完全網羅!全世界のCASE系ユニコーン16社まとめ コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化

総企業価値は1267億ドル、米中中心に評価額高騰

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出典:メルセデスベンツ公式ウェブサイト

スタートアップやテクノロジー企業などの情報を分析する米調査会社CBインサイツのユニコーンリストが非常に興味深い。未上場で時価総額10億ドルを超えるユニコーン企業が網羅されているのだ。

その総数は2019年9月1日時点で394社に上り、累計評価額は1兆2180億ドルに達する。AI(人工知能)開発やフィンテックなど幅広い企業がリスト化されているが、自動運転領域に関わる企業も当然多く、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)という次世代モビリティ業界を象徴する有力スタートアップが目白押しだ。

今回は、リストの中から、CASEに関する企業をピックアップし、評価額とともに紹介していく。

■【中国】Didi Chuxing(560億ドル)

2012年創業の「Xiaoju Technology(小桔科技)」を起源とする配車サービス大手のDidi Chuxing(滴滴出行/ディディチューシン)は、わずか数年でユニコーンを飛び越え、時価総額100億ドル超の企業が対象となる「デカコーン企業」入りを果たしている。

主な投資家として、中国のアリババグループや米Appleなどが名を連ねるほか、ソフトバンクが2016年から継続的に出資している。

トヨタ自動車も2018年1月にe-Paletteにおける協業をDiDiと結んでおり、2019年7月にはライドシェアドライバー向けの車両関連サービスを展開する合弁会社を広汽トヨタ自動車有限会社(GTMC)とともに設立し、DiDiと合弁会社に計6億ドル出資すると発表している。

本業の配車サービスでは、ライドシェアを中心に世界1000都市以上で年間100億回以上利用されている。日本国内ではタクシー配車サービスに専念しており、2018年9月の大阪エリアを皮切りに提供エリアを次々と拡大している。2019年9月時点で11エリアまで広げており、年度内に13エリアの展開を目指している。

自動運転開発においては、2016年に自動運転部門を立ち上げ研究開発を進めていたが、2019年8月に自動運転に特化した新会社の設立を発表した。報道などによれば、自動車メーカーや技術開発企業との共同研究や開発、自動運転ビジネスの立ち上げなどを柱に据える。他社との協業とともに開発を加速させていく構えのようだ。

開発の水準・完成度などに関する情報はあまり出回っていないが、2019年8月に上海市内で自動運転タクシーの運用を数カ月以内に開始する計画について報じられていることから、同社の自動運転開発は実用化域に達している可能性が高そうだ。

【参考】DiDiについては「中国DiDiの自動運転戦略まとめ トヨタ・ソフトバンクと蜜月関係?」も参照。DiDiの自動運転タクシー事業については「中国の自動運転タクシー、初実現は「滴滴」か「百度」か」も参照。

■【シンガポール】Grab(143億ドル)

2012年創業で、現在東南アジア8カ国で配車サービスを展開するGrab(グラブ)。ライドシェアのほかオートバイ向けのシェアサービスや相乗りサービス、配送サービスなどを手掛けている。

2014年にソフトバンクから2億5000万ドルの出資を受けたほか、翌2015年にはDiDiなどから3億5000万ドルのの資金を調達。2016年には、ソフトバンクやホンダからも出資を受けている。

2017年には、トヨタ自動車などと東南アジア地域における配車サービス領域で協業を発表した。Grabのドライバー向けレンタカーサービス車両へのテレマティクス保険をはじめ、ドライバー向け金融サービス、データ連動したトヨタディーラーの保守メンテナンスなど、各種コネクティッドサービスの提供を視野に通信型ドライブレコーダーを搭載し、車両データの収集・分析を開始した。

両社はまた、2018年6月にMaaS(Mobility as a Service)領域の協業深化に合意するとともに、いっそうの関係強化のためトヨタがGrabに10億ドル出資することを発表している。

2018年3月には、米配車サービス大手Uber(ウーバー)の東南アジアの事業を買収し、同地域における地位を確固たるものにした。

自動運転関連では、2017年に自動運転開発を手掛ける米スタートアップのDrive.aiと提携し、自動運転タクシーの導入に本格着手。2018年には、東南アジアの次世代技術リーダーの発見と育成を目指す「Grab Ventures」を立ち上げ、スタートアップの支援にも力を入れている。

