ZMPの自動運転戦略まとめ 技術や製品、サービスは?

2020年、自動運転タクシーサービス実現へ





撮影:自動運転ラボ

日本国内において、自動運転開発に携わるベンチャー企業の代表格・株式会社ZMP(本社:東京都文京区/代表取締役社長:谷口恒)。「Robot of Everything~人が運転するあらゆる機械を自動化し、 安全で楽しく便利なライフスタイルを創造する」というミッションを創業以来守り続け、いち早く自動運転開発プラットフォームづくりに着手するなど果敢な挑戦は今なお続いている。

ベンチャー精神に富んだ開発力と製品力が多くの企業や大学から支持されている同社。果たして、ZMPにはどのような思いが込められているのか。その実態と展望に迫ってみる。







■ZMPの企業概要
社名の由来は?

ZMPは、制御機器メーカーでエンジニアの実績を積むなど幅広い経歴を有する谷口恒氏が2001年1月に創業した。その歩みは二足歩行ロボットの開発から始まっており、社名は、二足歩行ロボットの実現において重要なポイントである「ゼロモーメントポイント(zero moment point)」に由来している。ロボット分野で最も重要な存在になるとの思いが込められている。

2005年には、セイコークロック、ルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)の協力のもと、家庭用二足歩行ロボット「nuvo」の量産・製品化を実現するなど、数々のロボット開発を行ってきた。

いち早く自動運転分野に参入

このロボット開発の経験を礎に、2008年に自動運転プラットフォームの開発にいち早く着手し、自動運転分野に大きく舵を切った。2009年には、RoboCarシリーズの第一弾となる「RoboCar 1/10」を世に送り出した。実車の10分の1スケールというラジコンサイズのロボットカーで、自動運転開発における走行シミュレーターとして自動車メーカーや部品メーカー、大学などの研究機関から多くの注目を寄せられた。

RoboCar 1/10は今なお改良を重ねており、最新モデルは単眼カメラや赤外線センサーなどのセンサー類をはじめ、加速度・ジャイロセンサー、エンコーダーなども搭載。汎用的な開発環境に対応しており、延べ300以上の企業らが導入している。

2011年には、トヨタ車体製の超小型電気自動車「コムス」をベースにオリジナル制御コントローラーや自動操舵システム、自動ブレーキシステムなどを搭載した「RoboCar MV2」を発表。人が乗車できるサイズの実験用小型EVとして改めて注目を集めた。

2014年、愛知県で自動運転の実証実験

2014年には、愛知県で日本初となる自動運転の実証実験を開始し、2015年には市販ハイブリッドミニバン車両をベースとしたADAS(先進運転支援システム)・自動運転の研究開発用車両型実験プラットフォーム「RoboCar MiniVan」を発表。その後も、物流支援ロボット「CarriRo」を製品化するなど、開発の手を休めることなく加速し続けている印象だ。

なお、現在の主な事業内容は①ADAS、自動運転技術開発用プラットフォームRoboCarシリーズ及びセンサ・システムの開発・販売②移動体メーカー(自動車、商用車、建設機械、農業機械、物流搬送機器、屋外作業機械など)向け自動運転などの開発支援、実験代行業③物流支援ロボットCarriRoの開発・販売④大学・企業向け研究用ロボット、ロボット教材——となっている。

■ZMPの取り組み
RoboCarシリーズ:自動運転開発を効率的・効果的に進めるプラットフォーム

プログラムによって走る、曲がる、止まるなどの制御が可能な自動運転を開発するための車両プラットフォームRoboCarシリーズは、使用目的に応じたさまざまなラインナップが展開されており、ADAS・自動運転開発を支援するツールとして多くの企業や大学などが導入している。

室内でも走行実験可能な「RoboCar 1/10」や一人乗り電気自動車をベースとした「RoboCar MV2」をはじめ、人や機材の積載性を向上させたミニバンタイプの「RoboCar MiniVan」、ハイブリッドセダン車両をベースにした「RoboCar HV」、走破性やラグジュアリー感を向上させたSUVタイプの「RoboCar SUV」がこれまでに製品化されているほか、人の輸送に特化した小型電動バスタイプの「RoboCar EV-miniBUS」やミニバンタイプの次期モデルなども現在開発を進めている。

