Uberの自動運転車、「ながらスマホ」での死亡事故で有罪判決

2018年5月、実証実験中に発生



事故現場と事故を起こしたウーバーの自動運転車の事故後の写真=出典:米運輸安全委員会

ライドシェア大手のUber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)の自動運転車が2018年3月に米アリゾナ州で起こした死亡事故。この事故において、監視・補助を担当するテストドライバーに対する判決が、2023年8月3日までに下された。

米メディアの報道によれば、テストドライバーは危険行為についての罪を認め、3年間の監視付き保護観察処分が言い渡されたという。この判決は、自動運転車が関与した初の死亡事故に対するものとして、大きな注目を集めていた。


ちなみにUberは死亡事故後、2週間も経たないうちに遺族と和解し、企業としては刑事責任を問われていない。

■自動運転車による初の死亡事故

2018年3月、Uberの自動運転車がアリゾナ州マリコパ郡東部のテンピを走行中に、自転車を押して道路を横断中の49歳の歩行者をはねて死亡させた。

捜査当局の調査によると、事故が起きた際に自動運転車に乗っていたセーフティドライバー(テストドライバー)のRafaela Vasquez被告はスマートフォンでテレビ番組を観ており、周囲の状況監視を怠っていたことが事故の要因とされ、過失致死罪で訴追された。さらに、この車両の自動ブレーキ機能がオフになっていたことも明らかになっている。

Uberの自動運転車に同乗するセーフティドライバーは、クルマの機能を監視し、自動運転システムにトラブルが起きた際には手動運転に切り替えるなど、介入することが必要であったが、Vasquez被告はその義務を怠っていたということになる。


今回の事故は、自動運転システムに起因するものではなく、完全なヒューマンエラーにより起こってしまった事故と言える。

■判決は「3年間の監視付き保護観察」

国家運輸安全委員会が2019年に行った調査では、Vasquez被告は走行の3分の1以上で道路から目をそらしていたことが判明している。同委員会は、セーフティドライバーが周囲の状況に注意していれば事故は回避可能だったと結論づけた。

また調査によると、Uberの自動運転ソフトウェアは横断歩道の外にいる歩行者が、道路を横断している可能性を想定して設計されていないという。Uberの安全管理が不適切であったことも事故の一因になっていると指摘した。

そしてこのほどマリコパ郡の裁判所は、Vasquez被告に対して危険運転致死罪を適用し、3年間の監視付き保護観察を言い渡した。ちなみに、被告は当初、過失致死罪で起訴された際、無罪を主張していたようだ。

■実証を行う企業側に注意を促す判決

報道によると、同郡裁判所のRachel Mitchell検事は「この事件で適切な司法取引を決定するには、多数の要素を考慮する必要があった。我々は緩和要因と悪化要因に基づき、適切な量刑を命じたと信じている」とコメントしているという。

さらに「クルマのハンドルを握ることは重大を伴う。ドライバーがどのようなテクノロジーを利用できるかに関係なく、車外や車内の安全に注意を払うことは、常にドライバーにとっての最優先事項でなければならない」とも語っている。

今回の事故は自動運転技術というより、テストドライバーの過失が主原因ではあるが、自動運転技術の高度化に向けては、まだまだテストドライバーによる監視が必要なシーンは少なくない。今回の判決は、改めて実証実験を行う企業側に注意を促すものとなりそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転車の事故(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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