一部報道によると、遅くとも2022年までに自動運転タクシーの商用化を実現するという。

■【インドネシア】Go-Jek(100億ドル)

インドネシアで2010年に創業した配車サービススタートアップのGo-Jek(ゴジェック)。都市部において渋滞が慢性化している同国では、二輪車を活用したバイクタクシー「Ojek(オジェック)」が人気で、このオジェックを有効活用しようと配車サービス事業に着手した。

書類をバイクで配送する宅配便サービスや飲食デリバリー、買い物代行など次々とサービスを拡大。各種サービスの決済を行うための決済サービス「GO-PAY」も行っている。

2018年以降、ベトナムやシンガポールに進出したほか、タイやフィリピンへの進出も模索するなど拡大路線をたどっている。

■【アメリカ】Argo AI(70億ドル)

米グーグルやウーバーなどで自動運転開発を手掛けていたエンジニアが2016年11月に設立したスタートアップ。AI技術や高度なマッピング技術をもとに自動運転開発を進めている。

2017年2月、米自動車大手のフォードが5年間で計10億ドルの出資を行うことを発表し、フォードの傘下に入った。以後、フォードと独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)が提携を深め、2019年7月に自動運転と電気自動車(EV)の領域における提携拡大が発表されると、VWからも26億ドルが出資され、フォードとVWの出資保有率は対等になっている。

技術面では、2019年6月に自動運転向けの高精度マップを研究機関に無償提供すると発表するなど、表舞台に立つ機会が増えてきた。今後、フォードとVWの下、どのような位置付けでどのような開発を担っていくのか、注目が集まる一社だ。

■【インド】Ola Cabs(62億ドル)

2010年に設立された、インドに拠点を置く配車サービスを手掛けるスタートアップ。アプリ名の「Ola Cabs」が通称となっているが、運営企業の正式名称は「ANI Technologies」だ。

設立当初は三輪タクシーの配車を行っていたが、自動車やバイクなど対象サービスを広げているほか、コネクテッドサービス「Ola Play」なども手掛けている。2018年には、オーストラリアへの進出も果たした。

主要株主はソフトバンクで、2014年のシリーズDラウンド以来4度に渡り出資を受けているようだ。DiDi、Grab、Lyftの配車サービス各社をはじめ、ソフトバンク、スズキ自動車などと提携している。インド国内では、ライバルのウーバーとしのぎを削っている。

■【中国】Hello Bike(50億ドル)

サイクルシェアリングの人気高騰とともに中国で頭角を現したスタートアップのHello TransTech(哈囉出行)。アリババ系の金融会社などから出資を受けている。

モバイク、ofoら同業大手が激しい競争の末、買収や経営不振に陥るなど共倒れる中、台頭してきた。保証金不要など他社と異なる料金携帯が受けているようだ。

■【中国】SenseTime(45億ドル)

自撮りアプリ「SNOW」の開発などで日本でも知られるSenseTime(商湯科技開発)。2014年の設立以後、ディープラーニングを応用した優れたAI顔認識技術を得意分野としており、自動運転における歩行者や車両の検出においても注目が高まっている。

2016年に日本法人を立ち上げ、2017年10月からはホンダと自動運転アルゴリズムの共同研究を進めている。歩行者の検出では、性別や年代、鞄携帯の有無まで識別できる。また、自動車では車種や色などの属性を認識する機能も搭載しているという。

【参考】SenseTimeについては「中国センスタイム、自動運転向けのセンシング技術を紹介」も参照。

■【中国】XPeng(36.5億ドル)

中国の「テスラ」との異名を持つ2014年創業のEV開発スタートアップ。Xiaopeng Motors(小鵬汽車)とも呼ばれている。

米ラスベガスで開催されたCES2018で第1弾となる量産モデル「G3」を発表し、同年中に発売した。第2弾となるクーペは2020年の発売を目指している。

2019年には、広州で配車サービスもスタートしたようだ。

■【中国】Youxia Motors(33.5億ドル)

Youxia Motors(游侠汽車)は、2014年設立の中国EVスタートアップ。2015年に北京でコンセプトモデル「X」を発表し、2017年に量産化に向けたスマート工場の建設を開始した。年間生産能力は20万台という。

■【アメリカ】Zoox(32億ドル)

自動運転タクシーの開発を進める2014年創業の有力スタートアップ。自動運転EVタクシーを2020年ごろまでに開発することを目標に掲げ、資金調達と開発力の強化を進めていたが、2018年8月にCEO(最高経営責任者)が電撃解任され、話題となった。

