アメリカ×自動運転、最新動向まとめ

GM・フォードをはじめウェイモ、テスラ、ウーバーなどの動向を網羅





かつて自動車大国として名を馳せたアメリカが、自動運転の波に乗って息を吹き返している。ウェイモの自動運転タクシーを筆頭に、自動運転業界の主導権争いをリードするポジションが続いている。







アメリカの強みとは何か。自動運転に関する規制や企業の最新動向などから、その謎を紐解いていこう。

■アメリカにおける自動運転関連の法令・条例など

アメリカの法制度は「連邦法」と「州法」から構成されており、それぞれ独自の効力を有している。自動運転分野に関しては州法による規制の部分が大きく、各州によって満たすべき要件などにばらつきがあるのが現状だ。こうしたばらつきは開発や実用化の際にネックとなるため、連邦政府が一定の指針を示す必要がある。

米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は2016年9月、自動運転車向けの政策「Federal Automated Vehicle Policy」を発表し、自動運転レベル2以上の技術に対し自動車メーカーなどに15項目に係る情報提供を要請した。また、州政府の取り組みにも踏み込んだモデルポリシーの提示をはじめ、現行法に係る規制緩和手続きを明示し、将来の規制の在り方に係る論点を提示した。

2017年9月には、自動運転車の安全確保策を盛り込んだ連邦法「車両の進化における生命の安全確保と将来的な導入および調査に関する法律(SELF DRIVE Act)」が米国下院で法案可決された。「SELF DRIVE Act」には、自動車安全基準の見直しやメーカーに安全性評価証明書の提出義務付け安全性能を担保すること、各メーカーによるサイバーセキュリティに関する方針の策定、州の権限などが盛り込まれている。

なお、上院においては「SELF DRIVE Act」に変更を加えた法案「AV START Act」について議論されている。「AV START Act」では、サイバーセキュリティの脆弱性や情報開示の奨励、プライバシー保護対策の具体化、公道実証走行のために連邦自動車安全基準から免除される高度自動化車両の台数、消費者への情報提供の具体化、現行基準と高度自動化車両との不一致の解決、高度自動化車両データアクセス諮問委員会の設置などが盛り込まれている。

同法案は2019年10月時点において成立には至っていないものの、8月には上院の商業委員会と下院のエネルギー商業委員会が自動車メーカーら関連団体に要望書を送り、法整備に向けた意見の聴取を進めているようだ。

なお、2017年9月には、NHTSAが12項目の推奨ルールを規定した製造者向けのガイドラインの改訂版「自動運転システム2.0」、2018年10月には、自動運転政策やプログラム策定の指針となる6原則とその実行にあたっての5戦略を提示した「同3.0」を発表している。

6原則は、安全性の重視、技術中立性の維持、規制の見直し、一貫した規制・運用環境の奨励、自動化への積極対応、米国人が享受する自由の保護及び強化――で、これらを行動に移すための戦略として①自動化に起因する課題に対応するため、利害関係者及び一般市民と協働②利害関係者を支援するため、ベストプラクティス及び政策方針を提供③利害関係者及び標準検討機関と協力し、自主的技術基準を促進④将来の政策決定及び施行に情報を提供するために必要な、的を絞った技術研究の実施⑤自動運転車を陸上輸送システムへ統合する際に課題となり得る、既存の連邦規制及び基準の見直し――を挙げている。

■自動運転技術開発の主要な企業大手
GM:自動運転タクシー延期も業界内連携の構築を加速

自動車メーカーのGM(ゼネラル・モーターズ)は、2016年にスタートアップの米Cruise Automation(クルーズ・オートメーション)を買収し、自動運転開発を加速させている。

クルーズは、2013年の創業当初は自動ブレーキや車線維持などのオートパイロット機能を自動車に後付けするキットを開発していたが、無人運転の未来のビジョンを拡大するためGMと手を結び、完全自動運転車の開発に本腰を入れ始めた形だ。

