自動運転ベンチャー、未上場企業一覧(2023年最新版)

国内7社、海外6社をピックアップ



出典:Nuro公式ブログ

新興勢の台頭が著しい自動運転業界。開発から実用化のフェーズに移行し、米Aurora InnovationやTuSimpleなどの先行勢は早々に株式上場を果たしている。

もちろん、スタートアップの多くは開発と実用化の状況を冷静に見極め、上場による資金調達のタイミングを慎重に見定めている段階だ。







今後、どの段階に達すれば上場ラッシュが起こるのか。大手の実質子会社を除く未上場企業13社をピックアップし、これまでの資金調達動向などとともに各社の現況に迫る。

■ティアフォー(日本):2025年度に10エリアで自動運転サービス実用化

ティアフォーは、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」を武器に日本の自動運転開発をけん引するスタートアップだ。2015年に設立された。

Autowareの世界展開も進めており、2018年に業界標準化を目指す国際業界団体「The Autoware Foundation(AWF)」を立ち上げ、同ソフトウェアのすべての権利を団体に譲渡している。

プラットフォームサービス「Web.Auto」「Pilot.Auto」をはじめ、EV生産を加速させるソリューション「ファンファーレ」の提供を開始するなど、近年はビジネス化に向けた事業を本格化させた印象だ。

自動運転サービス関連では、各地の実証に参画するほか、自動運転タクシー実用化に向けた取り組みにも着手している。2023年11月にはWILLERと協業し、2025年度に10エリアで自動運転サービス実用化を目指す計画を発表した。

資金調達関連では、2019年のシリーズAラウンドで累計113億円(損害保険ジャパン、ヤマハ発動機、KDDI、アイサンテクノロジーなど)、2022年のシリーズBで121億円(SOMPOホールディングス、ヤマハ発動機、ブリヂストン)など、2022年7月時点で累計資金調達額は296億円に達している。

【参考】ティアフォーについては「ティアフォーの自動運転/Autoware戦略(2023年最新版)」も参照。

■Turing(日本):大規模言語モデルで自動運転開発を加速

テスラ超えを旗印に自動運転EV開発を進めるTuring。2021年の設立からものすごいスピードで事業を推進している新進気鋭のスタートアップだ。

同社は「We Overtake Tesla」をミッションに掲げ、「2030年に完全自動運転EVを1万台量産し完成車メーカーになる」ことを目標に据える。自動運転開発のみならず、EV生産も自ら手掛けることでモビリティの変革に真正面から立ち向かう構えだ。

計画では、2023年に100台生産に向けた自社工場を設立し、2025年に納車を完了する。2027年に完全自動運転EVの量産をスタートし、2030年に1万台生産を目指す。

AIによる信号機認識アルゴリズムの開発やAIをフル活用してデザインした完全自動運転EVのコンセプトカー公開など、さまざまな観点からAIの可能性を広げている。最近は大規模言語モデルに着目し、人間の運転学習と同様のアプローチでAI開発を進めるべく研究を重ねており、大規模言語モデルやマルチモーダルモデル向けの専用計算基盤として、GPUクラスタシリーズ「Gaggle Cluster」の構築に着手したことも発表している。

資金調達関連では、2022年のシードラウンドで10億円、2023年のプレシリーズAラウンドで5.2億円を調達している。

■Preferred Networks(日本):モビリティ関連の事業を加速

Preferred Networks (プリファード・ネットワークス/PFN)は2014年創業の日本を代表するユニコーンで、AI開発能力を武器に多方面で活躍している。

モビリティ関連では、2014年からトヨタと共同研究・開発を続けており、PFNの物体認識技術や車両情報の解析技術などは、自動運転をはじめとする次世代モビリティ社会の実現に必要不可欠と評価されているという。

2022年には、三井物産主導のもとレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービスの実現を目指す合弁T2を設立した。すでに東関東自動車道などで実証に着手しており、今後の活躍に期待が寄せられる。

ロボット関連では、2021年に自律移動ロボットの研究開発などを担うPreferred Roboticsを設立している。出資元のアマノと小型床洗浄ロボット「HAPiiBOT」を開発・発売するなど、こちらも今後の動向に注目が集まるところだ。

資本関係では、創業間もない2014年にNTTと資本・業務提携契約を締結し、2億円を調達したのを皮切りに、2015年にファナックから9億円、トヨタから10億円、2017年にトヨタからの追加出資で約105億円、ファナック、博報堂DYHD、日立製作所、みずほ銀行、三井物産から計20億円、2018年に中外製薬、東京エレクトロンから計9億円、2019年にJXTGホールディングスから10億円をそれぞれ調達している。