2018年12月には、カリフォルニア州で自動運転車両を利用した客輸送サービス試験の許可が下り、新CEOのもと、当初の計画通り2020年の商用サービス実施を目指している。

■【中国】Horizon Robotics(30億ドル)

ディープラーニングに基づく中国初のAI研究開発組織「Baidu IDL」を設立したKai Yu氏が2015年に創業したAI開発スタートアップ。

2019年7月に、コネクテッドカー通信ソリューションのプロバイダーである中国のGosuncnテクノロジーグループとADAS(先進運転支援システム)やDMS(運転手行動監視システム)、AIコックピットなどに関するマーケティング、AI技術を活用した製品開発などを共同で進めていく戦略的提携を結んでいる。

■【アメリカ】Nuro(27億ドル)

自動運転配送車を開発する2016年設立のスタートアップ。同社が開発した公道を走行する配送ロボは実用化域に達しており、2018年8月にスーパーマーケット大手米Kroger(クローガー)と宅配のパイロットプロジェクトに着手したほか、2019年6月には、ビザ宅配大手の米ドミノ・ピザと手を組み、ピザの無人配達事業をスタートしている。

2019年2月には、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)から約9億ドル(約100億円)の資金調達を行ったことが発表されており、量産化・サービス拡充に向けた動きが本格化しそうだ。

■【アメリカ】Aurora Innovation(25億ドル)

グーグルやテスラ、ウーバーでそれぞれ自動運転開発に携わってきたエンジニアらが2016年に共同創業したスタートアップで、業界における注目度は非常に高い。2019年2月には、米アマゾンなどから巨額の出資を受けている。

2019年5月には、LiDAR開発を手掛ける米スタートアップのblackmore(ブラックモア)を買収した。また、同年6月には、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と商用車の開発で協業する覚書を結んだ。オーロラが自動運転ソフトウェアやセンサー、データサービスなどに関する技術を提供するものとみられる。

【参考】Aurora Innovationについては「FCA、商用車開発で自動運転スタートアップの米オーロラと協業」も参照。

■【日本】Preferred Networks(20億ドル)

2014年に設立され、東京都千代田区に本社を構える日本のスタートアップ。自動運転関連では唯一の国内ユニコーン企業だ。ディープラーニングやロボティクス技術をビジネス分野に導入することでさまざまな分野におけるイノベーションの実現を目指しており、研究開発を支えるソフトウェアフレームワーク開発からアルゴリズム、ハードウェア、これらを生かした多数のプロジェクトを同時進行している。

自動運転分野では、物体認識技術や車両情報解析などを2014年からトヨタと共同で研究開発しており、トヨタから出資も受けている。

■【中国】Pony.ai(17億ドル)

中国と米国に拠点を構える自動運転スタートアップ「Pony.ai(小馬智行)」。2016年に中国のインターネット検索大手・百度の技術者が創業した。

自動運転タクシーの開発を進めており、2018年末に中国で初となる自動運転タクシーの実証実験を始めた。2019年末にも自動運転レベル4の商用化を目指すこととしている。

2019年8月には、トヨタと自動運転技術の開発などで協業することが発表されており、今後の動向に注目が集まっている。

■【フランス】BlaBlaCar(16億ドル)

フランスを拠点にライドシェア(相乗り)サービスを展開するスタートアップ。長距離に特化したカープール型のライドシェアで、国をまたいだ移動時などに安価で気軽に利用できるため、欧州では人気のようだ。

■【まとめ】ユニコーンリストで業界動向を把握 新技術やサービスが近未来のスタンダードに

以上、16社をピックアップしたが、このほかにもMOMENTA(中国・10億ドル)やTuSimple(米・10億ドル)など自動運転関連企業は多く存在している。また、開発速度が非常に速い分野のため、わずか1~2年で大きく評価を積み上げ、ユニコーン入りを果たす企業もどんどん登場するだろう。

将来的な上場や大手資本による買収・提携などの動向も気になるが、今まさに旬を迎えようとしている企業群がこのユニコーンリストだ。近未来を見通すうえで重要となる新技術・サービス情報の「宝庫」と言えるだろう。

自動運転分野において、どのような技術開発やサービスが評価されているのか。その回答となるユニコーンリストを見通すことで、近い将来の業界動向をしっかり把握しておこう。

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