米Apple(アップル)が自動運転プロジェクトを正式に終了したようだ。米カリフォルニア州の道路管理局(DMV)の走行ライセンス保持企業から名前が消えた。
将来、一大産業化し膨大な市場を形成することが予測される自動運転だが、現状は体力(資金)勝負を強いられる側面が強い。商用化が始まったとは言え、収益を生むにはまだ時間を要するのだ。目測を誤り、すでに事業停止や売却を余儀なくされた企業も出ている。
この記事では、これまでに自動運転開発を断念、撤退した企業をまとめてみた(事業売却を含む)。
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■自動運転撤退企業一覧
Apple:10年間の極秘開発プロジェクトに幕
極秘プロジェクトとして自動運転開発を進めてきたアップルは2024年、約10年間に及ぶ研究に終止符を打った。
あくまで極秘のため正式発表はないが、米カリフォルニア州の道路管理局(DMV)が公表している自動運転公道走行ライセンス発行事業者の中からアップルの名が消えており、実証も完全に停止したものと思われる。
アップルブランドの自動運転車として大きな期待が寄せられていたが、結果論としては迷走し続けた開発プロジェクトと言える。人員削減したかと思えば自動運転開発スタートアップのDrive.aiを買収し、レベル4開発を進めていたものの手動制御装置を備えたレベル3、レベル2+……とトーンダウンしていった。
製造に関し自動車メーカーと協議を進めていた旨報道もあったが話はまとまらず、最終的に中止の道を選んだようだ。開発費用は数十億ドルに上ると言われている。
開発に携わっていたエンジニアは、レイオフかAI開発部門に移ったようだ。
【参考】アップルの自動運転開発については「Appleが開発中止した自動運転技術、「数十億ドル」で売却・現金化か」も参照。
Uber Technologies(ATG):開発部門をAurora Innovationへ売却
配車サービス大手Uber Technologiesも、かつては自動運転開発部門「Advanced Technologies Group(ATG)」を設け、積極的に自動運転開発を進めていた。
ATGはWaymoなどとエンジニア争奪戦を繰り広げるほど開発に前のめりだったが、登用したエンジニアによる技術盗用の疑いや、セーフティドライバーの怠慢による実証走行中の死亡事故などトラブルも多かった。
思うように計画を進められなかった様子で、2020年12月にAurora InnovationにATGを売却することが発表された。
UberがAurora Innovationに4億ドル(約440億円)を投資し、Uberのダラ・コスロシャヒCEOがAurora Innovationの取締役会に加わり、両社のパートナーシップをサポートする内容だ。売却した上に投資を行うのは、Aurora Innovationの非公開株をUber株主側に提供する対価とするためのようだ。
Aurora Innovation陣営にはトヨタやデンソーも加わり、自動運転タクシーなどの開発を進めている。実用化に際しては、Uber Technologiesの配車プラットフォームを利用するなど、Uber Technologies側の利益も認められるパートナーシップとなっている。
【参考】ATGの売却については「Uber、自動運転技術の自社開発を断念!?技術開発部門の売却へ交渉」も参照。
Ghost Autonomy:OpenAI出資も事業停止
2017年設立の米Ghost Autonomyも、2024年に事業を停止、清算したようだ。OpenAIから出資を受け注目度が高まった矢先の清算で、大きな話題となった。
同社は既成車両を自動運転化する後付けタイプのソフトウェア開発を進めていた。2023年11月の資金調達EラウンドでOpenAIから500万ドルの投資を受け、大規模言語モデル (MLLM)を活用した自動運転開発を発表するなど一躍脚光を浴びたが、2024年4月に事業を停止した。
なお、自動運転ソフトウェア開発を手掛けるApplied Intuitionが2024年10月、Ghost Autonomyが保有する特許ポートフォリオを取得したと発表した。詳細は明かされていないが、開発技術がこのように引き継がれていくケースもあるようだ。
【参考】Ghost Autonomyについては「OpenAI支援の米Ghost、自動運転事業「黒字化断念」で会社清算」も参照。
Sensible 4:2023年に破産申請
全天候型の自動運転システム開発を手掛けていたフィンランドのSensible 4は2023 年に破産を申請した。事業の引継ぎ先を探しているようだ。
同社は、あらゆる産業車両・商用車両を自動化する自動運転ソフトウェア プラットフォーム「DAWN」の開発を手掛けていた。雨や雪などの環境条件を問わない全天候型がウリだ。
2017年には良品計画との共同プロジェクトに着手し、良品計画が車体デザインした自動運転バス「Gacha(ガチャ)」が2018年に発表された。GACHAはグッドデザイン金賞を受賞し、話題となった。2020年の資金調達シリーズAには伊藤忠商事が参加しており、日本との縁も深い。
同社の実証はフィンランドやスウェーデン、スイスをはじめ、日本でも2022年に千葉県千葉市で実施している。
破産宣告後も、2024年1月に良品計画がGACHAのリニューアルを発表し、札幌国際芸術祭2024で展示とデモ走行を行っている。もしかしたら、日本企業による救いの手が差し伸べられる可能性も?……と期待したいところだ。
【参考】Sensible 4については「良品計画が自動運転バス!ただし「反テスラ」的な誘導式で走行」も参照。
Roadstar.ai:わずか2年で事業停止
2017年設立の中国の自動運転スタートアップRoadstar.aiは、わずか2年で事業を停止したようだ。
グーグルやアップル、バイドゥなどのテック企業のエンジニアが立ち上げたスタートアップで、2018年には資金調達シリーズAで1億2800万ドル(約142億円)を確保し、レベル4を実現するテクノロジー・キット「Aries(アリエス)」を公開するなど、順風満帆に思われていた。
