中国の自動運転9大ベンチャーの一つ「WeRide」が進んでいる!

自動運転タクシースタートアップが躍進





目覚ましい躍進を遂げる中国スタートアップ・ベンチャー勢。同国の自動運転業界を強力にけん引し、今では世界の自動運転業界をけん引するほどの立ち位置に達している。自動運転タクシーの開発も盛んで、WeRideなど複数社が2020年中に大きな動きを見せそうだ。







世界との結びつきを強め勢いを増す同国スタートアップをピックアップし、その動向を探ってみよう。

■台頭する中国のスタートアップ9選
WeRide:ロボタクシーの本格運用まで秒読みの段階

2017年設立のスタートアップ・WeRide(文遠知行)の勢いが増している。広州に本社を構えるほか、北京と安慶、米シリコンバレーに研究開発拠点を設けて積極的に公道実証を進めており、2019年11月には総走行距離が100万キロを超えたという。

2018年にルノー・日産・三菱のベンチャーキャピタル(VC)ファンド「アライアンス・ベンチャーズ」から出資を受け、戦略的提携のもと自動運転タクシーの実用化を進めている。

2019年8月に広州でタクシー事業を展開するBaiyun Taxiとジョイントベンチャー「WeRide RoboTaxi」の設立を発表し、同年11月に一般客が乗車可能なロボタクシーの試験運用を開始している。

本格運用まで秒読みの段階に到達した印象も強く、2020年中に大きな動きを見せそうだ。

AutoX:FCAと提携でロボタクシー量産

香港と米カリフォルニア州に本拠を構えるAutoXも、2016年の設立以来自動運転開発を加速し続けている。

2019年9月に完全自動運転の「ロボタクシー」の実証実験を上海市嘉定区で行い、年末にロボタクシー約100台を投入する計画を発表していたが、2020年1月にFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)と提携を交わし、改めてロボタクシーのリリースを発表した。

深センなどで運用される見込みで、各地のタクシー会社との提携が進めば2020年中にも大幅に事業を拡大する可能性がありそうだ。

Momenta:自動運転ソフトウェアを製品化

北京で2016年に設立されたMomentaは、高度なディープラーニング技術で自動運転システムを製品化している。

量産車向けの自動運転レベル3自動運転ソフトウェア「Mpilot」をはじめ、2019年12月にはレベル4を可能にする無人運転技術MSD(Momenta Self Driving)を正式にリリースしている。

2019年6月にオランダの車載半導体大手NXPセミコンダクターズとドライバー・モニタリング・システムの開発・製品化で提携を交わしており、今後、自動車メーカーやティア1サプライヤーなどとの協業が進めば、ソフトウェア分野で大きな躍進を遂げる可能性を秘めている。

Pony.ai:米国でロボタクシーのライドシェアサービス実施へ

北京と広州、そして米シリコンバレーにそれぞれ拠点を持つPony.ai(小馬智行)。2016年の設立後、2017年にカリフォルニア州、2018年に北京市でそれぞれ自動運転の公道実証許可を取得し、総走行距離はトップクラスに至っている。

広州で2018年から「PonyPilot」名義のプロジェクトで配車サービスの実用実証を進めているほか、2019年11月には、韓国ヒュンダイとカリフォルニア州の公道で自動運転タクシー(ロボタクシー)のライドシェアサービス「BotRide」の開始も発表している。

2019年8月にはトヨタと自動運転分野の開発で協業することも発表されており、世界的に注目度が高まっている一社だ。

Neolix Technologies:無人配送車量産 中東EC大手と提携

2015年設立のNeolix Technologies(新石器慧通科技)は、配送を担う物流分野で自動運転レベル4の自動運転車の量産をすでに開始している。

常州にレベル4車両の製造工場を建設しており、年間生産能力は1万ユニットを超えるという。2019年6月の発表時点で年内に1000台の車両が納入される予定としていたが、同年7月に中東のEC大手noon.comとパートナーシップ提携を結び、無人配送車両を試用することが発表されている。