クルーズは2015年からカリフォルニア州の公道で自動運転車の走行試験を行っており、買収後にはミシガン州の公道でも走行試験を開始している。

2018年5月には、ソフトバンクグループの投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」がクルーズに総額22億5000万ドル(約2400億円)の出資を行うことが発表されたほか、2018年10月には、GMとクルーズの自動運転開発にホンダが加わることも発表された。

ホンダはクルーズ向けの無人ライドシェアサービス専用車の共同開発を行い、無人ライドシェアサービス事業のグローバル展開の可能性も視野に入れる。クルーズへ7億5000万ドル(約850億円)出資するほか、今後12年に渡る事業資金約20億ドル(約2240億円)を支出する予定という。

2019年5月には、GMやSVF、ホンダからクルーズが11億5000万ドル(約1260億円)の追加出資を受けることも発表されている。2019年内のサービス開始を予定していた自動運転タクシーの実現に弾みをつけたものと思われたが、同年7月、安全性を高めることを理由に延期を発表している。新たなスタート時期については未定のようだ。

業界内連携では、2018年にブロックチェーン技術の活用を進めるコンソーシアム「AVDM(autonomous vehicle data markets)」を独BMWなどとともに設立。2019年10月には、ホンダやフォード、仏ルノーなど加盟各社とともにネットワーク上で車両識別を可能にするVID技術の実証実験開始について発表している。

2019年4月には、トヨタと米フォード、米自動車技術者協会(SAE)とともに自動運転車の安全基準作りを進める「自動運転車安全コンソーシアム(AVSC)」の設立が発表されたほか、同年10月には、ソフトバンクグループ傘下の英Arm(アーム)とトヨタ、デンソー、コンチネンタル、ボッシュ、NXP、エヌビディアなどとともに、自動運転車を実用化するために必要な技術や問題点について研究する「AVCC (Autonomous Vehicle Computing Consortium)」の設立も発表されるなど、近年は横の連携構築にも積極的だ。

【参考】自動運転タクシーのサービス延期については「GMクルーズ、「安全第一」で自動運転タクシーのサービス延期」も参照。

フォード:VWとの提携に注目 自動運転商用化はタクシーと宅配両にらみ

自動車大手のフォードは2015年にカリフォルニア州で自動運転走行試験の許可を取得し、パロアルトに研究センターを開設するなど研究開発を本格化。2016年には、自動運転レベル4を2021年までに実用化し、ライドシェアなどの配車サービス向けに供給することを発表したほか、モビリティサービス企業へと転換する計画も発表している。

開発をめぐっては、2016年8月にLiDAR開発大手の米ベロダイン社へ7500万ドル(約84億円)の出資を発表したほか、AI(人工知能)の機械学習やコンピュータービジョン開発を手掛けるイスラエルのスタートアップ・SAIPS社の買収、AIシステム開発を手掛ける米スタートアップのArgo AI(アルゴAI)社に5年間で10億ドル(約1130億円)の出資を発表するなど、どん欲に技術の吸収や連携を進めている。

2018年6月には、独フォルクス・ワーゲングループと戦略的提携に向けた各書に調印し、2019年1月に両社が技術や製品の相互供給を進め、2022年を目標に中型トラックを世界向けに、商用バンを欧州向けにそれぞれ販売する包括提携を結んだことを発表している。

同年7月には、自動運転と電気自動車の領域における提携を拡大することも発表しており、フォルクスワーゲンがアルゴAIに26億ドル(約2800億円)出資する形で合意している。大手自動車メーカー同士の緊密な連携に今後も注目だ。

実証実験では、2018年10月までに首都ワシントンで初となる自動運転の実証実験を開始することを発表している。宅配分野にも力を入れており、米小売サービス企業最大手のウォルマートなどと共同で自動運転車を使った商品の宅配実証実験などを進めている。

