
配車サービス大手Uber Technologiesを率いるダラ・コスロシャヒCEOがブルームバーグテレビジョンのインタビューにおいて、自動運転戦略に言及したようだ。自動運転タクシー市場は将来少なくとも1兆ドル(約155兆円)に達するとし、同技術の導入に意欲を示した。
自動運転ラボも早くから自動運転市場の肥大化に注目してきたが、いよいよ巨大市場への道が現実味を帯びてきた印象だ。
開発フェーズはまだまだ続くが、Uber Technologiesをはじめとするプラットフォーマーなどサービス提供側の注目度が高まり始めてきたことは、新たな時代の到来を予感させる。
Uber Technologiesの取り組みとともに、自動運転市場の行方に迫る。(記事監修:自動運転ビジネス専門家 下山哲平)
記事の目次
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■コスロシャヒ氏の発言概要
自動運転タクシー市場で主導的地位を築くことを目指す
コスロシャヒ氏はインタビューで、自動運転タクシー市場は少なくとも1兆ドル規模に達すると見込まれ、自社はこの業界で主導的な地位を築くことを目指していることを明かした。
2026年末までに10余りの市場で自動運転タクシーサービスを展開する見通しで、香港や日本も新たな展開候補地に含まれることにも言及したようだ。
また、「我々は重要な大都市や市場で自動運転技術へのアクセスを得る強い自信がある」と自動運転サービス市場での覇権に強い意欲と自信を示した。
同氏は、2024年第4四半期 決算発表においても、米国で自動運転が生み出すビジネスチャンスは1兆ドル以上と語っている。これを踏まえると、インタビューにおける1兆ドルというのも「米国市場のみ」を念頭にした数字かもしれない。世界展開を踏まえれば、その市場はさらに拡大することは間違いないが、現状予測しきれない面があるのかもしれない。
リサーチ企業各社が予測を発表
自動運転市場の将来に関しては、これまでにもさまざまな調査会社らが予測を発表している。米インテルとリサーチ企業Strategy Analyticsが2017年7月に取りまとめたレポートでは、自動運転車の実用化・普及で新たに創出される市場は2035年に8,000億ドル(約90兆円)、2050年に7兆ドル(約800兆円)に上ると試算されている。自動運転技術により、移動時間などに新たな価値が生まれるなど、波及ビジネスを含めた数字だ。
民間市場調査会社SNS Insiderの予測では、自動運転タクシーの市場規模は2030年までに986億ドル(約14兆8,000億円)に達するとしている。CAGR(年平均成長率)は2023〜2030年にかけて65%で成長するという。
投資運用会社の米ARK Investのレポートでは、自動運転タクシー市場は2030年までに世界全体のGDP(国内総生産)を年間26兆ドル(約3,600兆円)押し上げると推測されている。
自動運転タクシーによる収益と移動時間の短縮に伴う生産性の向上により、世界のGDPが年間30兆ドル増加する。その一方、ガソリン車の販売台数の減少や、燃料費やメンテナンス費用の減少により、GDPを年間4兆ドル押し下げ、差し引きで年間26兆ドルGDPを押し上げるというものだ。
自動運転ラボも早くから自動運転市場の未来に注目してきたが、数字の桁が余りも大きいため、霞をつかむような感じでなかなか実感を得られなかった。しかし、自動運転タクシーの世界展開に着手したUber Technologiesを率いるコスロシャヒ氏の発言とあらば信憑性が増し、巨大市場化がリアリティを増してくる。
1兆ドル市場になるにはまだまだ時間を要するのも確かだが、すでに動き出しているUber Technologiesはどのような戦略で自動運転市場を手中に収めていくのか。以下、同社の戦略と最新動向を解説していく。
【参考】関連記事としては「自動運転車の市場調査・社会受容性のレポート一覧」も参照。
■Uber Technologiesの取り組み
サービス展開で自動運転ビジネスの覇権をとる
Uber Technologiesは過去、自動運転技術の自社開発を推進しており、公道実証も積極展開していた。ライドシェアで名を馳せた同社だが、早期から自動運転サービスに注目していたことがわかる。ただ、実証中に起こした死亡事故をきっかけに取り組みは停滞し、最終的に開発部門はAurora Innovationに売却された。
2019年に株式上場を果たしたものの本業の赤字は続いており、資金面の観点からも自動運転開発の負担は大きかったものと思われる。