IZAC(アイザック):あらゆる機械を自動化するソフトウェアプラットフォーム

IZACはあらゆる機械の自動化を支援する制御ソフトウェア・コンピューターだ。自動運転用のソフトウェアプラットフォームとして、IZACを搭載したコンピューターへセンサーを接続し認識させることで、IZACの制御コンポーネントを通じて判断を行い、制御することであらゆる機械をコントロールすることが可能になる。

自動運転を行う上で重要になる制御プログラムとして販売しており、IZACが持つ制御アルゴリズムをさまざまな車両に応用することで、ユーザーが所有する車両の自動化にも対応する。

RoboCarシリーズでは自動運転アルゴリズムの実行環境として搭載され、公道実証実験パッケージとして提供しているほか、自動運転ソフトウェア開発者向けにはIZAC開発環境として提供している。

CarriRo:物流や宅配事業を自動運転技術で支援

台車型の物流支援ロボットの「CarriRo(キャリロ)」。搬送作業を快適にする機能が好評を呼び、2016年8月の出荷以来、全国各地の物流拠点や工場などで採用されている。

ジョイスティックによる操作が可能なドライブモードとビーコン(発信機)を自動追従するカルガモモードを有した従来品のほか、2018年11月には自律移動機能を搭載した「CarriRo AD(自律移動モデル)」の出荷も開始している。

自動運転事業で培った画像認識技術を応用し、「CarriRo Visual Tracking(特許出願中)」という方式で自律移動を実現している。走行通路にランドマークというシールのようなものを貼り、CarriRo ADがその上を走行した際、画像認識によって位置補正と走行指示情報を同時に受け取る。これを繰り返すことによってゴールまで確実に到達するという仕組みだ。

また、研究開発用の移動台車プラットフォーム「POWER WHEEL II」も用意。高精度ロータリエンコーダーや慣性センサー、測距センサー、バンパーセンサを搭載するほか、レーザーセンサーやステレオカメラ・単眼カメラなどを追加することもでき、通信機能を生かして外部に設置したPCから遠隔操作実験などを行うことも可能という。

CarriRo Deli:ボックスを搭載した宅配ロボット

宅配部門では、ボックスを搭載した宅配ロボット「CarriRo Deli(キャリロ デリ)」を商品化している。用途に応じて変更可能な取り替え式ロッカーや、フロントとリアに表情を表すLEDユーザーインターフェースを搭載。横断歩道や歩行者信号、障害物などを検知し、周囲環境を認識しながら自律走行することが可能だ。

スマートフォンの注文画面のQRコードを読み取ってロッカーのカギを解除する機能をはじめ、買い物客用・店舗用アプリ、ITサービスなどをパッケージ化して提供している。

RoboVision:自動運転開発向けのステレオカメラ

RoboVisionは、ADAS・自動運転開発向けの車載ステレオカメラシステム。精度の高い距離計測を実現し、カメラを活用した開発や研究に貢献する。

コンパクトな筐体に包まれたRoboVision2sは、ソニー製の超高感度CMOSイメージセンサIMX224を2個搭載。夕方や夜間など低照度の環境においてもセンシングが可能なイメージセンサーを有し、幅広いシーンで画像計測研究や開発に活用できる。USB3.0に対応し、手軽にPCに接続できるのも魅力だ。

また、RoboVision3は、最大測定距離150メートル、水平視野角110度とこれまでにない距離と視野でセンシングができるステレオカメラで、従来では難しかった交差点右折時の遠方からの対向車の検出や、交差点右左折時の歩行者や車両など広範囲な検出が可能という。

自動運転タクシー実現に向けた実証実験

2014年度に、アイサンテクノロジーや名古屋大学とともに自動運転の公道実証実験を愛知県名古屋市で実施。この時すでに東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を自動運転実現のゴールに見据え、公道実験を加速している。