2019年9月には、テキサス州オースティンで自動運転技術を活用した商用サービスを2021年にも開始する計画を明らかにしている。自動運転タクシーと無人配送の両サービスの展開を視野に入れているとみられる。

【参考】フォードの自動運転商用サービスについては「米フォード、テキサス州オースティンでも将来自動運転サービス」も参照。

ウェイモ:アリゾナに続きカリフォルニアでも自動運転タクシーサービススタートか

2018年12月に米アリゾナ州フェニックスで自動運転タクシーの有料商用サービス「ウェイモワン」を開始し、自動運転サービスの道を切り開いた。オペレーター同乗のもと利用対象も限った状況でのサービスだが、字度運転業界にとって大きな第一歩になったと言えるだろう。

同社は2019年7月にもカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)から自動運転タクシーサービスに関する許可を受けており、次の展開にも注目が集まる。

2019年4月には、一般車両を自動運転化する工場をアメリカ国内で稼働させことを発表。提携先の欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)や英ジャガー・ランドローバー(JLR)から購入した車両を効率的に自動運転車とする見込みだ。

同年8月には、公道走行で取得したデータセットの無料開放を発表した。都心や郊外、晴天時や雨天時、日中や夜間といったさまざまな環境を走行したデータが含まれており、業界全体での自動運転技術の向上を図っていく構えだ。

連携面では、FCAなどのほか、2019年6月までに日産自動車・ルノーと無人モビリティサービスに関する独占契約を締結したと発表している。日本とフランスにおいて無人運転の乗客・配送向けサービスの提供を実現するため、3社でまず市場分析や共同調査を進めて可能性を探ることとしている。

【参考】カリフォルニア州における許可については「カリフォルニア州、ウェイモに自動運転タクシーのサービス許可」も参照。データセットの無料開放については「グーグル系ウェイモ、自動運転走行のデータセットを開放」も参照。

ウーバーテクノロジーズ:巨額資金調達で自動運転開発加速へ

2019年5月に株式上場を果たした配車サービス大手のウーバー。株価は伸びを欠いているものの、2019 年 4 月にトヨタやデンソー、SVFが同社の自動運転開発部門に総額10億ドル(約1100億円)規模の出資を行うことが発表されるなど、自動運転開発と配車サービスの融合に対する期待は高い。

また、同社は空飛ぶタクシー「Uber AIR」の開発も進めており、2023年のサービス実用化を目指している。構想は2017年に発表され、4人乗りのeVTOLを活用した空飛ぶ配車サービスによって都市間の移動時間を大幅に短縮するなど効率的な移動サービスの提供を目指すこととしている。

実証実験に関しては、2016年9月に自動運転車による配車サービスをピッツバーグで試験的に開始したほか、2017年3月にはアリゾナとカリフォルニアでも開始している。2018年3月に発生した歩行者を巻き込む死亡事故により公道試験は一時中断していたものの、現在は再開しているようだ。

2019年6月には、スウェーデンのボルボ・カーズがウーバーの自動運転システムの搭載を可能にするSUVを発表しており、新たな展開にも注目だ。

【参考】ウーバーの自動運転車については「Uber(ウーバー)の自動運転車を徹底解剖!LiDAR、カメラ…」も参照。

リフト:2022年までに自動運転タクシー商用化

配車サービス大手のリフトも、各社と連携を図りながら自動運転配車サービスの実用化を進めている。MIT(マサチューセッツ工科大学)からスピンオフしたスタートアップのNuTonomyと2017年に連携し、自動運転車による配車サービスをボストンで実証することを発表。また、自動運転開発を進めるスタートアップのDrive.aiとも提携し、サンフランシスコで実証を進める計画などを発表した。

2018年1月には、米自動車部品大手アプティブ(Aptiv)と共同でラスベガスで完全自動走行タクシーの運行を目指し、実証実験を行うことを発表。同年5月には累計乗車回数が5000回を突破し、その後も順調に乗車実績を伸ばしているようだ。

