条件付きで自動運転が可能になる「自動運転レベル3」が法的課題をクリアし、本格的な市場化をまもなく迎えようとしている。ただ、自動運転システムと人間であるドライバーが混在することを危険視する声も少なくない。「レベル3の罠」だ。
このレベル3の罠に、ドライブレコーダーが活躍するかもしれない。レベル3の罠とともに、安全運転支援に向けたドラレコの可能性について解説していく。
■レベル3の罠とは?
レベル3は、基本的にドライバーが手動運転を行うが、高速道路など一定条件下で自動運転が可能となるレベルを指す。例えば「好天時、高速道路や高精度3次元地図が整備された自動車専用道において時速60キロ以下で走行する場合」といった具合だ。
ただし、条件下においてもシステムが何かしらの危険を察知し、手動運転への交代を要請した際は、ドライバーは速やかに運転を行わなければならない。ドライバーは自動運転中も一定の緊張状態を保っておかなければならないのだ。
スマートフォンやカーナビの操作はOKだが、睡眠をはじめすぐに運転動作に戻れない行為は厳禁だ。周囲の視界から目をそらす「アイズフリー」は可能だが、運転を全く気にしない「ブレインフリー」はレベル4以降となる。
ここに「罠」がある。自動運転を過信し、気を緩め過ぎたドライバーがすぐに運転動作に戻れないケースが懸念されているのだ。実際、ADAS(先進運転支援システム)にあたる比較的高度なレベル2において、運転操作を放棄したドライバーによる事故が海外で発生している。
2020年9月にも、昼寝をしながらレベル2車両でカナダの高速道路を運転していた男が逮捕されている。こうした事例がレベル3で多発する可能性が指摘されているのだ。
【参考】レベル2による事故については「テスラの半自動運転死亡事故、原因「視線監視機能の不備にも」 米運輸安全委が発表」も参照。
■レベル3の安全対策は?
レベル3車両には、ドライバーの挙動を監視するドライバーモニタリングシステム(DMS)や、万が一の際に車両を安全に停止するミニマムリスクマヌーバー(MRM)機能が備えられる。
DMSは、車内に設置されたカメラなどがドライバーを常時監視し、居眠りや体調不良などを検知する。自動運転システムから手動運転の要請があった際、ドライバーが速やかに反応するかもチェックし、運転を交代しない場合は警告を発する。
再三の警告に従わない場合、運転継続は困難と判断し、自動運転システムは車両を減速して路肩などに安全に停車する。場合によっては、SOSコールも自動で行ってくれる。
また、万が一の事故の際は、搭載が義務化されている作動状態記録装置が効果を発揮する。事故時の車両制御が手動によるものか自動運転システムによるものなのかをしっかりと記録し、事故の原因や責任の所在を明確にするのに役立つ。
■ドライブレコーダーによるDMS機能
レベル3に必須となるDMSだが、DMS機能を備えたドライブレコーダーもすでに市販化されている。近年のドラレコは車内向けのカメラを搭載したモデルも珍しくなく、車内向けカメラをDMSに活用しているのだ。
例えば2019年発売の通信型2カメラドラレコ「TMX-DM03」には、車内カメラで眠気やわき見を検知する機能が備わっている。AIを活用したアルゴリズムにより、まぶたの開閉時間やまばたきの回数、顔の傾きなどを検知し、リアルタイムで眠気を判断して警告を発する。
台湾に本社を構えるVIA Technologiesの「VIA Mobile360 D700 AIダッシュカム」では、車内カメラで注意散漫な運転やドライバーの疲労、電話の利用、喫煙などの危険な行動を特定できる。日本ユニシスも2019年、ドライブレコーダーに交通違反をリアルタイムで検知・通知できる機能を追加したと発表している。
■【まとめ】DMSはドラレコが担う時代に?
