件でここまで来た」という事実は、日本にとって決して小さくない問いを投げかけている。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事