実用化・商用化は2022年までに実現する見通しで、政府の協力を見込めるシンガポールなどが第一候補に挙がっているようだ。

【参考】リフトの自動運転タクシーについては「口コミ評価、驚きの4.97!Lyftの自動運転タクシーが超優良 乗車回数が5万回超え」も参照。

テスラ:ロボタクシー構想に注目

自動運転機能(先進運転支援システム)「オートパイロット」の導入と改良を進めるEV大手のテスラ。ソフトウェアをバージョンアップして既存車両の機能を向上させる手法を採用している。

2019年9月に発表した最新バージョン10.0には、車両を自動運転技術で呼び寄せる「スマート・サモン(Smart Summon)」機能を追加した。現代界では試行的なシステムで、要件を満たさない使用方法などによって事故が相次いでおり、賞賛とともに疑問視する声がSNSなどを賑わせているようだ。

また、2019年4月に開催された技術説明会の中で、同社のイーロン・マスクCEOが「2020年半ばまでに完全な自動運転車を100万台以上生産する」としたほか、マイカーをロボタクシーにできる「TESLA NETWORK(テスラネットワーク)」構想も発表し、注目を浴びている。

自動運転化されたテスラ車をリース契約したオーナーが、配車サービスのプラットフォームとなるテスラネットワークに登録することで、マイカーを使用していない時間を配車サービスに充てることができるサービスだ。

【参考】テスラのロボタクシーについては「米テスラ、2020年に100万台規模で自動運転タクシー事業」も参照。

■有力スタートアップの宝庫

シリコンバレーを中心に次々と有力なスタートアップが誕生するアメリカ。自動運転開発を手掛けるユニコーン企業のAurora Innovationは、LiDARやソフトウェアなどの開発を進める米Blackmoreを買収したほか、2019年6月までにFCAと商用車の開発で協業する覚書を交わしている。

また、自動運転ソフトウェアを開発するApex.AIは、トヨタ系のベンチャーキャピタルToyota AI Venturesから1550万ドル(約17億円)の出資を受けているほか、「Autoware(オートウェア)」の開発を手掛ける名古屋大学発スタートアップのティアフォーとも提携している。

自動運転トラックを開発するスタートアップのTuSimpleは、2019年8月までに米物流大手のUPSから出資を受けていることが明らかになるなど、評価額10億ドル超のユニコーン企業に名を連ねている。同じく自動運転トラックの開発を手掛けるエンバーク・トラックスは、既に公道での試験走行距離が16万キロを超えるなど、実用化に向け着実に前進しているようだ。

一方で、経営をめぐる混乱なども取りざたされている。シリコンバレー屈指のスタートアップと言われるZooxは2018年8月、CEOの電撃解任を発表し、内部の混乱ぶりが表ざたとなった。その後は持ち直した模様で、新CEOのもと、サンフランシスコで公道実証を進める自動運転EVタクシーをラスベガスでも走行させる計画を明らかにしている。

企業価値が一時2億ドルを超えていた自動運転スタートアップの米Drive.aiは、事実上の廃業に追い込まれ、米アップルに買収されることが2019年6月に報じられている。

盛者必衰ではないが、スタートアップにも当然勝ち組と負け組が存在する。こうした流れも自動運転の実用化とともに明確になっていくのだろう。

■【まとめ】チャレンジ大国アメリカ 自動運転の覇権争い譲らず

スタートアップをはじめ有力な企業が資金を集めやすい環境に加え、他の先進国に比べ公道実証を行いやすい法規制も後押しし、新しい取り組みにチャレンジしやすい社会が出来上がっているのがアメリカの何よりの武器だ。

自動車大手はスタートアップをはじめ他国の自動車メーカーとの連携を進め、存在感を増している。中国の台頭など情勢は日々変化しており、自動運転分野における世界の覇権争いはまだまだ続きそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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