このように、ドラレコに一定のDMS機能を持たせる研究開発は年々進化を遂げている。近い将来、ドラレコがDMSを担う時代が訪れるかもしれない。
さらに言えば、こうしたドラレコの開発企業などは、データを扱うためのストレージについても慎重に考える必要がある。DMS機能が搭載されるのであれば、ドラレコのストレージでより信頼性や堅牢性が求められるからだ。
ストレージ開発大手の米Western Digitalは、検証用に車載用フラッシュストレージを無償提供するプログラムを実施している。プログラムでは、利用目的に応じて5製品の中から利用目的に応じて選択することが可能だ。
プログラムについての詳しい内容は「検証用フラッシュストレージの無償提供プログラム」から確認できる。
>>【特別対談】「大容量×信頼性」、車載業界屈指の半導体メーカーが見据える自動運転の未来
>>特集第1回:自動運転車のデータ生成「1日767TB」説 そのワケは?
>>特集第2回:桜前線も計測!"データ収集装置"としての自動運転車の有望性
>>特集第3回:自動運転車の最先端ストレージに求められる8つの性能
>>特集第4回:【対談】自動運転実現の鍵は「車載ストレージ」の進化にあり!
>>特集第6回:自動運転の安全安心の鍵は「乗員のリアルタイムデータ」にあり
>>特集第7回:【対談】車載ストレージ、タクシーのデータビジネス下支え!
>>特集第8回:自動運転、車載機器の最重要5パーツをピックアップ!
>>特集第9回:AI自動運転用地図データ、どこまで作製は進んでいる?
>>特集第11回:改ざん阻止!自動運転業界がブロックチェーン導入を歓迎すべき理由
>>特集第12回:自動運転時代はクラウドサービス企業の成長期
>>特集第15回:日本、自動運転レベル4はいつから?ODD拡大ではデータの網羅性も鍵
>>特集第16回:日本、自動運転タクシーはいつ実現?リアルタイムデータ解析で安全走行
>>特集第17回:【対談】自動運転、ODM企業向け「リファレンス」の確立が鍵
>>特集第18回:パートナーとしての自動運転車 様々な「データ」を教えてくれる?
>>特集第19回:自動運転車の各活用方法とデータ解析による進化の方向性
>>特集第20回:自律航行ドローン、安全飛行のために検知すべきデータや技術は?
>>特集第21回:自動運転車、AIの「性格」も選べるように?人の運転データを学習
>>特集第22回:【対談】2020年代は「タクシー×データ」で革新が起きる!
>>自動運転白書第1弾:自動運転領域に参入している日本企業など一覧
>>特集第23回:自動運転に必須の3Dマップ、どんなデータが集積されている?
>>特集第24回:解禁されたレベル3、自動運行装置の作動データの保存ルールは?
>>自動運転白書第2弾:自動運転関連の実証実験等に参加している日本企業一覧
>>特集第25回:自動運転、企業の垣根を越えて共有させるべきデータ群は?
>>自動運転白書第3弾:自動運転業界における国内の主要人物一覧
>>特集第26回:コロナで早期実現!?自動運転宅配サービスに必要なデータは?
>>特集第27回:自動運転業界、「データセット公開」に乗り出す企業たち
>>特集第28回:自動運転と「データ通信」の実証実験、過去の事例まとめ
>>特集第29回:自動車ビッグデータの活用に取り組む「AECC」とは?
>>特集第31回:自動運転におけるデータ処理は「クラウド側」「エッジ側」の2パターン
>>特集第32回:自動車×ビッグデータ、自動運転領域を含めた活用事例まとめ
>>特集第33回:自動運転の「脳」には、車両周辺はどうデータ化されて見えている?
>>特集第34回:自動バレーパーキングの仕組みや、やり取りされるデータは?
>>特集第35回:検証用に車載用フラッシュストレージを提供!Western Digitalがキャンペーンプログラム
>>特集第36回:自動運転、「心臓部」であるストレージに信頼性・堅牢性が必要な理由は?
>>特集第37回:自動運転レベル3の「罠」、解決の鍵はドラレコにあり?
>>特集第38回:自動運転時代、ドラレコが進化!求められる性能は?
>>特集第40回:AEC-Q100とは?車載ストレージ関連知識
>>特集第41回:自動運転で使う高精度3D地図データ、その作製方法は?
>>特集第42回:ADASで必要とされるデータは?車載ストレージ選びも鍵
>>特集第43回:V2X通信でやり取りされるデータの種類は?
>>特集第45回:自動運転の実証実験で活用されるデータ通信規格「ローカル5G」とは?