その後は、自動運転開発各社とのパートナーシップに力を入れており、資本関係のあるAurora Innovationをはじめ、WaymoやAvrideなどその数は20社を超えるという。詳細は後述するが、配車プラットフォーマーの強みを生かし、サービス展開面で自動運転ビジネスの覇権をとる戦略だ。
決算発表でCEOが自社の強みを説明
自動運転タクシーにおける配車プラットフォーマーの強みについて、2024年第4四半期 決算発表でコスロシャヒ氏が詳細を語っている。
同氏は「2024年は業界にとって転換点となった。自動運転技術が成熟し始め、より多くの人々が初めて自動運転車を体験した。Waymo、WeRide、Pony、Baiduなど複数の自動運転開発企業が現在ジオフェンスで囲まれたエリアで完全自動運転の乗車サービスを提供している。Avride、Mobileye、Nuro、Tesla、Zooxなど、他にも多くの企業が今後数四半期、あるいは数年のうちにこのマイルストーンを達成する可能性がある」と業界の展望に触れた。
続けて「投資家たちは自動運転がUberにとってリスクとなるのか、それとも大きなチャンスとなるのかを議論している。我々は、自動運転技術開発者や自動車OEM、そしてエコシステム内の他の専門家や技術者と深く関わってきた。その結果、Uberは自動運転が米国だけで生み出す1兆ドル以上のビジネスチャンスを捉える独自の立場にあるとこれまで以上に確信している」と自信をのぞかせた。
その上で、自動運転技術は進歩しているものの商用化には相当の時間がかかり、市場投入に必須の要素として、①優れた安全性②有効な規制③費用対効果の高い拡張可能なハードウェアプラットフォーム④優れた現場運用⑤変動する需要と柔軟な供給に対応できる高稼働率のネットワーク――を挙げた。これら5つの要素がすべて連携して機能する必要があるという。
①は、重大な安全インシデントは業界全体の後退につながる可能性が高いため、安全性は絶対に必要不可欠――という視点だ。説明するまでもないところだが、Uber Technologies自身が死亡事故で痛い目を見ており、業界の信頼性を揺るがした。
有力視されていたGM系Cruiseも、人身事故をきっかけに事業停止に陥った。安全性をないがしろにし、対応を見誤ると坂を転げ落ちるように転落し、さらには業界全体のイメージにも影を落とす……ということだ。
コスロシャヒ氏は「より多くの企業が市場に参入するにつれ、社会の監視は強化され、複数の技術プラットフォームと異なる安全対策が採用されることでリスクは飛躍的に増大する。自動運転が信頼を得るためには、人間のドライバーよりも桁違いに安全である必要がある」としている。
②の規制についても言うまでもないことだが、米国では州ごとに規制が異なるのが現状で、米国以外では多くが規制の枠組みを策定中で、少数の管轄区域でしか有効な規制が整備されていないとしている。
【参考】関連記事「Uberの自動運転車、「ながらスマホ」での死亡事故で有罪判決」も参照。
現地オペレーションや需要変化に対応可能なプラットフォームが必須に
そして③からがUber Technologiesの強みだ。ほとんどの自動運転開発事業者が安全確保に必要なセンサーキットを従来型車両に後付けしており、1台あたり20万ドル以上のコストがかかるなど非常に高価となっている。
段階的な普及を促進するには安全性を損なうことなくコストを大幅に削減する必要があるが、OEMの生産能力は現時点では商用化のボトルネックとなっている。将来的にはすべての新車がレベル4対応ソフトウェアを搭載して販売されるようになると考えており、その際は車両の供給はUberの高稼働率ネットワークへと向かうとしている。
おそらく、完全な自動運転時代が到来すれば、自家用車から無人移動サービスへのシフトが強まることを示唆しているものと思われる。その際、配車プラットフォーマーの存在が必須となるということだ。
④は、商業化を成功させるには大規模かつ効率的な現地オペレーションが不可欠――という観点だ。これはUber Technologiesの専門分野だ。
同社によると、自動運転車の平均利用率は年間10万マイルに達するのに対し、一般的な消費者向け車両は年間1万~1万5千マイルしか走行しないという。
自動運転車は1日あたり複数回の充電と毎月のメンテナンスが必要で、定期的な清掃と駐車場の確保も必要となるが、Uberはこれらすべてを独自の方法で管理可能としている。また、運賃に関する紛争や遺失物返却、立ち往生車両の救出、保険金請求の解決など、多くの運用上の問題にも対応できる経験を有している。