その後、5000台の注文を受けたとする報道も流れており、無人配送車の開発で先行する米国勢に追いつき、かつ追い抜く可能性もありそうだ。

【参考】Neolixについては「レベル4級の自動運転物流ロボ、中国Neolix社が大量生産へ」も参照。

PerceptIn:自動運転マイクロモビリティ事業化へ

ロボット開発や安価な自動走行ソリューションの開発を手掛けるPerceptIn。2016年に米国シリコンバレーで創業し、現在は香港に本社を構えている。

自動運転マイクロモビリティの開発も進めており、2019年8月に日本法人を設立し、日本国内での事業化にも取り組んでいる。これまでに、福岡県福岡市や奈良県奈良市などで実証を行っている。

2020年1月には、SBドライブが協業を発表している。低速走行が前提のマイクロモビリティは導入しやすさが大きなウリで、その後の自動運転タクシーやバス実現に向けたきっかけにもなり得る。今後の展開に要注目だ。

SenseTime:高度な画像解析・認識技術で躍進

画像解析・認識技術を武器とする2014年設立のベンチャーで、香港を拠点に世界で活躍している。自動運転分野でも注目度が高く、同社の日本法人がホンダと自動運転技術の確立などを目的に長期共同開発を行う契約を2017年に締結している。

茨城県常総市に旧自動車教習所を改修したテストコース「AI・自動運転パーク」を造成したほか、顔認証技術やリアルタイム物体検知技術などをスマートシティ構築に生かすなど事業の多角化を進めており、今後さらなる飛躍を遂げる可能性が高い一社だ。

Haylion Technologies:スマート交通システムと自動運転EVバス開発

Haylion Technologies(海梁科技)は、深センに本拠を構える2016年設立のスタートアップで、自動運転EVバスの開発を主力としている。

2017年12月に深セン市の国有企業・巴士集団と共同で自動運転バス「AlphaBa」の公道走行試験に着手したほか、2018年2月には、独フォルクスワーゲングループの商用車ブランドであるスウェーデンのスカニアと、自動運転EVバスの共同研究で合意している。

自動運転技術とスマート公共交通システムを活用したシステムの構築を進めており、深セン以外にも湖北省の武漢市からも自動運転サービスの商用ライセンスを受けている。

Singulato Motors:トヨタやオンキヨーと提携

EV開発などを手掛けるSingulato(智車優行科技/奇点汽車)は2014年に北京で設立された。2016年に最初のモデルとなるSUVを発表後、2018年には量産体制を整えている。

日本との馴染みも深く、創業者の沈海寅(シェン・ハイイン)氏は検索サービスのJWordやKINGSOFTの設立など日本を拠点に活躍していた経歴を持つ人物だ。

2019年には、トヨタとEV技術の提供で手を組んだほか、オンキヨーともAI向け音声の取得技術で技術提携を交わしている。

自動運転技術の開発も進めており、今後の展開に注目が集まりそうだ。

■躍進際立つWeRide

中国を本拠に活躍するスタートアップを紹介した。AutoXやPony.aiなど自動運転タクシーの実用化を目指す企業の勢いはとどまるところを知らないが、最注目はやはりWeRideだ。

同社がシリコンバレーで産声を上げたのは2017年4月で、広州に本社を構えたのが2017年12月。それから3年足らずという短い期間でこの段階にたどり着いた実力は底知れない。

WeRideの沿革

同社は、元バイドゥ(百度)のエンジニアWang Jin氏が立ち上げた「Jingchi.ai」を前身としている。Wang氏がCEOを務めていたが、バイドゥから機密情報漏洩の疑いをかけられて辞任した。その後訴訟は取り下げられ、Jingchi.aiは社名をWeRide.aiに変更した。現在のCEOは共同設立者のTony Han氏で、彼もまたバイドゥで主任研究員を務めた経歴を持っている。