企業価値3,000億円以上と評価される国内屈指のユニコーンで、今後のIPOに関する動向にも注目したい。

【参考】Preferred Networks関連の取り組みについては「T2と三菱地所、レベル4自動運転トラックの物流網構築へ」も参照。

■WHILL(日本):自動運転モデルの導入進む、トヨタ系ウーブンも出資

誰でも利用可能な近距離モビリティ製品の開発を手掛けるWHILL。中でも、自律走行を可能にした車いすの普及に高い期待が寄せられている。

2012年の設立以来、次世代型電動車椅子などの開発・製品化を進めており、2019年に自動運転システムを発表し、翌2020年に搭載モデルの実用化を開始した。

空港や大病院など広い施設内で誰もが容易に移動できるソリューションとして導入が広がっている。事前にルート設定されていれば、操作パネルで目的地を選択するだけで施設内の人の流れや混雑度、安全性などを踏まえた最適ルートを提案し、障害物を避けながら自律走行する。

羽田や成田、関西国際空港をはじめ、慶應義塾大学病院や熊本中央病院などで自動運転モデルが導入されている。

資金調達関連では、2016年のシリーズBで19億円、2018年のベンチャーラウンドで1350万ドル、同年のシリーズCで50億円をそれぞれ調達している。2022年には、トヨタグループのWoven Capitalからの資金調達を完了したことも発表されている。

■TRUST SMITH(日本):スマート物流に向け多方面から開発・アプローチ

東京大学発ベンチャーとして2019年に産声を上げたTRUST SMITH。ロボットアームや高精度ピッキングシステム、無人搬送車、異常検知システムなど、倉庫のスマート化を推進するソリューションを中心にさまざまな事業を手掛けている。

自動運転関連では、工場敷地内における自動搬送トラック開発に向け関連会社SMITH & MOTORSを2020年に設立したほか、東京大学生産技術研究所とともに自動運転トレーラーの開発も行っている。

ロボット関連では、倉庫内で活躍する自動搬送ロボットをはじめ、自動配送ロボットの開発にも着手している。

資金調達関連では、第三者割当増資を行うことなく金融機関からの融資のみで総額1.1億円を調達したことを発表するなど、独自路線を歩んでいるようだ。

一方、ワンストップ梱包を実現する自動倉庫システム「RENATUS」を提供する関連会社の米国法人RENATUS ROBOTICSは2023年、シードラウンドで200万ドル(約3.0億円)の資金調達を実施した。人材採用を強化し、ナスダック上場に向けた取り組みも進めていくとしている。

【参考】TRUST SMITHについては「自動運転、Microsoftが認めた「東大発AIベンチャー」の正体」も参照。

■ZMP(日本):ロボット開発の第一人者、そろそろIPOも?

国内自動運転・ロボット開発系ベンチャーとしては第一人者のZMP。創業は2001年までさかのぼる。2008年に自動運転プラットフォームの開発に着手するなど、先々を見据えた事業展開が際立っている印象だ。

自動運転開発プラットフォームのRoboCarシリーズや自動運転用のソフトウェアプラットフォームIZACといったソリューションを展開するほか、自ら自動運転タクシー実用化に向けた実証にも取り組んでいる。

ロボット関連では、物流支援ロボットCarriRoや宅配ロボットDeliRo、無人警備・消毒ロボットPATORO、歩行速モビリティRakuRoなど、数々の製品を実用化している。

資金調達関連では、2017年に総額15億円の資金調達を行うなど、企業評価額は約500億円に達している。ロボット全盛の時代を迎え、そろそろIPOに向けた動きが再燃するか、こうした点にも注目したい。

【参考】ZMPについては「ZMPの自動運転戦略まとめ 技術や製品、サービスは?」も参照。

■先進モビリティ(日本):隊列走行や自動運転バス実証で多くの実績

東京大学で進められてきた自動運転や隊列走行などの研究・開発成果を社会に還元すべく、同大学発スタートアップとして2014年に設立された。

高速道路におけるトラック隊列走行をはじめ、各地の自動運転バス実証などに数多く参画している。

出資額は明かされていないが、2020年に三井不動産、2023年に安藤ハザマがそれぞれ同社へ出資するなど、資金調達も順調に進められているようだ。

【参考】先進モビリティについては「三井不動産、自動運転開発の東大発ベンチャー「先進モビリティ」に出資」も参照。

■WeRide(中国):米市場上場へカウントダウン

中国自動運転スタートアップの一角。2017年の設立以来、世界26以上の都市で自動運転の研究開発や実証を行っている。

中国では、本社を構える広州をはじめ北京や上海、深センなどに拠点を構え、広州と北京では無人走行ライセンスを取得している。

海外展開にも積極的で、ドバイをはじめとしたUAE(アラブ首長国連邦)やシンガポール、内モンゴル自治区などでも実用化に向けた取り組みを進めている。

資金調達関連では、2018年にルノー・日産・三菱アライアンスのベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ」が3,000万ドル(約34億円)を出資したほか、2021年のシリーズCでは同ファンドなどから総額3.1億米ドル(約340億円)を調達している。

米国市場上場に向け認可を取得したとする報道も出ており、スタートアップ卒業とともに自動運転サービスをいっそう加速させる可能性が高そうだ。

■Momenta(中国):トヨタが提携・出資、自家用車向けソリューション開発も

2016年設立のMomentaは、レベル4ソリューションと自家用車向けソリューションの両輪で事業展開を図っている。

レベル4走行を実現する無人運転技術「MSD(Momenta Self Driving)」は自動運転タクシーなどに活用されており、上海汽車(SAIC)の配車サービスプラットフォーマーSAIC Mobilityが採用し、上海や蘇州でサービス実証を行っている。米GMの中国法人もMomentaの技術を導入し、上海での公道実証を開始している。