Uber Technologiesは商業化に不可欠な市場開拓能力のあらゆる側面において他社を上回っており、パートナー企業に最も低い運用コストを提供できるとしている。
⑤は、需要変動への対応についてだ。ライドシェア(タクシー)需要は日、週、月、年を通して大きなピークと谷を描く。ピークに合わせてフリートを構築すると、その後最大95%の車両がアイドル状態となる時間帯が発生する。逆にフリートが小さ過ぎると、4分以内の到着予定時刻を提供できなくなるという。
こうしたジレンマは、単独のプラットフォームでフリート展開するより、人間のドライバーを含むさまざまな企業が参加するUber Technologiesのプラットフォームを利用した方が効率的で解決しやすい……という考え方だ。
自社単独サービスでは需給変化に対応しづらく、その評価も自社にそのまま降りかかってくるが、他社と共同する形のUber Technologiesの配車サービスであれば、需給変化の影響は小さくなる。
これらを根拠に、Uber Technologiesは自動運転タクシーの展開で優位性を発揮し、世界各地で無人移動サービスをビジネス化していくということだ。
【参考】関連記事「自動運転の機会潜在性「米国だけで1兆ドル以上」 Uber CEOが発言」も参照。
20超の開発企業とパートナーシップ
Uber Technologiesの優位性は、Waymoがパートナーシップを結んだことが何よりの証左となる。自動運転タクシーのパイオニアであるWaymoは、自社サービス「Waymo One」として自動運転タクシーサービスを展開しているが、本格的な多都市展開を迎え始める2023年、Uber Technologiesと手を組んだ。
フェニックスのサービスをはじめ、新規エリアとなるオースティンやアトランタでUber Technologiesの配車アプリを採用しており、おそらく今後の進出エリアでもUber Technologiesを利用するものと思われる。
当初はもの珍しい独自サービスとして成立していたが、自社フリートのみで需給の変化に対応するのは困難であり、新規顧客の獲得にもコストがかかる。すでに多くの利用者を有するUber Technologiesと統合することで、こうした問題を解決できると判断したのかもしれない。
Uber Technologiesはこのほか、Aurora Innovation、Nuro、Motional、Avride、Waabi、May Mobilityなどとパートナーシップを結んでいる。米国外では、WeRide、百度、Pony.ai、Momenta、Wayveなどとの提携が確認されている。その数は20超と言われており、有力企業の大半を抑えた格好だ。
NVIDIAとの最新のパートナーシップでは、レベル4に対応したNVIDIA DRIVE AGX Hyperion搭載車両による世界規模の配車サービス ネットワーク構築を進めていく方針で、StellantisやLucid、メルセデス・ベンツがHyperion 10 対応のレベル4開発に協力していくという。
Uber Technologiesが10万台を目標に2027年からグローバルな自動運転サービスの拡張を開始し、NVIDIA Cosmos プラットフォーム上に構築された共同AIデータファクトリーを活用するとしている。
WaymoやWeRideを筆頭にグローバル展開が加速し始めているが、この動きは今後数年で顕在化し、本格的な自動運転時代が世界各地で幕を開けるのかもしれない。自動運転の巨大市場化を誰もが予感できる時代がまもなく到来することになりそうだ。
■【まとめ】配車プラットフォーマーの注目が高まるフェーズに
他陣営としては、テスラが独自の動きを見せているほか、Uber TechnologiesのライバルであるLyftはMobileyeやTensor(旧AutoX)などとパートナーシップを結んでいる。
現状、開発各社の技術力に注目が集まっているが、一定段階を過ぎれば技術力そのものは個性を失い、サービス面への注目度が高まっていく。その際に浮上するのが配車プラットフォーマーだ。
プラットフォーマー間における自動運転サービス競争が過熱すれば、自動運転市場の輪郭が次第に鮮明となり、巨大市場化に向けたビジョンを誰もが共有できるようになる。そのフェーズは、意外と早く訪れるのかもしれない。
【参考】関連記事としては「日本の自動運転市場、2033年に3.5兆円規模!「高齢化」が追い風」も参照。