設立から81日目の2017年6月に初めての公道走行試験を終えるなど当初から圧倒的なスピード感を持っており、中国の本拠を移した翌月の2018年1月には広州で自動運転車の試験運転に着手している。

2018年8月に遠隔制御システムの試運転を米中両方で開始。同年9月には、ChinaUnicomとの戦略的パートナーシップに基づき、無人車両の遠隔制御に5Gネットワークを中国で初めて適用した。

同年10月に、ルノー・日産・三菱の「アライアンス・ベンチャーズ」からの戦略的投資によって資金調達シリーズAラウンドを完了し、3000万ドル(約34億円)を調達した。

同年11月には、広州公共交通グループが運営する広州公交集団白雲公司(Baiyun Taxi)、及び自動車メーカーの広州汽車集団と提携し、広州でロボタクシーの試運転を開始した。これまでに、総走行距離80万キロ、デモ体験者は1万人を超えている。

2019年6月、広州における公道試験用の自動運転ライセンス24枚のうち20枚の交付を受けたと発表。同年8月には、Baiyun TaxiとSCI Group(広州科学城投資集団)と共同でジョイントベンチャー「WeRide RoboTaxi」を設立したと発表した。

同年11月に広州でRoboTaxiのパイロットプログラムに着手。車両には日産のEVリーフを改造したものを使用し、黄浦区と開発区の約145平方キロメートルをエリアに自動運転タクシーサービスを展開している。

現在はセーフティドライバー同乗のもと運行しているが、2020年中には一部エリアでセーフティドライバーなしの運行を実現する構えのようだ。

同年12月には、自動運転インテグレーションキット「WeRide Smart Suite 3.0」の発売を発表した。従来トランクルームに積み込んでいたコンピュータ・ユニットをルーフに搭載した自動運転タクシー向けのシステムで、米NVIDIAが共同開発に携わっている。

【参考】RoboTaxiのパイロットプログラムのについては「車両は日産EV!中国の大都市圏で初の自動運転タクシー実証」も参照。

戦略が事業のスピード感を裏打ちする

このWeRideのスピード感は、開発能力だけでは達成できないものだ。自動運転タクシーの実現には、実証に絡む政府の許可や多額の資金、自動車メーカーら車体の製造を手掛ける企業、タクシー事業者らサービスプロバイダーの協力が必要となる。

WeRideは、これらの課題を実に見事にクリアしているのだ。特にルノー・日産・三菱アライアンスとの縁が大きい。自動車メーカー大手は、米GMやホンダがCruise、米フォードや独フォルクスワーゲンがArgoAI、トヨタがUberやGrab……といった感じで、自動運転を開発するスタートアップやサービスプロバイダーとの連携を密にし、囲い込むかのようにグループ化を図っている。

このような業界情勢において、同アライアンスは残された最後の砦ともいうべき存在だ。GM傘下で開発を進めるCruiseのような立ち位置を確保しつつ、米Waymoのように主導権を発揮して自動運転サービス事業を展開することもできる。また、アライアンス側にとっても、外国企業の規制が厳しい中国市場への窓口としての役割にも大きな期待を寄せることができそうだ。

米国、中国を中心に自動運転タクシーサービスが次々と立ち上がることが予想される2020年。その先陣争いの中心としても目が離せない一社だ。

■【まとめ】自動運転タクシーサービス5社が激戦 ウェイモを猛追

中国では、今回紹介したWeRide、AutoX、Pony.aiの3社に加え、配車サービス大手でもはやスタートアップの域を超えたDiDi(滴滴出行)、インターネットサービス大手の百度などが自動運転タクシーサービスを計画している。いずれも強力な開発能力やバックボーンなどを有しており、北京や上海、広州、深センなどの主要都市を舞台に激戦を繰り広げる日もそう遠くなさそうだ。

米国に拠点を置くスタートアップも多いため、自国内のサービス展開とともに積極的に海外進出を図る可能性もある。ウェイモの独壇場となっている自動運転タクシー分野で、同社に「待った」をかけるのは果たしてどの企業か。要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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