自家用車向けに展開している「Mpilot」は、SAIC系のEVメーカーIM Motorsなどがすでに実装を開始しているようだ。

資金調達関連では、2018年のシリーズで10億ドル超を調達したほか、2021年にはトヨタなどから5億ドルの出資を受けたことを発表している。トヨタとは高精度地図の分野で提携を交わしており、今後の取り組みに注目したい。

■AutoX(中国):世界最大規模の自動運転タクシーフリートを構築

2016年設立のAutoXは、北京、上海、深セン、広州などで自動運転タクシーのサービス実証を行っている。深センでは無人走行ライセンスを取得済みだ。

2022年には、自動運転タクシーのフリートが1,000台を超えたことを発表した。一部報道によると世界最多の規模で、非常に意欲的に実用化を推し進めていると言える。

資金調達関連では、上海汽車や東風汽車から出資を受けるほか、2019年のシリーズAで1億ドル、同年のプレシリーズBで数千万ドルを調達している。

2021年にはホンダの中国法人本田技研科技とも自動運転開発に向け提携を交わしており、さらなるフリート拡大・実用化に期待が寄せられるところだ。

■Pony.ai(中国):自動運転タクシー量産化に向けトヨタと合弁設立

トヨタとの提携で知られる2016年設立のPony.aiは、広州や北京、上海、蘇州、深センなどで自動運転タクシー事業を進めており、北京と広州では無人タクシーを実現している。

2023年8月には、トヨタ自動車(中国)投資有限公司(TMCI)と広汽トヨタ自動車(GTMC)とともに、自動運転タクシー量産化に向け合弁を設立することを発表した。総投資額は10億元(約198億円)以上を見込むという。

資金調達関連では、2018年のシリーズAで2億ドル超、2020年にはトヨタから4億ドルの出資を受けたほか、シリーズCで2億6,700万ドルを受けるなど、2022年のシリーズDまでに企業価値が85億ドル、日本円にして約1兆円に達した。

トヨタからの信頼も厚いようで、今後の事業展開に注目の一社だ。

■Nuro(米国):SVCやウーブンが出資

2016年設立のNuroは、車道を走行するミニカー規格の配送ロボット開発に特化した事業展開で存在感を高めている。

従来の自動車と規格・装備が異なる配送用途に特化したオリジナル車両で米国運輸省(DOT)と米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)から規制免除の許可を受け、カリフォルニア州などでサービス実証などを進めている。

配送パートナーにはウォルマートやクローガー、セブン-イレブン(米)、ドミノピザ、チポトレなどが名を連ねている。2022年には配車サービス大手Uberと10年間に及ぶパートナーシップを結び、Uber Eatsのプラットフォームへのロボット導入を進めている。

資金調達関連では、2019年のシリーズBでソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)から9億4,000万ドルを調達したほか、2021年にはシリーズCの一環でトヨタグループの投資ファンドWoven Capitalからも出資を受けるなど、日本勢との関わりも深い。

【参考】Nuroについては「Nuroの自動運転戦略(2023年最新版)」も参照。

■MayMobility(米国):日本への本格進出に注目

Nuro以上に日本勢との関わりを深めているのが、2017年設立のMay Mobilityだ。日本企業がこぞって同社に出資を行っている。

同社はミシガン州アナーバーやテキサス州アーリントン、ミネソタ州グランドラピッズ、アリゾナ州サンシティなど、各地でデマンド型自動運転サービスを手掛けている。日本でも広島県東広島市で行われた実証に参加した。

同社にいち早く目を付けたのはトヨタだ。Toyota AI Ventures(現Toyota Ventures)が2018年に出資し、以後、レクサスやAutono-MaaS車両「シエナ」などに自動運転システムを統合し、サービスに活用する場面が増加した。同社のシリーズ B と Cはトヨタ、及びスパークスグループが主導している。

2022年には、ソフトバンクが5Gネットワークを活用した自動運転サービスの早期社会実装に向け業務提携契約を締結した。米ブリヂストン・アメリカスも同年出資を行っている。

2023年のシリーズDはNTTグループが主導し、Toyota Ventures、あいおいニッセイ同和損害保険なども参加している。NTTは出資に合わせ、同社の自動運転システムの日本国内独占販売権を獲得している。

May Mobilityはすでに日本法人も設立している。今後、日本国内でのサービス化を目指す動きが出てくることは間違いないだろう。

■【まとめ】そろそろ上場ラッシュ勃発?各社の動向に注目

ZMPやPony.ai、WeRideにように、過去にIPOに向けた動きを見せた企業もあるが、さまざまな理由により流れたケースもある。

自動運転ビジネスが収益面で本格化するには今しばらく時間がかかるものと思われるが、社会実装に向けた他社との駆け引きが過熱し始めているのも事実で、そろそろ上場ラッシュが起こっても不思議ではない。

次に大きな動きを見せるのはどの企業か。2024年の各社の動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ一覧」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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