しかし、報告書の捏造などが問題視され創業者の一人が解雇されると、あとはなし崩し的に経営陣が離れ、事業が立ち行かなくなったようだ。
【参考】Roadstar.aiについては「グーグルやアップルからの転職組、創業1年で自動運転キット発表 中国Roadstar.ai」も参照。
Argo AI:フォード、VWが資金引き上げ
米スタートアップのArgo AIは2022年に事業を停止した。有力と見られていただけに、業界に激震が走った。
グーグルの自動運転開発に携わっていたエンジニアらが2016年に立ち上げた自動運転開発スタートアップで、設立から数カ月後にフォードから5年間で総額10億ドル(約1,100億円)の投資を受けるなど、早くから大きな注目を集めていた。
2019年には、フォルクスワーゲングループ(VW)から計26億ドル(約2,800億円)の出資も発表され、フォードとVWの自動運転分野における提携を担う企業として注目度をさらに高めていた。
2022年までに米マイアミとオースティンで自動運転タクシーのサービス実証に着手するなど順調に思われていたが、計画が予定通り進行していないことなどを理由に両社から資金を引き上げられ、事業停止に陥った。
フォードはレベル4路線から自家用車におけるレベル3、レベル2+に事業軸をシフトするとしている。見通しが立たないレベル4から離れ、現実路線に戦略を転換した格好だ。
なお、Argo AI創業者のBryan Salesky氏はまもなくして自動運転トラックを開発する新会社Stack AVを立ち上げ、再起を図っている。同社にはソフトバンクグループが出資しているようだ。
【参考】Argo AIについては「ソフトバンクGがパトロン!閉鎖されたArgo AI、自動運転トラックで新会社」も参照。
Embark Trucks(Embark Technology):Applied Intuitionが買収
自動運転トラックの開発を手掛けるEmbark Trucksは、2023年に全従業員宛にレイオフを告げ、自動運転ソフトウェアを開発するApplied Intuitionに事業を売却した。
創業2016年のEmbarkは、「Embark Driver」という自動運転ソフトウェアを開発し、2021年時点で購入予約件数が1万4,200件に達するなど上場の成果を上げていた。2021年11月には、米ナスダック市場への上場も果たしている。
期待は高かったが、2023年5月にApplied Intuitionが同社買収を発表した。事実上の吸収合併だ。Embark のツールやデータ、ソフトウェア資産を統合し、トラック業界や自動車業界向けのサービスをさらに向上させていくとしている。
【参考】Embark Trucksについては「自動運転トラック開発の米Embark、会社清算か 従業員70%解雇」も参照。
Ibeo Automotive Systems:LiDAR企業にも破産の波
LiDAR業界でも荒波に抗えなかった企業が出始めている。センサー開発を手掛けていた独Ibeoは2022年、破産申請を行った。
創業1998年の老舗で、自動車向けセンサーの開発などを手掛けてきた。近年はLiDAR開発に力を入れていたようだ。
サプライヤー大手のZFやAAC Technologiesらが株主に名を連ねており事業は安泰に思われたが、債務超過に陥ったようだ。同社は事業継続と従業員の雇用継続に向け、企業や投資家からの資金調達を模索しており、すでに一部の投資家と協議に入っているとしていた。2023年に米MicroVisionがIbeoの事業を引き継いだようだ。
【参考】Ibeo Automotive Systemsについては「自動運転向けLiDAR開発の独Ibeo、債務超過で破産申請」も参照。
■国内の動向
明確な事業停止はないものの……
日本国内では、今のところ自動運転関連で事業停止した話は聞こえてこない。強いて上げれば、一時期自動運転サービス実装に力を入れていたDeNAが大人しい──といったことくらいだろうか。
DeNAは2016年に仏EasyMileの自動運転シャトルを導入し、いち早く公道実証などに着手していた。国土交通省の道の駅を拠点とした自動運転実証にも参加するなど、将来的な展開に期待が寄せられていたものの、その後の展開については聞こえてない。
モビリティ関連では、タクシー配車アプリ「MOV」や個人間カーシェアサービス「Anyca」を展開するなどサービス分野に力を入れており、MOV事業は日本交通系のJapanTaxiと統合し、新会社Mobility Technologies(現GO)を立ち上げて事業を継続している。
一方、AnycaはSOMPOホールディングスと合弁DeNA SOMPO Mobilityを立ち上げサービスを提供していたが、2024年末をもってサービス停止することが発表されている。
GOは、タクシー配車アプリ「GO」が国内で圧倒的シェアを誇っており、自動運転実証などにも積極的に参加している。事実上、DeNAの自動運転関連事業はGOが担っていくのかもしれない。
【参考】Mobility Technologiesについては「タクシー配車アプリ大手JapanTaxi、「Mobility Technologies」に社名変更」も参照。
【参考】Anycaについては「テスラもDeNAも「愛車を他人に貸したくない心理」を軽視 Anyca終了のワケは?」も参照。
■【まとめ】技術と戦略次第で急浮上も可能
中国では無数と言ってよいほど自動運転開発企業が立ち上がっており、名を挙げることなく消えていった企業も相当数存在するものと思われる。
今後も予断が許されぬ状況が続き、勝ち組と負け組ではっきりと明暗が分かれる展開も予想される。開発力が試されるのは当然、自己資本力やパートナー企業の存在がカギを握る可能性も高い。自動車メーカーによる大型買収案件なども飛び出しそうだ。
予測しづらい展開ではあるものの、逆の見方をすれば技術と戦略次第で急浮上することも可能と言える。数年後の業界地図はどのように変わっているのか、今から要注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転とは?簡単に分かりやすく言うと?対応車種は?(2024年最新版)」も参照。