2016年3月には、DeNAと共同出資会社ロボットタクシーの3社で、自動運転タクシーの実現に向けた公道実証実験を神奈川県藤沢市で行った。2017年12月には、無人タクシーの実現に向け、日本初となる遠隔型自動運転システムの公道実証実験を東京都内で実施。また、2018年8月から9月にかけては、タクシー事業者の日の丸交通とともに世界初となる自動運転タクシーの公道での営業サービス実証実験を行っている。

このほかにも各地域で実証実験を積み重ねる同社。自動運転開発プラットフォームの強化を図るとともに、自動運転タクシーの実現に大きく力を注いでいる。

自動運転タクシーは、市販ハイブリッドミニバンをベースとした自動運転車両「RoboCar MiniVan」に、カメラ、レーザーなどのセンサーと、自動運転用コンピュータIZAC(アイザック)を搭載しており、周囲の他の車や歩行者などの状況を常に把握し、公道の複雑な環境でも安全かつスムーズに走行することができる。

さまざまな実証実験や技術開発を通じ、大きな交差点での右左折走行やレーンチェンジ、信号検出、タクシープールへの停車といった走行制御、またタクシー・配車サービスに必要な予約システムや走行車両管理システムなどの技術向上を図るほか、スマートフォンを用いた自動運転タクシーの予約、乗車、決済などユーザー向けサービス面の研究も進めている。

【参考】自動運転タクシー営業実証実験については「【密着・最前線】ZMPと日の丸交通の自動運転タクシー実証実験、参加第1号モニターが語ったこと」も参照。

多彩な関連企業:ドローン開発から自動運転タクシー関連スタートアップまで

JVCケンウッドとの合弁で2013年に設立した「株式会社カートモ」は、移動体通信による車載CAN(Controller Area Network)データのクラウドプラットフォームを活用するテレマティクス事業を共同展開。自動車の車載データをリアルタイムに集約し、自動車の状態と運転者の行動をインターネット上に蓄積するプラットフォームなどを運営するほか、B to B 向けの新たな付加価値サービスの提供を目指している。

株式会社ハーツユナイテッドグループとの合弁で2015年に設立した「株式会社ZEG」は、自動車業界向けのデバッグやデータ収集など実験代行に関する事業を展開しており、自動運転分野の技術力と豊富な人材・ノウハウでテスト走行をサポートする。

ソニー株式会社との合弁で2015年に設立した「エアロセンス株式会社」は、自律型無人航空機(UAV)によるセンシングなどとクラウドによるデータの処理・ 管理を組み合わせた産業用ソリューションの開発・製造・販売を手掛けており、ドローンハードウェアから自律制御・測位技術、クラウドデータ解析まで一体となって開発を進めている。

近々では、2018年12月に丸紅株式会社と合弁で「AIRO株式会社」の設立を発表しており、空港制限区域内での自動走行車両を用いた自動運転サービスの事業化を目指すこととしている。

また、新たなスタートアップの立ち上げも進めている。AIDELI株式会社は、AI技術を用いた自動タクシーやCarriRo Deliveryなど移動ロボットの配車アプリ、決済やセキュリティにおけるブロックチェーンの開発を目指しており、現在メンバーを募集しているようだ。

■日本初の自動運転サービス実現へカウントダウン、IPOの動向にも注目

時代を見据えていち早く自動運転開発プラットフォームを展開するなど先見の明が際立っており、今後は日本国内企業において日本初の自動運転サービスの実現を目指すなど、ベンチャー精神はなお引き継がれているようだ。

自動運転の商業化に向け、自動運転開発に特化したハードウェアのみならず、そのマシンを取り扱うためのソフトウェアまで自動運転の技術開発を一貫して行う同社の技術力は、自動運転社会の実現が現実味を帯び始めた今、輝きをいっそう増している。

スローガンに「R&Dから量産へ」を掲げ、事業を本格展開させる意気込みもうかがわせており、度々噂される株式上場にも大きな関心が寄せられそうだ。

自動運転サービズの実現を目指す2020年は、同社創業から20年目を迎える節目の年でもある。自動運転の実用化とともに、ベンチャーからの脱却にも注目したい。







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